紙の本
大人になったがゆえに過去の恋の切なさが、胸にせまる
2010/09/27 21:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
花師で絵画修復師の佐月の物語。
*虚栄の肖像
*葡萄と乳房
*秘画師異聞
かつての恋人の出現で、佐月の過去が垣間見えるのだが、それは、彼と彼の父親との確執の物語を示していて…でも、それが語られることはもうない。
北森氏の急逝を悼むばかりだ。
花も、絵も儚い。
佐月は、それらにかりそめの命を与えている。かりそめしか、与えられない。
だから、恋人は彼にあのような形でしか思いを届けられなかったのかもしれない。
それは大人ゆえの選択だったのだろう。
大人であることが、切ない物語だった。
紙の本
このシリーズをもっと読みたかった・・・
2011/01/10 20:25
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆこりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐月恭壱が引き受けた絵画修復の報酬は、古備前の銘品中の
銘品の甕だった。「絵画修復の報酬にしては額が大きすぎる。」
恭壱は違和感を覚える。実は、この裏には巧妙な罠が潜んでいた・・・。
表題作「虚栄の肖像」を含む3編を収録。「深淵のガランス」に
続く、佐月恭壱シリーズ2作目。
今回も、絵画修復という未知の世界を垣間見ることができ、とても
興味深かった。その難しさ、繊細さには驚かされる。また、この作品を
支えている作者の知識量の多さにも、ただただ驚くばかりだ。絵画
修復に関わる謎も、本当によく考えられていると思う。さまざまな
要素がほどよく混ざり合い、この作品を味わいのあるものにしている。
表題作「虚栄の肖像」に出てくる古備前の甕や、ピカソの絵に仕掛け
られた罠などは、読んでいて本当に面白かった。シリーズが進むに
つれてさらに見えてくるであろう佐月恭壱の人間像、そして、彼や彼と
関わりのある人たちの今後など、このシリーズに期待するものがたくさん
あった。作者の急逝で断ち切られてしまったのは、本当に残念だ。
早すぎる死が惜しまれてならない。
紙の本
北森鴻に捧ぐ、友人愛川晶の解説。
2010/10/12 21:46
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は単行本で読んだので(持っているので)、文庫を購入するつもりはなかった。しかし、書店の新刊コーナーで平積みされているのを見たら、手に取らずにはいられなかった。表紙を開いて一枚捲ったところにある目次――そこで目に飛び込んできたのは「解説・愛川 晶」という文字の羅列。わたしはすぐさま解説のページを開いた。
愛川さんは、北森作品ではお馴染みの解説担当者。北森さんと仲が良くて、北森さんとのプライベートなお話を書いてくださるので、愛川さんの解説を楽しみにしている北森ファンも少なくはない。そしてわたしもそんな一人。
本書の解説で愛川さんはまず、今年1月の北森さんの急逝に言及している。その上で、もう続きを読むことができなくなった本書のことを、そして生前の北森さんとの思い出を、続けている。その文章から、愛川さんと北森さんの「大人の友情」みたいなものが伝わってきて、書店にいるにもかかわらず泣きそうになった。
北森さんが亡くなったからといって正直、わたしの生活に何の支障もない。会ったこともないひとだし、作品の続きが読めなくなったからといって、生活に直結はしない。だけれども…泣きそうになってしまったのだ。
あぁ、やっぱりもっと読みたかったよ、北森さん。愛川さんの解説で知ったのだけれど、那智先生も恭さんも続きを連載、あるいは構想中だったのでしょう。本当に。もっと、もっともっと、読みたかったんですよ。。。
あーあ。なんだかしんみししちゃう。
でも、愛川さんのあとがきは読む価値があると思うのです。
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冬狐堂シリーズと同じように絵画の世界の裏表を興味深く読ませてくれる。
キャラの世界が出てきてこれから面白くなりそうなのに・・・
著者の急逝が悔やまれる。
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花師で絵画修復師の佐月の物語。
*虚栄の肖像
*葡萄と乳房
*秘画師異聞
かつての恋人の出現で、佐月の過去が垣間見えるのだが、それは、彼と彼の父親との確執の物語を示していて…でも、それが語られることはもうない。
北森氏の急逝を悼むばかりだ。
花も、絵も儚い。
佐月は、それらにかりそめの命を与えている。かりそめしか、与えられない。
だから、恋人は彼にあのような形でしか思いを届けられなかったのかもしれない。
それは大人ゆえの選択だったのだろう。
大人であることが、切ない物語だった。
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北森鴻が亡くなって、もう半年以上経つのですね。訃報を耳にしたときは本当にショックでした。大好きだった「香菜里屋シリーズ」ももう読めない。そしてこの「佐月恭壱シリーズ」は「旗師・冬狐堂シリーズ」と同じ世界で展開される(ということは「民俗学者・蓮丈那智シリーズ」とも同じということ)、花師と絵画修復師の物語で、これも続きが気になるところなのにもう読めないのですね。
修復師の物語というと、藤田宜永の『壁画修復師』や、篠田節子の『贋作師』、細野不二彦の漫画『ギャラリーフェイク』などを思い出しますが、職業そのものが不思議な雰囲気をまとっていて心引かれる感じがします。まして、この本は主人公は花師(花屋や華道家ではない)でもあり、修復の依頼を持ち込むのは「旗師・冬狐堂シリーズ」でおなじみの宇佐見陶子なわけです。佐月恭壱が肉体的には普通の人であることもポイントです。(変にアクションが持ち込まれると気持ちが萎えちゃうときがあるので。)佐月と父の葛藤や、佐月の相棒・前畑善次朗の過去も知りたかった。本当に残念です。
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花師&絵画修復師の佐月恭壱シリーズの短編集。今回は恭壱のかつての恋人が深く関わってくる。久しぶりに読んだ大人による大人のためのミステリーという感じ。登場人物たちそれぞれの思惑が絡み合い謎が深まっていく。冬狐堂がよりトラブルを大きくしていくところが好きです。北森作品はどのシリーズも大好きなので、もう読めないと思うと、本当に残念…。今までの作品を読み返します。
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2010/11/22読了。
花師と絵画修復師、2つの顔を持つ男・佐月恭壱が携わる絵と、その背景に隠された謎を追う美術ミステリー。
第一作目の『深淵のガランス』ではあまり感じることのできなかった主人公・佐月の魅力に参りました。
所謂、謎多き男なのですが、その謎の部分が少しずつ明かされてきていて、どんどん人間くさくなってきています。
つい、今後の活躍が読みたい!と思ってしまいます。......が。作者の北森鴻さんは2010年1月25日に急逝。
本当に、本当に残念だし、とても淋しい。
まだ未読の作品があるので、遺された作品をゆっくり、じっくり読んでいきたいと思います。
そうそう!ネタバレになるので詳しくは書きませんが、佐月に仕事(厄介事ともいうかな?)を持ち込む仲介人の正体には驚きました。北森作品のファンにはまさか!の仕掛けです。
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追悼・北森鴻、と銘打って発行された、花師にして絵画修復師・佐月恭壱シリーズの第2弾。
クセのあるキャラクター達にようやく馴染んだかな、と思えたところだったのですが、
もう続編が読めないのが残念です。。。
【収録内容】
・虚栄の肖像
・葡萄と乳房
・秘画師遺聞
<解説>愛川晶
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後書きを読んでびっくりしました。北森さん、亡くなられていたんですね。ショックです。とても断念です。ご冥福をお祈りいたします。
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図書館より。
全体的に、特A級の人間ばっかりでてくる。
一読した印象では、あまりに完璧な人間ばかりが出てくるので、
ストーリイ全体が造り物めいてしまってちょっと感情移入しづらいところがあった。
特に主人公の花師/絵画修復師の佐月恭壱は完全無欠型の探偵なので、
人間的で、悩んだりする探偵が好きな人にはあまり本作は向かないかも。
しかしシリーズが何作かあるなかの本作では、
完全無欠のストイック人間・佐月の若かりし頃の恋人や、その恋人との何十年かぶりでの再会などが描かれ、多分に彼の感情が揺れるところが見られる。なんだかんだ言ってもわたしは佐月に好印象を持っているので、冷たく非人間的な印象すら与える彼が折に触れ若かりしころの熱い恋の日々の思い出を反芻する場面は、切なく、その温かさに反するように孤独を好む彼の現在の胸の裡を推しはかってしまう。
(厳密には、「美術ミステリ」とでもいうのか、
でも作中ですすんで佐月がナゾトキをしたりトリック解明をするわけではないのでミステリとも本当は言い難い気はしている。)
北森さんの文章は、怜悧で艶で、しかし下品でないので好きだ。
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花師と絵画修復師の2つの顔を持つ佐月に不思議な依頼が舞い込む。墓の前の古備前に桜を活けるというもの。その桜を愛でながら繰り広げられる奇妙な花見の宴。その席で、佐月はもう1つの仕事、絵画修復の依頼を受ける。報酬はその古備前だというが……表題作ほか、15年前に別れた恋人と京都の桔梗寺で偶然再会したところから始まる「葡萄と乳房」など、書き下ろしを含め、連作短篇3篇を収録。一度読めば癖になる北森ワールド炸裂の花師・佐月恭壱、今回は、佐月の過去が交錯するシリーズ第2弾です。
第1弾も読みたい{/atten/}というのが、読み終わった感想です
絵画修復、絵画の世界には疎いのだけど、興味深くおもしろく
極上のショート(ミドル?)ミステリー{/hikari_pink/}
いつものように、登場人物も魅力たっぷり
北森鴻さんが亡くなってから知った自分を本当に後悔
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再読3回目。
絵画や骨董の素養がなくても、どっぷり楽しめるのは何故なんでしょう。絵画修復やお酒の種類に詳しくなれたのは、この連作のおかげです。
主人公の過去が少しずつ見えてきて、謎に包まれた周囲の人々の正体も少しずつ明かされてきて、まだまだこれから、というときに。。。
ご冥福をお祈りいたします。
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花師にして絵画修復師の佐月恭壱。どちらの職業にも惹かれる。どちらかというと、絵画修復師の佐月がメインだけど、垣間見える花師の仕事ぶりも素晴らしい。そして、やはり登場するのは、冬の狐♪ 北森作品は、登場人物の交差が魅力でもある。本当に惜しい方を失くした。まだ読み切れていないけど、もっともっと読みたかったと思うシリーズばかり。大切に読んでいきたいと思う。
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絵画修復師という馴染みのない職業が登場するシリーズ。さすがは北森氏という知識と緊張感に満ちた作品です。冬狐堂のキャラクターが、彼女がメインの作品と比べてややアクが強く描かれているのがまた面白い。
このシリーズの続編を二度と読めないと思うと、改めて残念で仕方がないです。