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紙の本
定本北条民雄全集 上 (創元ライブラリ)
著者 北条 民雄 (著),川端 康成 (編纂),川端 香男里 (編纂)
かつて万人恐怖の病であったハンセン氏病に冒され、文学への志を高く持ち続けながらも、二十四年のその短い生涯を癩院で終えた天才作家北條民雄。川端康成がその才能に感動し、雑誌に...
定本北条民雄全集 上 (創元ライブラリ)
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商品説明
かつて万人恐怖の病であったハンセン氏病に冒され、文学への志を高く持ち続けながらも、二十四年のその短い生涯を癩院で終えた天才作家北條民雄。川端康成がその才能に感動し、雑誌に発表、文學界賞を受賞した「いのちの初夜」を始め、世を驚嘆震撼せしめた小説、小品、童話、未発表原稿、覚書等を収録。旧版の付録も再録し完全文庫化。【本の内容】
収録作品一覧
いのちの初夜 | 11-50 | |
---|---|---|
間木老人 | 51-81 | |
癩院受胎 | 82-137 |
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紙の本
どうせ買うなら、この全集版を勧めたい
2023/01/05 13:28
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
北條民雄の著作集成としては、岩波文庫版や講談社文芸文庫版もあるが、角川文庫版はさておき、やはり求めるなら若干値は張るが本全集版がよいのではなかろうか。但し、個人的には、書かれたものをとにかく執筆時期順に並べたものだとベスト。高山文彦氏の『火花』を読むと、その感が強い。
紙の本
闘うこと。生きること。
2001/09/15 23:11
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、高山文彦著『火花−−北条民雄の生涯−−』というノンフィクションを読んだ。ハンセン病で19歳という若さで療養所に入り、病と闘いながら文学の道を歩み24歳という若さで世を去った北条民雄という人を知った。
当時の文学界に衝撃を与えたという『いのちの初夜』をもう一度じっくりと読むべく本を探したところ、東京創元社から全集が出ているのがわかった。それも上・下二巻の文庫本である。文庫で全集が読めるとは有り難い話である。
『いのちの初夜』は上巻の一番最初に収められている。北条民雄の作品はすべて川端康成の手を通して世に出たのだが、その内のいくつかは川端氏の提案によってタイトルが書き換えられている。『いのちの初夜』も元は、『最初の一夜』というタイトルであったそうだ。
内容は、ハンセン病で療養所に入ることになった主人公が、入所一日目に見た重傷のハンセン病患者の地獄絵さながらの様子と主人公の感じた絶望が描かれたもので、タイトルから連想される艶っぽさとは程遠いものである。
この他、上巻には文芸雑誌に発表された作品、療養所内で発行されていた機関紙に発表された作品、未完成作品、作品構想の覚え書まですべて収められている。
そして、童話を除いたすべての作品がハンセン病を扱った作品となっている。手足が腐り、人相が変わり果てるという不治の病に苦しむ北条民雄の執念がすり込まれた作品の数々を読んでいると、慟哭が聞こえるような錯覚に陥って胸が苦しくなった。
『…あの人達の「人間」はもう死んで亡びてしまったんです。ただ、生命だけが、ぴくぴくと生きているのです。…誰でも癩(らい)になった刹那に、その人の人間は亡びるのです。…』
『…癩病だと宣告はされたが、しかし体のどこにも痛みはないし、また苦しくもない。…今死なねばならんことはない、と思っちまうんですね。そう思ったが最後、もう何時まで経ったって死ねるもんじゃない。…』
『…まだ十一二歳のあどけない女の児が、年長の男に「早く良くなって帰るんだよ」と冗談半分に云われた時「あたいの病気は解剖室に行かなきゃ癒らないんだい」と答えたのを彼は聞いたのであった。…』
このように、民雄が登場人物達に語らせる言葉が読み手に弾丸のように打ち込まれてくるのだ。
普段は突き詰めて考えることを億劫がったり恐れたりして目を背けていた自分の内面について、民雄の文章を読むことによって、真正面から見つめる機会を与えられる思いがした。
本名で文章を書くことも許されず、死ぬ以前に社会から抹消された存在であった北条民雄であったが、彼の作品は未来永劫読み継がれることだろう。ここに北条民雄の勝利を知る。