紙の本
テーマそのものはずっと幅広く生きている
2023/05/31 06:11
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
人が神の御業である生命に手を出したことによって起こる悲劇。神をも畏れぬ行為への後悔。望まぬのに生まれ、疎まれる存在であることの悲しみ。苦しみ。一見吸血鬼ものに比べてその意思を継いだ創作物は少ないようにも思えるが、表面的なモンスター像を捨て去ってみれば、テーマそのものはずっと幅広く生きている。その姿形や行為が魅力的故に、そこに縛られてしまった吸血鬼たちと違い、もっと自由に様々な形で生き延びている。ロボット。人造人間。レプリカント。クローン。子供の頃から親しんできた多くの作品の底に流れていたテーマではないか。
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怪力・愚鈍な人造人間ではない求めて止まない人間の愛の物語
これ、ホラーやアクションではなくメロドラマ
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この作品をもっと面白く読むために、同時に中公新書の「批評理論入門」を読むことをおすすめします。このテクストにこんな意味がこめられていたのか、と驚くこと間違いなし
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怪物を生み出した罪の意識と、それを肯定できない意識の狭間で苦悩する若き天才科学者フランケンシュタイン。
生まれながらに誰からも愛されず、生みの親であるフランケンシュタインに復讐を繰り返す名もなき怪物。
ストーリーの進行とともに、両者は孤独の頂点へ向かっていく。そして、互いを憎悪することにしか生の意味を見出せなくなり、二人の最期は悲劇に終わる。
フランケンシュタインといえば怪物のイメージが先行するが、原作を読んでみると人間の悲壮感溢れる物語だということがわかる。読んでよかった。
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フランケンシュタインといえばあの釘のささった怪物。
ではなかった・・・
生物学を究めた鬼才フランケンシュタインと、彼の創造した生物の物語。
人間であるフランケンシュタインの自己中心的な行動と、その手が作り出したものの極度な欲求のやりとりは、手の施し用のない魔のサイクル。
どちらの主張も、それぞれ立場で考えれば間違っていないのに、お互いにとって都合が悪いという、どうしようもなさ。
読んでいると気付くのは、これは今の社会そのものなのかな、ということです。
自分たちが手をつけたことに関して、なにか不具合を起こせばそれをフォローするために他の処置を施して、しかしそれによって他のものが犠牲になっていく・・・
でも結局のところ、知能と感情を以って繁栄し、世界を征服した私たち人間は、この一分一秒でも自分たちが幸せに生きられる方法を選択していきます。
そんなスケールでなく、もっと身近な自分の行動を考えてみても、同じことが言えるのだと思います。
とても絶望的なことだけれど、その事実は認識しておくべきものです。
この物語を読んでいて感じるゾクゾク感は、本能的にフランケンシュタインにも化け物にも共感し、自分と重ねあわせるからなのかもしれません。
物語としてスリルを味わいながら、現実の事象と真面目に向き合わされている、そんな気がします。
いい本だと思います。
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子供の頃は物語の内容を知らずに恐れていたフランケンシュタイン。
原作を読んだときは本当に驚かされた。読む年齢によっても感じるポイントが変化する奥深い人間のドラマである。
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日本人のフランケンシュタイン観はデカくて怪力でフンガーというように藤子不二雄Aに洗脳済みであるが、モノホンのフランケン(怪物のの方)は喋る喋る。あと、失楽園とか若きウェルテルの悩みとか読んでる。ちょうインテリ。そしてフランケン(人間の方)はちょう自己チュー。つーか、判断ミスが判断ミスを呼ぶデスマーチ。
話の構成も切り貼りのフランケン感満載で、昔の翻訳ブンガクにつきものの鬱陶しい感じを我慢できるなら、もう一度読みたい。
最後に、トゥートゥープマシェリーって作者のメアリー・シェリーのことなんだよ、っていう嘘を思いついたのでメモ。
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モンスターを作るまでの具体的描写ってまったくないのだね。それと、モンスターといってもものすごいインテリで、「失楽園」「プルターク英雄伝」「若きウェルテルの悩み」を読みこなしたりしている。いくら頭良くても、生まれると同時にそれだけの理解力を身につけるとは考えにくいのだが。
いわゆるフランケンシュタインのイメージがもっぱら映画によって作られたものを確認。原作はかなり理屈っぽい。
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フランケンシュタイン博士が生命としての"怪物"を生み出すまでの描写が希薄というかあまり掘り下げて書かれていないのが、逆に理屈臭さを排除している感があってよかった。訳にもよるのだろうけれど、個としての"怪物"の感情が、理性的な言から滲み出ているように思えた。また、博士にも"怪物"を生み出した科学者から、生み出した"親"としての微妙な変化が感じ取れたのが印象深い。
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終始「ヴィクトルてっめえ……!」と思いながら読みました。創った人造人間がグロかったから思わず逃亡→戻ったらいなくなってて「やったー!」→と思ったら人造人間に弟殺されて「おのれ……!」ってお前。悲劇の原因って怪物じゃなくて育児放棄じゃねえか!
生理的嫌悪はどうしようもないもんだけど、フランケンシュタイン・コンプレックス(被造物が創造者に逆らう危険性を盲信すること)って言い得て妙だったんだなあ。元ネタだから当たり前だけど、怪物に対するヴィクトルの態度がまんまだ。被造物が邪悪だったから創造者に逆らったネタが多い中で、元ネタであるこれが被造物を邪悪と描いていないのは何だか皮肉だなあ。
解説によると結構著者の生い立ちが反映されている作品だそうで、著者が怪物=生まれながらの悪と書かなかった理由が腑に落ちてスッキリ。そしてやっぱり怪物に感情移入しちゃうからヴィクトルにギリッとなる。ギリッ。
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ヴィクトルの言動にイライラしっぱなしでした。
見た目が奇形なだけで決して怪物なんかじゃなかったのに…
怪物の生い立ちと人生を思うと悲しくてしょうがない。
ヴィクトル、何であんたが悲劇面してんだよ。
勝手に造られてこんな扱い受けてる怪物のが悲劇だよ。
ヴィクトルはちょっと自業自得じゃね?
とか思ってしまった。
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最初は古典特有の心理描写が続いて話が進まず、昔の人の心理なので、共感できるとこも多くなく読みづらいと感じる。途中のエピソードも話の本筋に必要?と思ってしまうが、反対に分かりやすい軟派な文章ばかり読んでいるから、そう感じるのだろうなとも思う。
人造人間が主人公に再会する場面から話に引き込まれ、人造人間の主張に共感し憐れに思う。もっと若い頃に出会ったならば、もっと心に響き感じるところもあったかと思う。
主人公の弱さと身勝手さがよりこの話の悲しさを大きくしている様に感じるが、正義とは人の数だけあるよなとも思う。
話の構成としても面白く、フランケンシュタインとは聞くが、このような話とは知らず(人造人間の名前かと思っていた)読んで良かったと思う一冊。
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フランケンシュタインとは造られた存在の名前そのものではなく造り出した人間の名前なのだということを知る人はいったいどれだけいるのでしょう。
誰も彼もが知っているであろうゴシック・ホラーのひとつ。
ブックオフで三百円で購入しました。
心情が幾分冗長ではあれども中盤から後半にかけての怒濤の展開には目を見はるものがあり、生きているうちに一度は読んでおいたほうがいい一作です。
作者は女性なのですが、この≪フランケンシュタイン≫は彼女の子供の一人とも言えよう、という解説を見て納得。
生まれいでた存在は怪物のような存在だと語られるけれども、イコール悪ではなく、その生い立ち(というか遍歴というか)いかんなのだと。
性善説か性悪説か、ですね。
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(2015.02.28読了)(2015.02.18購入)
Eテレの「100分de名著」に取り上げられたので、読んでみることにしました。
1818年3月11日に初版が刊行された本ということですので、200年前の本ということになります。
この文庫本は、1953年(昭和28年)が初版ですが、思った以上に読みやすかった。
「まえがき」と「結び」は、ロバート・ウォルトンから姉に宛てた手紙になっています。北極海を通る航路を探そうとしているようです。
1776年から1780年にかけて、先日読んだ、「キャプテン・クック」が太平洋と大西洋を結ぶ北方航路を探検する航海を行っていますので、それにヒントを得て書かれたものでしょう。手紙の日付が一七××年になっていますので。
ウォルトンの航海の途中で出会った男が、フランケンシュタインでした。
第一章からは、フランケンシュタインが、ウォルトンに語った話という形になっています。
フランケンシュタインは、ジュネーヴ人とのことです。父は、ジュネーヴ共和国の公職を長いこと務めた後、妻と二人で、イタリア、ドイツ、フランスなどを漫遊していた。
フランケンシュタインは、ナポリで生まれた。
フランケンシュタインは、いろいろ学んだ後に、人造人間を作ってしまう。フランケンシュタインは、失敗作と思ったが、人造人間は、自分で学習しながら言葉を覚え、生き続ける。体が巨大で、顔が見にくかったために、人間に近づくと攻撃されてしまう。
人造人間は、悩んだ末に、フランケンシュタインに人造人間の相手をしてくれる女形の人造人間を作ってくれるように依頼する。そうすれば、人間社会とは別のところで、生きることができるということなので、フランケンシュタインは、一旦は了承する。
女形の人造人間が完成間近なところで、女形の人造人間が男型の人造人間とうまくやっていけるかどうかが不確かであると、思い、断念してしまう。
人造人間との約束を破ったために、フランケンシュタインは、親友や花嫁を殺されてしまう。フランケンシュタインは、自分の作った人造人間を何としても処分してしまわない限り自分は死ねないと、北極海で、人造人間を探しているところだった。
というお話です。
予想していたのと、全然違う内容で、かなりおもしろく読めました。ところどころに、版画の様な挿絵が挿入されており、こちらも楽しめました。原作に入れられていたものでしょうか? 解説では触れられていないのが残念です。
海外小説をお好きな方には、お勧めです。
【目次】
まえがき―ウォルトンの手紙
一 フランケンシュタインの生立ち
二 愛人と親友
三 学問の町
四 生命の創造
五 造られた巨人
六 エリザベートの手紙
七 最初の犠牲
八 冤罪のジュスティヌ
九 造り主の悩み
一〇 巨人との対決
一一 巨人の身の上話
一二 悲嘆に沈む一家
一三 人間に学ぶ
一四 サフィの身の上
一五 しるにつれて募る悩み
一六 創造者をたずねて
一七 女の怪物を造る約束
一八 研究のためイギリスへ
一九 二度目の創造
二〇 創造を中止して
二一 殺害の嫌疑
二二 故郷に帰って
二三 結婚の夜
二四 追跡
結び―ウォルトンの手紙(続き)
解説 山本政喜
ヴィクトル・フランケンシュタイン
ウイリヤム
エリザベート・ラヴェンザ ミラノの貴族の娘
アルフォンス・フランケンシュタイン ヴィクトルの父
カロリーヌ・ポーフォール ヴィクトルの母
アンリ・クレルヴァル ヴィクトルの親友
ジュスティヌ・モリッツ フランケンシュタイン家の召使い
アガータ 妹
フェリックス 兄
老人 盲人、ギター
サフィ アラビア人
●人間社会の体制(134頁)
フェリックスがアラビア人に教えることを聞いていると、人間社会の奇妙な体制が私にわかってきた。わたしは、財産の分配のこと、莫大な富と浅ましい貧乏のこと、賤しい血統と中位の高貴な血統のことを聞いた。
●拾いもの(143頁)
幸いその書物は私が学んだ言葉で書いてあった。それは『失楽園』と『プルタークの伝記』と『ウェルテルの悲しみ』だった。
●私は誰だ(144頁)
私の頭はできあがっていなかった。私には頼る者もなく、縁続きの者もなかった。『私の死の道は自由であった』そして私の抹殺を嘆く者は一人もいなかった。私の体は醜悪で、身の丈は巨人なみだった。これはいったい何を意味するのか? 私は誰だ? 私は何者だ? どこから私は来たのか? 私の行く先はどこだ? こういう疑問が始終起きたが、それをとくことはできなかった。
●怪物の望み(148頁)
この人たちを見ていればいるほど、その保護と親切を受けたいという私の願望がますます強くなり、この人たちに知られ愛されることを望み、この人たちに愛情をこめた目で見られることが私の野心の極限となり、軽侮し恐怖して面をそむけられることはあるまいと考えた。この家の戸口に立った貧乏人で、何もくれずに追い払われたものはないのだから。私はわずかな食べ物や休息よりは大きな宝を求め、親切と同情を要求したいのであるが、全然その資格がなくはないと信じた。
●女の怪物(190頁)
今また同じものを造ろうとしているのであって、その気性がどういうものになるか、前の場合と同じようにわからないでいるのであった。それはその相棒より一万倍も悪いものになるかもしれず、殺人や悪事をそれ自身のために喜ぶかも知れなかった。
●恐怖(232頁)
ウィリヤムの死、ジュスティヌの処刑、クレルヴィルの殺害、そして最後に私の妻の殺害。しかもその瞬間にも、ただ二人だけ残っている私の身内も悪鬼の悪意から安全ではないことがわかっていた。
(2015年3月2日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
若く才能あふれる科学者フランケンシュタインは、死者を甦らせることに情熱をそそぐ。しかしその結果、生み出されたものは世にも恐ろしい怪物であった。その怪物は自らの孤独と悲しみから創造者フランケンの愛する家族を次々と襲ってしまう…愛する者を怪物から守ろうとする若者の苦悩と正義、醜く造られてしまった者の不条理な孤独と絶望の運命を描いた、壮大なゴシック・ロマン。
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この本は、人並以上の知性、情動、身体能力を持ちながら、その醜さゆえに人々に恐れられながら暮らしていた
怪物の話です。
怪物は、人間のように悩んだり、葛藤したりして、過ごしている。また、自らの存在に苦悶する孤独な状況下で生活をしている。
ちなみに、フランケンシュタインは怪物の名前ではなくて、科学者の名前です。