読割 50
電子書籍
失われた地平線
著者 ジェイムズ・ヒルトン , 池央耿
不老不死の人々が住むという地球最後の楽園、シャングリラ。かの地に不時着した英国人外交官の運命はいかに?冒険小説の決定版、待望の新訳で登場!映画化もされた著者の代表作で大ロ...
失われた地平線
失われた地平線 (河出文庫)
商品説明
不老不死の人々が住むという地球最後の楽園、シャングリラ。かの地に不時着した英国人外交官の運命はいかに?冒険小説の決定版、待望の新訳で登場!映画化もされた著者の代表作で大ロングセラー。
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紙の本
地上に現れたシャングリラ
2012/03/23 01:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
1920年代、独立運動が激しくなって来たインド北部の都市バスクールから、イギリス人を初めとして外国人達がペシャワールへと退去し始める。しかしイギリス外務省の領事など4人を乗せた飛行機は、予定のコースを外れて数百キロか数千キロかの東方の山岳地帯へ着陸する。そこがヒマラヤの彼方、チベット奥地の秘境、シャングリ・ラだった。つまりこの作品がユートピアを指す「シャングリラ」という言葉の語源ということ。
主人公達が案内されるのはチベット仏教風の寺院であり、荘厳な大自然の中で中国風装飾の美しさに包まれながら、そこには西欧のみならず世界中の叡智が集められている。世界の争乱から遠く離れて静かな暮らしに浸ることが出来るとはいえ、そこをユートピア=理想郷であると感じられるのは、外交官として中国に滞在し、その価値観に共感を得ていることによる。イギリス紳士としての知性と落ち着きに加えてある種の東洋趣味を持つだけではなく、彼が第一次世界大戦の従軍によって身に付いた虚無的な人生観も大きく影響している。
そう、ここは戦争による心の傷を癒すための装置として、一つの役割を果たそうとしている。だがシャングリラの意味はそれだけではなく、さらに世界を襲い来るであろう大戦乱から文明を守るという意義も持っていた。本作が書かれた1933年時点でその次の、そして世界を破滅に導く戦争の恐怖が既に予感されていたのだ。恐るべき洞察は現代においてより大きな意味を持つだろう。
シャングリラは東洋の思想をそのまま受け継ぎ発展させたのでなく、西洋人の抱く東洋観の生み出した幻想であったかもしれない。形式的には典型的イギリス人による秘境冒険小説で、冷静さや判断力、柔軟な思考が際立って共感を集めるかもしれない。次々に繰り出されるシャングリラの秘密には驚くばかりであり、強固な理想には世界を変えうる力があると錯覚を抱かせるが、迷い込んだ西洋人達は過去の生活を捨てて殉じることが出来るのだろうか。
迷い込んだ4人、特に主人公以外の3人の、シャングリラに対する見方は、シャングリラの本当の価値に気付かずに、日常に埋没する人々のカリカチュアだ。根深い東西価値観の対立のようにも見えるが、「真の」イギリス的な、あるいはヨーロッパ的な価値観でなら、目先の利益や争いにとらわれずに悠久の時間を感じられるとひそかに主張している。
だがもっと深刻なのは、この激動の時代にシャングリラは果たして存在し続けることができるのかということだ。精緻で堅固な思想体系は築けたとしても、やはり脆く消えゆく蜃気楼ではなかったのかという予感も僕らを切なくさせるし、そこに身を捧げられるのはなんらかの諦め、虚無感によるのだとしたらなんという逆説だろう。理想郷は美しいほど儚い。そして悲しい。
紙の本
シャングリラ
2016/04/29 01:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆん - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在では、あまり目新しく感じないかもしれませんが、この本が書かれた時期からすると、斬新な内容だと思います。
この本の解説も面白かったです。
シャングリラという言葉は、きっとサンスクリット文学などで楽園的な意味で使われているのだと勝手に思っていました。
この本で作られた造語だったとは知りませんでした。
シャングリラという地名が、この本から取られて実際に地名として利用されていると知って、さらに、驚きました。
紙の本
東方から西欧へ
2016/11/05 11:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
チベットに取り残されながらもたくましく生きる4人に生命力を感じた。当時最高峰を誇ったヨーロッパへの、鋭い文明批判も感じた。