商品説明
それは愛する人からかけられた冷たい「魔法」――。横浜・伊勢佐木町で風俗店『ピーチドロップス』を営む大学生・早瀬俊。彼は進藤翼という少女と二人で暮らしていた。深い翳を宿す青年・早瀬と、非の打ち所がない少女・翼。店の常連客、翼の担任教師、老いた元警官など周囲の人物たちから、少しずつ早瀬と翼の秘密が明かされていく――。埋めることのできない「喪失」。「生と死」を描いてきた著者が投げかける新たな傑作!
目次
- scene1~アヤメ
- scene2~吉田
- scene3~星野
- scene4~満村
- scene5~坂巻
- scene6~豊
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紙の本
着地点がどこにあるか、最後までわからなかった。
2015/09/21 16:33
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるデリヘルを核に、六人の視点人物によるそれぞれ別の物語が微妙に関係しながら紡がれていく。その六人の中にはデリヘルの娘もいる、客もいる、けれどデリヘルとは全く関係ない、別の部分で間接的に関わってくる人物もいる。大人も子どももいて、雰囲気がそれぞれ見事にちがう読み物として書かれている点は読みどころのひとつ。
この小説全体としてはある事件を追っているが、その当事者たちの視点では描かれていない点も作品の出来映えのよさに繋がっている。読者は、徐々に見えてくるその事件に意識を向けながらも、目の前に展開される別の人物の物語を読む。そうすることで話は複層性を帯び、奥行を増す。
六話のうち、特に最初のほうはゆるやかな繋がりで関係し、後半にいくに従ってその事件の深部へ切り込んでいく。その緩急のつけ方がうまいし、いっぽうでそれぞれの話としてもきっちりまとまっている。
ただ、幸せな話はあまりなく、どっちかというとざらざらした後口の話が多い。中には希望を感じる話もあったが、かなりひどい話もあって、幸せ感を求める人にはどうかな…という感じ。最後の話、つまり一連の事件の謎がわかった時のとらえ方も人によって様々だと思う。私自身は、疑問を感じるところもあったがラスト自体はよかった。