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大部の「鄧小平」を、著者へのインタビューの形で新書にまとめた本。
http://booklog.jp/item/1/4532168848
毛沢東との関係、文化大革命前後の権力関係などを含めて概観できてよい。トップはライバルを消さない訳には行かない構造ん中で、鄧小平がどう生き延びたかというところ。
著者が学者として証拠がなく書けないところをインタビューワーが補う形になっており、読者にわかりやすい。
特に天安門事件の対応、さまざまな失敗があったのは間違いないが、内戦に発展させなかったと見るべきだというのは納得できた。
最後に、現在の習近平時代の一番危険な問題として腐敗の構造を説明されると、その扱いの難しさに唸らせられる。
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中国の社会のありようはもちろん日本それ自体のそれとは全く異なる。しかしよく考えてみると、日本の中に中国と良く似た組織はいくらでも見つかることに気づく。代替わりのたびに先代トップの息のかかった者たちが失脚する会社、着任して最初にまず前任のやり方を否定してかかる部長…。そんな軋轢必至の状況で大いに参考にすべきなのは、本書で描かれている鄧小平のクレバーさではないかと思う。
確かに本書で言及されているように、鄧小平は実務に長けてはいたが決してクリエイティブな人物ではなかったようだ。しかしカリスマに富んだ「先代」毛沢東の股肱の臣の忌諱に触れることなく実質的にその手法を否定し、一方で自らの信念を曲げることもせずにその後の中国の比肩なき経済発展の道を開くことができたのは、ひとえに彼の柔軟さ、悪く言えば(特にイデオロギー的なものに関する)節操の無さによるところが大きかったのだろう。僕がクレバーだと思うのはまさにこの点で、イデオロギーに拘る余り失脚する(だけならまだしも人民を道連れにする)頑迷な指導者というのは枚挙に暇がないのだ。
本書は対談形式で進む。ちょっとあっさりしすぎの観はあるが、新書らしく気軽に近現代の中国の歴史を短時間でおさらいできるのが何より良。
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天安門事件という負のイメージはあるものの、とう小平はまさしく現代中国を築いた指導者のひとりである。本編を読みたくなった。
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日経新聞社から出てる本編のダイジェスト版のような位置付けらしい。トウ小平の天安門事件の時の思考回路とかは結構丁寧に書かれている。ヴォーゲル先生のというよりインタビュアーの意見だが、台湾を早く統一したほうがよい、民主選挙など保証し、しだいに他の地域にも例外を認めて政治改革する、香港でも自由選挙をしたら台湾にはプレッシャー、とかおもしろい視点だった。
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読みやすいんだけど、読みにくい。 橋爪先生ってのは中国もやる人ではあるんだけど、宗教・言語のイメージがあって、ヴォーゲル先生の見識に対してどうしても遅れを取っている感が拭えないからなのかなぁ。
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おすすめ資料 第325回 (2016.3.25)
中国で「改革開放の総設計師」と称される、鄧小平と現代中国をテーマとした、碩学同士による対談集です。
鄧小平の略歴、国共内戦から第2次天安門事件(1989)前後まで、そして「これからの中国」についてが、語られています。
本書は入門書ですが、既刊『現代中国の父鄧小平』(2013)[上巻:N289.2-161-1,下巻:N289.2-161-2]の「予告編」という位置付けでもありますので、興味を持たれた方は、ぜひこちらも読んでみてください。
【神戸市外国語大学 図書館蔵書検索システム(所蔵詳細)へ】
https://www.lib.city.kobe.jp/opac/opacs/find_detailbook?kobeid=CT%3A7200187462&mode=one_line&pvolid=PV%3A7200463853&type=CtlgBook
【神戸市外国語大学 図書館Facebookページへ】
https://www.facebook.com/lib.kobe.cufs/posts/947759985273707
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不倒翁とも言われる鄧小平。
3度失脚してる。中国共産党では稀有の人物だ。
中国を資本主義国家に変貌させちゃうんだものなぁ。しかも政治は共産党独裁のままで。したたかさは、さすがだよね。
天安門事件で誠実に対応しようとした趙紫陽を失脚させ、体制強化のために学生から死者が出てもいいと考えた。国家のためなら目の前の犠牲も厭わない。特に中国のような大国のリーダーにはこの資質が不可欠なんだろうけど、そして実際にその後の数十年うまく国家運営できたんだろうけど、あの事件を忘れちゃいけないと思う。
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失脚しても、毛沢東の尻拭いをうまくやってのし上がって言った鄧小平。この薄さでは語りきれないのでしょうが、中々中国人の名前が頭に入らないので、これくらいの分量で助かりました。
最終章の、鄧小平以降の指導者評が端的で非常に分かりやすかった。
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エズラ・F・フォーゲルはハーバード大学に籍を置いていた中国研究・日本研究の社会学者。「現代中国の父・鄧小平」の中国語版は100万部を超えて売上げられている。その内容をかいつまんだのが本書。
鄧小平は実務で実績を残し毛沢東の信頼を得た。権力闘争の過程で途中数度の失脚を味わうも能力を評価され、一時を経るとまた中央に戻される。
毛沢東が死去した後、文化大革命と決別し今の中国の発展の礎となる70年代後半から始まる改革開放をリードする。これは毛沢東の政策の否定とも言える。改革開放のひずみで不満を抱えた学生が蜂起したのが天安門事件。これを強制的に封じ込める。その後はそのような反発が中国では起きてない。
四文字熟語で表すと虎視眈々が似合う人物のような気がする。
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直近に読んだニクソンの「指導者とは」での周恩来、そして今回の鄧小平を読み感じたことは、
毛沢東-周恩来-鄧小平の関係は、
織田信長-豊臣秀吉-徳川家康の関係と対比して考えられるのではないか、ということである。
ざっくりと、毛沢東と織田信長は既存の秩序に対抗し、勢力を拡大して天下を取る強いリーダー。
一方で、周恩来、鄧小平、豊臣秀吉、徳川家康はより実務家としての能力に長けた存在。
周恩来は毛沢東のもとで、豊臣秀吉は織田信長の元で力を認められ出世し、トップまで登り詰めている。
一方、鄧小平と徳川家康は毛沢東、織田信長に力を認められ評価されながらも、完全に服従はせず、自分を脅かすのでないかと恐れられる存在である。
もちろん、3者の性格や関係性、歴史上の役割は共通点よりも異なる点の方が多いだろう。
例えば、周恩来は毛沢東よりも先に死んでおり、真の最高権力者になったわけではないし、鄧小平と徳川家康にしても、一方は改革開放を進め、一方は鎖国を進めている。
そもそも、共産党というイデオロギー支配と、戦国時代の支配は、組織も根拠も異なっている。
しかし、それでもこのように歴史を比較し、共通点、相違点を考えることは有意義であると考える。
自分自身の頭の整理にもなるし、それぞれの時代に必要なリーダーとしての素質、そして凋落の原因などを考えることにつながる。
いずれにせよ両者についてまだまだ理解が不足しているので、鄧小平の本編に是非挑戦するとともに、日本の戦国時代についてと改めて読み直したいと感じた。
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歴史的経緯:中国共産党と中国国民党はもともと統一していた。旧軍閥、帝国主義を敵とし共に戦う。(第一次国共合作)
が、1927年以降分裂。蒋介石がクーデターを起こす。その後西安事件により共産党に監禁された蒋介石は、命を助ける代わりに手を組んで日本軍と戦え、と言われ、国民党と共産党が再び手を組む。(第二次国共合作)
日本敗戦後、国共内戦により国民党が台湾に逃げ、中華人民共和国が設立。
戦争直後は、アメリカは共産党と国民党が統一すべきと考えていたが、失敗。そのころの政府のトップはまだ蒋介石だったものの、腐敗が進み始めていた。
鄧小平は、根拠地(都市ではなく農村で革命を起こすために拠点を作ること)に失敗したが、毛沢東は成功。ここから毛沢東を尊敬するようになる。
人民解放軍の特徴は、軍人の組織の上に共産党という党があったこと。新しい組織と軍人の養成の仕方を結び付け、近代的な革命のための軍隊を作ろうと思った。
新政府が設立後の52年、西南局の書記長だった鄧小平は中央に戻る。58年の大躍進政策を進める立場だったが、ずっと後で、大躍進政策が間違っていたと認めている。
大躍進の前に53年に財務部長になり、経済と財政運用の経験を積んでいる。
56,57年五はモスクワへ行き、中ソ論争の立役者に。
スターリンが批判されるということは、自国で毛沢東も批判される可能性があると察知した鄧小平は、これを「修正主義」と批判し封じ込めにかかる。
※中ソ論争:(中国共産党とソビエト連邦共産党の理論的対立。スターリン批判を契機とし,1960年ころから表面化した。ソ連が米国との平和共存を主張するのに対し,中国は米国に対する反帝国主義闘争を強めアジア・アフリカの解放を主張,ソ連の態度を修正主義として批判した。)
ここからソ連と中国の仲が悪化、戦争の危機を感じたため、毛沢東がアメリカに接近した。
58年に毛沢東が大躍進政策を進める。鄧小平は、頭の中ではここがまずい、あれがまずいと思っていながらも、公に批判はしなかった。大躍進の失敗を認めて毛沢東が辞職してからは、多少自由に自分なりの政策を打ち出し力を強めていく。
66年に毛沢東が文化大革命を発動。
※資本主義を歩む実権派の撲滅をうたい、 『毛沢東語録』を数億冊印刷して政治宣伝に利用。運動を主導したのは王洪文、姚文元、江青(毛沢東の妻)、張春橋の「4人組」。 政府や軍の幹部を親に持つ都市部の中高生たちが率先して運動に加わりました。 彼らを紅衛兵という。
「造反有理(反逆には道理がある)」と叫び、「四旧(古い思想、文化、風俗、習慣)打破」として指導者や知識人を攻撃し、文化財を破壊した。
この理由としては、自身の地位を保つことと、腐敗を撲滅し、党内部の権力闘争が目的。
粛正を恐れた党の幹部たちは、自分の紅衛兵を組織すると、組織と組織の争いが起き、10年にわたる大混乱を引き起こした。
鄧小平も実権派として林彪(文化大革命時の毛沢東の右腕)の目にとまり、地方に送られる。しかし毛沢東がある程度保護していたため、酷いことにはならなかっ��。
林彪が毛沢東暗殺を企てるも失敗、飛行機が墜落し死亡。
77年、鄧小平はすべての実権に復帰すると、78年に三中全会で改革開放路線を打ち出す。これは毛沢東に従うと言いながらも、実事求是(現実に直面する実務家が真理を探究する)と言い、絶妙なバランス感覚で安定した経済の発展に励んでいく。
経済成長は農村から始まった。農業の脱集団化を進め、事実上の人民公社解体、家族請負制を許可し、余剰作物を市場で売れるようにした結果、農村が豊かに、かつての人民公社から生産・サービス部門を独立させた「郷鎮企業」が出現。
しかしながら、急激な経済発展によって、インフレが進行。農民は生産性が上がり喜んだが、都市生活者は生活が苦しくなる。当時は就職の自由もなく、自分の将来への不安があった。
こうした不安から天安門事件が発生。鄧小平は学生部隊の鎮圧にかかり、諸外国から非難を浴びる。
その後、再び中国は経済成長時代に入ったが、共産党内部で利権と腐敗が進んでいる。
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『#鄧小平』
ほぼ日書評 Day281
「入門編」の方から手に取ってみた。それ以上の紹介は野暮というものだろう。
新書版ながら、大家だけあって「なるほど感」たっぷり。
日本人に理解しづらい(同じ共産主義国家の)中ソ対立の原因は、ソ連でスターリン批判が起こったから。当時の中国で毛沢東は、レーニン、スターリンに次ぐ存在。ここでスターリンが批判されると、では毛沢東は問題ないのかと言う議論になってしまう。これを封じ込めるために「修正主義」というレッテルを貼り、毛沢東の地位を確保した。
近衛兵が勝手に暴れまわるイメージの文化大革命も、実は一定レベルまで党中央からのコントロールが効いていた。そこでの「粛清」は、スターリンのそれと異なり、完全な独裁権力によるものではなかった。常に少数を標的とし、それ以外は味方につける。第一波の粛清が終わると、次の少人数を標的とした第二波が始まるといった具合。スターリンが多くの敵に囲まれていたのに対し、毛沢東はその他大勢に常に支持されるよう、うまく立ち回ったと言える。
インタビューは自然を心がけます。事前に、こういう順序で質問するとか決めない。どういう話の流れだと、相手にとって面白いと考えます(…)簡単なイエス/ノーでは答えられないような質問をするのです。どうしてそういうことをやったか、どういう人と協力したのかとか等々。
1人のインタビューで1日を費やす。しっかり準備するが、それを相手に悟らさない「自然さ」を醸し出す。現代中国人に鄧小平のことを語らせるには、準備のしすぎと言う事は無いのだろう。
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理想より実利をとった男、というイメージ。
現在の経済大国中国の礎になったのは間違いなく鄧小平がいたからだろうと、この本を読むと思う。
とにかく人渡りが滅茶苦茶上手い。そして中国には政治家が多い。
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中国共産党の歴史、権力闘争、ロマン主義VS現実主義、それを絶妙に、リアリスティックに、かつタイミングを間違えず大胆にやった鄧小平。すごいですね。この対談の元となった書籍は大部らしいので、その雰囲気だけかもしれませんが、素人の私にはちょうどよい感じでした。
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毛沢東とか、習近平とか、鄧小平とか。
名前は知ってても、どんなことをしたのかって実は知らない。。。
歴史をトレースするのは大事なことだなあと読みながら感じました。