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紙の本
短すぎる上に伝わらない
2007/09/17 12:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Ikuno Hiroshi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパの鉄道旅行を紹介した新書。
取り上げられているのはドイツ,ベネルクス,イタリア,北欧(デンマーク経由で列車で渡れるのだ),中欧の特急(高速列車)がメイン。
面白いといえば面白いのだが・・・各章10ページ前後とあっては中身が薄くならざるを得ない。だがそれはページ数だけの問題ではなかろう。
たとえば,もう30年くらい前になるだろうか,「暮らしの手帳」に当時フランスが誇っていたTEE「ミストラル」乗車記が掲載されたことがあった。新書にすればおそらく12ページ程度だったろうが,車内,車窓風景,食堂車での食事と,旅そのものを楽しんでいる様子が抒情性豊かに描かれ,読後「自分もぜひミストラルに乗って旅を楽しみたい」と旅心をそそるものだった。
この本にはそれが希薄なのだ。いや,著者本人は楽しんでいるし,それはそれなりに描かれている。だが「鉄道旅の楽しみ」,そしてもっと大事な「旅の楽しみ」がいまひとつ発せられていない。
確かに,タリス,TGV,ICEと高速化された列車と高速新線には,TEEのような「旅」は期待できないだろう。
それならそれで,そちらはちらりと触れる程度にしてその分を「旅」の楽しめる路線/列車の方に割いた方がよかったのではないか。
例えば,第8章「ベネルックスの小さな旅」,第12章「雄大な山岳風景を楽しむ旅-ノルウェー各地」や第14章「すべての鉄路はローマに通ず?イタリア紀行」などは短過ぎて物足りなさが募るのだ。
第16章「鈍行列車で行くチェコの旅」も,あまり紹介されないと思われる路線/列車である上に,著者本人も「ノスタルジックな「汽車旅」」が楽しめる国だと指摘しているぐらいなのであるから,他章と同じくたった10ページで終わりというのは寂しすぎる。
更に言えば,凡百の鉄道旅行文にありがちなように描写が平板,というかありきたりだ。表現や視点がどこかで見たことがあるという印象が拭えない。
そんなわけで,これを読んで「その列車に乗りたい」と思わせるほどの「旅」の楽しさ,魅力は残念ながら伝わってこなかった。
ヨーロッパ鉄道旅行のちょっとしたガイドブックとしてならいいが,旅情を求める向きにはお薦めできない。