紙の本
これまでの一揆の概念を覆してくれる一冊です!
2019/02/02 13:50
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、これまで私たちが理解していた「一揆」の概念を見事に覆してくれる画期的な一冊です。私たちは、一揆というものが、虐げられてきた民衆による不満の爆発の結果であると理解してきましたが、著者はこのような理解は戦後の歴史の幻影にすぎないと言います。では、本当の一揆の意味、姿はどのようなものだったのでしょうか。詳細は、ぜひとも本書をお読みいただきたいのですが、私たちの通念を完全に覆してくれます。
紙の本
共同体の危機
2017/11/24 09:30
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投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
一揆は不満を持った農民が起こすものというイメージが強いが、本書を読むと、民衆が共同体を維持するために様々な交渉で対処し、一揆もその一つといえることが分かる。
紙の本
応仁の乱を読んでから
2017/08/09 18:13
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投稿者:あいん - この投稿者のレビュー一覧を見る
呉座さんの本は「応仁の乱」に続いて2冊目です。私の一揆に関する知識は歴史の授業の域を出ず、食うに困った農民たちの暴動というものでしかありませんでした。その一揆が目指したものは実は世直し等ではく、単なる条件闘争(着地点を見据えた駆引き)であったというのは驚きでした。呉座さんの文章は論考を基にして淡々と書かれていますのでたいへん読みやすく、頭にすーっと入っていきます。一読の価値ありです。
電子書籍
全会一致原理
2021/08/12 12:39
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
一揆というと時代劇ででてくる江戸時代の百姓一揆を反射的に想像してしまうがじつは違う ということを最初の章で紹介している。平安時代の僧兵の強訴から説き起こす主節はとても参考になる。特に身分性の強かった寺院の僧たちが一揆の拠り所とした「正義」は「全会一致」によって保証される という部分には非常に感銘を受けた。今の国会において対中非難決議が全会一致にならないので提出されなかった という事実は、千年前からの伝統に基づいているのかもしれないと感じた。
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ポスト社会史の一揆研究。
従来の階級闘争史観を批判し、少し前の社会史の呪術的視点を批判し、等身大の一揆像を追求したあたらしい一揆研究(の一般向け教養書)。特に後半部で交換型の一揆に触れつつ、危機的な状況のなかで新たな「縁」の構築として契約を重視した中世人のマンタリテに言及しているのはよかった。
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徳政一揆は、土倉・酒屋といった京都の金融業者(というより高利貸し)を襲撃している。借用証書を強引に奪いかえすという行為も散見される。このため「古い研究」では、「悪徳高利貸しに苦しめられた民衆の怒りが爆発し、徳政一揆を起こした」と考えられてきた。論文調で書くと、「貨幣経済の農村への浸透を契機とした都市高利貸資本の農村侵食」ということになる。なんのことやら意味がわからない読者も多いと思うが、このような分かったような分からないような説明でごまかしてきたのが、かつての戦後歴史学であった。p103
この記述にガツンとやられた。受験勉強以来長らく「貨幣経済の農村への浸透を契機とした都市高利貸資本の農村侵食」という説明の1800年分で日本史を分かった気になっていた。しかし、そう言った難解な概念で歴史を説明しようとすることは、単に読者を煙に巻いているだけなのかもしれない。著者はそのような概念による歴史理解を破壊していく。初め著者の語り口を「ふざけている」と考えていたが、むしろ議論を煙に巻かず批判を受け入れるという誠実な姿勢なのかもしれない。
ちなみに、そもそも土倉の主な取引先は武家や公家といった大口の取引先であり、著者によれば中世の一揆とは、むしろ飢饉で食糧に困った人々が有徳人に「無理矢理金を出させる」ことだという。
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歴史学に覆いかぶさっていたバイアスを払いのけるために書かれた本であり、言ってみれば蜘蛛の巣に対する竹箒のような本である。
古代の呪術的な信仰は本気で信じられていたのかどうかについての考察や、鍬や鋤で戦うイメージはあくまで農民としての階級を受け入れたうえでの交渉であるとか、こういった当時の人々の考え方の背景が見えるのは面白い。
その意味での目の振り向け方はそれなりに価値があるものの、運動論としての射程もそれほどあると言えないし、一揆の論としても、正直食い足りない。あまりよそ見せずに頑張って欲しい。
ちょっと本文の内容になるが、宛先のあるものが一揆の核になる契約関係を示すとして、それならばそれを踏まえてもう一度、一味神水の儀式から位置付け直す必要がある。
一揆は政治的パフォーマンスにほかならないが、民衆の被統治感覚に根ざしてもいる。今回の本の作りが「原理」では仕方ないといえここからさらに改めて種別の変遷があるのならそれを整理して提示してほしいところだ。
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“一揆”というモノが「関わる人達が互いに対等で、一定程度の匿名性も在って、或る種のパフォーマンスも含めた誓約のセレモニーを経る場合も在る契約のような関係で集まり」であったという辺りに、筆者は色々な国々で政権交代を促した市民運動や、何かを訴えようと発生するデモとの共通項や相違点を視ている…
中世から江戸時代位までの“一揆”と呼ばれていた営為に携わった人達の様子が、「より色鮮やかに、より活き活きと」という具合に詳細に解説されていると同時に、「先学の研究の積み重ね」を深く広く意識しながら“一揆”に纏わる新しい説や自説をとき、「そこから現代の人々が何を見出して、何を想うのか、そしてどうするか」と「現代の市民運動、殊に“デモ”のような動き」を論じている。「“歴史”を学ぶ魅力」に溢れている一冊だ。
そして「研究論文ということではない、一般読者向けのモノ」を意図して綴られた、適切な分量の一冊に纏まっている。
多くの人にお勧めしたい!!
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本書は武闘派で過激な一揆より、目立たなくも一般的な交渉のための一揆に主眼を置く。文中で「だろう」「思う」の語尾が多くことから、歴史として解明が難しいジャンルであることが想像される。
中世の一揆を中心に、現代のデモとの相違やsnsとの類似性を指摘しながら、読む者の一揆に対する想像力を深める工夫が多い。また、戦後歴史学がテーゼとした一揆ニアイコール反体制運動という解釈を批判することも、一般的な一揆の輪郭を際立たせている。
公家、武家、寺社、民衆とわずそれぞれの社会が徹底的な階級社会だった時代において、一味神水を経てフラットに同心した集団とは、交渉を求められる側からすれば異形の存在だったことだろう。
1980年代ファミコンの「一揆」に無理やり触れるところで笑った。
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「応仁の乱」で話題になった呉座勇一氏のデビュー作。
一揆の全盛期が中世であり、この時代における一揆は「契約社会」の下「既存の秩序の大幅な変更を迫らない」枠内で人々が「一味同心」することで自己利益の増大を目指すものであることが理解できた。呉座氏も指摘するように、一揆のあり方は現代にも大きな意味を持っていると思う。
本書はとてもわかりやすい文体で書かれており、初学者にもおすすめ。一方、「応仁の乱」でも感じたのだが、本論と結論が噛み合っていない部分が散見されるのが、玉に瑕といったところだろうか。
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一揆といって一般に連想される「百姓一揆」は一揆の典型例ではなく、むしろ亜種である。
一揆とは中世における人々の連携・連帯・コラボレーションの総称であり(意訳)、現代にも通じるものがあるというのが著者の見解である。
ざっくりまとめすぎて、我ながら大胆かなと思う。
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漫画の「カムイ伝」やクロサワ映画「七人の侍」などの影響で、一揆とは農民が一致団結し、竹槍を手に悪代官らに生死をかけて立ち向かう強訴活動というのが世間一般のイメージ。が、古文書を調べていくと、一揆とは常に大掛かりなものではなく、竹槍を使った形跡もない。農民だって死は怖いし、標的にされた代官や大名も年貢を納めてくれる農民からのストライキは大ダメージだ。お互いに適当なところで手打ちにしたいというのが本音。
社会保険や福利厚生、ブラック業務を訴える労働基準監督署などのない時代、農民や国人がアコギな取り立てを公にし、交渉のテーブルの役割として一揆は行われた、というのが著者の主張。世直しとか、革命、直接民主主義なんて大それた目標はない。しかも、一揆首謀者側の団結も貧困や地域的縁によるものではなく、文書による契約にもとづくものだった。
追い詰められた弱者による反発という、これまでの一揆に対するイメージを一新する斬新な本書。著者はそんな「一揆の原理」を拡大し、現代の脱原発や沖縄基地問題のデモと共通する部分が多いと指摘するのがなかなか痛快。中世から現代まで、人間は死を賭けてまで訴えるなんてことは、そんなにない。
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【相手にふりかかった問題を自分の問題として考え、親身になって、その解決に努力する。実は、これこそが一揆という人間関係の本質である】(文中より引用)
権力層への抵抗という意味も込めて使われることの多い「一揆」。時代ごとに異なるその言葉が意味するところを探るとともに、一揆が抱える現代的な意義についても考察した作品です。著者は、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』がベストセラーとなった呉座勇一。
堅苦しい説明が続くわけではなく、時にユーモアや今日の出来事とも絡めながら筆が運ばれているため、中世のことを主に取り上げていながらまったく古さを感じさせない一冊。一揆に関する解説という魅力はもちろんですが、歴史を学ぶことの楽しさをも考えさせてくれる良書でした。
『応仁の乱』も読んでみようかな☆5つ
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「一揆」という言葉から暴力的な抵抗運動というイメージを抱いていたが、この本を読んで人と人の繋がりこそが一揆の本質であることが分かった。反原発デモやアラブの春を一揆の文脈で解釈しており、歴史的な観点から現代社会を見直す醍醐味を味わえた。
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「一揆」の定義が大きく揺さぶられ、さらにそれが現代のSNSに通じるという指摘に、決して軽くない衝撃。本書に敬意を評して「一揆」を定義するならば、「いつの間にか失われてしまった民主主義の1ピース」あたりか。