紙の本
好きだな、桜木ワールド
2016/08/24 07:31
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1970年代といえばやくざ映画華やかな時代であったが、あれはやくざ映画というよりは任侠映画と呼ぶ方が適切だろう。その掉尾を実録ものと呼ばれた映画に譲ることになるが、高倉健や鶴田浩二、藤純子が銀幕で華麗に演じたものは様式美だったように思う。
冒頭からそんな映画の話を書いたのは、桜木紫乃が描いたこの物語もそんな当時のやくざ映画に似た雰囲気を感じたせいだ。
物語の主人公は骨折で舞台に立てなくなった元ストリッパーのノリカ。四十という年齢が裸を見せる踊り子にはどうであったか、彼女は育った札幌すすきのに戻ってくる。
札幌すすきの。北海道を何度も描いてきた桜木はこの地を「みなそれぞれの事情を抱えてすすきのですれ違」う、「交差点の街」と表現する。
そんなノリカが出会った訳ありなバーテンJIN。若い踊り子瑞穂とみのり。
ノリカがすすきので再出発したダンスシアターで若い肢体が躍動する。すべてが順調に行くかと思われた。しかし。
瑞穂は愛する男の子を宿し、みのりは中央の世界へ羽ばたいていく。
ノリカは再びストリッパーの世界に戻るしかない。
すすきのを去る最後の夜、ノリカとJINの短い会話の連続。
言葉の奥に込められた思い。
まるで高倉健と藤純子ではないか。
そういえば、彼らのやくざ映画にもしばしば雪が効果的に使われていた。
桜木紫乃がやくざ映画を観たかどうかは知らないが、ここには壊してはいけない世界観があるように思える。
だから、大向こうから声をかけても似合いそうな作品になっているのだ。
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
足を骨折して踊れなくなった40歳のストリッパーが、札幌でダンスシアターを始める。酒を提供し、ダンスを楽しむ店だが、脱ぐのではなく本格的な踊りを見せる。主人公ノリカと二人のダンサー、それに訳ありげなバーテンダー。それぞれの個性が際立って描かれ、ストーリーにも深みを持たせる。直木賞の「ホテル・ローヤル」はもとより、一貫して北海道を舞台に性欲を書き続けているが、今回は更に腕を上げたと思う。
電子書籍
元気が出た!
2016/08/18 22:19
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投稿者:さくらこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノリカさんかっこいい!登場人物皆好き。幸せになって欲しいと願いながら読みました。
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2016.5.26リクエスト
元ストリッパーのフジワラノリカがママを務めるNORIKA。瑞穂とみのり。バーテンダーの竜崎葚五郎、JIN。最後に100%満足ではないけど、ほどほど幸せに見える結末でよかった。
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SPEED感あって一気に読んでしまいました。
夜の女の世界がしっかり書かれてたけど、イケズな女の争いの話じゃなく、男前な女性たちの話なので、めちゃ良かったです!
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主人公の名前に必然性は?
ストリップを愛する著者が魂を込めて描いた物語であると思うのに、この名前ひとつで持たなくて良い色をまとってしまったように思う。もし同名の女優に捧げる作品であればまだしも、例えば主人公の容姿を容易にイメージさせるためであったりしたならこれはもう本当にありがた迷惑。著者の作品はどれも独特な世界を持ち精緻に構成されているのに、今回は小説世界を楽しむにもとにかくこの名前がささくれのように気になって仕方がなかった。こういう読者もいます。
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怪我で舞台を去り、ススキノに戻ってダンスシアターを開いた元ストリッパー。いわくありげなバーテン、新人のダンサーたちとともに店を切り盛りしながら、本当に自分がやりたかったことに気づいていく。
ストリッパーとしての道を極める姿を、こんなに凛とした女性として描けるのは、作者ならではだろう。背筋を伸ばして努力を重ね、だからと言って決して綺麗事ではなく、生々しい姿も見せる。終盤の師匠の行く末も、目を背けたくなるほど痛々しい。
結局のところ、何を置いてでも好きな道を最優先したいと望むのタイプの人であるなら、他人が常識的、客観的に見て首を傾げるような選択であったとしても、本人にとってはその道に進むことが一番幸せなのだろう。
いつもの作品のように、どこかで足元をすくわれてどん底に落ちるのでは…と心配しながら読み進めたが、珍しく登場するすべての人が魅力的で、心根の優しい人ばかり。悪意のない世界はやはりいいもんだ、と素直に胸を撫で下ろして、本を閉じることができた。
読み終えた深夜、たらこバターとチーズわかめのおにぎり、豚汁が無性に食べたくなった。
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知らない世界の、自分には縁のない女たちの話だ、と思っていた。けれど、その距離は私がとっているのではなく、私が突き放されているものなのだ。お前には裸というコスチュームを着て脚を広げる女の矜持なんてないだろう、と。女としてその身一つで生きる覚悟はあるか、と問われているようで。
交差点の街で客席にちらばっているさびしさを一本一本束ねて舞う女たちにかなうはずもない。呆然と、ページを閉じるしかない。
女の身体は華だ。女の舞には神が宿るんだ。幸福なんてないこの世で幸福感を与えてくれる救いだ。
圧倒されました。
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ケガのために舞台を降りたストリッパー。
故郷に戻り、ダンスシアターのオーナーとして再出発する。
どの世界にも矜持を持って生きるひとたちがいる。
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元ストリッパーを主人公にした踊り子達の再生と成長のお話。いつもの地を這うような哀しさが感じられず感動までには至らず。登場人物にも共感できないまま読了。ラストも予定調和すぎて余韻もない。次作に期待。
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怪我をして、踊れなくなった元ストリッパーが自分の店を持ち、新たな未来を見つける話。登場人物がみんないい人だし、大きな壁にぶつかる訳でもなく、すごく淡々と物語が進む。すすきのでオープンしたダンスシアター「NORIKA」はとても順調そうに見えるのに、主人公の気持ちが常に後ろ向きなのだけが気になるし、ラストはやっぱりこうなるのか、ってところがちょっと残念。読み進めるわくわく感が足りない。
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地元に戻り、ダンスを見ることができるバーを開店することになる。
若く才能あふれる2人のダンサーと、銀座で活躍していたバーテンダーと作り出す店。
初めから結末が想像できるけれど、そんな結末が私はやはり好きです。
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ストリッパーであれダンサーであれ
死ぬまで踊りたい人たちには
衣装をきているのか、裸なのかは
全く関係のないことなのか。
踊り子さんの矜持が垣間見れ
女性たちがただただかっこよかったし
切なかった。
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事前情報で、主人公の名前が「フジワラ ノリカ」だとw
それはないよなぁ~~・・・、と思いつつも、そこは思ったほど気にせず読めました。が、なんとなく入り込めず・・・こちらのテンションの問題かもだけど、ちょっと退屈な感じ・・・悪くはないんですけどね~。
桜木さんの作品にしては、ちょっと、中途半端な感じがしました。ご意見のある方は、ぜひ♪
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舞台で脚を怪我して踊れなくなり、逃げるようにして小屋を去ったストリッパーのノリカは20年前の出発の地、札幌ススキノで再起をはかる。
期待した桜木さんの新作だけど、今までのような満足感が得られなかった。主人公が「フジワラノリカ」である必要性が疑問。それが作家の意図かもしれないが、主人公のイメージが固定されてしまって残念。
話としても、10か月を急ぎ足で駆け抜けた感があって、薄い印象。4人それぞれの人生を連作短編とかでクローズアップしていった方が焦点がぶれないで良かったように思う。個人的には、竜崎にウラルの相羽やブルースの影山のような魅力を感じなかったので、満足感が得られなかった。