紙の本
ウイルスの功罪
2022/10/16 21:32
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投稿者:穴部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウイルスは病気を引き起こし、最悪、死に至らしめるという負の側面がどうしても目につきがちである。しかし、本書を読むと、ヒトのゲノムの約半分はウイルス由来であったり、哺乳類の胎盤形成に関わるタンパク質がウイルス由来であったりと、ウイルスが生物の進化に重要な役割を果たしてきたことがよく分かる。
生物はウイルスを避けようとするけれども、結局はどこかでウイルスと交わらなければ、種として生存することは不可能なのかもしれない。
電子書籍
怖いだけじゃないウイルス
2020/04/28 03:55
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投稿者:Nioh - この投稿者のレビュー一覧を見る
福岡伸一さんの著書もそうでしたが
たいへんに面白く読むことができます
比喩も巧みでわかりやすい
それでいて一歩専門領域にまで話を踏み込んでくれる
私は全てを理解できたわけではありませんが
生命のダイナミズムというかマクロの世界でありながら宇宙的なパワーをイメージさせてもらえる好著
中学高校に著者のような先生が増えれば生物にもっと興味を持つひとが増えるでしょう
紙の本
生命というものの不思議さ
2018/05/07 22:21
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
インフルエンザの季節など、ウイルスというと悪者じみたイメージを持ってしまいますが、『ウイルスは生きている』を読むと、イメージが変わります。
たとえば、哺乳動物がお母さんのお腹の中で子どもを育てるためには、ウイルスが深くかかわっているんですって。
やっかいなばかりではないウイルスの働きと、それだけでなく、生命というものの不思議さをも感じることのできる本でした。
電子書籍
生命と物質の狭間
2016/06/26 14:32
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投稿者:白髪雀 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィルスが、生物か否かがテーマの書物であるが、ウィルスが生物であるというよりも、生物の営みが結局のところ物質の限りない変化に過ぎないということを再確認させられる本である。
ウィルスは静的な状態では非生物としか見えないが、生物の細胞と融合して生物として振る舞う。大きな生物の変化の一部なのである。
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ウィルスは結晶化もするが、寄生主の環境を使って自己生産も出来るし、進化もできる「生物」である。
生物のあり方は非常に幅広く、共棲や寄生、環境依存まで含めれば個体という定義すらあいまいとなる。
昨今流行りの腸内環境を見れば、体内に寄生する微生物のDNAは寄生主の人体が持つDNAよりも多いし、細胞内に寄生するミトコンドリアがなければ生体活動が成り立たないのだから。
奥深い内容が興味深く、かつ簡潔にまとめられている良書である。
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本書はその名の通り、ウイルスは「生きている」と主張しています。そのため、著者はまず生命の特徴は何かを明確にしています。
著者は生命の特徴として「ダーウィン進化」をするか否かを挙げています。DNA等の突然変異により、他の個体と少しの変化を持たせて、自然淘汰により、環境に適用する個体のみが残っていくことを指し、ウイルスも当てはまるため、生きているのではと主張しています。
ただ、DNA等の変化は外的要因等により起こるものだと思うのですが、基本的には元通りに修復されるもので、間違った修復は確率的にしか起こらないので、この定義だと、生命は神にサイコロを振られている存在なのかと考えてしまいました。
浅学の身ゆえ、これらの主張について他の書籍等で学んでみようと思いました。
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恐ろしい病気の元と思っていたが、こおん本を読むと昔から生物はウイルスと共生してきたらしい。人間もウイルスによって進化したという。現在も体内にウイルスは住んでいて生命活動の手助けをしている。もちろん、人を殺すウイルスもいるがそれは絶対数からいうと少ない。
ウイルスという漠然として持っていた概念を崩す一冊だ。
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細菌とウイルスの違いは細胞を持っているか否かである、細胞を持たないウイルスは自己複製が出来ないため、いまのところの常識では生物と無生物の中間的な存在とされている。
ウイルスと言えばスペイン風邪やエボラ出血熱の様に、大量に人間を殺す恐ろしい存在というイメージが強い。しかし感染を繰り返すうちに毒性は徐々に弱まるそうだ、なぜなら宿主が絶滅してしまってはウイルス自身も死滅してしまうからだ。
またヘルペスウイルスは、宿主の免疫力が落ちると口唇ヘルペスを発症させてしまうが、リステリア菌やペスト菌に対しては、天然のワクチンの役割も果たしているらしい。実はウイルスたちも生き残るため、宿主のご機嫌を伺いながら苦労しているのだ。
冒頭の自己複製という意味では、必須アミノ酸を体外から摂取している我々人間も、完全なる生物とは言えないのかもしれない。ついでに言うならば、食糧の大半を輸入している我が国も、完全なる国家と呼ぶには危うい存在なのかも…
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2016/5/19 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2017/9/27〜10/3
これは面白い。帯に「新たな科学ミステリーの傑作が誕生」とあるが、看板に偽りなし。生物と無生物の間は本当に混沌としてきた。こういうったことに少しは関係ある仕事をしているが、不勉強で知らなかった。いやいや、生物(あるいはその周辺)は本当に思い白いなぁ。
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これまでウイルスと生物の間には様々な二項対立的境界が引かれてきた。エネルギー代謝を行うか否か、独立した自己複製能や進化能を有するか否か…。本書は様々な事例を挙げながら、これらの分類の科学的根拠が極めて怪しいことを指摘してゆく。紹介されているウイルスや他の生物の振る舞いは意外性に満ち、これまで一般的とされてきた生物観がいかに特定の価値観に縛られていたかを驚きを持って知らしめてくれる。またそれにも増して、生物学的な意味での「自己」と「外部環境=他者」の境界のあやふやさについても興味深い示唆が得られるのが本書の醍醐味。ウイルスについて考えることは、「自分とは何か」について考えることでもあるのだ。なお、終章で著者のウイルス、ひいては生物、人間に対する思いが語られるが、僕はこういう特定の科学的分野にどっぷり浸った人のセンチメンタリズムはかなり信頼できると考えている。
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ヒトゲノムのうち、タンパク質をコードしている部分は1.5%に過ぎない。一方、ウイルスや転移因子はヒトゲノムで増殖を繰りかえし、45%もの領域を占めている。ヒトのゲノムとは一体誰のものなのか?
また、キャプシドを持たないウイルスというものも最近は報告されており、ウイルスと他の生命との境界もゆらぎつつある
パンドラウイルスなどは2556個の遺伝子中2370個が他の生物との類似性がなく、全く新たな生物にあたるという見解もある
・一般にウイルスの毒性は徐々に弱まる。スペイン風邪の毒性もパンデミックの発生から数年で大きく低下したことが知られている。弱毒化によって感染した宿主が行動する時間が長くなればそれだけ感染の機会が増えるというウイルス側の適応進化
・ウイルスは細胞構造を持たないが、その核酸はキャプシドで囲まれている。多くのウイルスは細胞の外に出るときにはさらにエンベロープに囲まれる。エンベロープはリン脂質からできているので石鹸に弱い。インフルエンザは石鹸で予防できるがエンベロープを持たないノロウイルスには効果がない。
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ウイルスは生物ではないと言われるが、本書では、ウイルスの構造や特徴を紹介するとともに、生物とは何か、ウイルスを生物と定義することの可能性など、生物の要件といった問題に説明を広げている。
著者が主張するように、生物と生物もどきとの境界は曖昧で、これという「生物」の必須要素はなさそうだし、仮に境界線を引いてみても、それをまたいでしまうようなものの発見は今後も続くかもしれない。
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以前「生物と無生物のあいだ」を読んだとき、細胞の振舞は人間社会に似ていると感じた。
本作の帯には「『生物と無生物のあいだ』から9年、新たなる科学ミステリーの傑作が誕生!」という文句が気になって買ってしまった。
本作の主役は「ウイルス」だ。ウイルスは生物ではないというのが通説だが、著者はウィルスは生きているとしか思えないと考える。
ウィルスの95%はタンパク質、残り5%がRNAである。
生物とは言えない分子構造だが、生物が生きていくのになくてはならないものである。
そもそもまず、生物とは何なのか、という定義に疑問を呈している。
細胞の振舞は人間社会に似ていると書いたが、細胞に作用するウィルスは人間社会に当てはめると何になるのか、考えてみた。
俺が思うに、人間社会におけるウィルスはテクノロジーではないのか。
例えばスマートフォン。人間の生活を大いに変えてきた。
人間がスマートフォンを利用しているのか、スマートフォンが人間を支配しているのか。
スマホ中毒なる言葉は、その主従関係が倒錯していることを示している。
人間とスマートフォンの関係はウィルスが細胞に与える影響に似ている、と思う。
ゆえに、人間社会におけるウィルスはテクノロジーではないのかと考えた。
テクノロジーは自己発展し、それが毒にも薬にもなる。
高度に発展したAIは生物と無生物のあいだを超えるのか?
細胞と社会の相似性を考える。
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ウィルスは生物であるという信念を持つウィルス学者が書く生物とウイルスの共生の話。細胞膜とタンパク質を合成するリボソームを持たないが遺伝情報を保有する核酸を持つのがウイルスである。RNAウィルスだけではなくDNAウィルスもいる。さまざまな種類があり、生物のDNAに紛れ込んだり、ジガバチが宿主に卵を産む際、ウィルスが宿主の行動をコントロールし孵化に対して都合よく物事を進める鍵(宿主をタイミングよく殺したりする)となる。代謝しないことがウイルス非生物論の元となっていることがあるが、他の生物の力を借りて生きることは一般的であり、何もウィルスに限ったことではないというのが著者の論点。
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新型インフルエンザ、エイズ、エボラ出血熱など、数々の感染症を引き起こし忌み嫌われるウイルス。しかし、近年の研究で実は、私たちの進化に大きな貢献をしてきたことが明らかになってきました。
本書はそんなウイルスとは何か、どのように発見されたのかという基礎的な話に始まり、災厄を招くばかりでないウイルスの意外な側面を紹介。生命のようであり、またそうでもないような特徴をもつウイルスの存在から、「生命とは何か」を考えるきっかけとなる一冊です。