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紙の本
ちょっとピンぼけ (文春文庫)
著者 ロバート・キャパ (著),川添 浩史 (訳),井上 清一 (訳)
二十年間に数多くの戦火をくぐり、戦争の残虐を憎みつづけ写しつづけた報道写真家が、第二次世界大戦の従軍を中心に、あるときは恋をも語った、人間味あふれる感動のドキュメント。【...
ちょっとピンぼけ (文春文庫)
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商品説明
二十年間に数多くの戦火をくぐり、戦争の残虐を憎みつづけ写しつづけた報道写真家が、第二次世界大戦の従軍を中心に、あるときは恋をも語った、人間味あふれる感動のドキュメント。【商品解説】
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紙の本
戦争を、あなたに。
2008/05/07 12:17
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロバートキャパ、という名前を知っている人は多いだろうと思う。
私も「著名な写真家」という程度には認識があった。
が、まさか著書を残しているとは思いもせず、
非常に魅力的なタイトルにも惹かれて、手に取った。
まあ、写真の薀蓄からその写真を撮ったエピソードなどを交えて説明する、
半自伝的な物だろう程度に思って読み始めたのだが。
すぐに、大間違いである事に気が付く。
この作品に書かれているのは、あまりにリアルな、戦争そのものである。
兵士と共に地を這い爆撃を受け、飛んでくる残骸に傷を負い。
戦闘機で空を飛んでは対空砲に身を縮め、
ついには戦地にパラシュート降下まで余儀なくされる。
そこまでして撮られた写真は、まさに、真実を写していた。
平穏に暮らす人々からは想像も付かない地獄の絵図を切り取り、
報道として世に知らしめたのだ。
そこまでして彼は、何をしたかったのか。戦争の悲惨さを世に伝え、
戦争反対を訴える使命感、その一心からだったのか。・・・私は思う。
もしかしたら彼は、戦争に魅せられてしまったのではなかろうかと。
枯葉のごとく軽く扱われる命。そしてまさに枯葉のように舞い、散る命。
絶望だけが支配する、極限の地。その地獄から舞い戻ってこれた時の、
喜びたるや想像を絶する。命の喜び、魂の快哉。
その歓喜の瞬間に彼は、魅せられてしまったのではなかろうか。
彼にとって戦争とは他でも無い、仕事場であったのだ。
そこにこそ活路、人生があった。だから必ずしも、
戦争を否定的な目では見ていない。だから、だけに、リアルで、恐ろしい。
出撃の直前にガタガタと震え嘔吐を繰り返す兵士の横顔に、
キャパは一体何を見たのだろうか。さっきまで横で震えていた兵士が
目の前で爆弾に吹き飛び、灰燼と帰す姿をファインダーに収めながら、
キャパは一体何を思ったのだろうか。
ナチスドイツが周辺ヨーロッパ諸国を蹂躙し、台頭した狂った時代。
それをキャパのカメラは何の偏見も無くただ、事実を写し続けた。
だけに、ヨーロッパの近代史を研究する上で重要な資料、
いや文献とさえ言えるのではないかと思う。
僕は今無性に、彼の写真集が欲しい。