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紙の本
容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別 (平凡社ライブラリー)
著者 ジョン・W.ダワー (著),猿谷 要 (監修),斎藤 元一 (訳)
日米ともに人種に対する偏見と差別をつのらせて戦われた太平洋戦争。その実態と歴史的背景を克明に追った大著。訳文を見直し、米同時多発テロ以後についての特別寄稿を収録した、87...
容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別 (平凡社ライブラリー)
容赦なき戦争
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商品説明
日米ともに人種に対する偏見と差別をつのらせて戦われた太平洋戦争。その実態と歴史的背景を克明に追った大著。訳文を見直し、米同時多発テロ以後についての特別寄稿を収録した、87年TBSブリタニカ刊「人種偏見」の改題。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョン・W.ダワー
- 略歴
- 〈ジョン・W.ダワー〉1938年アメリカ生まれ。ハーバード大学で博士号取得。歴史学者。現在、マサチューセッツ工科大学教授。著書「敗北を抱きしめて」で2000年ピュリツァー賞受賞。
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紙の本
2001年9月11日以後のいまだからこそ、心して読まれるべき本
2002/04/16 22:15
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上野昂志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人の間では、もう忘れられかけていると思うが、昨年9月11日にニューヨークで同時多発テロが起きたとき、アメリカのメディアや政治家は、「パール・ハーバー」を口にした。つまり、目の前に起こっている事態を、60年前の日本の真珠湾攻撃に重ねたのである。
日本人からすれば理不尽に思われても、一国の国民的な記憶というのは、おおむねそうしたものだろう。たとえば、これが東京で起こったとしたら、日本人の間で、それを昭和20年のアメリカによる空襲や、原爆投下と重ねる言説が現れるということも十分考えられる。その意味では、国民の一人一人が戦争をどう記憶しているかということを超えて、アメリカ人にとっての真珠湾は、国民の集合的無意識のなかに生き続けているし、それは、今回のような事件に際して一挙に噴出してくるのだ。だが問題はそればかりではない。
9月11日以降、アメリカ人の「アラブ」や「イスラーム」に対するイメージが、文明を破壊する「野蛮人」というステレオタイプ一色になったということは新聞などで報じられているが、注意すべきは、それが戦中の日本人に対するものと、呆れるほどよく似ているという点である。そのことに改めて気づかせてくれたのが、ジョン・W・ダワーの『容赦なき戦争』である。
本書は、日本の戦後を描いて評判になった同じ著者による『敗北を抱きしめて』の前に書かれた、太平洋戦争論であるが、9.11以後を考えるためには、いま読まれるべき本であろう。本書における、歴史家ジョン・W・ダワーのもっともユニークな点は、「人種戦争」という観点から日米双方がいかに憎悪をぶつけ合ったかを詳細に分析したことである。
たとえば、戦争中、英米を初めとする連合国側は一貫して、日本人はドイツ人より野蛮でさげすむべき存在であると主張してきた(人間以下の「黄色い猿」)。そこには明らかに白色人種による有色人種に対する差別がある。そして当然ながら、日本側にも、その逆のアメリカに対する軽侮と差別があった。しかし、もっと重要なのは、戦争が苛烈になるに従って日本もアメリカも、相手を「猿」といい、「鬼」と非難するイメージを強化するようにみずからがなっていき、互いが鏡に映すように似ていったという点である。
9.11以後においても同じような現象が見られる。すなわち、アメリカにおける「アラブ」や「イスラーム」のイメージが、「文明の破壊者」とか「野蛮」というようにステレオタイプ化されるのに見合って、アラブ世界の側のアメリカに対するイメージも同じようにステレオタイプなものになっていくということである。そしてその応酬のなかで、両者はますます互いに似てくるのだ。その意味で、われわれはまだ20世紀半ばの戦争を引きずっているのだ。 (bk1ブックナビゲーター:上野昂志/評論家 2002.04.17)