紙の本
「Lean In」の次の時代
2017/09/13 12:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アクアマリン - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に良書。
シェリル・サンドバーグ氏の「lean In」を更に進化させた女性のキャリア本です。恐らく、筆者自身もそのように考えていると思う。
「lean In」の中で、シェリル・サンドバーグ氏は「私と同じ選択をしないと言って同性を責めているように聞こえかねないことは百も承知で」全ての女性を鼓舞しました。
その動機は畢竟、「世界をよりよくする」という理想のためでした。
しかし、本書はその理想に加え、「幸せな人生を送るために」という視点が加味されている。
そう、より良い社会を実現するために戦う女性が、「夜一人で帰り、アパートで出前の中華を食べる」生活では、特に若い世代の女性では共感を得られないと思いますし、そうなっていくべきだと思います。
「unfinished bussiness」では、繊細な視点で世の中に転がる「女性のキャリア問題」を読み解いていきます。
そうして出た解は、「実は、女性の問題ではなく、ケアの問題である」でした。
つまり、今社会では、人より努力し、競い合ってお互いを高めあっていく「競争」が高く評価されている一方で、人のお世話をする、慈しむという「ケア」が非常に低く評価されている。
そのケアへの不当な評価こそが問題なのです。
本来、競争もケアも、世の中には必要な、重要なことです。
努力し実力を高めていくことと同等に、子育てをしたり、家族を労ったり、介護したりすることは必要なことですが、実際に、子供の今後に大きく影響を及ぼす教師というケアの仕事の報酬は低く、社会的な地位も高くない。
実は、「女性の問題」ではなく、「ケアの問題」こそが本質だとこの本では解いています。
まさしくその通りだなと感じました。
論文から豊富に根拠が引用されており、説得力があります。
また、男性だけでなく女性にも変わる必要はあることや、「Lean In」より遥かに売れたフィフティ・シェイズシリーズ(お金持ちで完璧な男性とのラブストーリー)への言及、ある法律事務所であった「なぜ女性が辞めてしまうのか?」という調査結果で分かった痛快な事実など、読み応えたっぷりです。
著者には二人の子供がおり、夫は教授です。お互い実りあるキャリアと幸せな生活のためにどんなことを考え、行動したのか。
きれいごと抜きで、スーパーウーマンもいない、著者の体験談には一見の価値ありです。ぜひ本書を読んで確かめてください。
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もうすぐ生後1ヶ月になる娘を膝の上であやしかながら読了。これからの妻と娘との人生に対する問題提起そのもの、自分のUnfinished Businessでもあった。
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大企業の平社員として最低限のことだけやって働く(自分)のと、アメリカのエリートらしく「全てを手に入れる」気概を持って上りつめようとする(筆者)のでは、「仕事」の定義に差があるので、あまり現実的な話はなかったが、両立って簡単じゃないよねと素直に認めていることには意義があると思う。
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上司から借りて読んだ本。
自分の中にはない価値観がたくさんつまっていて新鮮だったし、考えを知ることができてよかった。
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生産性の決め手は「自分にしかできない仕事」だけをやり、他人にできることをすべて誰かに任せること。
デンマーク人の幸福の秘訣、それが「ヒュッゲ)と言う考え方にあることを発見した。出家とは今この時を楽しむことだ。
日本にいると、肌の色の違いを意識することなんてほとんどない。一方、アメリカではその違いが歴然として存在している。白人ではない人たちがどれほどの苦労を強いられているのか、全く知らなかった。
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前半は女性の社会進出の現実が中心。その流れで、育児に対して社会が価値を見出していないことも論じています。
後半は「ケアの重要性」が中心かな。育児などのケアを通じて人間的にも成長して貢献してくれるのに、企業などは十分な報酬を与えていない。
全体的に女性の話だけではなく、男性から見た話 (育児をあきらめている、育児に注力すると特異な目で見られる現実)も十分に考慮されています。
個人的には、日本も同じような状況から抜け出せていないと思うので、こういう現状認識が全世代で広まってくれるといいなと思いながら読んでいました。良書でした。
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『仕事と家庭は両立できない?』
-「女性が輝く社会」のウソとホント
アン=マリー・スローター 著
篠田 真貴子 解説
関 美和 訳
NTT出版
2017/08 352p 2,400円(税別)
原書:Unfinished Business(2015)
はじめに 国務省を辞めなくちゃならないなんて「かわいそう」
1.決まり文句を超えて
2.色眼鏡を捨てる
3.平等への道
【要旨】仕事と家庭、とりわけ育児や介護との両立は、現状、主に多くの女
性たちが抱える課題となっている。これは、政府が「女性活躍」を政策の柱
の一つに掲げる日本だけでない世界的な問題であり、女性の社会進出先進国
と言われる米国でもいまだ十分に解決されていない。外交の専門家としての
キャリアを築きながら自身も両立に葛藤した女性研究者が著した本書では、
この問題を女性だけの問題に限定せず、職場の問題、あるいは男性を含む社
会全体の問題と捉え直す必要性を訴える。そして、個々人が意識や考え方を、
企業が職場を、そして為政者が制度や法律をどのように変えるべきか、調査
結果や事例をもとに考察し、具体的に提言を行っている。著者はプリンストン
大学教授で、ニューアメリカ財団CEO。ヒラリー・クリントン国務長官のもと
で政策企画本部長を務めた。フォーリンポリシー誌による「世界の頭脳100」
に4年連続で選出されている。
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●人生は自分次第と思い込むと社会構造の問題に目が向かなくなる
大学教授として、若い女性から必ずといっていいほど聞かれるのが、「ど
うやって家庭と仕事を両立しているんですか?」という質問だ。
私はフェミニストだ。女性は男性と同じように100パーセント充実したキャ
リアを築きながら、男性と同じように家庭生活の喜びを味わうことができる
と信じ、その信念に沿って生きてきた。だから必然的に「必死に仕事に打ち
込んでいれば、すべてを手に入れることができる」といった一連の決まり文
句を唱えてきた。
こうした呪文は、まるであなた自身が正しい選択をすれば仕事と家庭が両
立できるような幻想を与えてくれる。もちろん、あなたの選択は大切だが、
二人ともフルタイムで働き、何人か子供ができて、また年老いた親の面倒も
見なければならなくなると、当初の思い通りにいかないのが現実だ。
そうした真実を知ることで、カップルは生活を始める前にお互いの選択と
トレードオフについて、正直に、また率直に話し合うことができる。現実を
語ることで、真の平等を阻んでいる障害をきちんと把握できるようになる。
それが、壁を壊すための行動のきっかけにもなる。
若い女性が、フェイスブックのCOOになったシェリル・サンドバーグが書い
た『リーン・イン』に惹かれるのは、この本が、自分のキャリアと家庭の行
く末は自分次第だと教えてくれるからだろう。だが実際のところ、人生はそ
れほど自分次第でもない。仕事と家庭の命運が自分にはどうにもならないこ
ともある。人生は自分次第だと思い込んでしまうと、逆に、私たちの将来を
決定づける社会構造や要因に目が向かなくなり、どんな構造変革が必要かを
考えられなくなる。
今必要なのは、社会構造をもういちど作り直すことだ。子育てや介護の悩
みと負担が、女性とその家族を社会のどん底に突き落とすことのないよう、
働く場所を根っこから構築し直さなければならない。このような変革は、フェ
ミニズムの枠には収まらない。社会のすべての階層の女性を支えて活躍を促
すような政策や慣習が実践されれば、女性だけでなくすべての人によりよい
社会が実現できるはずだ。
●問題は性差ではなく育児や介護自体が過小評価されていること
このところ、男性の多くも、自分たちだってすべてを手に入れてないと声
を大にする。仕事をしながら家族と充分な時間を持てないと愚痴るのだ。
はじめは反射的に「違う」と思った。そもそも女性運動は、男性が女性よ
りもはるかに多くを手に入れているという前提から成り立っている。男性が
実際に手に入れているものを、女性が欲しがるのは当たり前だ。それでも予
断を持たずに男性の言い分を聞いてみると、その中にも大切な真実があるこ
とがわかってくる。
男性が子育てや介護のために3か月の休暇を申請すれば、降格されるかク
ビになる可能性が高いという研究もある。ほかの男性にくらべて女々しいと
見られてしまうからだ。「男らしくない」としてイジメを受けることもある
らしい。少なくとも西欧では、キャリアの夢を脇に置いた女性が社会的なア
イデンティティの危機を感じることはあっても、女性らしくないと言われる
ことはほとんどない。
母親なら当たり前のことを、父親がやると褒められる。ニューズウィーク
に「男らしさ」についての特集記事を寄稿したアンドリュー・ロマノはそれ
を、「男性にはあまり期待していないという、ソフトな偏見」だと言う。
ここでちょっと、反対のケースを想像してほしい。男性が当たり前に書い
ている報告書を書いて褒められたとしたら? しかも、あなたがそれほど上
手に書けるとは思っていなかったなんていう含みのある言葉だったら?
子供になによりも必要なのは、愛、安定、刺激、思いやり、育み、そして
継続性だ。それを与えられる養育者が、母親とは限らない。子育てを誰がど
う行うにしろ、鍵になるのは安定した環境だろう。安定したひとり親家庭(生
まれたときからずっとひとり親)で育った子供は、安定したふたり親家庭で
育った子供と比べて、学業成績は変わらないことが、オハイオ州立大学の研
究で明らかになっている。
女性であれ男性であれ、仕事と家庭の両方の責任を持つ人たちは、キャリ
アの面で妥協を強いられ、代償を支払っている。だからこれまで「女性の問
題」とされてきたこの課題を「育児の問題」として見直すことで、視野が広
がり、本当に取り組まなければならないこと���きちんと目を向けることがで
きる。その本当の問題とは、「育児や介護の価値が過小評価されている」と
いうことなのだ。「誰がそれをやるか」は関係ない。
「男性も家のことをやるべきだ」と言うのではない。「それができる」と
考えてほしいのだ。男性は思いきり家族の世話をしていいし、女性と同じく
らい上手に家のことができる。女性は、人生の中で男性をどう見るか、男性
の価値をどう判断するかをもう一度考え直してほしい。
●労働環境を変えるとともに「ケアのインフラ」を整備すべき
企業は、自分たちにいいことができずにいる。社員が家庭と仕事をうまく
組み合わせられれば組織にとってもメリットがあるのに、一歩が踏み出せな
い。まして今、人材獲得競争はますます厳しくなり、グローバルなデジタル
経済で成功するための人材教育が国家的な懸念となっている時代だ。そんな
時代に、高い教育を受けて仕事もできる40代から50代の膨大な数の女性たち
が、リーダー路線から完全に締め出されている。しかも、家族の世話のため
に一度だけ主流路線を降りたというだけの理由で。
どうしてそんなワンパターンの働き方が続いているのだろう? その理由
は、働くタイミングと働き方、理想的な働き手のイメージ、いつキャリアの
ピークを迎えるかということについて、この社会が1950年代の考え方から抜
け出せないからだ。
ありがたいことに、助けの手はもうここにある。私が取締役を務める企業
の人事部長は、ミレニアル世代(※1980年代から2000年代初頭に生まれた世
代)は「いつでも、どこでも、どんな働き方も」可能な職場を望んでいると
言っていた。企業もまた、労働環境を変える方向に進化している。そのこと
を理解し始めた伝統的な企業もますます増えていて、柔軟な働き方を提供し
たり、育児休暇や子育てを金銭的に支援したり、介護にも金銭支援を始める
ケースもある。
こうした大規模な変化を起こすことが重要だ。こうした変化が、そのうち
私たちひとりひとりの生活と仕事に影響を与え始める。一方で、個人にもで
きる日々のささいな変革もある。どう考えるか、どう話すか、どう計画する
かを変えることはできる。職場はその交差点だ。経済や社会の大きな力と個
人の努力が実務レベルで交わる場所だ。管理職と労働者は、個人でもまた一
緒にも、誰もがケアとキャリアを両立でき、企業にも社員にもメリットが生
まれるように、職場の環境を作り出すことができる。
また、かつて、社会にはケアのインフラがあった。専業主婦と呼ばれるイン
フラが。だが今では女性の6割は職場に進出し、かつてのインフラは壊れて
もとに戻ることはない。私たちは、21世紀の新しいケアのインフラを作らな
ければならない。
妊婦の有給休暇や雇用保険の義務化、またパートタイム従業員の保護といっ
た、誰もが使えるようなケアのインフラを作れば、正しいことをしようとし
ている企業が公平に戦える環境ができる。競争の激しい環境で、個々の企業
に頼っ��必要な変化を起こしてもらうわけにはいかない。理想的な社会に向
けた新しい基準を設置し、足元を固めるような、政治的な変革が必要になる。
コメント: 本文中にある、男性も家のことを「できる」と考えるという視
点はとても重要だと思う。とかく「仕事と家庭の両立」を「しなければなら
ない」と考えがちだが、それに「挑戦できる」ととらえるのはどうだろうか。
義務ではなく前向きな可能性と考える。たとえばよく言われるように、女性
でも男性でも、育児から学べる点は多く、経験することで成長できる。さら
にそこから幸福感も得られる。雇用者側も、育児休暇などで人員が抜けるの
を戦力ダウンととらえずに、経験から新たな視点と知識を蓄えた人材が増え、
組織がパワーアップすると見る視点が大事だろう。そのようにいかにマイン
ドをシフトさせられるかが、この議論のカギになるのではないだろうか。
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仕事と家庭は両立できない? アン=マリー・スローター著
「ケアする人」の視点の大切さ
2017/10/7付日本経済新聞 朝刊
題名から、働く女性のための本だと思ってはいけない。もちろん、本書が家庭と仕事の間で葛藤する女性や、育児の責任をきちんと担いたいと思う男性に珠玉の知恵と多大な勇気を与えることは確かだ。加えて、女性が活躍することの意義をようやく理解し始めた、企業・組織の人々に是非一読をお勧めしたい。自分の常識や従来の考え方が本質に届いていないと、徹底的に論破され、知的な刺激を受けられること請け合いだ。
物語は、著者がヒラリー・クリントン国務長官のもとでの政策企画本部長の2年の任期を終え、続投を期待されながら、プリンストン大学教授に戻った時から始まる。それまでに米国国際法学会会長や女性初の大学院長など数々の要職を務め、フルに講義をもち、論文やメディアのコラムを書き、スピーチをする多忙な生活に戻ったにも関わらず、彼女はキャリアから「ドロップアウト」したかのようにいわれる。
ワシントンを去るのに葛藤はあったが、「夫と10代の子供たちと過ごすことを優先する」のがなぜ「ドロップアウト」なのか、著者は人々と議論し、文献にもあたり、考え続ける。そして、育児や介護などの「ケア」する仕事は、社会的な地位が必ずしも高くなく、女性の役目だと思われていること、またそれゆえに賃金も安いことに行きあたる。
しかし、「ケア」は誰かの成長を助け、可能性を自覚させるとても大切な仕事のはずだ。著者は国全体、特に働く場を、ケアする人の視点でもっと考えるべきだと訴える。また、社会が変わるためには、男性・女性問わず偏見から脱し、たとえば、科学的には証明されていない、性別による向き・不向きといった思い込みを捨てなければいけない、という。
オバマ大統領が、自分が死の床につくとき、考えるのは自分の作った法案や政策やスピーチやノーベル賞ではなく、娘との散歩や妻とのんびり過ごした午後のひと時だろう、と言った発言を引いているのはおもしろい。人種問題をはじめ、人権についても学べる。
「仕事と家庭の両立」は一つの時代環境下での問題設定なのかもしれな��。発想の枠組み自体を見直す機会を本書は与えてくれる。
原題=Unfinished Business
関美和訳、NTT出版・2400円)
▼著者はプリンストン大学教授。ニューアメリカ財団CEO。
《評》早稲田大学教授
川本 裕子
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ヒラリークリントン国務長官の元で政策企画本部長を務めた著者が語る、仕事と家庭の両立のリアル。
女性神話あるある。
必死に仕事に打ち込んでいれば、全てを手にいれられる。のウソ。
協力な相手と結婚すれば、全てを手に入れられる。のウソ。
もちろん、全てを手に入れる事が全てではないかもしれないが、多様な価値観や、実体験を知る事は良いと思った。
目次
Part 1 決まり文句を超えて
1 女性神話のウソ
2 男性神話のウソ
3 職場のウソ
Part 2 色眼鏡を捨てる
4 競争とケア
5 資産運用は子育てより難しいか?
6 女性運動の次は男性運動
7 ありのままで
Part 3 平等への道
8 話し方を変える
9 キャリアプランをたてる
10 職場を変える
11 思いやりのある市民になる
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この人の言うことは確かにその通りなんだけれど。でもね、結婚する前に子育ての時にどうなるかなんて話をしたら結婚出産が減るだけのような。男は逃げる。うう。50になってからスピードを上げようとしても体も気持ちもついて行かれない。ケアは日本でもお金にならないし評価されない。
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結局自分は何が大切なのか。仕事?家庭?両方というのが難しいこと、男性と女性のダブルスタンダードが確立されてしまっている世の中で、育児や介護をしながら働くことについて、価値観と向き合いながら読んだ。
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「世界の頭脳100」に選ばれた女性が書いた、まったく新しい働き方の教科書。全米で話題沸騰の書、待望の邦訳!
「BOOK」データベースより
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この本、今年読んだ本のベスト3には入りますわ。
性別、年齢、職種問わず、すべての人に読んでほしい。そして古い考え方からシフトするきっかけにしてほしい。
著者のアン=マリー・スローターさんは、弁護士であり、学者であり、経営者であり、アメリカ国務省の政策企画本部本部長にもなったことがあるアメリカのスーパーウーマン。同時に、男子2人を育てるワーキングマザーでもあります。
彼女は、夫に子育てを託し単身赴任で国務省の重役を2年間務めましたが、子供が荒れるなど色々問題が勃発したので、子育てを理由に契約更新を断り、家族のもとに戻りました。
この本は、彼女が身をもって感じた競争社会の限界や問題、ケア(育児・介護など)に対する私たちの思い込みについて、様々な気付きと示唆を与えてくれる本です。
この本を読んだ最初の感想→「アメリカ女性すごすぎ!」。
アメリカは、男女平等ランキングで49位(144ヵ国で比較)。
どちらかというとランキング上位の方なんですが、読んでいくと「よくこんな整ってない社会保障制度でランキング上位になれたもんだな…」と、心底感心してしまいます。
どんだけ整ってないかというと、
・産休は産前産後あわせて12週。それ以上休もうとすると解雇されることも多々ある。もちろんその間は無給。
(ちなみに日本は、産前は6週、産後8週が基本で、収入に関しては、会社からは無給だけど健康保険で手当が出る)
・育休の制度も基本はない
(州によって多少違いはあるらしい。ちなみに日本は最長2年までで男女共に健康保険から育休手当も出る)
・保育園問題は日本と一緒。妊娠発覚時点で保活が必要らしいし、いい保育を受けたり、よいベビーシッターを雇うとかなりの額になるらしい。
・職場環境も超微妙…。
(「従業員の柔軟な働き方」ではなく、柔軟なシフトに合わせて直前で従業員が割り当てられる、という企業側優位の理屈になってるサービス業もあるらしい。)
などなど。
読んでていろんな事例や企業の話がでてくるんですけど、ハイキャリアはもちろん、貧困層の方になればなるほど、ホントにヒドイ…。
文化の違いはあるにせよ、こんな社会保障で、男女平等ランキングが49位ってのはホントにすごい。。。
ちなみに男女平等ランキングは、経済・政治・教育・健康における男女格差を数値化したランキングらしいです。
気になったので、純粋に日本とアメリカでどっちの方が子供をより多く産んでるかもついでに調べてみました。
結果、アメリカの合計特殊出生率は、188ヵ国中129位で、日本は170位…。
もし、日本の文化でアメリカのような社会保障レベルだったらと思うとゾッとする…。
こんな環境でもたくましく子供を育てて働いてるアメリカのママ、マジですごい。。。
あと、もうひとつ思ったのは、
「国の文化の違いより、すぐとなりの人との文化の違いを埋める方が難しそう。」という点も読んでて感じました。
すぐとなりの人ってのは、たとえば「男女」とか「バリキャリと専業主婦」とか「地方出身と都会出身」とか。
どこの国でも存在する違いなんだけど、そういう身近なところでの違いのほうが、違いを乗り越えるのがすごく難しいな、と思ったんですよ。
会社の同僚(中国の地方出身の方)と話をしたときに感じたんだけど、地方で育ったからこその肌感覚、みたいなのがすごく似てるように思ったことがありました。
「地方で育ったからこその肌感覚」ってのは、たとえば、人との距離感とか、死生観とか、決まりごとに対する臨機応変さ(ユルさ)とか、そういう価値観の根っこの部分みたいなもの。
地方出身の私には、「同じ日本の、都会で育った人」の感覚よりも、「違う国の、地方で育った人」のほうが、なんか根っこの部分が近いのかもしれない、と感じたんですよね。
(別に都会育ちの人とはウマが合わないということではないです。ただ、「国境を越えて同じなんだ」と感じたというだけの話。念のため。)
そういう、日常のコミュニケーションで感じてたことを、この本でも感じました。
アメリカも、やはりケア(家事・育児・介護など)の中心は女性だし、女性・男性それぞれの葛藤と生きにくさ、仕事とケアに対する価値観の差、妻と夫の家事のポイントの違いなど、価値観の違いが表れる場面は日本と驚くほど同じ。正直「そこまで同じなの?!」とびっくりするほど。
国の文化の違いってわかりやすい分、「あ、この国はこういう文化なんだ」と受け止めやすいし、価値観の差もお互いに認識して折り合いをつけやすいような気がします。それに対して、「同じ文化」とお互いに思い込んでる場合、その思い込みが邪魔して、互いに主張を曲げられなくなるんじゃないかな、と思いました。
文化的に日本ほど男女の差がなさそうなアメリカでも同じ問題で悩んでるんだもの、文化や風土もプラスされた日本で、「競争」と「ケア」に同じくらいの価値を与えていけるようになるのは、すごーーーく難しいだろうなぁ…。
ワタクシ的名文
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いろいろな意味で、この運動はまだ道半ばといっていい。21世紀の曲がり角に立った今、女性だけでなく男性もステレオタイプや思い込みから解放されるべきだし、それが女性の前進につながるはずだ。つまり、これまでのさまざまな「常識」に疑問をなげかけなければならないということだ。何が大切か、それはなぜなのか、何をもって成功とするのか、何が幸福の源なのか、真の平等とはいったい何なのか?それを問うには、職場環境から、人生設計から、リーダーの在り方まで、すべてを考え直してみなければならない。
私の理想とする社会は、すべての人に充実した働き方の機会が開かれている社会だ。もちろん、単に給料のいい仕事がしたいという人には、その道が開かれていればいい。ただし、仕事と同時に、家族や友人を愛し気遣う生き方が尊重され、そこから深い満足を得られるような社会であってほしい。この本が、そちらの方向に向かう���けになれば幸いだ。
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著者がこの本を書いた理由です。
私自身、この本を読んでて自分のなかにある「競争の方が価値が高い」という思い込みに気づかされました。
自分の中に無意識にある、「マナー」や「思い込み」や「常識」の呪縛にそれぞれが気付いて、価値観の再構築が必要なんだろうと思います。
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先ほどの3人の学者がコンサルティング会社の依頼で行った調査に話を戻そう。綿密な調査の結果、この会社では男性も女性も同じように仕事と家庭の両立に対するストレスをため込んでいたことが分かった。また、過去3年間に長時間労働が原因でこの会社を辞めた社員の割合は、男女ともに同じだった。この会社の人事の問題は性差にあったのではない。経営陣の思い込みは間違いだった。問題は企業文化にあったのだ。
この会社の上層部は、3人の発見したことを認めなかった。組織全体の哲学をいちから見直せと言われたくなかったし、クライアントに過剰な期待を抱かせてやらなくていい仕事までやりすぎている(たとえば、クライアントが到底みきれないほどのパワポ資料を何百枚と作っていた)という指摘もいやがった。もしすべてを根本からやり直すとしたら、膨大な努力と自省が必要になってしまう。
上層部が望んでいたのは、これが女性の仕事と家庭の両立の問題だと確認することだった。それが確認できれば、彼ら自身の行動や考え方を変えなくていい。皮肉にも、コンサルティング会社の経営陣は「証拠に基づく分析を拒絶」したのだった。
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あるコンサルティング会社の上層部から依頼されて、著名な3人の学者がその会社の内情を調査したんだそうです。
上層部としては、自分の会社で起きている問題を女性特有の問題として片づけたいという思惑があったみたいですが、調査した結果、男女の性差に違いはなく、企業文化が原因だとわかってしまいました。
本来であれば、そこで調査結果を受け止めて、改善に努めるのがあるべき姿だし理想的。でも、その会社の上層部は、客観的かつ証拠に基づく分析結果を拒絶し、自分たちの都合のよい思い込みの方を優先したそうです。
なぜ、客観的な事実を受け止められないのかというと、この例の場合のように「大事になりすぎるのが自分たちにとって都合が悪い」って場合もあるし、個人レベルだと「自分の思い込みや予想が外れたことを認めたくないプライド」の場合もあるんだろうと思います。
こういうの読むと「上層部の人たち、かっこわるいなー」と思うけど、実際の会社組織で見れば、こういう人の方が多いんじゃないかと思います…。逆にそこでちゃんと調査結果を受け止めて、自分たちにとってはイタい対策を考えて、実行していける人ってのは、多くの組織において「空気読めない鼻つまみ者」になってしまってるんじゃないかと思う…。
私だって、鼻つまみ者になるのはイヤなので、「明らかに違うな」って思っても黙ってることも多いですし。(とはいえ、世間一般でみれば、空気読まずに発言する方だとは思うけどwww)
「思い込み」とか「上司に対する過度の忖度」は、日常の作業レベルでも多いにあるし、そ���らが「事実」以上に大事にされることはすごく多いと思うんですが、そういうところに切り込める勇気をみんなが少しずつでも持てるようになるといいな、と思いました。
あと、そういう「切り込む」タイミングで、できるだけカドがたたず、お互いにwin-winであるようにアピールするための「論理的なストーリーの構築力」とか「伝える力」とか「交渉力」とか、もっと自分にほしいな~と思う。
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なぜ働き方が硬直化しているのかといえば、家族を犠牲にして身を粉にして働いてトップに立った白人男性が、自分と同じような人間が一番優秀に違いないと思い込んでしまうからだ。だから、そんな上司は勤務時間を短縮したり、働き方を変えたり、しばらく仕事を休んだ方が成果が上がることをいくらデータで証明しても、全く信じないか、疑いの目を向けてしまう。
法学者のジョアン・ウィリアムズはこの点をはっきりと厳しく指摘する。「休みが面倒だと思うような人生を過ごして、大好きだったおじさんの葬式にも出られず、子育てにも参加せず、長時間労働を賛美する文化で生きて来たら、死ぬほど仕事をしなくても成果は上がるなんてことは、どれほど統計で説明してもわからせることはできない」
そうやってトップに上った多くの男性と少数の女性に、だから言わんこっちゃないと説教しても仕方がない。昔の社会の慣習にとらわれている彼らには、犠牲を払ってきたことを認めてあげて、子供たちの時代には違う世界を描くようお願いするほうがいい。
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さっきの引用と同じですね。。。
お偉い学者さんも「わからせることはできない」って言いきっちゃってるし、そこはもう理解してもらうのは難しいんだろうな~と考えると残念な気持ちになります…。
できることとしては「犠牲を払ってきたことを認めてあげて、子供たちの時代には違う世界を描くようお願いする」ってことだと言ってるんですが、ただ、実際問題これも超難しいですよねぇ…。
「犠牲を払ってきたことを認める」ってことはまぁできると思うんですよ。先駆者たちに対して、感謝の意を表明することもできると思う。
でもさーー、そういうやり方で来た人って、結局、次世代にも同じ価値観を強制しようとしちゃうのさーー。そこは別モノとは見てくれないんすよ。なので、結局、衝突は発生するんだよねぇ…。
自分が所属する小さい小さい組織(家族含む)でも、そういうのはしょっちゅうだし、自分だって、気付かないうちに我が子に古い価値観を植え付けてる部分があるだろうと思うし。。。
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このようなケアの理想は、他の多くの分野の偉業と同じく、難しくもやりがいのあるものだ。実際、メイヤロフは、優れたケア提供者になるために必要な要素を上げていて、それは優れた社員や管理職に必要な資質とまったく同じものだった。彼が上げたのは、知識、忍耐力、順応力、正直さ、勇気、信頼、謙虚さ、そして希望だ。
(中略)
また、真の忍耐力とは、自分でなにかを解決しようとしている人たちに「ある程度の回り道や試行錯誤を許すこと」でもある。���の姿勢が、無駄な時間に見えて実は、成長に必要な「遊び」の部分なのだとメイヤロフは言う。グーグルも同じことを言っている。だから、レゴや卓球台やスクーターやおもちゃがオフィスのあちこちに置かれているのだ。
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ホリエモンがちょっと前に保育士の給与問題について発言してましたけど、今の社会では、「ケア」は誰でもできる(とみんな思い込んでる)もの、「競争」は特殊スキルを持つ人ほど価値が高く優秀なもの、という思い込みがあります。社会の構造もそういうふうになっていて、ケアの仕事(介護ビジネス、教育ビジネス、保育ビジネスなど)はだいたい薄給だし、「競争」の仕事(いわゆるホワイトカラーな会社員とか)は給与もそれなりにいい。その考え方と構造を変えていきたいね、って作者は言ってるわけですが、この優れたケアの資質って、ほんとその通りだなーと思って。
仕事で後輩をどう育成するか考えたことは、その後の子育てに確実に活用できてるし、子育てで得られる忍耐力とか順応力も、やっぱり仕事に活かされてるな、とよく思います。
だから、子供を育ててることが不利にならずに、むしろ子供を育てた期間があることを堂々と履歴書に書いてアピールできるような価値観の社会に変わってほしいな、と思います。
感想、書ききれない。
働く女性は共感しまくりだと思うので読んでほしいし、働いてない女性も共感しまくりなので読んでほしいし、家庭と仕事の両立に苦しむ男性も「そうなんだよ」と思うところが多々あると思うので読んでほしいし、古い価値観のおじさんおばさんにも読んでほしい。
オススメです!!!
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ダイバーシティという観点においてあらゆる活動の現実とどのようなスタンスで生きるべきかヒントをもらえる良書。個人的にはライフシフトよりも実感値を持てる。(競争とケアのくだりなど)
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フルタイムのキャリアを持ち、男性同様出世して、家族の世話をして、活発な家庭生活を送ることはできるし、できないのは努力不足…は変。問題は、仕事は24時間戦える男性を基準にしていること。男女ともに、ケアをその一環に組み込めるような社会にすべきでは。
出世して、身をもって示しているからこその説得力。
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そういえば、男性への偏見の数々は、表面にも出てきてないことを再確認。女性と表現すると違和感があることも、ケアに従事する者と捉えると、性別は関係ない。早速、部署のみんなとあーだこーだしたい。
#unfinishedbusiness #競争とケア #ケア経済 #ワーキングファザー #読書記録
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12375332137.html