紙の本
連鎖する生と死、その命
2015/09/16 09:48
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある年の八月、もうすぐ寿命を迎える4人の男のもとに、中学生くらいの少女が現れる。どこにでもいそうな少女は、自分のことを死神と名乗り、彼らにその死を告げた。
病室に少年がいる。彼のもとを訪れるのは、佐伯春花という友人だけだ。その少女ももうすぐ転校でいなくなる。そして彼も死ぬ。再びこの街に戻ってくると言う彼女に、少年はどんな言葉を残せば良いのだろう?
ここに一人の作家がいる。かつては児童文学のベストセラーを生み出した作家だったが、その作風に納得がいかず、理想の文章を求めてさまよい、未だ何も生み出せていない。そんな彼のもとに届くのは、彼が最後に書いた作品に添えられた一文だった。
青年はもうすぐ死ぬ。延長された寿命は僅かに十日間。その時間で彼は何をするのだろう。死神の少女は、その十日間の対価に、彼に一人の女性を救って欲しいと言う。
一人の老いた道化師がいる。彼には最近、初孫が出来た。しかしその初孫は、先日、大切な友人を亡くしてしまった。そしてその初孫が新たな拠り所に仕掛けている自分ももうすぐ死ぬ。道化師として彼女を笑わせるために、何をすれば良いのだろう?
そんな死と生を描く連作短編集。これを読むと「サクラダリセット (7) BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA」のラストに新たな解釈を見いだすことが出来るかも知れない。それは相麻菫にとっての救いとなる解釈かも知れないと思う。
本作の関連として「グンナイ、ダディ-死神のスタンス」も公開中。
電子書籍
WEBサイトの番外編とやら、再掲してくれないかなぁ
2022/01/16 06:34
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投稿者:S910 - この投稿者のレビュー一覧を見る
死神の少女が回収しに訪れた4つの魂の持ち主達の短編連作集。
ラストの全ての物語が集約した結末を読んでこそわかるタイトルの秀逸さがすごい。
扱っているテーマは「死」かもしれないが、描かれているのは間違いなく生命賛美。
「八月の雨が降らない場所」が一番好きだったかも。
上昇気流を捕まえる辺りのくだりの、勢いと言葉の美しさが。
さすがは「サクラダリセット」のコンビだったわ。
プロローグ、あるいはエピローグのようなあれは、RADWIMPSの「オーダーメイド」を思い出しちゃった。
「回収した魂のきれいなところを集めてリサイクルするのです」淡々と告げられたあの言葉が、ものすごく重要だったのに気付いた瞬間ちょっと鳥肌が立った。
濁りのなく澄んだ魂の方がいいから、回収の前に少しだけ死にゆく者のほんとうと向き合わせる。
未練は自然だから濁りには関係ない。
でも、死んでもいいみたいな捨て鉢な気持ちは濁りになる。
全部ラストで明らかになったね。
生きたいと思う魂が澄んでいて、だからこそ再利用できるというのは納得だ。
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やっぱり世界観が綺麗だなぁと。
最後まで読んでからもういっかい最初に戻ると
またちがった感じに読めるのかな?
これだけで完結のほうが絶対美しい。
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名前も知らない誰かの魂が巡って新しい魂に生まれ変わる。こんな風に考えることができたのなら、死を受け入れることもできるようになるのだろうか。それはとても残酷で、優しいことのように思える。
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連作短編。
オビにあった作者の別レーベルとはまったく関係なし。
作者らしい空気のある作品群だった。プロローグの意味が最後にようやくわかり、その最後がプロローグになっているのも、つながりを感じられるし。
でも、白い死神の女の子って、アレをおもいだすんだよな。。
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「四」 この数字は「死」を連想させる。そう、死神を。しかし、読みすすめるうちにもう一つ連想させられる。心臓は四つの部位でできている、即ち「生」を。そして生まれた物語に、命に、語りかける。「ベイビー、グッドモーニング。」
「生と死」ではなく「死と生」を描いてるのだ、この作品は。しかしその「生」はなかなかやってこない。各編で魂を集め新しい魂を創ると死神は語るのに、私たちは気付かない。隠しているからだ。強い「死」のイメージによって。だからこそ最後にやってくる「生」に、より強く心を、魂を揺さぶられる。そして「生」で終わることは、私たちに未来をもたらしてくれる。それが、河野裕の作品の透明感なのだと思う。
素晴らしい作品だった。サクラダリセットとあわせて、気持ちいい時間を過ごせた。これからweb小説の方も読もうと思う。また、次回作にも期待している。
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4つの話の筋が微妙に関わりあってその繋がりが次の世代に続いていくというような構造を持っている。ここでは死という概念が、死神によって魂を持ち去られ、その後複数人の魂を混ぜ合って純粋な部分だけを次(世代)にリサイクルして生まれ変わるという形になっている。それぞれの影響があることを示唆していて個々の短編集だけではなく、全体のストーリーとして最終的にまとまるように組み上げられており、一冊の本として上手いなと思う。
登場人物が数日間だけ伸びた寿命を精一杯誰かの為に費やせる意思を持っている人たちばかりだったのも割と印象に残る部分。唯一ジョニー・トーカーの作者の話だけは別な感覚を受ける。それは組み込まれ方がちょっと違うのかもしれないけれど、この話だけはある種伝えるべき方法が本にするということで異なっていたのかもしれない。
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4つの魂の話を収録した連作短編。
基本的に話としては独立している感じだが、死神の少女(ユニクロの服着用)が看取る点他微妙に4つの作品が影響しあっているのがいい。
どれも清々しいというか綺麗で心が洗われるいいお話。
最後の「生」へもってくるところもいいね。
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この小説は答えを与えてくれない。ただ、柔らかい死と希望だけが残されている。
美しく儚く、透き通った言葉で紡がれる生命の物語はとても素晴らしい。
だけど妙に目が滑るというか…没頭できない自分もいる。
多分、大好きな作品だけど自分には合わないんだと思う。読み手側の問題なのでこれは申し訳ない
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誰かのために願い、祈る人々の姿のなんと美しいことでしょうか。
楚々とした語り口とも相まって、とても澄んだ世界観を通して見えるのは、やはり作者の誠実さでしょう。
今より前向きに過ごせるような、誰かに優しくなれるような、その後押しをしてくれる言葉に、この作品で出会えるかもしれませんよ。
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死神の少女とそれに出会った人々の様子を描いた連作短編が四編収録されています。
死神と出会った人たちというのはすでに近いうちに死を迎えることが決まっていてそのため読後感は少し寂しいものになるのかなあ、などと思いながら読んでいったものの決して虚無的に終わるだけではなく、どの短編も心に温かいものを残していってくれます。
どの話のメッセージもとてもまっすぐに感じられました。生と死というテーマながらも変に凝った方向にいかず一番綺麗なところでどの話も幕が閉められているなあ、と感じました。
一番印象的だったのが『八月の雨が降らない場所』この話の主人公となるハラダの「ねずみ講」の考えがとても好きです。そしてラスト数行も綺麗に話を締めてくれました。
ライトノベルといえば壮大なファンタジーやSF、またはコメディ要素の強い作品というイメージだったので、この作品の静かで少しシリアスな雰囲気は意外であるとともにとても好ましく感じました。
ライトノベルという概念に囚われずいろんな人に読んでほしい一冊です。
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死んだ人間の魂を集める死神の少女が出会った、4人の人間の物語。
素直になれない少年。
自分を殺す作品を出版し、その後本を書かなくなった作家。
突然の事故で命を落とす予定となった青年。
誇り高きクラウン、若しくは、誇り高きピエロ。
彼らは死神に出会い、自身の死を知らされます。
終わりが見えたからこそ見えてくるものもある。
ただ一言いうのなら、彼らの死に様、そして生き様は、見事なものでした。
そして、また、新しい物語が始まります。
ベイビー、グッドモーニング。
作者はサクラダ・リセットの河野裕。
淡々としていながらどこか透明感のある文章は健在です。
ぜひ多くの人に読んで欲しい作品ですね。
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オセロの最初の並び方と、心臓の4つの部屋と、4人の人間の命が佐伯ちゃんの妹や弟として生まれてくるということに感動しました。
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ミニスカートと白いTシャツの死神の話、ということだけど……死神の女の子はあくまでおまけというか。物語のアクセントとして置かれているだけで、重要なのはそこじゃないです。4つの短編がそれぞれ少しずつ繋がって、なんかこう最後は良い感じにまとめる話。
こういう「綺麗な死」を扱った作品は少なからずあって、例えば電撃の『しにがみのバラッド。』とか、例えばSDの『テルミー』とか、例えばファンタジアの『神様のいない日曜日』とか。この作品は、それらと比べても頭一つ抜けていたと言って良いんじゃないかな。
死神だとか、魂の循環だとか、そういうのがなかったとしても。
生きている人、これから生まれてくる命が、死んでいった人たちの影響を受けて命を繋いでいくという事実だけは変わらない。
……という、まあ当たり前と言えば当たり前なんですが、それを非常に綺麗にまとめた作品だったなと思います。
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ひとつのテーマにもとづく4つの掌編を収録した短編集。
作品を振り返ると設定が「しにがみのバラッド。」と似かよるんですが、両者の一番の相違はキャラクターの描写ですかね。
こちらは一人称でありながらその表現はどこか淡々としていて、だからこそ死神が絡んで話が進むと感情の表裏が見えてきて面白いです。
また、四編はすべてどこかで関連しているため、順番に読み終えたときの読後感がよかったです。特に最後。
サクラダリセットぼどの読後感は得られなかったですが、同種の感覚を覚える一冊でした。