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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2003.12
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/229p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-309-20398-1
紙の本
ロサリオの鋏 (Modern & classic)
中南米のスラムを舞台にした、美貌の殺し屋を巡る痛ましくも美しいラブ・ストーリー。8歳で犯され、男の局部を鋏で突いて復讐し、鋏のロサリオと呼ばれる女は、鋏と銃弾、セックスと...
ロサリオの鋏 (Modern & classic)
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商品説明
中南米のスラムを舞台にした、美貌の殺し屋を巡る痛ましくも美しいラブ・ストーリー。8歳で犯され、男の局部を鋏で突いて復讐し、鋏のロサリオと呼ばれる女は、鋏と銃弾、セックスと報復、快楽と苦悩の人生を生きてきた…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ホルヘ・フランコ
- 略歴
- 〈フランコ〉1962年コロンビア生まれ。ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールで映画について学ぶ。帰国後、大学で文学を専攻。96年以降数々の小説賞を受賞している。
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紙の本
麻薬取引が統制する80年代以降のコロンビア都市社会の内情、そこに生きる若者のひりひり焼け付くような片想いの内面感情をえぐり出した濃密な小説の精華。
2004/01/05 21:57
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
この国の関係者にすれば実に失礼な話だろうが、コロンビアのイメージといえば「やばい国」という以外に考えつくものがない。産物ならコーヒー豆もあろうが、米国に麻薬を流すことでかろうじて生計を立てている国という感じが強い。裏とも表ともつかぬその産業が統制する社会は、アル・カポネらが支配していたシカゴのギャング・エイジに似ているという指摘が訳者あとがきにもある。
麻薬依存に絡んで、サッカーW杯米国大会コロンビア代表の悲劇も思い浮かぶ。米国とのゲームでクリアミスをし、オウンゴールを喫したディフェンダーのエスコバルが、帰国後まもなくサポーターの1人に銃殺された。ショッキングな事件だった。やはり相当クレージーな国だと思う。
ラテンアメリカ諸国からは物語性の高い個性的な作家が多く輩出されている。小説を語るなら、コロンビアといえばガルシア=マルケスであるが、この作家は『ロサリオの鋏』に心酔したという巨匠バルガス=リョサやボルヘスらと並んで、ラテンアメリカ文学の代表という印象が強い。ひとつの国に留まらない「大陸の顔」である。
本書はマルケス『百年の孤独』以来の空前のベストセラーとなり、ホルへ・フランコは第2のマルケスと呼ばれているそうである。
豊穣な物語性、馥郁たる言葉の表現にラテンアメリカ文学の本領をまざまざ見せつけられるこの作品は、80年代以降のメデジンという都市社会の暗部を、あっけらかんとしたクールで軽快なタッチで、そう、まるでタランティーノ監督の映像のようなノリで描いていることが大きな特徴だと思う。
コロンビアのことなんて、上に書いた程度の茫洋とした輪郭しか持たないから、ここに登場するロサリオという女性はデフォルメされたキャラクターなんだろうと思って読む。何しろ彼女は殺人鬼なのである。自分に狼藉を働こうとした男たちをいとも簡単にあやめてしまう。
しかし、訳者の詳しい解説によれば、1990年の国軍報告書では作者の生まれ故郷であるメデジンの青少年3000人がギャング団に属しているそうで、少女のような若い女性が強姦や虐待の復讐のために人を殺しているケースは実際にいくつかあるのだそうである。
驚愕してしまう社会だが、それを背景に描かれているテーマが三角関係の灼熱地獄の恋愛だというのが面白い。語り手である「俺」はロサリオに夢中だが、自分の友人が彼女とできてしまっているため、ふたりのそばにいながら、ひりひり焼け付くような嫉妬に身を持て余しているのである。
——彼女は恋愛の盲目的な面、つまり、ただ相手の瞳をのみ見つめ、毎日の食事が何の役にも立たないまったくのクソで、理性が失われて恋焦がれる相手の慈悲に身をゆだねるような極限状況を、俺にわからせたのだ。(117P)
たまたま別の場所に、「恋愛とは極限状況のひとつ」みたいなことを最近書いたこともあって、ここの表現が目についた。他にも抜き書きしたい箇所がいっぱいあり付箋は何枚も貼ってあるのだが、どれも上滑りしない日常的な言葉でありながら、エネルギーが満々とみなぎっている。世界は広いし、ものすごい小説がいっぱいあるものだなと昂ぶりをおぼえた。