紙の本
軍隊では「知りません」と言ってはいけない
2021/05/04 21:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
軍隊では「知りません」ではなく、「忘れました」と言え。なぜかというと、「知りません」だと教育係の上官が、部下に教えていないことになるから、なるほど。鬼軍曹・大前田、その部下の学歴コンプの男・神山、貧農出身の橋本ほか、一癖ある登場人物が面白い。
紙の本
うわ、こんな小説あり?
2004/03/10 00:54
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
名前だけは、随分前からしっていたが、「荒唐無稽」というのは、こういうことを言うのだなと、妙に実感。とにかく、わけがわからない。
一応、軍隊の中での生活が描かれるわけだが、ふと気づくと、そこには、軍隊生活とは思えないほどの、言語の大伽藍が構築されている。しかも、そこで展開される議論の滑稽さ、というか論理性というか、もう、ほとんどわけのわからん世界! としかいいようのないほどの、めくるめく言語体験。
これはすごい、ほとんど、小説かどうかすら疑わしいほどに、面白い。
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待望の復刊・戦後最大の小説が再びこの手に
2002/10/01 00:18
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:泉 泰休 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大西巨人の「神聖喜劇」復刊された。戦時小説の枠を越えたというより、軍隊という組織を舞台としたまさに神聖なほどこっけいな喜劇・喜劇的ありさまを、膨大な引用をもちいて描いていく。書評子は、九州の生まれで対馬にも何度かいったことがあるが、博多弁を中心とした九州弁がまた、たまらないリズムを与えている。
軍隊という、高度に組織化された集団のなかで一つ一つの慣習的規律に追従するのではなく、常に論理的正当性をもとめ、超人的記憶力で立ち向かう藤堂二等兵に拍手喝采。長いこと絶版状態にあったがネットを通じての復刊リクエストに答えて新版での復刊となった。7月から毎月1冊11月まで5ヶ月も楽しめるのである。
第一巻は導入と、新兵生活、ヤマとなる論争は軍隊における「知りません」と「忘れました」論争。どんなことでも「忘れました」と常に責任を自己にむける言語的習慣の矛盾から、藤堂は統帥権のもたらす日本軍のおそるべき弱点にまでさかのぼるぞ。博覧強記、藤堂二等兵の活躍に期待すべし。
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せっかく漫画版を読んでいるんだからと思って、本棚から引っ張り出して読んでいる。
熟柿を持ち歩いていたのでぐじゅぐじゅになってしまった…
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「稀代の記憶力・論理力の持ち主、東堂二等兵の壮大な闘い。桁外れな<笑い>の文学巨篇!」
ブ厚い文庫5冊もあるこの小説を手に取ったきっかけは、上記ちくま文庫の宣伝文です。
これ以上の説明は必要ないのでは?
この作品をきっかけに私の中に「陸軍もの」というジャンルが生まれた。
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東堂のインテリぶりが鼻についてしかたありませんが、だんだんそれにも慣れてきます。前から読みたかったんだけど、読めば読むほどおもしろい。何が喜劇なのかがわかってくる。
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私の「2つの聖典」のひとつ。
日本戦後文学の最高峰。
論理的に思考し抜くためには、意志と勇気が必須条件。
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この戦争を支持しない虚無主義者を自覚するにもかかわらず、「私はこの戦争に死なねばならない」との奇怪な信念を抱いて、対馬の新兵訓練所にやってきた「私」こと東堂太郎。第1巻では、有名な「知りません」禁止・「忘れました」強制問題から、日本軍の責任阻却の論理が解き明かされ、「大根の菜軍事機密問題」をめぐる珍妙な狂騒曲から、軍の公式な「聖戦」言説をはるかに逸脱する大前田軍曹の鬼気迫る独白へ至る。
感想は最終巻で。
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長い長い冒険の始まり。息の長い文章と漢文に四苦八苦しながら読み進める。即断を許さないうねるような思考の流れに押しつぶされそうである。古今東西の文芸作品や遠い日のささやかな記憶が入れ代わり立ち代わり浮かんでくる東堂太郎というニュートラルな語り手の造型がすべてとまでは言わないが、間違いなくこの小説の面白さの源であるように思う。
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世評の高い作品であるそうだが、僕は数年前まで存在をしらなかった。会社のある先輩がイチオシの文学作品である、と教えてくれた。それでも分厚さに恐れをなしてしばらくの間は敬遠していたが、大西巨人逝去の報に接して、この機を逃すと入手が難しくなるかもしれないと思って、まずは第1巻を購入。
一読、さすがに大作である。野間宏「真空地帯」と内務班生活の描写はダブるし、覚めた心理での観察というテクニックも一緒だが、集団幻想で撓められるいびつなコミュニティの重さは、どれで読んでも胃にもたれる重大なテーマである。
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虚無的な主人公が規則で縛られた軍隊内部で起こる上官によるイジメや部落差別に殺人自慢や学歴差別に対して果敢に超人的記憶力と観察を用いて抵抗する話。軍隊は会社にも置き換えられる。日本の中にいて異国人のような筆者の視点と論理が面白い。
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日本を貶(おとし)める目的で書かれた左翼文学と見て間違いあるまい。そして左翼の組織的な動きは侮ることができない。本書を元にした論文が多数あるのだ。こうして日本人に対する虚構の悪印象が、あたかも事実であるかのように広がってゆくのだ。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/01/30/162614
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夏こそずっしりと重い大作を読もうと考えて、分厚目の文庫本5巻に渡る超大作の本書をセレクト。それこそ、日本近代文学の金字塔にあたる作品として学生時代から認識はしていたものの、相当に難解な作品なのだろうと思い込んでいた。
確かに平易な作品であるとは言い難いが、実際に読み進めてみるとそれを超える面白さに釘付けになってしまい、貪るように5巻を読了してしまった。
本書は著者自らの従軍体験に基づき、日本陸軍の二等兵である主人公が送る数ヶ月間の陸軍訓練が舞台となる。主人公の東堂太郎は、超人的な記憶力を持ち、日本陸軍の不条理に孤独な戦いを挑んでいく。
これは日本陸軍に限った話ではないが、軍隊という組織が国家権力によって運営されている以上、その全ての営みには何かしらの法的文書が存在している。その点で極めて官僚的な組織という一面を軍隊は持っており、実際の訓練における一挙一同に、ある種バカらしいほどの理屈付けがなされているという点でのナンセンスさに溢れている。その点で、主人公の超人的な記憶力は、このあらゆる法的文書をすらすらと暗誦し、ときには不条理なトラブルを解決するためにその記憶力で持って立ち向かっていく。
そして、本書の面白さを際立てせているのは、人物造形の深みのレベルの高さである。そもそも新兵訓練のための招集ということで、集められた二等兵は日本社会の縮図といえるほどに、学歴や身分、職業などが千差万別になっている。突出しているのは、新兵に対して残忍なしごきを与える主人公の班の班長の造形である。ステレオタイプ的な残忍さだけを持つ人間として描くのではなく、中国大陸で残忍な虐殺に関与してきたという過去や、訓練生活の中でのユーモアなど、非常に多面的な人間として描かれることで、決して物語の先行きを安易には予測させないような展開が待っている。
全く予想だにしなかった結末も含めて、ひたすら物語の巨大さに圧倒された全5巻であった。