紙の本
アイスランドミステリーの新たな境地
2023/12/31 22:17
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラグナル・ヨナソンの前作である「アリ・ソウル」シリーズがとても印象深かったので、本作にも大いに期待を寄せていたが、期待以上だとまず言いたい。
ヨナソンの特徴は、厳選された少ない登場人物、無駄な装飾を排した簡潔な文体、限られた紙数にも関わらず、人間の欲望や弱さからくる犯罪の種々相が、普遍的なテーマを静かに語る、というものだと感じていたが、本作もこの路線を外さず人間の内面を鋭く描いている。さらに加えて、主人公が若いアリ・ソウルとは打って変わって、初老といってもいい退職まじかの女性警部フルダであるのが、魅力的だ。
主人公の年齢から、てっきり若き日を追憶しつつ、最後の事件で有終の美を飾るという黄昏小説かと思いきや、とんでもない。フルダは未だ迷いの多い人生を送っており、それは仕事の面でもプライベートの面でも彼女に暗い影を落としている。
半年後だったはずの定年退職を、組織の若返りを理由に今日明日に迫られるフルダ。年下の上司になんとか翻意してもらおうとするものの、結局は有給消化でもしろというすげない回答。一体いつから自分は、このように軽んじられる存在となってしまったのか?長年骨身を惜しまず働き、勘と経験と捜査テクニックをもって捜査に当たり、多大な貢献をしてきたと自負してきたのに・・・。
この感情は、近年大抵の人が一度は感じるものではないだろうか?加えて、同僚は怠け者、眼をかけて育ててやった部下は、早くも身を翻して関わり合いを避けようとしている。なんて仕打ちだろうと、怒りと無力感に苛まれるフルダ。
だが、自らを鼓舞するように、最後に未解決の事件の捜査に当たらせてくれと申し出て、なんとか許可を得る。かつて単なる失踪と見なされた、難民申請をしている最中に行方不明になったロシア女性のケースだ。限られた時間の中、関係者への聴取を始めるフルダだったが、この国に知り合いもほとんどいなかった彼女の背景は、なかなか見えてこない。
そうするうちに、ある関係者からの情報により、彼女が難民申請を隠れ蓑にした売春を目的とした人身売買の被害者ではないかとの見方を強めたフルダは、その線で捜査を進める。
このあたり、期限を切られているとはいえ、随分突っ走り気味の感が否めないが、フルダの人生には認められなかった仕事上の焦りとはまた別の屈折した感情があるようだ。
一人娘を13歳で自死で失い、数年後には夫にも先立たれ、辛い気持ちを仕事で乗り切ろうとしていた彼女には、その仕事さえも奪われそうな今、何を頼りに生きていったらいいのかという根本的な悩みもある。
さらに、別のふたつのストーリーがメインストーリーと並行して語られる。誰のいつの物語かも不明だが、ひとつはおそらくある人物の生い立ちに関わるものだとはなんとなく感じ取った。そちらはかなり暗く重いものだが、どこにどうつながるのかとかなり複雑な構成となっている。
そして、捜査の大詰めで衝撃の展開となるのだが、これは過去の罪の償いとしてのある種の罰なのか、それとも許しを請いたい相手との唯一の再会の機会なのか。
読後感はさすがに爽快とはいかないが、自分では結構納得のできるラストだった。人間は幾つになっても、いやむしろ年を重ねるごとに悩みは降り積もるのだと思う。
さらにこのあとに、フルダの若き日へと遡るシリーズが待ち受けているのだと知り、驚きとともに喜びも同時に感じたことを付け加えておきたい。
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なぜかしら物事が裏目裏目に出ることがある。
星の巡りが悪いのか、己の行いが理由なのか、とにかくなにもかもうまく運ばない。
そういう時期は、それが過ぎ去るまで首を引っ込めておくしかないと思うのだが、今のフルダにはそれもできない。
定年間近なのだ。
いや、目前と言っていい。
もう少し先のはずなのに、突然、20も下の上司マグヌスに、早期退職を決定されてしまったのだ。
決定である。促しではない。
仕事ができるのは、あと2週間となってしまった。
その仕事ですら、今やっていたことすべてが、さっさと別の者に割り振られていて、フルダにはなにも残っていない。
いや、ひとつだけあった。
解決されたことになり、忘れ去られたある事件が、フルダは気に掛かっていたのだ。
舞台はアイスランド、レイキャベク。
男社会中の男社会といっていい警察署において、フルダ・ヘルマンスドッテルは女性警部、しかもその先駆者である。
男性たちに仲間として受け入れられることもなく、昇進にしても数々の若い同僚たちに追い抜かれてきた。
よって、彼女は無愛想で、頑なで、地味で、真面目な、一匹狼である。
ひたむきに仕事を続け、打ち込んできたというのに、突然、それが終わろうとしている。
世界が音を立てて崩れつつある中で、彼女自身ガタピシ身をきしませながら、なんとか奮い立ち一歩一歩足を踏み出す様に胸を打たれて、一気に読んでしまった。
すぐさま次巻がよみたくなった。
ヒドゥン・シリーズと題された3部作の、これは1作目なのである。
2作目が本国では2016年に出版され、作者ラグナル・ヨナソンの最高傑作という高い評判を得たらしい。
そう言われると、この『闇という名の娘』の文中に、これは次かその次についてのことかと思われる文がひそやかにある。
作者の頭の中に大きなひとつの物語があって、これはその第一話、しかも周到に練り込まれたプロローグなのではないかと、そんな予感がするのだ。
とにかくまずこの次が読みたい。
でなければ、耐え難いのだ。
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うーん、星3.5かな?
何しろ暗い。これぞダークアイスランド。
主人公は64才の定年間近の女性警部というのが、アリ・ソウルシリーズの読者にはまず驚き。
しかも、驚くべきことにこちらもシリーズものですって!
次作をぜひ読みたい、と思わせてくれるラストでした。
アイスランド…いいなぁ
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一方の端からもう一方の端へと振れ幅の広さにまず驚く。
昨年、アイスランドのシグルフィヨルズルという北極に最も近い漁村の警察官アリ・ソウルのシリーズに驚いたぼくは、この人の作品は書かれた順番に読もうと誓っている。なので、アリ・ソウル・シリーズも一作、二作という順に読んで、先に翻訳された五作目はそのまま手元にあるが読まない。この作品はこのシリーズの三作、四作と読んでから取り組むべきなのである。それを感じたのは一作から二作へ渡される作者の想いのようなものだと思う。時間というバトンは決して軽くない。作者はそれだけアリ・ソウルとシグルフィヨルズルの街を丁寧に扱いたいのだと思った。
さてアリ・ソウルとは遠く離れて、本書はレイキャビークを舞台にした、64歳の女性刑事フルダ・ヘルマンスドッテルをヒロインとしたシリーズ開幕の物語である。若い二十代のアリ・ソウルとまるでできるだけ距離を持とうと企図したかのように、フルダはアイスランド一の、否、唯一の都市で警察人生を今にも終えようとしている定年退職直前の刑事なのである。性別も年齢も、アリ・ソウルからは遠く離れるべく設定したようにしか思えない。そしてこの作品のなんというフィニッシュ!
どう見ても単独作品に見える本書は、実のところ三部作のスタートに当たる物語である。十代の頃に読んだ安部公房の『終わり道の標べに』の印象的な冒頭の文章を想い出す。
「終わった所から始めた旅に、終わりはない。墓の中の誕生から語られねばならぬ。何故に人間はかく在らねばならぬのか?」
何故なら本書は、フルダ64歳。定年退職を目の前に、自分の人生を振り返りつつ、未解決事件い挑もうとすう冒頭。しっかり描き切れてはいない未来設計。人生の終わらせ方を思いつつ、現役生活と仕事に未練を残す。そして古い古い過去の経緯。誰の物語かわからない断章が、現在のフルダの捜査の合間に二つほど語られてゆく。何が、いつの時代に、誰によって進行しているのか? その断章が現在の退職間際の事件捜査にどのように関わってゆくのか?
未解決事件の謎と、フルダの謎と、それらとは別の物語らしきものも次第に明らかになってゆくという、たまらなく意味深な構成によって引っ張られてゆくその牽引パワーが物凄い。ラストは何となく想像できはしなかったものの、何ともノワールな作りに驚く。
思えばアリ・ソウルのシリーズの方も十分ノワールの空気感に満ちているのだが、『湿地』その他のエーレンデュル警部シリーズシリーズで独特な世界観を描き出すアーナルデュル・インドリダソンの凄みのことも思うと、殺人事件が年に一回あるかないかという平和な小国アイスランドには、見た目以上に深い闇の奥行が齧られるし、何よりもそれを描き切る作家の上質さには、驚愕を覚えるばかりだ。
相当優秀な作品で商業的にも売れないものであればまずアイスランド語で書かれた作品は英訳されず、世界に旅立つことができないし、英訳を日本語訳している現状から言えばこの作家はいくつもの言語的ハンディを背負ってこの物語を紡いでいる。そうした逆境だからこそ、この高いレベルでしかぼくらは読むことがない類の作品群なのである。何だかぞくぞくする。
本シリーズは衝撃の結末を迎えるが、実は三部作の初篇ということで、二作目はフルダの50代、三作目は40代が遡るように描かれているのだそうである。その伏線らしきものを捜しつつ、眼をすがめて読んだ読書経験も、これまたとても不思議なものであった。次作への興味を繋ぐ深い深いエンディングに不思議感と期待感と二つ、我にあり、といった心境である。
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テンポが良い。1週間の中の話なのかぁ。いくつかの事件がうまく絡んでいて読み応えもある。北欧独特の寒々しく閉塞的な空気感を味わえた。
最後そう持ってくのね…はじめてのパターン。
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途中で挟まれるストーリーでフラグ立ちまくり!と思いきやミスリード。最後まで一気読み。堪能しました。アイスランドものはこれまで多々読んできましたが、特に今作の勢いは素晴らしいです。退職を控えたフルダの寂寥感、ひしひしと胸に迫りました。たった2日の出来事、最後の時間を駆け抜ける彼女と一緒にラストまで走った感があります。良かったです。「北北西、、」でアイスランドのビジュアルを目にしていますが、今作でも原始的で厳しい風景が目に浮かびました。いつか実際にその地に立ちたいです。上記解説によると、映画化するんですか!絶対見ます。
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北欧ミステリは暗いというイメージがつきまとっていたが、これもやはり暗かった。常習犯である小児性愛者が車にはねられる事件から始まり、これがずっと後まで尾を引く。なにしろ、事件を担当する警部が、犯人が故意に轢いたことを認めているのに、うやむやに揉み消してしまうというのだから闇が深い。被害者の部屋から少年の写真が見つかったが、そのうちの一人が尋問中の母親の息子だったのだ。
主人公のフルダは定年間近の老警部。捜査手腕に定評はあるが、ガラスの天井に阻まれて、同期の男性の刑事が出世してゆくのを横目に、現場一筋でここまで来た。ところが、上司から二週間たったら後進に道を譲って退職せよと、突然告げられる。今担当している事件は、と聞かれ、上に書いたように捜査は終了しているにも拘らず、犯人が自首するまで待つ、と告げる。そして、その女性には逮捕はしないことを連絡し、知らぬ顔を決め込む。
残り二週間の仕事として上司に与えられたのが未解決事件。その中から、見つけてきたのがロシア難民の若い娘が溺死した事件だ。頭部に傷があったのに、事故扱いにされていた。担当した刑事が無能でやる気のないので有名な男だった。さっそく、エレーナという娘のいた収容所を訪れるためにシュコダを走らせる。シュコダなどという珍しい車が出てくるあたりがアイスランドの作家が書くミステリだ。
フルダ自身の生い立ちと現在つきあっている男との関係、被害者であるロシア娘と彼女を誘い出した男との事件当日の出来事が、入れ代わり、立ち代わり語られる形式をとっている。事件を追うことより、フルダという女性が、どんな過去を持ち、その過去により、どんな人間が形成されるに至ったか、ということの方が重要視されている気がする。冒頭に紹介したような、ちょっと考えられない行動を取るにはそれなりの理由がある、というわけだ。
どんな理由があろうと、許されないものは許されない。そう考える読者はきっと多いだろう。かくいう私だってその一人だ。法に携わる者が法を破っていては、この日本という国ならともかくも、ミステリの世界ではとてももたない。だからこそ、フルダがどんなふうに育ち、結婚し、娘を産み、愛娘に十三歳で自殺され、夫を五十二歳で亡くし、それからというもの、一人きりで暮らしてきた孤独な人生を読者に知ってもらう必要があるのだろう。
かといって、それだけでは、フルダのとった行為は到底容認できない。勿論、作者はそんなことはもとより承知だ。フルダは毎晩悪夢を見ている。それがどんな夢で、何故そんな夢を見るようになったか、それが、少しずつ読者に知らされてゆく。趣味の山歩きで知り合った、年上の元医師との食事の後の話の中で。互いに伴侶を亡くした者同士、老後を共に暮らすため、少しずつ互いの過去を知りあう必要があるからだ。
ロシア娘のパートは、少しずつ相手の態度に不信を抱くようになる娘に寄り添い、じわじわと迫りくる恐怖を、ヒッチコックの映画のようなタッチで、ごく短くストーリの節目節目に挿入される。男が誰なのかは一切はっきり書かれることがない。しかし、しっかり読んでさえいれば、この人物しかないと特定できるように書かれている。であるのに、初読時はいつものように読み急いで、つい読み飛ばし、まったくの別人を思い描きながら読まされた。
伏線の張り方、小出しにされる情報の提供の仕方が堂に入っている。さほど複雑な構造でもないのに、はじめに思い描いた犯人像は二転三転する。ミスディレクションが上手いのだ。事件を追う間に挟まれる、フルダとまわりの同僚との不和、友人のいない老女の孤独感、上司との軋轢、単独行動による捜査ミス、とフルダに襲い掛かる不幸の数々が、一気に犯人を追い詰めようとする読者の気持ちに水をさす。
見返しの裏に記される<主な登場人物>も、フルダと殺されたエレーナを除けば、たったの十人。そのうち警察関係者と、例のフルダの話し相手の友人を引けば、残りは六人にしぼられる。このリストに名がない人物を犯人にすることができない、というのはこの世界の掟だ。というより、最初からその男にしかこの犯行は起こせない。つまり、ミステリ上級者を犯人捜しの謎解きで満足させようとははなから作者も考えていない。
あっと驚くどんでん返しが最後の最後に仕掛けられている。この手があったか、とうならされた。それまで、述べてきた、いくら努力しても認められないことに対する不満、職場での孤立無援、仕事を終えた老女に襲い掛かる救いようのない孤独感、夜ごとの悪夢、恵まれなかった過去、これらを解決することは、フルダにとって、殺人事件の解決より、ずっと本質的な問題だったのだ。
解説は後で読むことにしているのだが、なんと、このフルダという女性刑事を扱った作品はシリーズ化されていて、これが三部作の最終巻だという。四十代、五十代のフルダの活躍を描いた作品が後二作あるというのだ。シリーズ物は、できたら順番に読みたいものだが、まだ邦訳がないらしい。これでもって全篇の終了、ということもあって、思い切った手が打てたのだな、と思った。アイスランドでは二作目の評判が高いらしい。邦訳が待たれる。
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64歳の女性警部フルダ。定年を間近に控えているのに今すぐやめろと告げられる。そして最後の捜査。1人で追う不審死。そのなかで語られるフルダの心の内。これまでの人生と警察を辞めたあとの不安と期待。想いの中に揺れが感じられるのがいい。アイスランドの風景や寒さ、暗さもフルダの心情に重なっている。三部作らしくフルダの人生を遡るらしいので次作もすごく楽しみ。
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一気読みした。孤軍奮闘の女性警部。途中に挟まれる話が、どんな結末に辿るのかと、見事にミスリードにはまった。
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レイキャヴィーク警察・犯罪捜査部の女性刑事フルダ・ヘルマンスドッティルは、”ガラスの天井”に出世をはばまれ、警部止まりで64歳の定年をむかえようとしていた。
ある朝フルダは、20歳も年下の上司に呼び出され、2週間後に部屋を明け渡すように言われる。フルダが担当している事件も、すでに他の者に割り振ったという。
残りの2週間、フルダに許されたのは、未解決事件の処理だった。そこでフルダは、1年前海岸で遺体で発見されたロシア人女性の再捜査を始めるのだが‥‥。フルダを悲惨な運命が襲う。
初めて読む作家の作品。
唖然。
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ミステリーなのだけれど、私小説な、定年退職後の、生活を思い描きながら、日々の暮らしと現在の、取り巻く壁に立ち向かう力が、丁寧に綴られていて、主人公の、気持ちに寄り添う事が、出来る。
限りある時間の中で事件解決に迫る主人公の最後は、重く心に残る作品でした
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アイスランド、フルダ警部、定年間近で退職を迫られていた。彼女が退職直前に選んだ未解決事件は、ロシアからの移民の死亡事件。自殺とされていたが、怪しい点が。単独捜査を進めると・・・
重厚長大な作品の多い北欧ミステリーにしては、あっと言う間、一日で読み終わった。
事件を捜査する側がそうなるのか!と驚くのと、早く読めて、まさかの「お手軽な」ミステリーだった。
※ネタバレ
うっかり殺人犯に接触してしまったフルダはどうやら殺されてしまったようだ。
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死に際に自分の罪を回想するシーンがなんともやるせない。。。
まさかこんな終わり方するなんて。
シリーズがあるようなので楽しみ。
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『死んだレモン』の読了後に、似たような雰囲気の(端的に言って暗い?)作家を探していたらこの著者に行き当たりました。
好みの暗さのうえに、ものすごく読みやすい。翻訳ものにとっつきにくさを感じている人もこれならとっとと読めるのでは。しかし最後に待っているのは救いようのない暗さ。映画『ザ・バニシング 消失』(1988)(リメイク版は『失踪』(1993))を観たときの絶望的な気分と同じです。
定年まであと数カ月というところで年下の上司から「もう来なくていい」と言われた女性刑事。悔しくて、数日内に未解決事件を解決してやると意気込みますが、その事件以上に謎めいているのが彼女自身の生い立ち。
シリーズ第2弾と第3弾は時を遡った物語とのこと。こんなふうに人生を終えた彼女のことを思い返して若かりし時代の話を読むのはかなり辛そう。いや、読みますけどね。進んで凹みに行きましょうぞ(笑)。
映画や本の雰囲気はその国の気候の影響を受けると私は勝手に思っているのですが、本作はまさにそんな気がします。
映画『ザ・バニシング 消失』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/bffc63ed31ac9dccff8def22f1f2a373
映画『失踪』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/6c3d57447df0a91e0cce66efe39691b7
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有能な女性警察官でありながら、<ガラスの天井>に出世を阻まれた主人公・フルダが定年間際に未解決事件の再捜査に乗り出すという粗筋。主人公が女性警官で年齢が64歳というのは中々珍しい。序盤は警察関係者のフルダに対する敬意の無さに同情の念を抱くものの、話が進むにつれ、彼女の傲慢さも目に付いてくる。海外作品にしては癖のない文体で、300頁超のコンパクトな作品だが、緊迫感が最後まで途切れない。思いもよらぬ衝撃のラストだが、まさか北欧版イヤミスだったとは。しかし、当面は続編(過去に遡る構成)を追う気になれなさそう…。