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まほろばの疾風
著者 熊谷達也
時は八世紀末。東北には、大和朝廷に服従しない誇り高い人々がいた。かれら蝦夷は農耕のために土地に縛られるのではなく、森の恵みを受け大自然と共生しながら自由に暮らしていた。だ...
まほろばの疾風
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まほろばの疾風 (集英社文庫)
商品説明
時は八世紀末。東北には、大和朝廷に服従しない誇り高い人々がいた。かれら蝦夷は農耕のために土地に縛られるのではなく、森の恵みを受け大自然と共生しながら自由に暮らしていた。だが、その平和も大和軍の侵攻によって破られる。そして、一人の男が蝦夷の独立を賭け、強大な侵略者に敢然と戦いを挑んだ。彼の名はアテルイ。北の森を疾風のように駆け抜けた英雄の生涯を描く壮大な叙事詩。
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紙の本
『荒蝦夷』と対となる呰麻呂、阿弖流為を描く秀作
2008/02/17 23:06
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、熊谷達也が描く朝廷と蝦夷の戦いを描いたもので、『荒蝦夷』と対をなす作品である。『荒蝦夷』より前に書かれたものであるが、その設定は似通っている。描かれているのは平安時代初頭の伊治公呰麻呂(本書ではアザマロという)の乱から阿弖流為(本書ではアテルイという)と坂上田村麻呂との戦いまでである。
『荒蝦夷』では、呰麻呂が主人公であったが、こちらは阿弖流為である。阿弖流為のパートナーというべき母礼等(本書ではモレという)は同じく女性である。ほぼ同じ話を主人公を代えて表現するのはなかなかの面白い試みである。ストーリー自体はすでに読者に悟られている。立場が代わった主人公の何に着目するのか、戦いの詳細をどのように描くのか、全体のストーリーをどこまで一本化するのか、などポイントとなる点はいつくかあるだろう。
歴史上、呰麻呂の乱後の呰麻呂の動向はよく分かっていない。表面的には引っ込んでしまったかのように呰麻呂の名前は史上には出てこない。ところが、それから二十数年後に阿弖流為が坂上田村麻呂という朝廷側の征夷大将軍と戦うことになる。その結果、阿弖流為は母礼等とともに投降し、都へ引き回されることになる。
これらの歴史上の出来事との間は隙間だらけである。さらに、田村麻呂と阿弖流為の戦いは如何なるものであったのかもよく分かっていない。史料が欠けているのである。そうすると、後は作家の想像力の勝負となる。たとえば、本書では呰麻呂と阿弖流為とは親子になっている。これも一つのアイデアであろう。
高橋克彦は『風の陣』で朝廷側から見た蝦夷との戦いを描いている。そこではもう一つの蝦夷のグループである牡鹿嶋足の都での活躍を中心に描いている。これは当時の政治の世界に焦点を当てている。
前九年、後三年で死闘を繰り広げた蝦夷対朝廷の戦いは、そのはるか以前から歴史があった。本書はこれまであまり光の当たらなかった阿弖流為、呰麻呂を中心とした蝦夷の内部を小説仕立てにしたもので、対の『荒蝦夷』とともに楽しめる作品で、比較して読むのも面白い。