紙の本
目に見えない力で生きる
2017/07/12 12:22
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
祢々と羚羊の出会いから始まる。祢々は不思議な魅力に溢れる女性で羚羊はじめ、河童、猿など生きとし生けるものから愛され、加護を受ける。祢々は何事にも冷静で、ずっと先を見て判断を下す。(時々、毒も吐くが)そして人間だから動物だからなど差別せず、心と眼差しを傾ける。夫、息子、娘、最後には故郷を捨てざるを得ず、幸福とは言い難い人生だったかもしれないが祢々は知っていた。味方がたくさんいることを。だからこそ波乱に満ちた人生を生き抜くことができた。羚羊、河童の祢々への敬愛が微笑ましく、そして素晴らしいのが本書の魅力。
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦国時代、夫と嫡男を続けて亡くした奥方が女亭主となり家臣をまとめ、地領を守る大河小説。
面子ばかりを重要視し戦に臨みたがる家臣を抑えながら外圧の真の狙いを読み生き抜く道を探っていく女性の苦労やしたたかさがカモシカ視点で描かれてます。
紙の本
表立った戦は減った分、はかりごとがはびこる。
2023/04/22 09:19
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
「三日月の 丸くなるまで南部領」と謳われた南部藩。そんな広い領地の中でも北の八戸から南に他国と境を接する遠野に移封され、女城主として波乱の人生を送った清心尼を主人公とした作品。一族の覇権争い。秀吉に逆らって悲惨な最期を遂げた九戸政実の記憶も残りながら、時代は徳川の世となり、表立った戦は減った分、はかりごとがはびこる。それらに翻弄される主人公。翻弄され続ける。どこまでが史実なのか。カモシカの角を語り部とし、河童伝承や座敷わらしなどを混ぜ込んで来ているだけに、信憑性については期待は持たぬ方がいいのか。
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「羚羊の角」を語り手に配し、遠野ゆかりの「河童」や絵から抜け出した「ぺりかん」やらも登場する、ファンタジー色の強い作品となっています。 ―― https://bookmeter.com/reviews/72976384
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祢々と羚羊の出会いから始まる。祢々は不思議な魅力に溢れる女性で羚羊はじめ、河童、猿など生きとし生けるものから愛され、加護を受ける。祢々は何事にも冷静で、ずっと先を見て判断を下す。(時々、毒も吐くが)そして人間だから動物だからなど差別せず、心と眼差しを傾ける。夫、息子、娘、最後には故郷を捨てざるを得ず、幸福とは言い難い人生だったかもしれないが祢々は知っていた。味方がたくさんいることを。だからこそ波乱に満ちた人生を生き抜くことができた。羚羊、河童の祢々への敬愛が微笑ましく、そして素晴らしいのが本書の魅力。
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ときは江戸時代、徳川家康が天下統一を成し遂げようとする頃から2代目将軍秀忠の頃、ところは現在の青森、八戸辺りから岩手の遠野周辺を仕切っていた南部藩所縁の年代記。しかし、このお話は一風変わっています。語り手は羚羊(カモシカ)それも一本の角しか持たない鹿の角が死後も「南部の秘宝」と呼ばれて意思を持ち語りだすのです。
かたづのが出会いを語るその人は、後に女性ながら八戸の南部氏の第二十一代当主になった祢々(ねね)。まだ15歳でしたが、第二十代当主となった直政氏のご内儀となっていたのでした。祢々の波乱万丈とも表現されるその後の人生を、かたづのは当に直に側で見聞きして語ることになります。時には人の中に入って降臨し、南部に伝わる小正月の行事の「叱り角」として登場します。祢々は夫や子どもを政略の果てに殺され、叔父の政略を逃れるために尼になり、戦で大切なことはやらないこと、と無駄な血を流さないことを信条に女大名として藩を導いていきます。
遠野の民話で有名な河童の挿話があり、ペリカンや蛇が化身として登場するのも、殺伐とした争いの世の中を描きながら、ほのぼのとした味を醸しだしています。
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南部に実在した女性大名・祢々を描いた作品。
正確には領地を幕府から与えられたわけでは無いので大名ではありません。幕府から認められているのは対抗する祢々の八戸南部家はその分家で、藩内の城持ちの(非正式な)支藩です。
史実に沿って描かれる時代小説ですが、語り手が一本角のカモシカの霊だったり河童がちょろちょろ現れたり、伝奇要素がかなり混ざっています。
中島さんの特徴は不思議なユーモア感です。まっとうに南部の藩内抗争を描くと、そういったユーモア感が出しにくいがために伝奇要素を取り入れたのではないかと思います。
しかし、なんとなく中途半端な気もします。思い切って真正面から描くか、妖怪変化の類を使わず祢々の近くに面白い人物を置いてその人の視点で描くとかしたほうが良かった良かったような気がします。
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江戸時代にたった一人、奥州南部藩に実在した女大名の祢々(後に清心尼)を主人公にした歴史時代小説。
祢々は八戸南部氏の当主・直政の妻となるが、夫や幼い嫡男が不審な死をとげる。
これはかねてより八戸を狙っていた叔父の仕掛けた陰謀だと確信した祢々は城を継ぎ、女亭主となった。
その後も叔父の策略によって次々に襲いかかる難事に翻弄される祢々の長い闘いが始まった―。
中島さん初の時代小説。
実在した女大名を描いた物語ということで面白そうだなと思って手に取りましたが、読んでみてびっくり。
なんと語り手は祢々のそばに寄り添うカモシカで、死んで角だけになっても「片角(かたづの)」として彼女を助けるという存在。
遊び心が効きすぎたぶっとんだファンタジー要素におののきながらも、読み進めていくうちにすぐ夢中になりました。
多くの困難に直面しながらも祢々は領土と領民を守るため、悩み苦しみ、時に毒づきながら、たくみな手腕で難事を乗り切っていきます。
「戦でいちばん重要なのは、戦をやらないこと」
「戦いが起きてしまったら勝つのではなく負けぬことであり、なるべく傷が浅いうちにやめること」
領土と領民を守るために語られる彼女のこの信条は現代でも実現が難しいものであり、子どもを産むことができる女性ならではの考えだと思いました。
藩内の争いが激化して一触即発の危機を迎え、血の気が多い武士たちは争いを起こすことですぐに死に向かおうとします。
「何でもいいから思う存分叩きたい」「戦いで死ぬのは本望 。自分が討たれることで新しい筋道が立つのであれば、それを大義として死んでもいい」などという男性ならではの荒い理屈には辟易しましたが、それは領土問題や差別問題に揺れる現代日本の姿そのもので、考えさせられました。
彼女に降りかかる艱難辛苦は過酷すぎて、読んでいてつらくなってきますが、河童や大蛇などの伝奇的なエピソードが随所にはさみこまれているので軽妙でユーモアあふれる筆致になっています。
史実や伝説を交錯させて、不可思議な世界で遊ばせてくれるので飽きません。
また、彼女の一生は男たちに翻弄されるものでしたが、耐えて忍んで…という印象ではなく、さっぱりとした、感情的にならない少年のような気質なので、読んでいて気持ちいいんですよね。
友達になりたいくらい笑。
「片角」が最終的に辿り着いた世界で見つけたものは――読み手もまた最後に不思議な伝承あふれるみちのくに誘われ、深い余韻に浸ることができます。
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女城主としての生きざまが、井伊直虎を彷彿させる。違うのは、直虎は外圧との戦いだったが、祢々は身内との戦い。でも共通しているのは、男には分からない苦労を背負ったということ。
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女大名、その波乱万丈の一生。
骨太の歴史小説かと思いきや、河童も出てくるし、羚羊の角が語り手だし、ファンタジーのよう。
「戦でいちばんたいせつなことは、やらないこと」を信条に祢々は、次々と降り注ぐ過酷な運命に立ち向かう。矜持よりも命。でも、分かり合えないこともある。異なる意見の人もいる。これが祢々の一人称だったら、もっと引っ張られたり、反発したりしたかもしれない。でも、語り手は角なので俯瞰的になっている。河童の話もあって、民話や伝説のようだ。そこが他の歴史小説と違う。
今年の大河ドラマがちょうど井伊直虎で、祢々も尼になっているからか、どうしても脳内イメージは柴咲コウになってしまう。で、この祢々は実在の人物? あまりこの時代の、そして東北の歴史に明るくないので、わからなかった。それは些細なことなのだけど。
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遠野の羚羊の片角が語る江戸時代唯一の女大名の一代記。
夫と幼い嫡男を立て続けに失う。二度と大切な人たちを失いたくないと、戦わず困難に知恵と勇気で立ち向かう。
しかし、謀略と武士を気取る男どもに何度も窮地に陥り、身を削りながら、最後にようやく短いけれど静かな時を迎える。
河童や、絵か抜け出たペリカンも出てきて、どこまでが事実で、どこからが創作なのか判然としないが、一気に読んでしまった。「小さいおうち」にも似た空気感を感じた。
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きっかけ:タイトルがずっと気になっていた。
読み終わって、これがフィクションであることに驚く。
そもそも人の言葉がわかる一本角のカモシカが語り部となって、一人の女性が戦国時代を生き抜く様を語ったり、河童が現れたりとかなりファンタジーなのだけど、そんなことを忘れて一気に読んでしまった。
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歴史小説はそれほど好きではないけど
面白く読めた。
東北の歴史に詳しくなくてどこまでがファンタジーなのかよくわからなかった、知ってたらもっと面白かったと思う。
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中島京子「かたづの!」読了。重い歴史物の風格と、ユーモア、ファンタジーが混在する素晴らしい作品でした。中島さん、面白いなぁ…今、一番好きな作家さんです。☆四つ!