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息をつかせぬ展開。
緻密に組み上げられた謎とその解。
何よりも場面展開の文章手法の素晴しさ。
溜め息しか出ません・・・・・・。
ストーリーは、ある女性に、自分が第二次世界大戦中、ナチスのユダヤ人収容所でユダヤ人と日本人の間に産まれたと知らされた主人公が、権謀術数渦巻くヨーロッパで体験する冒険、といったところ。
映像が頭を離れません・・・・・・というか、文章が映像として記憶されてますw
1988年週刊文春ミステリーベスト一位、そしてこの年から始まったこのミステリーがすごい三位の評価を得た傑作ミステリ、ご堪能くださいw
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時代:20世紀中盤、壁崩壊前
日本で美術教師として暮らしていた主人公は、ある依頼を受け、欧州へ旅立つことになる。
そこで主人公は、自分の出生に関する秘密を突きつけられ…。
日本・パリ・ニューヨーク・リオデジャネイロ、そしてベルリン。
世界の各地で起こる出来事が、やがてひとつの陰謀に収束してゆく様はハラハラさせます。
また、米軍・露軍統治下のベルリンの様子や、壁との関わりなども興味深い。
主人公の出生は、確かに突飛過ぎるきらいはあるけれど、物語が進むにつれ少しずつ与えられるヒントを自分の中で推理するのはまた楽しい。
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ナチ、ネオナチ、反ナチ。
終戦後 40 年経過して、なお人々は翻弄され続ける。
自分には全く知らない出生の秘密があった。
父親はいったい誰なのか・・・。
組織が本当に必要としていたものとは・・・。
日本語の使い方が巧みです。
すごく先が読めちゃうところと、すごく驚かされるところとありました。
そして、ベルリンにもう一度行ってみたいと思いました。
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ベルリンの壁崩壊の前年の作品であり、第一回「このミス」1位。買ったまま未読だったけど、崩壊20周年を契機に本棚から取り出しました。自分の出生の秘密がナチス時代に遡ることを知った主人公。壁に阻まれた東西ベルリン、パリ、リオデジャネイロ、東京、ニューヨークとめまぐるしく変わるシーンと、複雑に入り組んだ背景が見事に収束していきます。
読みながら流れてくるBGMはDavid Bowieのベルリン時代の代表作「ロウ」。壁の存在がもたらした悲劇、ナチスが存在した故の悲劇が、冷たくストーリーの底辺に流れてます。
ナチスのもたらした悲劇という意味では、手塚治虫の「アドルフに告ぐ」も必読。
2009.11
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素性の分からない日本人男性は第二のアンネ・フランクなのか。
それとも第二のヒトラーなのか。
真意を隠されたままベルリンで進められた計画は…
二転三転します。よく練られて繋がっている。
なんだか浅田次郎っぽい。
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「―」だけで万華鏡のように場面が切り替わり幻惑させられる。
東ドイツ、西ドイツ、日本、パリ、現在、過去。
ついうっかりするとめまいがしそうになる。
その裏に潜む国際的な謀略。さて、青木は無事に真実までたどり着けるのか。
エルザと桂子に二分される世界のどちらに所属するべきか、
2人の女性と国とを分かつベルリンの壁の国境線で青木は惑う。
ハードなサスペンス?小説。
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1988年の作品、「このミス」第一回3位です。
この作家さんは最近『戻り川心中』という短編集を読み、その完成度の高さに感服しました。さらに前に直木賞受賞の『恋文』(どちらかというと恋愛モノ)を読んでます。
今作は現代(20年以上前ですが)の東京~パリ~ベルリンと舞台を移し物語が進みます。旧ナチ残党が絡む国際謀略サスペンスと一言で言えないこともないでしょう。
主人公は出生の謎を持っていて、自分の母親を探す旅がついには出生の謎に辿りつく…というのが大筋です、しかしストーリー自体は荒唐無稽というか、「なんじゃそりゃ?」と、突っ込みたくなる出来栄えでした、個人的にですけど…
それでもそれなりに楽しめたのは、男女の感情の機微についての描写、背景、町並み、部屋の中等々、色彩を読者に感じさせる描写、この二つが非常に優れていて読者を魅了するのだと思われます。(解説に書いてある通りに納得です)
既読のモノもそうですが、世界は男と女でできている!的な恋愛感情の交錯がストーリーに絡んできます、エロい描写はないのですが行間にそれを感じさせる書き方が個人的に好むところですし、その風景に色彩が鮮やかに入り込んできます。小説は言うまでもなく文字を読んで、読者が脳内でその世界を構築していくわけですが、その世界に色をつけていく作業がこうもたやすく可能せしむる、のはやはり作家の力量なのでしょう。
旧ナチ残党絡みの小説といえばフレデリック・フォーサイスの『オデッサ・ファイル』が世界的に有名でかなり昔に読みました。主人公が真相に近づくプロセスのドキドキ感、結末の反転と読みごたえ充分でした。
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去年の今頃、とてもバタバタしていたことを思うと、今年は結構余裕あり。少々厚めだけど、息子の本棚にあったこの本でもと。
リオデジャネイロから始まって、そのままニューヨーク、東京、ベルリン、パリへと場面転換の第1章。
混血の日本人画家・青木が見知らぬドイツ人女性・エルザから接触を受ける。
第2次世界大戦下、ナチスドイツのユダヤ人収容所でユダヤ人の父親と日本人の母親の間に生れた赤ん坊が青木だと言われ、青木は平穏な生活から一転、謀略が渦巻くヨーロッパへ…。
ここからは仏独を舞台に、ナチスによるユダヤ人虐殺問題や戦後逃亡したナチ戦犯問題など絡めてどんでん返しのテンコ盛り。どんどん話が膨らんでそんなのアリエネェ〜と思いつつ、ズンズン読ませる。
読み返せばかなりな偶然や強引なミスディレクションもあったりするのだけれど、流れるような精緻な文章で綴られる壮大な物語は、なるほど’88年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位。☆5つでないのは好みの問題と思って下さいな。
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連城さんの小説を手に取ったのは初めてでした。
お話の舞台がドイツやパリで、登場人物も主人公の青木の他はアメリカ人、ドイツ人、ユダヤ人など様々なので、初めは洋書を読んでいるような不思議な感覚でした。
お話は二転三転していくのですが、最後は青木と同様エルザの話す、すべての言葉が信じられなくなるほど私の方も気持ち的に混乱してしまいました。
別れ際、東西の国境線の前で、嘘でも良いから「愛している」と言ってほしいという青木のエルザに対する想いはやはり終わりのないものだと思ったが、それと同時にケイコという名を思い出せる青木の冷静さ、残酷さは、青木の中にあの男の血を感じさせるものがあった。
非常に面白かったので、ほかの連城さんの作品も読んでみたいなと思いました。
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個人的には連城三紀彦の「恋文」が大好き。しかし、これは、すごい。
画家、青木の出生の秘密。東西ドイツ、ナチスの強制収容所、ユダヤ人と物語は広がっていく。
人間の思想の怖さを感じた。
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冷戦時のベルリンの壁を舞台とした国際謀略小説というところでしょうか。いくつかのエピソードが除々にひとつに収斂していタイプの作品です。突拍子のない物語なのですが、単なる絵空事に終わらなせないところが良いですね。
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「黄昏のベルリン」連城三紀彦◆画家・青木はある日、突然エルザと名乗る女から、自分がナチスの強制収容所で生まれ生き残った子供だと告げられる。彼は出生の秘密を探るためにドイツへと向かうがー。陰謀が渦巻き、くるんと景色が反転して真相が明らかになった時に見えるのは正気か、それとも狂気か。
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2014.8.3ー55
ナチスによるユダヤ人虐殺から戦後のネオナチにより謀略と題材が興味深いものの、相変わらずの恋愛上の裏切りの二転三転は少々シツコく鬱陶しい。
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冒険小説、国際謀略小説の名作との誉が高いがいかがだろうか。
流石に30年以上前の作品なので、ベルリンの壁も健在で古さは拭えないが、昨今の世界的な右傾化を見ていると全くリアリティがないわけではない。
ロシアのウクライナ侵攻でも、ロシアがウクライナをネオナチ呼ばわりしている事(とんでもない錯誤と言うか言いがかりだと思うが)をとっても、ヨーロッパの人々にとっては今もリアリティがあるのだろう。
典型的な巻き込まれ方のストーリーで話は進むが、お話そのものは派手なアクションがあるわけでもなく淡々と進んでいく。大風呂敷を広げた割にはエンディングは尻すぼみの感がある。
大風呂敷を広げたついでに行くとこまで行った方が面白い物語になったかもしれない。
やはりこの手のお話は外国の作家さんの方が一日の長がある気がする。
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壮大さに精密さ、緻密さを織り交ぜた傑作。読み終わった後、すごいものを読んだという興奮から抜け出せない。連城三紀彦という作家はこんなものまで書けるのかと畏怖の念まで覚えた。
行ったことのないベルリン、パリの街を主人公とともに駆け抜けたような感覚。東西冷戦時代のヨーロッパのことがすんなりと頭に入りずっと物語に入り込むことができた。
壮大な物語を作るため練りこまれ、洗練された緻密な伏線の数々には短編の名手でもある連城のものすごい技量を感じた。短編、長編の両方でここまでのレベルの作品を書けるのはおそらく連城しかいない。
亡くなってしまった後に知った作家だが、できることならリアルタイムでこの作家の作品を追い続けてみたかった。