電子書籍
ブルーカラー・ブルース
著者 タカ
ブラックな建設現場で働く、主人公・松本貴仁24歳。安い月給、危険な作業、業者の怒声、初めての土下座――。退職を決意する松本に、続けろと言う親と、道が分かれてゆく友人たち。...
ブルーカラー・ブルース
ブルーカラー・ブルース (Next comics)
商品説明
ブラックな建設現場で働く、主人公・松本貴仁24歳。
安い月給、危険な作業、業者の怒声、初めての土下座――。
退職を決意する松本に、続けろと言う親と、道が分かれてゆく友人たち。
辞めるのって逃げなのか?生きるのってこんななのか?たった一人の松本が出した答えとは?
迷いながらも不況を生きるロストジェネレーションに贈る、救済の物語。
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紙の本
働くことに悩む人に
2010/09/06 21:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:cuba-l - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは建設現場の新米マネージャー経験を通じて働くことに悩んだ主人公の、全人格的な苦難からの脱出と再生の物語である。
体験者らしく業界の内部の事情や非人間的な職場の様子もリアルに描写されてストーリーに迫力をもたらしているが、なにも働くことに伴う困難は建設業界やブルーカラー労働に限った話ではない。
知っての通り、この社会における就業の難しさは、厳しい求人倍率や雇用のミスマッチも当然のことながら、当世の個人が自分らしさや自己実現を脅迫的に求められる一方で、ますます効率的な利潤追求を尖鋭化した企業の目的が、個人の動機と一致することはなかなか難しくなっていることにもある。
多様な個性を単純な企業論理がみな網羅できるはずはないのだから、この企業社会は、多くの人が働くことに全人格的な納得を得られないことを前提としてなんとか成り立っているとも言える。
それでもたいていの人間はどこかで折り合いを付けて働くのだが、なかなか企業の用意できる給与と昇格というニンジンだけで自己の矛盾は覆えない。そこに働く者の迷いと苦が生じる。
物語の主人公も、過酷な労働や受け入れがたい会社の要求にぼろぼろになるまで駆け回り、なんとか会社を辞めたはいいものの、今度は再就職先にめぐり合えずに心身に大きな変調をきたすほど落込む体験に見舞われる。この過程で主人公は、悩みぬいた末に自己実現だの自分らしさの探求だのという口当たりのいい「言葉で作られた自己」に気付いてこれを克服し、ついには自己の恨めしく厳しい境遇に「感謝」できる境地にまで至るのだが、この一連の描写は光を放つ。
本書は単なる作者の体験漫画にとどまらず、七転八倒の困苦のなかで悩み抜き考え抜いて、ついには自分の力で光射す所へと這い出でるまでの自己救済の物語である。
就業を控えた若い人には一度ぜひ読んでもらいたい物語であるが、働くことに悩み、生きることに苦悶する多くの人がきっと勇気と共感を得ることが出来ることだろう。