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裏切りの日日
著者 逢坂 剛
人質を楯に、身代金を奪った犯人は、厳重な包囲の中で、ビルの9階からエレベーターに乗り込んだが、1階についた時には消えていた! その頃、近くのマンションで、右翼の大物が何者...
裏切りの日日
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裏切りの日日
裏切りの日日 (集英社文庫 百舌シリーズ)
商品説明
人質を楯に、身代金を奪った犯人は、厳重な包囲の中で、ビルの9階からエレベーターに乗り込んだが、1階についた時には消えていた! その頃、近くのマンションで、右翼の大物が何者かに射殺された。“2つの事件は関連するものなのか?”居合わせた警視庁公安刑事・桂田の暗い瞳が光った。彼は、2年前に妻子に逃げられ、それ以後、人が変わったといわれる。その凄腕に更に磨きがかかり……。
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紙の本
見た目は渋くても紛れもない傑作
2014/08/18 21:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
逢坂剛の「百舌シリーズ」全6巻、
一般的には第一作とされる『百舌の叫ぶ夜』から読むのが普通だろう。
私もそうした。
しかし出来事の時系列に従えば、これより前がある。
この『裏切りの日日』である。
とはいえこれはいわば番外編、ないしは前日譚であって、
シリーズとしての話の流れからすると、必ずしも読む必要はないし、
まず『百舌の叫ぶ夜』を読むというのは正解だろう。
しかし私の場合、『百舌の叫ぶ夜』の後、
直接の続編である『幻の翼』以上に、まずこちらを読みたい気持ちが勝った。
『百舌の叫ぶ夜』結末部で主人公の倉木警視がもらした言葉が気になっていたからである。
それがたまたま何かの紹介を読んで、ここでの主人公桂木についてのことだったとわかると、
もうこちらを読むしかなかった。
事情はよくわからないとはいえ、
倉木の言葉には微妙に友情と苦さのようなものが漂っていて、
するとそれは、倉木自身の強烈な人間像の解く鍵にもなるように思えたからだ。
そして読んでみて驚いた。
紛れもない傑作である。
いかにもハードボイルドのこの作品は、
北方謙三の最高レベルのハードボイルドに匹敵するのではないか。
『百舌の叫ぶ夜』も面白くてそれを読んだ段階でも驚いたが、ここでまた感嘆することになった。
あまり人気の出るタイプの内容ではないかもしれないとは思う。
最後の処理も異論があるかもしれない。
細かいことを言うなら、いかにもインパクトのある『百舌の叫ぶ夜』に比べて、
このタイトルもパッとしない。
さらに細かく言うと、文庫はどうか知らないが、
私の読んだソフトカバー版は、手触りこそよかったものの、装丁は感心しない。
だがそれらを差し引いたところで、作品の質の高さは疑いようがないのだ。
読み終えてみれば、あらためて『百舌の叫ぶ夜』での倉木のセリフに、
桂木に対する共感めいたものがあることがわかる。
彼らには互いに似た獣の匂いがあるのだ。
それは言い換えると、毒の魅力のようなものかもしれない。
桂田には、挫折から生じた影と、さらにそこに湧きだしたような毒がある。
方向性は違っても、それは倉木にも言えることだ。
毒だけでも辛いが、そこへいかにも善人の同僚浅見がとてもいい味を出している。
『百舌の叫ぶ夜』もそうだが、謎解きの問題が提示されてそれに答えを出すというパタンがあり、
その問題と答えがいずれもすばらしく魅力的だ。
個人的には何よりそれが人間性の謎解きでもあるのがいいと思っているが、
ミステリーとしても一級品である。
この小説では、中頃には一見唐突に密室犯罪の要素まである。
そして最終的に、あたかもジグゾーパズルがパチパチ収まるように答えがわかる快感。
時代背景からすると、ロッキード事件が意識されているだろうか。
そのせいもあるのかないのか、善悪二元論では割り切れない人間像の奥行きがいい。