紙の本
装画はいいのですが
2015/09/09 07:22
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
徳川家康による大阪城冬の陣で外堀を埋められて実質的に大阪城は陥落したのですが、文学作品の描き方として主人公の周辺の人物や事柄を描くことで主人公の姿を描く方法がとられることがあります。
この作品もその系統の作品なのでしょうが、タイトルとなった「きわこ(貴和子)」のことがちっとも浮かびあがってこないのはどういう訳でしょうか。
きわこにふりまわされる義父であったり同級生であったり不倫相手であったり義理の娘といった視点で、5つの短編が描かれていくのですが、結局「きわこ」が何者であったかはわかりません。
あるいは、「きわこ」に振り回される人々の姿も、「きわこ」が不鮮明ゆえに、何におびえているのかが見えてこないのです。
もし、一番それらしき主題に沿っているとすれば、第一章で描かれた大龍昇でしょう。
彼は結婚した相手が連れてきた娘「きわこ」のことが忘れられません。少女でありながら男の媚の視線を送る「きわこ」。そうやって生きるしかなかった「きわこ」を、大龍は忘れられないでいる。
そんな彼が「きわこ」と別れて初めて「きわこ」らしい女性と出会い、共に暮らすという選択をする。
この第一章では。大龍の目を通して「きわこ」の何がしらかが語られようとしているのは確かです。
しかし、残念ながら、第二章以降で「きわこ」の本質に迫ることはありません。
作者の意図として「きわこ」はどんな存在であったのでしょうか。
物語の破たんは作者の責任であることは間違いありませんが、編集者はどのような読み方をしたのか、理解に苦しみます。
せっかく面白いシュチュエーションを拵えながら、物語が中途半端なことに編集者は気づくべきでしょう。
「agoera」さんの装画が意味深な雰囲気を漂わせて女性の後ろ姿を描きながら、作品は彼女の本質には到底近づけていない、残念な作品です。
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容姿に恵まれているわけじゃないのに、なぜか人を惹きつける。
惹きつけ、そしてその人生のかたすみにうずくまるようにずっとずっとそこにいる。
自分から、ここにいると大声で叫ぶこともなく、じっとそこからこっちを見ている。何か言いたげに、もしくは、最初から何も用はない、と言いたげに。
そんな女とは、できれば会いたくない。貴和子は、そんな女。
なぜ誰も彼も彼女から離れられないのだろう。憑りつかれ、憎しみの対象となり、堕ちていったその人生をさかのぼるように読んでいく。各章の語り手によって明らかになっていくようで遠ざかって行くような貴和子の人生。絡み合った人間関係の最後の最後に用意された着地点に唖然とする。最後まで読み、いったいなんだったんだこの人生は、と頭が混乱する。嫌でも読み直さざるを得ない。しかし今度は慎重に。最後の章から順番に。できれば会いたくない、と思っていた貴和子にいつの間にか惹かれている。そうか。これが貴和子の魅力か。そして作者の罠か。
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第1章~第5章で見える「きわこ」の顔。
いったい、どれが本当の「きわこ」だろうか。
興味を抱きながら読み進める。
最終ページに書かれた内容を見て(うん?)(あれ?)となる。
そして、再度読み返すと(!!)
なるほど!そういうことか!
「きわこ」が見えた。
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男性は貴和子のどこがいいのかなぁ。容姿がいいわけでもないし地味だし。ちょっとエロくてミステリアスなところ?悪女ではないんだけど、すごく疫病神っぷりを発揮している女性。たぶんよ〜く見ると、彼女の全体の雰囲気からは「関わると不幸になるよ」のオーラが出てると思うんだけど。男達はそういう部分に惹かれるの?
幼児虐待シーンは、辛くて読めない。香織に少しでも好かれようと必死な和花に心が痛む。
最後の1ページの三面記事がよくわからなかった、読み直したら解るかな?でもどの辺から? 今、それで悩んでる。
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一人の女性「貴和子」を巡る物語。男にとってはひどく魅力的で、女にとっては地味なのにコンプレックスを刺激される存在の貴和子。彼女について語る人たちの物語で構成されたこの作品には、そうと気づかないままにちりばめられた伏線がいっぱいで。
正直ラスト一ページを読むと「???」だったのですが。気になる箇所を拾い読みすると、「そういうことだったのか!」と腑に落ちました。でもそれが正しいかどうかは謎のままなのかもしれません。そして貴和子がどういう人物だったのかも。これは、誰にもわからないことなのかも。
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地味でさして美人でもない、でも不思議と男性を惹きつける貴和子。そんな貴和子に間接的に、あるいは直接的に破滅させられる人達の短編集。最終話以外に実際に貴和子が登場することはないが、行間から滲み出る貴和子の存在がとてつもなく大きく不気味だった。一体、貴和子とはどんな人物なのか?最終話ではまた少し違うイメージで登場したものの、最後のページのたった三行の新聞記事によってガツン!とやられた。これはとんでもなく惹きつけられる話だった。
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この世には、『隠しても色気の溢れ出る女性』や
『魔性の女』なるものが存在するらしい。
女たちはその「男にしかわからない魅力」とやらに
底知れぬ不気味さを感じ、
肝心の男たちは、
騙されているかもと頭のどこかで理解しつつも、
その魅力に抗えず不幸の一途をたどるのだ。
物語が進むにつれて、浮き上がってくる
きわこという名の女の人生。。。
関わった人たちに次々と不幸が訪れるのは、
やはり彼女が魔性の女だからなのか?
いやいや、彼女はただ平凡な幸せを手に入れたかっただけなんじゃない?
・・・と思ったところで、物語の一番最後に何気なく書き添えられている新聞の三面記事。
『え゛ぇ~~~~!!』と驚愕するワタシ。
やっぱ怖いわ、きわこ。
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貴和子に魅了され、翻弄された人たち。
同居する女の連れ子として連れてこられた貴和子。
甥夫婦と突然あらわれた女との間で相続問題にもめるなか、思い出す貴和子のこと。
同級生だった貴和子にたいする敗北感。
夫を貴和子に取られてから、熟女売春クラブにつかる平凡だったはずの主婦。
妻と別れ、貴和子にも先立たれて、
貴和子と関係のあった病床の男の正体に頭を悩ませ
女に金を騙し取られる無職の男。
継母が息子に殺される事件を知って
まるで自分と同じ立場に動揺しながらも
夫の連れ子が憎くていたぶる日々での運転事故。
継母である母は優しくていいお母さんだけど、にじみ出るものがどこか不気味で
母から逃れるためにひとり暮らしをして男に暴力を振るわれる矢先に、兄によって母は殺された。
年齢なんて関係なく、
男はみんな貴和子に心惹かれてしまう。
最後の女性2人の死体遺棄の事件が
残念ながら理解できなかったんだけどどう関係があるのかな。
この話では誰もが不幸になって読んでてつらくなる)^o^(
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一言でいうと、バタフライエフェクト…
和花ちゃんの生死が一番気になります。
新聞の片隅にも確かに人生がある。
貴和子を通して、欲が、嫉妬が、
1話目でお腹一杯だったのですが、最後まで読んでしまいました。
救いなしの2017*8冊目
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きわこという女とすれ違った人々の視点から語られる五つのお話。きわこは只幸せが欲しかっただけ。それが周りの人々の人生を狂わせていったのか・・・と読了しようとした最後のページでいきなり提示される新たな謎の新聞記事。この二人の女は誰??と再読するに違いない。
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「貴和子」という女性を巡る連作短編でありながら、当の「貴和子」は人々の回想の中や電話の向こうにしか出て来ない。
「貴和子」の周りで一体何が起きているのか?「貴和子」って一体誰なのか?
そんな興味を惹かれて読み進めた…のだけど、どうも後味が良くなくって。
こういう嫌な後味が残るミステリーを”イヤミス”っていうのね。
嫌な気持ちになるものをつい見てしまうことはあるんだけど、小説の場合には最後に希望があって欲しい、と思う私は”イヤミス”というジャンル自体、苦手かもしれない。
「きわこのこと」は伏線がうまく張られていて、面白く興味深く読める話。好みの問題だと思う。
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面白かった。けっこう一気読み。貴和子はただの不運な女性ってだけではなかったのね…。連れ子をいじめる女の話が一番嫌だったかな。事故って良かった。
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三面記事の中の人物が関わった貴和子という女性。
彼女は何者なのか。
時系列を遡る形で、各章最初に書かれる三面記事の犯人?を中心としたストーリーが描かれます。
そこに現れる貴和子は、大して綺麗ではないけれど、男好きのする魔性の女。
そのまま読み進めていくと、貴和子は何者なのかに悩ませれ、すっきりしまいまま、疑問ばかりが残りました。
時系列を正して読むよう書かれていたレビューと、ネタバレで、ラストの衝撃的な記事の秘密はすっきり。
自分では半分しか見つけられなくて残念でした。
結果、貴和子は怖い女だけど、ただただ幸せになりたかった女と私の中の理解は終わりました。
これでいいのかな?
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きわこ…特別悪い人ではないだろうとは思うが、男を狂わせる女だとは思います。周りにきわこみたいな人、私は何人か知っている。な~んか男に縁のある人、関係ない所に居ても、呼び寄せてしまう人。
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08月-15。3.0点。
「貴和子」という女をめぐる人達の物語。全員事件や事故に関係する。
カテゴリーで言うと「イヤミス」なのだろうか。周りを巻き込む魔性の物語。