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紙の本
普通の人を追い続けたノンフィクションの名作
2016/10/14 18:53
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
大阪の天下茶屋にあった(当時)グリーンツダボクシングジム。このジムに在籍したプロボクサーやトレーナーなど10数名の人々について著者が2年間にわたり見続けて綴ったノンフィクション。登場するボクサーで一流と呼べるのは1980年代後半に世界ストロー級チャンピオンとなった井岡弘樹氏とそのトレーナーであるエディータウンゼント氏ぐらいで、それ以外のボクサーはアルバイトや他の仕事を持ちつつ、ボクシングへのこだわりや捨てきれない思いを燃やしながらジムに通う言わば「普通の人」です。一生続ける事などできないボクシングをいつ引退するのかの葛藤や、試合前に湧き上がってくる緊張や恐怖感、試合の勝敗によって突きつけられる挫折や歓喜を著者の後藤氏は丹念に拾いあげていきます。登場する人物の大半が「普通の人」であるだけに、著者が描く心の揺らぎには非常に共感できます。同じプロスポーツでもプロ野球やJリーグなどとはちょっと異質な、陰を感じさせるような雰囲気は当時、このジムが天下茶屋という場所にあったこともあって、「あしたのジョー」に非常に近いものです。ボクシングをテーマとしていますが、試合の描写よりも人物の心模様の描写に力点があって、ボクシングへの興味がなくても、どっぷりと著者が描く世界に浸ることができます。実際、私もほとんどボクシングは観ることはないですが、文庫本で500ページを超える長編にも関わらず、夢中で読みました。後藤氏が取材対象に向ける優しい眼差しが感じられる1冊だと思います。