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商品説明
作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。残された著者は、過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイ。『朝日新聞』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
「年をとったおまえを見たかった。見られないとわかると残念だな」(「哀しみがたまる場所」)作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイの傑作、52編。◯本文よりあと何日生きられるんだろう、と夫がふいに沈黙を破って言った。/「……もう手だてがなくなっちゃったな」/私は黙っていた。黙ったまま、目をふせて、湯気のたつカップラーメンをすすり続けた。/この人はもうじき死ぬんだ、もう助からないんだ、と思うと、気が狂いそうだった。(「あの日のカップラーメン」)*余命を意識し始めた夫は、毎日、惜しむように外の風景を眺め、愛でていた。野鳥の鳴き声に耳をすませ、庭に咲く季節の山野草をスマートフォンのカメラで撮影し続けた。/彼は言った。こういうものとの別れが、一番つらい、と。(「バーチャルな死、現実の死」)* たかがパンツのゴム一本、どうしてすぐにつけ替えてやれなかったのだろう、と思う。どれほど煩わしくても、どんな忙しい時でも、三十分もあればできたはずだった。/家族や伴侶を失った世界中の誰もが、様々な小さなことで、例外なく悔やんでいる。同様に私も悔やむ。(「悔やむ」)*昨年の年明け、衰弱が始まった夫を前にした主治医から「残念ですが」と言われた。「桜の花の咲くころまで、でしょう」と。/以来、私は桜の花が嫌いになった。見るのが怖かった。(「桜の咲くころまで」)*元気だったころ、派手な喧嘩を繰り返した。別れよう、と本気で口にしたことは数知れない。でも別れなかった。たぶん、互いに別れられなかったのだ。/夫婦愛、相性の善し悪し、といったこととは無関係である。私たちは互いが互いの「かたわれ」だった。(「かたわれ」)【商品解説】
著者紹介
小池真理子
- 略歴
- 〈小池真理子〉1952年東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。「恋」で直木賞、「無花果の森」で芸術選奨文部科学大臣賞、「沈黙のひと」で吉川英治文学賞を受賞。
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紙の本
装丁がステキ
2021/11/16 10:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tamayo04 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞に連載されていたエッセイをまとめた本ですが、装丁がきれいで題名も良いです。文庫本ではんく厚みのあるハードカバーが似合う本という感じなので、保存用としてファンなら本棚にあるべきだと思います
紙の本
これほど静かな気持ちで本を読むこともない
2022/02/03 16:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
漢字「喪」には、「人が亡くなったあと近親者が一定期間悲しみの意を表す礼」を指す意味があるが、「うしなう」とか「なくす」ということも指す。
人は一人で生まれ、一人で生きていくわけではない。
どのような形、どのような濃淡があるにしろ、人は誰かと交わり、やがていつかその人を喪う。その時、その悲しみやつらさ、寂しさの時間をどう生きるか。
寄り添う人があればいいし、もしそんな人がいなくとも、寄り添ってくれる文章があればなんとかしのげるかもしれない。
本書は、夫で直木賞作家だった藤田宜永さんを2020年1月30日に亡くされた妻で同じく直木賞作家の小池真理子さんが、亡くなったあと数か月後から朝日新聞に連載を始めたエッセイをまとめたもの。
新聞連載時からその一編一編にジンと胸に迫るものがあったが、書籍化され、まとまって読むとさらに胸をうつ。
こういう夫婦の形もあるのだな。
こういう喪の時間もあるのだな。
もしかしたら、小池さんはこのエッセイを書くことで、自身の喪と向き合い、悲しみとか寂しさをしのいできたのではないだろうか。
あの時こんなことがあった、こんな時間を過ごした、あんな会話をかわした。
このエッセイにはそんな小池さんの滲むような思いに満ちている。
中でも、死が逃れられないことを知った夜、カップラーメンをすすったという一話は胸を打つ。
抜粋する。
「気が狂いそうだった。箸を置き。鼻水をすすり、手を伸ばして彼の肩や腕をそっと撫で続けた。」
こんな一節を小池さんは一人になった静かな夜に綴ったのだろうか。
紙の本
人生の指標になる
2022/01/18 11:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぼちぼち - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神よ憐れみたまえ」と間違えて購入(笑)
折角買ったのでと読んだらとても心に沁みた。著者の夫が2年前に癌で他界し、その夫との生活、闘病、他界後の心中が著者の天才的な表現力によってまるで映像を見ているように共感できた。自分のこれからのバイブルになった
紙の本
名文
2022/01/16 01:04
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
肺がんのため亡くなった夫、藤田宜永さんとの思い出を、妻の小池真理子さんが綴ったエッセイ。朝日新聞に50回にわたり連載された作品の単行本化。小池さんといえば恋愛小説の名手と言われ、とりわけ「恋」三部作などで知られるが、エッセイも抜群に上手いと感心。小説はフィクション、エッセイは基本的に事実を書くが、小説家のエッセイにも関わらず心底を隠すことなく表現していて見事。