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白鯨 (上)
イシュメールは捕鯨船ピークォード号に乗り組んだ。船長エイハブの片脚を奪った巨大な白いマッコウクジラ“モービィ・ディック”への復讐を胸に、様々な人種で構成された乗組員たちの...
白鯨 (上)
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白鯨 改版 上 (角川文庫)
商品説明
イシュメールは捕鯨船ピークォード号に乗り組んだ。船長エイハブの片脚を奪った巨大な白いマッコウクジラ“モービィ・ディック”への復讐を胸に、様々な人種で構成された乗組員たちの、壮絶な航海が始まる!
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紙の本
無類の狡智に富んだ凶悪な巨大な鯨との死闘
2016/02/20 13:14
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山好きお坊さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語は、白い(抹香鯨は齢をとるにつれ頭部、背部が白くなる)巨鯨に片足を奪われた捕鯨船長エイハブが、自ら狂人と呼び、一途に勝利せんと一頭の悪魔と恐れられ幾多の人名を奪った巨鯨に挑むを筋とする。捕鯨船乗りの初心者イシュメイルを語り手として話を進展させながら、時に作者メルヴィルが鯨に関するあらゆる百科事項を独立の章を立てて実に詳細に述べる、その分量は半端ではない。鯨に敷衍する神話から文芸作品、そして捕鯨術、鯨の動物学的分類説明、鯨油をはじめ麝香ならぬ抹香の採取等々と作者メルヴィルの博学というか著述のための前調査の重厚さにひたすら驚く。捕鯨船ピークフォド号の船長エイハブ。3隻の短艇(いわゆるタッグボ-ト)には船長を補佐する航海士が艇長となり、銛手一人が付き、後の船員は漕ぎ手となって、鯨に挑む。1等航海士スターバック(コーヒーチェインの“スターバック”の命名由縁)と銛手クィークェグ(イシュメイルが捕鯨船に乗り込むため捕鯨中心地ナンタケットに着いたとき満員のため止むを得ず宿で同床した人格高潔なる“蛮人”)。2等航海士スタッフと銛手タシュテゴ(純粋インディアン)。3等航海士フラスクと銛手タグー(黒人)。さらに、予備の短艇には船長が隠すように乗り組ませた琥珀色した謎めく銛手フェデラー。
その白鯨の悪魔的な性格は、異常に雪白な皺頭を持ち、高く光った白瘤を持つ。体の他の部分もまた、京帷子の色や縞や斑点や模様に一面に覆われていた。この鯨に根源的な恐怖感がつきまとうに至ったのは、ただその異常な巨躯、めざましい色彩、または怪奇な形をした下顎などであったというよりは、その闘争においていく度としれず発揮したところの―玄人たちの言によれば、無類の狡智に富んだ凶悪さであった。
鯨に関する百科全書的な披瀝のなかでも、眼から鱗であったのは、抹香鯨の名の所以が、薫香なる鯨脳油で、当時この油は貴重品で灯火には用いられず塗用又は薬用に用いられたこと。捕鯨は鯨油を採ることが目的で、空樽を船底に満載し、甲板上で船員総出で油を採り、肉はすべて洋上で廃棄されていた。また、太平洋上を昇り、日本近海で台風に遭遇する。日本近海が鯨の有数な漁場であったこと、そして当時日本が鎖国状態で救援寄港できないことを船長が認識していたことも何故か知りえて妙なものであった。
ナンタケットの港を出、航海出資者への義務として多少の捕鯨も行うが、エイハブは白鯨の影を求め、洋上を彷徨う。物語は、ピークフォド号短艇を襲う白鯨の狡知に長けた攻撃に船長エイハブも謎めく銛手フェデラーも白鯨の背に磔の刑に処せられたごとくはりつけられ、ピークフォド号はイシュメイル一人を水面に残し海の藻屑となって終わる。出港前のわずかなプロローグと筋の残りの大半を占める白鯨を探す航海という変化を予想させない舞台であるが、船長の感情の高揚、三人の航海士の人格描写、時として荒れ狂う海、鯨との死闘、癖ある船大工や料理人そして銛手の驚異的活躍に心躍らせて読めた海洋冒険小説としても楽しめた。