紙の本
北欧のサスペンス
2016/10/25 00:36
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びんご - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは通常の科学技術本と言うよりも、北欧サスペンスの世界に住む科学者の体験記と言うべきものだ。彼の堅実なアプローチは、本人の性格と言うよりも、北欧人の特性ではなかろうか。そう言いたくなるような冷めた情熱に貫かれている。
この本を読み、ネアンデルタール人のDNAが現生人類に一部取り込まれていることは、十分に納得出来た。ネアンデルタール人は気候変動に対処出来ずに滅んだのか、現生人類に滅ぼされたのか。もっと別の人類による別の文明の可能性はなかったのかは、この本の範囲ではない。しかし、そう言ったことに思いを馳せたくなるような本であった。それも含めて北欧のサスペンスと言いたい。
良書である。一読を薦める。
電子書籍
科学的な興味
2016/03/15 22:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kuriocity - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある程度生物学の知識のある人は面白いと思います。個人的に人類の起原ということも興味があるので面白かったです。サイエンスやネーチャーの雑誌から論文を載せてくれといってくることもあるんだ、と驚きました。ライバルとのスピード競争など、スリリングな展開も興味ある所でした。ネアンデルタール人の遺伝子が現生人類に取り込まれているという結論はエクサイティングです。滅ぼされた、あるいは絶滅した、ではなく、吸収された、という感じです。ただ、DNAの分析で証明するには数学的な手法を使うのだ、というのは予想外でした。
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人間のルーツを探る
2015/12/30 12:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネアンデルタール人は現生人類とは別種だが、交配を示す証拠が出て来た!
研究熱心な著者の行動も楽しめる本です。
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ワクワクが止まらない
2024/01/19 00:53
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投稿者:Mano - この投稿者のレビュー一覧を見る
テーマはまじめな科学研究だが、ワクワクしながら一気に読んでしまった。著者がノーベル賞を受賞したこともあり、ネアンデルタール人のDNAがホモ・サピエンスにわずかながら共有されていることは、いまや世界の知るところとなった。この見事な研究の舞台裏を詳しく語ったのが本書である。いやー、おもしろかったです。
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いい本になるはずだったけど
2016/03/28 14:15
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よしおくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
現生人類、つまり僕らの祖先とネアンデルタールの交配はなかったという定説を打ち破る偉業であり、とても楽しみにしていた。
だが、この本は失敗作だろう。素人が読むにはやや難解であることはさておき、冒頭を除けば、ほとんどが自慢たらたらの話になってしまった。これは、この手の成功物語を書くときには特に気をつけるべきところだが、ベーボ氏も虚栄心には抵抗できなかったとみえる。
「すごんだぜ」「すごいだろ」と言われ続けると、逆に読むほうが白けてしまう。素人も興味を持つ科学的事実の発見なのだから、そこに絞って書いてほしかった。
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まず、この本は非常に面白い。『イヴの7人の娘たち』や『アダムの呪い』のように、遺伝子解析によって人類の歴史をたどる話は、自分にとってはほぼ外れなく面白いのだけれど、この本は特に研究界の競争の実情がよく伝わる内容になっていて興味深い。
本書では、著者のスヴァンテ・ペーボが、古代生物のゲノム解析の研究者として成功し、マックスプランク進化人類学研究所を率い、その分野の第一人者となる物語が自身の手で描かれている。その過程では、古代生物解析におけるDNA汚染の回避に向けた地道な闘いや、他研究機関との協力や競争の内実、研究者としてのテーマ選択やキャリア形成、メディアとのやりとりなどが描かれていて実に面白い。熾烈で情け容赦がない先陣争いやそれにまつわるどろどろとした感情も伝わってくる。
著者の研究対象は、古代生物のDNAであり、タイトルにあるネアンデルタール人だけではないのだが、やはり著者を一躍有名にしたネアンデルタール人DNA解析の話のインパクトが大きい。さらに驚くべきことは、かつてアフリカから出たわれわれの遠い祖先は、約三万年前にすでに欧州にいたネアンデルタール人と出会い、そして交配したという事実の発見だ。その交配の痕跡がわれわれのDNAに刻まれているという。驚いたことに、アフリカを除く現生人類の遺伝子の約2%がネアンデルタール人由来のものであるという。この割合はヨーロッパ人でもアジア人でも大きくは変わらないことから、現生人類とネアンデールタール人がいつどのように出会ったのかまで推定できる。残されたDNAの分析からそこまでわかるのか、とまさに科学の力を見せつけた事例だと思う。今後、遺伝子学によって、人類についてますます多くのことがわかり、ますます多くのことができるようになるだろう。
科学研究の話だけでなく、著者がバイセクシャルであることや、研究者仲間の妻となっていた昔の同僚の女性を略奪する形で結婚したことまで赤裸々というよりも淡々とした調子で書かれている。こういった自伝的要素も含まれているのも単なる科学解説書にはないこの本の特徴である。
それはともかく、面白いので読んでもらいたい。
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人類の歴史の話だから、当たり前であるが、
研究室間の競争や、恋愛、家族など、非常に人間くさいドラマでもあった。
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研究の意義や技術的な困難の説明は面白かったが、私生活の思い出話や人間関係の恨み言などつまらない部分もかなり多かった。伝記は自分で書いちゃだめだな。
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我々の中にネアンデルタール人のDNAが残っいる・・その事実については、まあだからどうした、というくらいの感想しかないのであるが、その事実を明らかにする過程がスリリングである。というか、真の科学者というのはここまで「科学」に対して誠実であることができるのだということに感動した。。
掘り出された古代のDNAにはすでに現代の微生物や人のDNAが混入している。それらから目的のDNAだけを取り出し、増幅する。だが、目的のDNAだと思ったものがやはり混入した現代人のDNAだったりする。様々な設備や装置や仕組みを自ら開発し、2重3重のチェックを自らに課し、そしてたぶん科学ではもっとも重要なことの一つ「再現性」に徹底的に拘っていく。そうして、長い長い道のりを経て真実を明らかにするのである。
その間に、ライバルたちは数万年どころか恐竜のDNAまで解析したと、サイエンスやネイチャーなどの有名な雑誌に発表していく。しかしそれらはすべて、科学的には不誠実な態度で、再現性もなく、実際に間違っていた。メジャーな科学雑誌もまた、実は「科学」に忠実というよりも商業主義的なのである。正しい道を歩んているという自覚と自信があっても、それはそれは苦しいものだったに違いない(と、著者も言っている)。
読んでいる間じゅう、STAP細胞を巡る「捏造の科学者」(文藝春秋)を思い出していた。小保方さんや笠井さんが、スヴァンテ・ペーポほどに「科学」に対して誠実に向き合い、つまり「再現性」に謙虚に向き合う勇気があったなら、そしてスヴァンテ・ペーポがすでに喝破していたように著名な科学雑誌が極めて商業主義的であることを理解していたなら、あの事件は起こらなかったに違いないと。
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「ジュラシックパーク」が上映された頃は、何千万年前の化石から恐竜のDNAが採取されたことが話題になったが、DNAは極めて変質、分解しやすく、恐竜のものの採取は不可能というのが最近の常識らしい。
当時「採取」されたのは、混入した他の(もしかすると採取した研究者本人の)DNAだったのだろう。
本書には、こういった「汚染」を除去しながら、前人が試みなかったミイラや化石からのDNA取得とゲノム情報解析を著者(とそのグループ)が、数多の困難を乗り越えていかに実現したかの、30年にわたる苦闘の歴史が記されている。
それだけでも感嘆するに余りあるのだが、本書には著者の性的嗜好というかジェンダー傾向も隠さず書かれていて、ゲイを自覚しパートナーもいた著者が、既婚女性との恋愛の末結婚し、子供も授かったのだという。
その明け広げ度合いというか、認知され度合いにも感嘆するのである。
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これこそが、わたしが25年にわたって夢見てきた成果だった。数十年にわたって議論されてきた、人類の起源にまつわる重大な謎を解く証拠を、わたしたちは手にしたのだ。そしてその答えは予想外のものだった。現代人のゲノムの情報のすべてがアフリカの祖先に遡るわけではないと、それは語り、わたしの師であるアラン・ウィルソンが主な提唱者である厳格な出アフリカ説を否定したのである。それはまた、わたしが真実と信じていたことも否定した。ネアンデルタール人は完全に絶滅したわけではない。彼らのDNAは現代の人々の中に生きているのだ。
(中略)わたしたちが発見した結果では、ネアンデルタール人はヨーロッパ人だけでなく、中国やパプアニューギニアの人々にもDNAを伝えていた。なぜこんなことが起きたのだろう?わたしは考えが定まらないまま、机上の整理を始めた。最初はゆっくりとだったが、次第に勢いづき、古いプロジェクトのがらくたを次々に捨てていった。机上にたまっていた埃が宙に舞う。新しい章の始まりだ。机をきれいにしなければ。(pp.264-5)
マイクは、この他者の注意を何かに向けようとする衝動を、発達段階の初期に現れる認知特性のひとつで、人間に固有のものだとしている。それは、心理学者が「心の理論」とよぶ、他者が自分とは異なる心(認識・知覚など)を持つことを理解し始めた兆候である。に逃げんが巨大で複雑な社会を誕生させたのは、社会活動、他者の操作、政治的駆け引き、団結といったことに秀でていたからだが、そうした能力が、人の立場、政治的駆け引き、団結といった興味を操作できるというこの特性から生まれたことは、想像に難くない。マイクのグループが突き止めたこの特性は、現生人類が、類人猿や、ネアンデルタール人などの絶滅した他の人類と異なる道をたどる根本的な要因になったものだと、わたしは考えている。(p.286)
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著者スヴァンテ・ペーボはスウェーデン人の分子古生物学者。彼とその仲間たちはネアンデルタール人のゲノムを明らかにし、私たち現生人類のゲノムの中に、ネアンデルタール人の遺伝子が入っていることを突き止めたのである。
彼が新たな研究分野を確立するために組織を一から作り上げていく苦闘も描かれている。加えて、同性愛者であった著者が同僚研究者の妻に恋をしてしまい略奪してしまう話もあったりと、もはや単なるサイエンス本ではない。情熱あふれる著者の一代記である。
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2016年のベスト。
運とテクノロジーと人と根気を使ってネアンデルタール人のゲノムを読み取った生物学者の道のりと半生を記す。まず著者がバイセクシュアルでノーベル賞受賞者の婚外子だという話もさらりと出てくるところが面白いが、何より色んな人と関わり合い、試料を探し出し、最新の技術を使い、分析して、既存の概念に挑みネアンデルタール人のゲノムを読み出すことに成功するその学者冥利につきる半生を追体験できるのが痛快である。
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ネアンデルタール人に全く興味が無いというか交雑してようがしてまいがどうだっていいじゃないか、というような人には退屈極まりない本です。
しかし人の影響で汚染されていない純粋なDNAを採取するための偏執的な取り組みと検証システム構築については頭が下がるというか、想像するだに吐き気がする。
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半分は自叙伝ということで、著者の生き方、-30年に及ぶ研究人生の挫折や困難と名誉の獲得など-、に興味あればよく読めばいい。私は、ネアンデルタール人とホモサピエンスが交配したという事象とその科学的根拠、また交配の結果何がもたらされたかが知りたかった。
女性にしか伝えられず、約1.6万のヌクレオチドからなるmtDNAではなく、性別に関係なく子孫に伝わり、30億以上のヌクレオチドからなる核DNAに科学的証拠を求め、パイロシーケンス法によって核DNAの塩基配列を解析できたことで、ネアンデルタール人とホモサピエンスが交配したことが証明された。結果として何がもたらされたかまでは書いていなかった(と思う)が、そこは自分で考えようと思う。これ以上は情報量が多すぎて記憶できないので、割愛。