紙の本
タイトル通りの内容・大変読みやすかったです
2022/05/06 13:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにある通り、「少年法の入門書」となっています。
できるだけ難しくない文章に仕上がっているので、大変読みやすかったです。
少年法について、詳しく考えたことのない方々に読んでいただきたい1冊です。
なお、著者は少年法の厳罰化を求める昨今の日本の風潮に、当書でNOを唱えています。実際に裁判官として働いていらした著者ならではの持論が、当書で語られています。
紙の本
少年法は少年を甘やかすものか?
2021/08/29 20:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
少年法改正が最近耳目を集めている。
選挙権が20歳以上から18歳以上となり、成人年齢も変更されるが、飲酒等の20歳はそのままという。議論の多いところで誰でも参加できそうなテーマである。
本書は、少年法をできるだけわかりやすく心がけて書かれているとは思うものの、やはり構えて読まないと難しいことは間違いない。
序章で、少年法とはどのようなものかから始まり、少年法の基本的な概念、少年犯罪・非行の現状等を説く。
少年や少女の残虐な事件だとマスコミは取り上げ、さも年少者の事件が増加しているように思われがちだが、ここは冷静に、少年犯罪や非行の減少を統計的に明らかにしている。少年法改正や今後の在り方を考える場合、重要なポイントになると思われる。というのは、厳罰化と教育的な処置を重要視する立場に分かれることがよくあるからと思われる。しかし、客観的なデータに基づき、冷静な議論を踏まえて、少年法を考えないと将来の社会の姿にも大きな影響を与えると思われる。
また、日本だけでなく、海外での制度の紹介、それも運用実態に踏み込んだところは貴重である。そこでは、世界的な潮流として少年法としてとらえらえる年齢が下がっているというわけでなく、20歳代前半でも、日本でいう少年法の対象又は同様に扱われる国があるという。やはり、その国の歴史や捉え方の違い等を踏まえないと簡単に判断すべきでないだろう。
とんでもない事件が起きると、それが年少者であっても厳罰に処すべきという議論に片寄りがちだろう。しかし、事件を起こし、法に反する少年から見れば、教育的な処置をされる方が、負担が大きいととらえることを明らかにする。制度だけでなく、現場でしかわからないことも伝えてくれる。
そういう意味で貴重な一冊である。
紙の本
厳罰化が正しいことなのかどうかは疑問
2023/06/01 15:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃的な少年事件が起きるたびに(神戸のあの事件のことは何十年たっても人々の心から離れることはないだろう)、少年法への批判や厳罰化を求める議論が繰り返される。それは裁判官出身の著者は多くの人の中に共通の理解があるわけではないからだという
投稿元:
レビューを見る
少年による衝撃的な事件が世論の関心を呼び起こすたびに、厳罰化を求める声が上がってきた。そこでは保護と処罰のバランスが常に問題視されてきた。本書は少年法に基づく手続を解説しながら、海外の事例も比較して、いかにして保護と処罰のバランスをとるのかということを考えている。
手早く厳罰化について考えたい人は、3章を読むとよいと思う。人権上必要最小限度の介入に留められる成人に対して、少年には更正を促すための介入が手厚くなされており、ごく少数の凶悪な事件に対しては保護処分の有効性のみならず刑事処分相当性も当然判断され、重刑を課している事例もあるということが、データから示されているので、一考する材料になるだろう。
各国で異なる特徴を持ちながらも、成人に対する少年の可塑性(更生する可能性)を認めている点では一致しており、重大事件には保護のみならず刑罰としての厳重な処分がなされる一方で、(相対的に)一般的な非行に対しては教育保護的な観点から、社会的に包摂することでより更正の可能性を高めようという動きでは共通しているようだ(それは財政負担の上でも優れている)。
保護と厳罰については、日本における少年年齢引下げの議論でも問題になった。2021年5月21日に国会で成立した改正法案も、一般的な非行に対しては従来どおり保護・教育の要請に応えつつ、重大事件に対しては犯罪対策の要請に応えるかたちで成人並みの取り扱いを可能にすることでバランスをとったものと言えそうだ。
それでも少年法には課題もあり、とくに犯罪被害者の心情・意向を尊重することと非行少年の保護・教育をいかに調整するのかというのは根幹的な問題だと思う。しかし、犯罪を犯人、被害者、社会のあいだで生じた紛争として捉える修復的司法 (Restorative Justice) という考え方を取り入れることで、社会的にも財政的にもコストを減らしながら実効性を高めることが出来るかもしれない。それにはイングランドのYOT (Youth Offending Team) はじめ各国の対策に学ぶべきものがある。
投稿元:
レビューを見る
あとがきでは、著者が思い入れ・主張が強すぎになったかもしれないとおっしゃっているが、私にはとても中立的に冷静に書かれているように思える。憲法とか刑法とか民法とかいくつか法律関係の本を読んだけれど、どれも非常に冷静で網羅的で、極力主観をはさまないように書かれているような印象がある。(小室直樹先生の「痛快 憲法学」はまったくそんなことなかったけれど。)さて少年法。当たり前のことだけれど、国によっても人によっても考え方に幅があることがよくわかる。だれが少年で、どういう罪に対してどんな罰を与えるのか。制裁か教育か、被害者感情はどうするのか。教育に時間をかけて再犯を防止する方が結果的にコストは抑えられる。確かにそうだろう。しかし、コストでとらえることには違和感がある。痴漢行為でつかまった中学生がいる。警察でお叱りを受け、親にも何らか言われたことだろう。しかし何もなかったかのように次の日学校に来ている。同じ過ちを繰り返さないと言えるだろうか。修学旅行で女風呂をのぞいた数名の私立中3年生がその後退学になったという話を聞いたことがある。万引きでつかまってお店の人に注意され、保護者に連れられて遅刻して塾に来た生徒がいた。私は普通にその子に授業を受けさせた。何もなかったかのように。それを他の職員が大変問題視した。授業を受けさせるべきではなかった。問題を起こした生徒は塾をやめさせるべきである。そうだろうか。その生徒は父親に言われて次の日頭を丸めてきた。何が正しいかは私にもわからない。しかし一つ言えることは「困った子は困っている子」でもある。切り捨てるのではなく、何らかの方法で救いだせないかを考えていきたい。
投稿元:
レビューを見る
「入門」とある通り、少年法の意義と歴史、課題と展望について、分かりやすく書かれていた。特に著者の経験に基づいた諸外国との制度との比較は興味深く読んだ。本書の中にも言及されているが、罪と罰、刑罰、福祉etcはその国の歴史、宗教、文化、価値に深く根差すものであり、単純に比較検討できるものではないというのは、死刑制度ひとつとってもわかる。けれども、諸外国の制度と課題を知っておくことは、必要で重要なことだと思う。
さて、私が本書で最も印象的だったのは、大きく二つある。一つは、「少年法」で処遇される少年たちの中には、福祉的処遇を望まない者もいるという現実。成人同様に刑期を定められれば、その間、簡単に言えば「我慢」すれば、またシャバに出られる。一方、福祉的処遇には、答えがない。期間は定められてはいるのだろうが、模範囚にあたるような、こうすればすぐ自由の身になれるという分かりやすい基準はないのかもしれないし、私が怖いと思ったのは「福祉」の名の下、著しい人権侵害が行われていないだろうか、ということ。(逆に言えば、現状の少年法ではこれ以上の刑罰を科せないというような重大な罪を犯した少年に対して「福祉的処遇」と名目を付けて半永久的に監禁拘束することも可能なのではないかということ)
もう一つは、少年法の意義そのものについて。少年が、成人と同じ罪を犯しても、成人とは異なる処遇を受ける。その理由は様々あるが、要は、少年は、更生することができるというその可能性があるからである。一方、成人にそれはない(普通の刑法で裁かれる)。少年法では、処遇を決定する際に、その少年の成育歴等、罪を犯した背景が調査される。しかし、成人の裁判にはそういう制度はあるのだろうか?人を裁き、その結果、自由を拘束し、あるいは命さえ奪う刑罰は、人に対する究極の人権侵害である。それが罪の対価だとしても、その運用には慎重にも慎重を重ねなければならないと思う。ちょっと話が逸れたが、本文から引用すると、p199「成人は自律した存在とされていますので、公的な介入、特に刑罰による介入は、究極の人権侵害として厳選され、必要最低限度とされています」つまり、少年には適用される福祉的支援も介入にあたるため、されないということになる。
ただ、虐待、貧困、障害は少年だけのものだろうか?障害が軽度であったり、病識や障害を受け入れられず、少年の頃には障害が見過ごされていた(自律した存在ではなかった)が、親などの私的な支援が得られていた者が、親や支援者の亡き後に犯罪を犯してしまった時。自律した存在として必要最低限の介入を受け、また社会に戻る。
これが、再犯率が多く、刑務所が老人ホームと化していることの原因の一つではないかと感じた。
投稿元:
レビューを見る
家裁判事として長年の実務経験を有する著者の入門書。今回の初年法改正もある程度は理解できる。ただし、改正法の解説書ではない。著者の改正の評価は、「重大事件は逆走され、正式起訴された後は成人並みの扱い、それ以外のほとんどの事件は原状維持」とされていることからも、頷けるところ。
投稿元:
レビューを見る
7月28日新着図書:【少年法の制度・理論をできるだけわかりやすく説明するとともに、諸外国の制度・運用も含む「少年法」の実像を紹介しています。】
タイトル:少年法入門
請求記号:イワナミ320:Hi
URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28185671
投稿元:
レビューを見る
少年法の成り立ち・意義・諸外国との比較、少年犯罪の増減、などなど、素人でも一通り分かった気になるよう、上手くまとめられており、とても面白い。題名に惹かれたら読んで間違いはない。
投稿元:
レビューを見る
少年法の背景を日本のみならず、様々な国から書かれていて入門にしてはボリュームが少し多かった。ただ、他国との比較はページ数のわりに少年法の否定派に対する解答を導くものにすぎなかったと私は捉えてしまいました。また、統計が図ではなく言葉で綴られていた箇所も多く、少し読みづらい面もあった。
ただ、裁判手順などを実際に体験した方の細かい説明は面白かった。
投稿元:
レビューを見る
「あなたは少年法改正案に反対ですか?それとも賛成ですか?」
そう聞かれたときに何となくではなく、きちんと理由をもって答えることができるようになる本。
厳罰も保護も、根底にあるものは同じ。その手法が違うだけ。しかしながら、時代の流れとともに被害者の救済にも配慮が必要となっている。
様々な問題を時間をかけた議論のすえ、難産のすえで生まれた改正案では、重罪と軽犯罪、犯罪の軽重を考慮しながら処分内容を決めるなど、さらに細かく分けられるそうだ。
少年法の歴史、考え方、諸外国との比較等がわかりやすく書かれており、少年法に人生をかけてきた筆者の集大成ともいえる一冊である。
投稿元:
レビューを見る
少年法について、中立の立場から書かれていたように思う。自分にとっては簡単な内容ではなかったが、確かな学びの感覚があった。
投稿元:
レビューを見る
少年法はまだ若い。犯罪件数はピーク時より落ち着いてきている。専門家の意見は変わらない。
自分にはちょっとこ難しかった。
投稿元:
レビューを見る
【琉大OPACリンク】
https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC08015702