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連合国から見るイタリアの立場は日本に似ている?
2016/10/09 05:31
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
引き続き、『カルニヴィア』三部作の2作目。
でも、最初に1作目が(早川書房としては)大々的に宣伝されたときに受けた印象は、もっとドロドロとしたサイコスリラー的なものだったけれど、実際はヨーロッパの歴史の闇の深さとか、そういうものだったとは。 権謀術数は、日本人の不得意とするところですなぁ、としみじみする。
今回はイタリア国内にアメリカ軍の基地をこれ以上拡大しない・させないという運動をするいさかか過激なグループが出てきます。 まるで、この国のようではないですか。
反対運動が巻き起こるイタリア駐留米軍基地の建設現場で年代物の人骨が発見される。 鑑定結果によれば、第二次大戦中に行方不明とされたパルチザンのものと判明。 一方、米軍士官の娘・ミアが誘拐され、犯人は基地建設反対を訴えながらオレンジ色のジャンプスーツを着せられたミアをグアンタナモ刑務所でおこなわれた“アメリカの法律では拷問と見なされない拷問”にかけ、ネット上で公開する。
前作で仲間意識が強まったイタリア憲兵隊のカテリーナとアメリカ軍人のホリーは、特殊なSNS“カルニヴィア”の創設者ダニエーレにまた協力を要請し、ミアの一刻も早い発見に努めようとするが・・・という話。
相変わらずリアル一辺倒ではなく、かなり荒唐無稽が入っています。 でも扱うテーマが重たいから、これくらいがいいバランスなのかも。 他者に心を閉ざしまくるダニエーレが、ホリーに出会ってからちょっとずつ変わっていこうとしていくのも微笑ましいポイント。 更に、カテリーナのイタリア女ぶりも自覚のない無神経な方向に広がっていて面白い。
正直なところ、「グアンタナモの件はまだ片付いていない」ということにびっくりする。
あれから何年たっているんですか!
けれどそれがヨーロッパとアメリカの関係や、共産主義と資本主義の対立(イタリアもかつては独裁国家だったわけで、その前は別々の国だった)、キリスト教圏とイスラム教圏の(日本人にはいささか理解が難しい)複雑で絡み合った問題に、読んでいて眩暈がするほど。 こういうとき、「日本が島国でよかった!」とか、「国境があるとはいえ所詮口約束で引いただけの線。 地つづきのところは大変」とか、中学校の歴史の時間に思ったことが今も頭をよぎる(勿論、日本には日本の大変さもあるのですが、ヨーロッパの血ぬられ具合に比べればまだましなんじゃないかと)。【2015年4月読了】
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のっけから、一体ふたりに何があったのかとドキドキしながら読み進め。まぁ理由は普通ですが。
2巻の方が好きかもです(おそらく恋愛絡みがなかったから…)。
そして女性登場人物のお洒落する描写が好き。
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今回も、過去の大戦に端を発した話となっているが、ページの大部分を拷問シーンが占めている。これが結構くどい。全体像から見ると誘拐事件は重要だけれども、拷問シーンにあれだけのページを割くのってどうなの? と思ってしまう。
歴史的事実をベースにした構成だが、あちこちに飛び火していくので、若干混乱したような。作中の、“真実はロシア人形のマトリョーシカ”という表現が一言で言い表している。複雑に入り組んだ展開だが、アプローチが冗長で、ラスト80頁ほどでバタバタ解決していくのがちょっと残念。事件とは無関係の、キャラクター同士の距離感の変化なんかが興味深く読めたので、次回に向けての収穫はこっちかな。
黒幕がくず野郎なので、立腹して読了した形になったが、よくよく考えればひどい話である。イタリアとアメリカの関係はよくわからないが、素人目で見るとアメリカの思惑に巻き込まれた格好のイタリアが気の毒に思える。お互いよかれと思って信念で行動してるんだけど、そのやり方が問題よね。こういうのも「いっちょかみ」って言うのかな。
第二部では完全に利用されただけのカルニヴィア。最終作ではもっと前面に出てくれることを期待します。
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ヴェネチアをサイバー空間に再現したサイト、カルニヴィアと現実のヴェネチアを舞台に、天才ハッカー、女性警官、女性米軍士官の3人が国際的な陰謀に巻き込まれる。
こんな設定の3部作、カルニヴィアシリーズも本書で2作目。
何分、前作を読んだのが約1年前と言う事もあり、既にその内容はほぼ綺麗に忘れ去っておりますが、折角なので本書を読んでみました。
このシリーズ、カルニヴィアの絶対的ともいえる匿名性が世界各国の様々な立場の人間を引き寄せ、そしてヴェネチアを舞台とする陰謀が展開されるといった構図を持っているらしく、本作もその例外ではありません。
ストーリーは、米軍指揮官の娘の誘拐事件を中心に展開し、テロとの戦いの暗部、第2次世界大戦前後から続くヴァチカンとCIAとの関係等、過去と現在が入り乱れたスケールの大きな物となっています。
最後は、突拍子もないと思うと同時にあるいは有り得るのか?とも感じさせてくれる終わり方となっており、この点、(前作でも思いましたが)大いなるB級小説の面目躍如といった所でしょうか。
娯楽小説にガッツきたい感じの時にお勧めです。
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『カルニヴィア』三部作の二作目。紛らわしいので、原題どおりの出版を望みたいのだが、何故か邦題では予定でしかない三部作を一作目から歌うから、大作の続きもののように勘違いしそうだ。でも一作一作は独立した長編小説であり、原題では数字も<カルニヴィア>という文字も振っていない。誤解されやすい翻訳はご遠慮願いたいものだが。ましてや、せっかくの見事な作品の出来栄えを見ると余計に老婆心が疼きそうだ。
とは言え、物語は独立してはいるものの、主人公たち四人の男女関係は微妙に変化しているので、できれば順序よく読んでもらいたい。つまりどんなシリーズ小説だって同断。順序よく独立した物語を紡いでもらったほうが楽しめるのは当たり前の話だ。
というわけで、二作目のラストで、ヒロインの一人憲兵隊大尉カテリーナが上司ピカーロと不倫の関係にピリオドを打つシーンが印象的であったが、その後の二人の距離感は本書ではさらに意味深なものとなる。捜査にまで影響を及ぼしそうになるのは、人間、男と女、そうした捜査官の属性として欠かせないものとしてストーリーのおかずにはなっても邪魔にはならぬだろう、といったところか。
一方、俄然進展を見せるのが、いわゆる引きこもりの典型であるダニエーレ・バルボに芽生える外界との交流の兆しである。とりわけ米軍少尉ホリーとの仲に注目である。なるほど物語のサブストーリーとしてはこちらも見逃せない楽しみであろうか。
さてメインのストーリー及び題材である。一作目はボスニア紛争とNATOの思惑といったところに国際政治の、今や昔懐かしい謀略、諜報戦といった大きなテーマを扱って世界に話題を読んだこのシリーズであるが、二作目の本書では、米軍のアフガニスタン侵攻に題材を取り、世界でも報道された米軍側の捕虜虐待の有名な映像をモチーフに、反米イタリア活動家によるネットでのアジテーション活動を狙った少女誘拐事件を扱っている。
ネットとはまさにダニエーレの創成した<カルニヴィア>というベネツィアそっくりの仮想都市であり、検閲不能な匿名メッセージを可能とする電子世界である。しかし誘拐は実際に起こり、その狙いは米軍基地反対活動家たちによる、米軍の拉致拷問批判の広報活動のようにも思える。しかし、国際謀略世界はそんな単純なものでは終わらない。裏には裏が。糸を引く者を操るさらに謀略家の気配。
前作に続いて仕組まれた事件であり仕組まれたシナリオであるその闇の奥に、四人のヒーロー&ヒロインたちは辿り着くことができるのか、といったところがこの大作の読みどころ、解きどころなのである。
今の時代に、あの時代を振り返る小説として貴重であり、最新現代史を読み解く歴史的事実を食材にした激辛グルメのようなこってり味のプロットである。消化しにくいほどの大量な具材は、紛れもなく北イタリアにかつて投下された爆薬たちの火薬の匂いに満ちており、危険である。驚愕の事実がたっぷり詰め込めれた歴史ミステリーとしても興味深い、大スケールの二作目に舌鼓を打った読者ならば、是非とも三作目の大団円を、共に期待してみようではないか。
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二巻目。
あとがきにもあったけれどもこの作者はCIAとアメリカ軍に何か思う所があるのだろうか?確かに今の中東対策にもNATOの空爆もどうなの?と思ったけれども。というか自分があまりこだわらなさすぎるのか。
という訳でやっぱりカタリーナと大尉は良いコンビだ。不倫しなければよかったねえ。そしてホリーは今回大変な目に。彼女は軍隊に居続けるんだろうか… 難しいだろうなあ…。今回は誘拐という事で中々にツライ話でした。続きも…気になるからそのうち読もうかな。
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2015 10 面白い!ただ海外小説にありがちな監禁モノ。どうして海外は監禁モノが多いのかな。それにしても女性をくどくにしてもこんなにストレートなのか?欧米は
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だいぶ時間が経ちつつの2作目。
ギルロイはどこまで黒幕なんだと思いつつ生々しいキャラクターの生きている姿、
それが小説の中だからこそカルニヴィアに見えてくる。
実際に起きている事件がその下敷きに幾重にも積み重ねられている。
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イタリアが舞台の、濃~い国際謀略ものアクション・ミステリ。
三部作の二作目です☆
1作目で知り合った憲兵隊の女性大尉カテリーナ。
駐留米軍の少尉ホリーという二人の女性。
くわえて、SNS「カルニヴィア」の創始者ダニエーレ・バルボが再び活躍します。
米軍少佐の娘ミアが誘拐される事件が発生。
憲兵隊の大尉カテリーナは、前作で起きた問題で隊のなかで孤立していましたが、この捜査に加わることに。
ホリーもまた、少佐の家に急行。
軍人の家庭によくある、厳しい仕付けを受けて育った様子に気がつくホリー。
ミアが誘拐されたことに、カルニヴィアでの連絡が関係しているかもしれないと、協力を求められたダニエーレ。
カルニヴィアは、ヴェネツィアを模したネット上の架空都市。
完全に匿名で参加できることに価値があるのだが、自分は匿名で実在人物についてあることないこと書き込めるという点もあったり。
アメリカがいまだに行っている拷問方法に対する報復として、拷問される様子が公開される事態に。
はたして、その目的は抗議のためだけなのか?
一方、米軍基地の建設現場で、古い遺骨が発掘される。
アメリカがかってイタリアの政治体制に深く介入した過去が、しだいに明らかになっていく‥
軍人家庭に育ったホリーにとっては、自らの問題に絡んできます。
アメリカがそこまでひどいことを‥いや、やりかねない?
どこまでが公然の事実で、どこまでが推測、どこからが創作なのか。
男性作家なのにここまで女性を活躍させ、告発的な内容を含む作風は高評価できますが。
ちょっと、酷い目に遭い過ぎる‥
イタリアらしい美味しい食べ物や、ちょっとしたお洒落の話なども。
カテリーナの上司も含めた主要人物の関係性のややこしい変化が興味をそそり、とくに孤独なダニエーレとホリーの心の通い合いは、惹かれるものがあります。
読み応えは十分です。
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カルニヴィアカルニヴィア禁忌1
2014年1月19日に記事をアップしてた作品を含めて
カルニヴィア3部作の2番目作品。2014年9月刊行。
イタリア駐留米軍基地の建設現場で発見された人骨は
第二次世界大戦終了間際、
謎の失踪を遂げたパルチザンのものだった。
同じころ、米軍少佐の娘が誘拐される事件が起こる。
別々の事件と思われたが、実は背景が繋がりがあった。
犯人は米軍基地反対派と思われていた。
オバマ大統領がなくすと公言しながらも
事実は決して無くなっていず、
単に世界に散らばっているだけの収容所。
米軍が作った残酷尋問方法と同じやり方でいたぶり
その動画を拡散する。その意味は?
第二次世界大戦後のイタリアを共産主義が定着することを
嫌った米軍と時のカトリック教会の利害が一致し、
パルチザンに協力しながら最後で裏切った史実。
戦後強大な力を持った企業の成り立ちと米軍の秘密。
今回のこの作品も、事実を多く盛り込んで、
古い事件が、今の時代にもつながり、
気がつかないだけの其処にある絶望を浮かび上がらせている。
最後まで息もつかせず読ませてしまう筆力はさすが!
一気に読んでしまった一冊。
3部作目も楽しみ。
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トランプ大統領の治世なら、本作の事件の首謀者もお咎めなしで済まされそうな気がする。何が悪いのって感じで。グアンタナモの再開もありそうだ。ホリーとカタリーナの性生活の描写の違いはやはりキャラの違いによるのか。ホリーは本当に同性愛なの?
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ヴェネチアを舞台にしたミステリーです。題名の''ガルヴィニア''とはヴェネチアをnetの世界に展開しアバターで仮想ヴェネチアの世界を遊ぶシステムです。このシステムの創設者は主人公でイタリア憲兵隊刑事のカテリーナ・ターポの友人でカテリーナ自身も仮想空間にはまっている1人。
本作は、シーズン2作目で現在は3作目が刊行されてます。今回は、ヴェネチアの近郊の西イタリア本土の米軍基地で第二次世界大戦中の兵士の白骨が見つかった事に加え米軍基地少佐リチャード・エルストンの娘ミアが誘拐される事件が同時に発生する。
私は、ヴェネチア大好きで過去に3度訪れていますが、ストーリーを読み進めると狭いごちゃごちゃした水の街の情景が浮かんできます。
ミアは、誘拐犯によってカルヴィニアで公開拷問され続ける。憲兵のターポと米軍のホリーは誘拐事件の背景を探るが、背景には西側諸国の軍事覇権国アメリカの歪みが見えて来る。
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カルニヴィアの2作目。
ゲーテ曰く、
光の多いところには、強い影がある。
ヴェネツィアの華やかさに酔いしれた前作に比べると、
今回はかなり暗く、読み難い話だった。
駐在米軍の少佐の16才の娘が誘拐され、
拷問されている映像が配信される。
その場面が延々と続くので、かなりひどい。
少女が誘拐犯と精神的に闘う姿は印象的だったが。
しかも二人の主人公のうち、ホリーも拷問されるし、
事件の発端となった建設現場から発見された人骨との関係が薄いし、
人骨を調べていた考古学者二人が殺されるのが突然すぎるし、
教皇や秘密結社まで出してきた割には肩透かしだったし。
カテリーナが別れた不倫相手の上官とまた捜査をしていたのも、
ホリーとダニエーレが最後で別れてしまったのも、
気に入らなかったのかもしれない。
前作の最後で、同居することになったホリーとカテリーナが、
喧嘩別れしたきっかけがフライパンを洗ったことなのは、
食の大国、イタリアらしかった。