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電子書籍
ポプラの秋(新潮文庫)
著者 湯本香樹実
父が急死した夏、母は幼い私を連れて知らない町をあてもなく歩いた。やがて大きなポプラの木のあるアパートを見つけ、引っ越すことにした。こわそうな大家のおばあさんと少しずつ親し...
ポプラの秋(新潮文庫)
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ポプラの秋 改版 (新潮文庫)
商品説明
父が急死した夏、母は幼い私を連れて知らない町をあてもなく歩いた。やがて大きなポプラの木のあるアパートを見つけ、引っ越すことにした。こわそうな大家のおばあさんと少しずつ親しくなると、おばあさんは私に不思議な秘密を話してくれた──。大人になった私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに蘇る。『夏の庭』の著者による、あたたかな再生の物語。
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紙の本
大人の都合、子供の都合
2010/04/05 18:16
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
もうじき7歳の子供とお母さんが引っ越したアパートで、大家さんのおばあさんや、アパートの住人と過ごした歳月の話が、子供の視点からつづられます。読んでいるわたしは大人ですので、子供の視点と、大人の視点の両方からその状況をみることになり、隣の住人の息子さんが、再婚したお母さんに生まれた赤ちゃんが亡くなったことで、お父さんと住めなくなったという手紙を読んだ主人公が、大人の身勝手さを恨めしく思ったとき、本当に切なくなりました。最後に、お母さんの手紙から、ある真相がわかって、いろいろなぎこちなさがどうして起きたのか、つじつまが合います。お母さんが選択したように、時間が必要だったのか、それとも、二人で現実を受け止めて(7歳のときは無理でも、せめて成人した頃から)支えながら生きるべきだったのか、わたしに判断することはできませんが、第三者のわたしは、今、両者の都合や気持ちを理解できそうですが、彼らにとっての長いつらい年月を思うと、読みながらたくさん涙がでました。
涙の理由は、もうひとつあったかもしれません。大好きな明治生まれの祖母を思い出しました。大家さんと、存在感の大きさとか、人と人をつなげている力が似ています。今は空き家になった家に、祖父母、両親、姉の6人家族で住んでいた頃を思い出すと、とても懐かしく、またさみしくなります。
テーマは普遍的ですが、昭和の匂いのするお話、わたしは入り込んで読めました。今の若い人たちは、どのように感じながら読むのでしょうか。
紙の本
心模様があやしい方はすぐに『ポプラの秋』を処方してください
2001/11/14 11:51
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おばあちゃんがいい味を出す小説が好きだ。久世光彦『卑弥呼』のばあちゃんもなかなかのものだったが、本書『ポプラの秋』に登場するばあちゃんも負けてはいない。上の歯が全部抜けて下の歯は3本だけなのでポパイのような顔をしていて、よそいき用に入れ歯を入れると人相が変わってしまうばあちゃん。愛想は悪いし口も悪い、子供は嫌いと三拍子も四拍子もそろった筋金入りだ。
このばあちゃんと、お父さんを亡くしたばかりの6歳の女の子の関係を描いた物語。キーワードは手紙。女の子はせっせとお父さんに宛てた手紙を書き続ける。「手紙というのはやはり、郵便屋にしろ、海に浮かぶ瓶にしろ、何かに運ばれて行ってこそ、書いた者の心がほんとうに解き放たれるもの」と考えるばあちゃんは、死んだ人にも手紙が届く方法を女の子に伝授したようだ。
ばあちゃんは、白衣など着ていないし、もちろん看板も出していないけれどピカイチのカウンセラーだ。女の子の心は徐々に解き放たれていく。女の子だけじゃない、近所の人達のセラピーも引き受けている。お代もしっかり受け取ります。この辺はばあちゃんのこと、ぬかりはない。
『ポプラの秋』を読んだ人の心模様は、「大笑い時々しみる!」でしょう。なかなかに良い心模様のようでございます。
紙の本
切なくあたたかい
2002/07/30 20:13
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずね - この投稿者のレビュー一覧を見る
父親を事故で失った私の現在と7才の頃の回想のお話です。母と2人で住んでいた「ポプラ荘」 そこの住人と大家のおばあさん達と私は親しくなっていきます。大家のおばあさんは、見た目が怖くて最初はびくびくしていたのですが、次第に打ち解けてゆきます。そして、おばあさんから不思議な話を聞くのです。それは、おばあさんが亡くなった時に、みんなから頼まれた手紙をあの世に届けるというもの。それを聞いた私は、なくなった父へ何通も手紙を書くのです。手紙を書くごとに成長してゆく主人公。気を張り詰め過ぎて 心の病にかかっていたのもおばあさんとの交流で癒されていきます。
現在の主人公も心に傷をおっています。私の境遇と似ていたので、気持ちがひしひしと伝わってきました。そんな彼女もおばあさんのお葬式の時に集まった人達と出会い、おばあさんに預けていた母親からの手紙を読む事で、十代の難しい時期にあった母親とのごたごたも氷解し、また硬くなった心がやわらいだと思います。しんみりとしがちなお話ですが、大家のおばあさんの人柄と手紙のおかげで不思議と明るく、ちょっとほおに笑みがくるようなお話でした。
紙の本
おばあさんとおんなのことてがみのはなし
2016/01/22 04:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
あたしが死んだら運んであげるから手紙書きな。とそれとなく声をかけ続けたポプラ荘のおばあさん。引っ越してきた千秋は、それを聞いて猛然と死んだ父に手紙を書き始める。千秋は毎日手紙を書いた。どんな手紙でもおばあさんは静かに受け取り、箪笥の引き出しにしまう。引き出しがいっぱいになるとおばあさんは死んでしまうと思い込んでいる千秋が、途中手紙を書くペースをおとすのがまたいじらしい。最初は苦手なおばあさんだったのにね。おばあさんの生き様から大切なことを知らず知らず学んでいた千秋。ポプラ荘に育てられた千秋は、幸せ者だね。
西岡さんとオサムくんの静かな夕食の風景。おかあさんに「とてもよかったんだ。幸せそうだったんだ」と説明するのに、「キャンプみたいだった」としか形容できない千秋。でもその言葉が千秋の中では最上の褒め言葉。7歳の女の子の語彙力を的確に表現しているなあと思った。湯本さんにまた惚れ直した瞬間でした。
電子書籍
心温まる一冊です
2018/09/11 02:05
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:summer - この投稿者のレビュー一覧を見る
色んな困難を抱えながらも、愛のある大人たちに見守られながら成長していく主人公が時々自分に重なったりして、優しく包まれる気持ちになるような一冊でした
紙の本
涙、涙…手紙が本当に届きますように。
2000/09/04 10:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かれん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読んで涙が次から次へと出ました。暫くはこの本の余韻から抜け出せませんでした。
そして、20歳で 自らの手でこの世を去った友達のことを思いだし、
とても会いたくなりました。
父を亡くし、虚ろな母と7歳の私は、このポプラの美しいポプラ荘に引越してきました。
新しい学校、そして、また、母も父と同じように突然いなくなるかもしれない…
その不安にいつも怯えている私は、精神的にまいってしまいます。
養生の為、学校を休み、昼間は ちょっと怖く、近寄りがたい大家のおばあさん宅で休みます。
そこで、おばあさんから聞いた奇妙な話。
…おばあさんは、亡くなった人に手紙を届けることができる…。
それから、亡くなった父に毎日、手紙を書く私。読んでいて胸が痛くなります。
よく、亡くなった人は私たちをいつも見守ってくれていると言います。
でも、無言の見守りではなく、手紙の交換が出来たらどんなにいいでしょう。
伝えたかったことが沢山あったのに、聞きたいこともあったのに…いつもそう思います。
18年後の秋、おばあさんの棺おけの中には、あの世へ持っていく手紙でいっぱいでした。
生きている人から、亡くなった人への思いが綴られた沢山の手紙、
お父さんへ宛てた私の手紙、亡くなった子どもへ宛てた葬儀社の人の手紙…
最愛の人を奪った突然の事故。その悲しみから這い上がるには、その思いを心の中に仕舞わず、
文字で表す、便箋に書く、そうする事により、心が救われるのかもしれません。
たとえ、本当にその手紙が届かなくても。
最後の場面は感動的です。当時の母の辛さがひしひしと伝わってきます。
思春期で反抗的な態度をとっても、いつも母はやさしく受け止めてくれる…涙がでます。
紙の本
セピア色の記憶。
2003/08/17 18:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「夏の庭」をとても気に入り、本書を手に取った。湯本さんの著書はしばしば、時代と時代の架け橋の役割を果たしてくれる。「夏の庭」もそうだったが、本書を読み終えた時、本当に懐かしくなったのだ。さすがに本書のお婆さんのような強烈なお年寄りとは無縁だったが、お年寄りの知恵にはいつも舌を巻く。例を挙げると、逆さ箒とか(笑)風邪をひいた時にはどうしたら治りが早い、とか妙に薬草に詳しかったり。特に子供を慰める言葉の巧みなこと…。飼っていたハムスターが死んでしまい、落ち込んでいた時、祖母は私にこう告げた。「動物も人間も、死んでしまったら夜空に咲くんだよ。夜になれば、晴れていれば会える」その夜から私は夜空を見上げるのを忘れなくなった。去年この世から去ってしまった祖母は、今は夜空で咲いている。
父親の死をきっかけに、微々たる溝が母親と主人公の間に生まれてしまう。埋めようにも、主人公はまだ幼いし母親は父親の死の真実を娘に隠そうと必死で、うまくかみ合わない。微々たる溝は、知らぬ間に巨大化してゆく。
身近な人を亡くすと、不思議とその人の存在はどんどん膨らんでいくのだ。重みはない、ちょうど風船のような感じだ。それがその人の死を、理解していくという事なのだろう。死というのはいつだって、未知であるから。
亡き人に手紙を書く。もちろん、届くことを前提に。
主人公の想いに納得した。
子供いうのは、大人が思うより子供ではなかったりする。ものすごいスピードで様々なことを吸収してしまうので、大人の認識が遅れたって仕方がない。
湯本さんの小説は二冊目だが、お年寄りの描き方が半端ではない。滑稽であったり、真摯であったり。パワーの滾るお年寄り、大変好もしい。
「夏の庭」ほど感情は盛り上がらなかったが、それと本書とを読めば古く錆びかけた記憶を磨けるだろう。もう一度、幼少の頃の記憶を光らせてみてはいかがでしょうか。幼い子供の心理描写、感情表現、これらも素晴らしい二冊です。
セピア色の記憶は想像以上に活気を秘めている。
紙の本
ほんとに駄目なのよね、老人と動物は……。
2001/09/07 03:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:takumi_y - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて自分たちが入居していた「ポプラ荘」の大家のおばあさんの訃報を聞いて、18年前に暮らしていた街へと出掛けていく主人公。そしてそこで過ごした日々のことを回想しながら、母が大家に託していた手紙を読んで、かつての母の思いを知る……という大筋だったかな。
また泣いちゃった。しかも今回はおおよそ本筋においては特別重要とは思われないような、主人公が看護婦という職業を選ぶきっかけになった母方の祖母が入院している場面で。
ある日突然夫を亡くした母親の呆然とした様と、それを見つめている子供の情景というのにはやはり胸を打たれた。突然のことに対処できなくなってしまう母とそんな母にしっかりしてよと思いながら、それでも心配で仕方ないという娘のどっちの気持ちも分かるので、過酷だったろうな、やっぱりと思うより他にはないんだけど。
そんな中で一見気難しげで偏屈そうな大家のおばあさんの果たした役割はとても重要だったのですね。身の上話が本当の事じゃないと気付いていながら、それでも騙されていたい人の心理とか複雑だけど、みんな優しくていいなと思った。
紙の本
ポプラの秋
2022/09/22 22:04
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半は母親に憤りを感じました。
きっと訳があるはずなのに。
千秋とおばあさんの交流がとても良かったです。
千秋だけでなく、おばあさんと皆の関わり合いがとても優しい気持ちにしてくれました。
千秋がこの後幸せになってくれる事を信じています。
紙の本
コーポポプラ
2019/10/09 20:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏の庭がとても良かったのでこちらも手に取りました。良いですね、このおばあさん。深い悲しみを漂わせながらも救いがあるような、素敵な本でした。
電子書籍
手紙に思いを託す
2017/12/13 21:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポッター - この投稿者のレビュー一覧を見る
父親を亡くし、母親とともに幼少の頃過ごした、アパートでの大家のおばあさんとの物語。
「手紙に託す」今ではなくなりつつある習慣ですが、手間がかかる分、心伝わりますね。
心温まる小説でした。
紙の本
「おばあさん」が、頼もしい
2023/06/02 16:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分が幼い頃の、昭和を思い起こすシーンが楽しく、懐かしかった。
大家さんと、千秋の祖母と、ふたりともたくましくて、こちらも自分の祖母を思い起こし、郷愁にふけってしまいました。
少女時代の思い出のポプラ荘と、亡くなった人に手紙を届けてくれる、というのがメインなら哀愁があり共感できますが、父の自殺や不倫や、そういった負の面が邪魔をして、そこまで入り込めなかった。