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震災学入門 ――死生観からの社会構想
著者 金菱清
東日本大震災によって、災害への対応の常識は完全に覆された。これまでの科学的・客観的な災害対策は、すべて被災者の視点から見直されなければならない。リスク対策、心のケア、コミ...
震災学入門 ――死生観からの社会構想
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震災学入門 死生観からの社会構想 (ちくま新書)
商品説明
東日本大震災によって、災害への対応の常識は完全に覆された。これまでの科学的・客観的な災害対策は、すべて被災者の視点から見直されなければならない。リスク対策、心のケア、コミュニティ再建、巨大防潮堤計画、死者をどう弔うかなど、従来の災害学・災害対策では解決できない諸問題を、弱さの論理に根差す、新たな「震災学」の視点から考え抜く。東北の被災地に密着しつつ、多彩な調査・研究活動を展開してきた気鋭の社会学者が、3・11以後の社会のあり方を構想する。
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紙の本
被災地外からの勝手な忖度にならないために
2016/02/23 19:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「東日本大震災からあなたが学んだことを具体的にいくつ挙げられますか?」5年経ち、やはり私たちは根底では、あの映像で驚いただけにとどまっていないでしょうか?と筆者の金菱さんは問いかけます。
もともと震災に関する本は、開沼博さんの仕事が丁寧で、震災本はこれだけでいいやって思っていたのですが、筆者の金菱さんは東北の大学の教授なのでつい、買いました。よかったです。この本。
どういう本かと言うと、災害を文化的現象、社会的現象として取り出して、人間社会ってどうなのさ?と考える本です。
だから震災の規模がどうこうっていうよりも、復興のロードマップで何が起こっているのか、急性期の対応とかその後は、東北に住まない人たちにとってどうなのか?っていうところを書いてくれています。
心のケアについては、痛みを除去するよりも、被災者自らが記録を書いたりし、痛みを温存する考え、また、個人が癒されるよりも、コミュニティの互助機能を生かした方が自然という考えは「なるほど」でした。
なかでも独居になるとアルコール依存になるという「常識」が私たちにはありますが、あえて飲みたくなる気持ちを阻害せず、会を開いて、飲み過ぎないようにするという柔軟性が紹介されています。
共同飲食して相互扶助関係が生まれたり、まさにその人「のみ」の経験を尊重する関わりが紹介されています。私たちだってヤケになったら放っておいてほしいとか、ありますよね?
「被災者だから」というラベリングにおいて特別にケアしないといけないという負担を私たちは感じてしまいますが、衝撃的な経験を持った人たちゆえに、被災者以外の「世間」がウチであり、ソトの人として考えようとしてしまいますが、もともと同じ人間だという事に気づけば…ということにページをめくっていくうちに気づかされたんです。
津波にさらわれ、行方不明の括弧つきの「死者」をどのように受け止める過程を経るのか?という霊性にまで話が及んでいます。でもいろんなテーマに触れつつも、読後感はそんなに雑多な印象は残りません。
亡くなった命は戻りません。しかし、阪神淡路大震災があったから、復興住宅で孤独死が増えた、そしてボランティア元年という教訓を得て、今回の東日本大震災に活かされた「教訓」だってあるはず。
あとがきで金菱さんはこう述べています。
「他者の悲劇にそのときは共感するものの、あとは忘れてしまうようであってはならない。「あなたの尊い犠牲があって教えてもらったものが役に立っている」と伝えることのほうが、どれだけ価値があるかを、今の私たちは知っている。」
新書サイズですが、まるで被災地の方々が「俺たちの思いは、ホントはこうなんだ。」と本の紙から聞こえてきそうな中身の濃い一冊です。ここまで読んで「引っ掛かり」を感じた方は、ぜひ本書を。