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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集。
場所も名前もわからない設定。
丁寧な描写で淡々と語られる物語たち。
それでいて、どこかにハッとする文章が潜んでいる。
味わいの深さ、物語の広がり、奥行き。
洋子さんの文章はさすがだなと思う。
紙の本
独特の世界と存在感
2016/01/07 17:37
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投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひとつひとつの物語の世界が、独特で、短い物語なのに、そのひとつひとつに存在感がある。作者の思いや信念のようなものさえ、伝わってくるようだった。特に、動物が主役というわけではなく、主人公は人である。
それにしても、作家という仕事に手抜きをしない著者を、素晴らしいと思った。
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慎ましやかに静かに生きる人と、彼らに寄り添う動物(たとえ置き物であっても)が、あるがままに美しく、ひそやかに、多くを求めず、ただそこにある。余分なものは何もないのに、必要なことはどこまでも丁寧に描かれている文章がとっても美しい。
「帯同馬」と「ハモニカ兎」が特に好き。
登場人物の名前もなく、舞台がどこの国なのか、いつの時代なのか、それもわからないので、お伽噺を読んでいるような心地にもなる。時間がゆっくり流れる。
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とても静かな短編集。一編ずつに動物がひっそりと書かれている。気が付けば傍にある、という表現は納得。
小川洋子さんの小説はいつも読んだ後に何かを心に落としていく。
ただし一言断っておくとタイトルから連想するような癒しはない。疲れた一日の終わりに読むよりはむしろ真っ新な朝に読むべき小説。
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一話目の『帯同馬』とてもよかった。
飛行機や列車を使って、遠くに行くことの恐怖。
このまま帰れないのではないか、
自分の部屋に戻ることはもうないのではないか、
そんな感情がとても共感できる。
飛行機に乗るときは、一種の覚悟のようなものを携える。このまま死んでしまうかもれない、という可能性と不安に対しての。
レースのため海外へ行くディープインパクトのストレスを減らすための帯同馬として、一緒に連れて行かれるピカレスクコート。その哀れみを感じるのは私だけかという問いかけも、心に響く。
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身近にある動物たちを、ひっそりとモチーフにした短編集。
メインを人の想いや人生に置き、そこに寄り添うように様々な価値で動物たちを忍ばせ、悲しい寂しい話も充実した読後感を演出しているように思う。
不在なるものを想うことによる、人生が紡いだ物語、ここに極まれり、という感じかな。
この作品の中に潜む静謐な世界観も含めて、言葉はいらない、ぜひ読むべし。
小川洋子さんの持つ、世界観の演出、いろいろんな世界があって、読むたび楽しませてくれる。
さて、次は。
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この短編小説の主人公や彼らに縁のある人達は、皆静かで目立たず、どこか頼りなさすら感じる人物なのだけど、そこがとても親近感を感じる。物語には必ず動物のエピソードが交えられていて、その動物の姿と主人公たちがとても雰囲気が似ている。目立たずひっそりとしていて、出しゃばらない。ただありのままにあるべき場所にいて、主人公の心を支えている。
蝸牛の話だけは気持ち悪くて後味がなんとも表現し難いのだけど、他は優しくて、ユーモラスで、切なくて、余韻が残るお話であった。
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著者の動物に対するまなざしには、ごまかしや偽善がない。その純粋なフィルターを通して、慎ましやかに生きる動物の姿が見えてくる。
江國香織のあとがきも素晴らしい。
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ひっそりしていて、ぺたぺたとくっついてくるような微かな不快感があり、ほんの少しの不安が終始漂い、死のにおいがして、動物たちはおかしな人間味を与えられることなくあくまでも動物として登場する。
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小川洋子さんらしい静かに静かに浸透するような不思議な世界感のお話が8編。
どれも動物が関連して、閉塞的で、今はもういないということが共通しているのだけど、結末はぞっとするものからほんのり暖かくなるようなものまで粒揃い。
年配の主人公(というより、物語の語り手なイメージ)が中心となったお話が最近増えてきたのは、小川さん自身が年を重ねてきたからなのでしょうか。
小川さんらしさを残しつつ、新天地というのはそれはそれで楽しいですが、少し寂しい気もします。
今でも「薬指の標本」や「ホテル・アイリス」が特に好きなんですよね。
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必ずしも「やさしい」物語ばかりではないけど、ひっそりと、心にしんと落ちてくる短編集。
小川洋子さんですね。
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動物にまつわる八篇の短編集。
動物と言っても犬や猫といった愛玩動物ではなく、馬、ビーバーの骨、兎の看板、小鷺、犬のブロンズ像、動物園のチーター、蝸牛、タツノオトシゴという最早動物ではなく物。
動物の関わり方も物語の中心を占めるものから物語自体には影響のないモチーフのようなものまで様々。
この作品でも小川洋子さん独特の世界が拡がる。
わたしが小川洋子さんの作品を読むといつも感じることは、“ひそやかな世界”ということ。
何もすることがない眠れない夜中、小さな声で囁くように誰からともなく誰にでもなく、何と言うことのないオチも何もない物語、聞いていてもいなくても構わない、ただ時間を埋めるために語られる物語。そういったものを感じる。
小川洋子さんの文章は、静かで穏やか、さみし気でさえあるのに時々クスリとさせる。何でもない物語で細かい設定もなく、時には結末も明らかでないこともある。
そういったものが好みでないかたもいるだろうし、つまらないと感じるかたもいるだろう。わたしは読者の感じ方それぞれに物語の結末の着け方を預けてしまうようなところに余裕があるというかゆとりのあるものを感じて心地良い。
「ビーバーの小枝」
亡くなった翻訳家の息子夫婦に会いに行く作家の物語。
「目隠しされた小鷺」
美術館の受付アルバイトをする女性と一枚の絵を観るためだけに訪れる移動修理屋の老人の物語。
「竜の子幼稚園」
身代わりガラスを身に付け依頼に応じ旅をする女性の物語。
この三作品が特に印象深い。
江國香織さんの解説もわかりやすく良かった。
誰にでも思い出の詰まったものや、自分の支えになるものなど何かひとつはあるはずだ。それが生物であろうと静物であろうと。
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本質とは全く関係ないのだが、初っ端の『帯同馬』で若干のつまずき。ピカレスクコートは現地で重賞二着とか、その後日本でも重賞ウィナーであるとか、その筋の人間からすると名も知らぬ馬ではないだけに、微妙な違和感からスタートしてしまったのが運のつきかもしれぬ。
まぁそれはさておき、ちょっと質が落ちるかな?幾つかは流石と思わせるし、この作家独特の死の匂いは感じさせてくれるのだが、何と言うかゾクゾク感に欠けるかな、この作品集は。
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短編集。どのエピソードも特に面白みがなく、
感動もなかった。
ピカレスクコートのことが書いてあるということで買ったが、退屈だった。
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2016年、31冊目です。
動物と人間のふれあいみたいなことがモチーフかと思って読み始めました。
それは、心地よく見事に裏切られました。まさに小川ワールドという感じです。
ストーリーや文体そのものに、大きな感動や心を揺さぶるメッセージがあるわけではないのですが、自分の心の中にある様々な考えというか既存の感情の隙間に、じわっとしみ込んでくる感覚がします。
これは、私の小川洋子作品に対して共通して抱くイメージです。
この小説は、何かしらの生物が出て来る8つの短編が収められています。
「帯同馬」/「ビーバーの小枝」/「ハモニカ兎」/「目隠しされた小鷺」/「愛犬ベネディクト」/「チーター準備中」/「断食蝸牛」「竜の子幼稚園」です。
「目隠しされた小鷺」に出てくる移動修理店の老人が、1枚の絵を見るために、小さな美術館にやってきます。そこで働く「私」は、老人がその絵を見るために行っている奇妙な行動を手助けすることになります。この老人の行為にすごい重たい背景があるのか?と思わせながら話は、「私」とその老人の関わりで進みます。”小鷺”が出てくるのは、最後の一瞬です。まさに、いつも彼らはどこかにという感じですね。
「帯同馬」というのは、海外の大きな競馬レースにでる本命サラブレッドの精神的安定をはかるために、一緒に移動遠征する時に”帯同”するレースに出ない馬のことです。この物語だけが、関東の競馬場であることが分かります。ちなみに他の作品は、まったく場所が分かりません。そもそも日本なのかさえも特定できないです。そういった物語の設定の場所を無機質で、白っぽい感じにすることで、登場する人間の行動の中に心の機微を感じやすくしているだろうかと思います。
「愛犬ベネディクト」は、もうちょっとのところでサイコパス的世界に入ってしまいそうな感覚をうけました。愛犬とは犬の置物なのですが、それに対する家族の思い入れ方というか、存在の受容性が、滑稽に思える反面、恐ろし世界を描いているという感覚を待たせます。(2016/11/19)
その他の小編については、また思い出せたときに、加筆します。
おわり