「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
秘められた未知の悦楽は、「学校では教えてくれないこと」ばかり…筋金入りの読まず嫌いが改心するまでを描いた、或る文学者の告白。【「BOOK」データベースの商品解説】
名作はどうして面白いのか? 太宰治も宮澤賢治もサリンジャーも苦手、人生観を開陳されることが嫌いだった著者が、名作の構造を読み解き、「多く読まれること」の謎に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
千野 帽子
- 略歴
- 〈千野帽子〉パリ第4大学ソルボンヌ校に学び、博士課程修了。2004年から休日のみ文筆業。著書に「文藝ガーリッシュ」「世界小娘文學全集」「文學少女の友」がある。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
たくさんの名作が読まれるのを待っている
2009/10/18 11:08
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
年がら年中、本を読んでいる私は、読書の魅力にどっぷりつかっている。
しかし読めば読むほど、特に手当たり次第に本を選んでいる私は、世の中にはもっともっと本があるのだ…と思い知らされ、一生のうち、あとどれくらいの本に出合えるのだろうかとか、もっともっと面白い本があるのだろうなぁ~とか思う。
それで、まるで本の海を泳いでいるような気分になる。図書館に行っても、棚を書名を見るだけでくらくらきて、わざわざ行ったのに借りる本が見つからない時さえある。
「私は筋金入りの読まず嫌いだった。
13歳の夏、小説のおもしろさに目覚めた。(略)
目覚めてしばらくたつと、小説には自分が興味の持てない分野がいっぱいあることに気づいた。」はじめにで、著者の千野さんはこう打ち明ける。
そうなのだ。
自分に興味の持てない分野がいっぱいあることに、気づく。
ちまたでは名作と…、私もそんなものが多い。
でも、もしかして読んだら面白いかもしれないとも同時に思う。
本書は「当時の私はカツ丼を必要としていたから、
お茶漬けの味が分からなかったのだ。」とそうふり返る千野さんが
「その読まず嫌いだった、さまざまな名作小説との和解の記録である。」
読んだことはないけど気になる名作、
麗しく理不尽な学園小説、
文学全集、文庫本…、
いろんなジャンル分けで、千野さんと読まず嫌いだった本たちとの出合いが語られる。
私もほとんど読んだことのない本ばかりで、
読みながらも、ふうふう息切れがしてきた。
へぇ~こんな本もある、あんな本もある。どれも読んでない…。海の波のチャプチャプが遠くで聞こえる(笑)
『私は間違っていた。「おもしろい本」も「おもしろくない本」もない。「おもしろい」は本のなかにあるのではなく、ほんとうは、本と私のあいだに起こる現象なのだ。だから読書にはサイクルが必要だ。』
私はここのところで大いに共感した。
『「なにか違うもの」になにを選ぶか。迷っていはいけない。そういうときこそ名作に帰ろう。』
こうも書いてあって、そうだなぁ~と思った。
最近気になる作家さんは田辺聖子さんと庄野潤三さんと、そしてつい先日週刊ブックレビューで特集をされてた開高健さん。いずれも名作ぞろい、自分ながら、この三人の本と出合えて良かったねぇと思う。
うまくは言えないが、本を読んだら、その本を読む前の自分とはどこかが違う。
そのちょっと変わった自分が、また別の本を読んだら、またちょっと違う自分になる。これが読書の醍醐味なのだろう。
そして、私は読んだ本についてあれこれ語ってみたい。
だから私はここに投稿し続けるのだろうなぁ~と思う。
なんだか今回の投稿は日記みたいで、まとまりのない文章でごめんなさい。
しかし、私はこれからもずっと本の海を泳いでいきたいと思う。
そして「なにか違うもの」を読みたいと、その時の自分が思った時は、この本を取り出して読み返すだろうなぁ~と、思った。
たくさんの名作が読まれるのを待っている。
その本を手に取らなければ、決して出合えない世界。
本の海はつくづく広い…。
紙の本
これを読んで、奥泉光『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』の解説で千野の文章に出会った時の衝撃を思いだしました。そして、北村薫と並んで、現代最高の本の紹介者であることを確信しました。
2010/12/01 19:31
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、嫌いじゃないんですが古臭いです。何がってカバーデザイン。それとタイトル文字の字体。これって、狙いなんでしょうけど戦前の本ていう感じで、吉屋信子少女小説全集とか、『花物語』とか、中原淳也本といった、多分、千野帽子が過去に語り、あるいはこれから論じるであるものに使われればそれなりに相応しいものではあると思うんです。
でもです、これが書架に並べられたときの印象は「あ、これって昔出た本ね、活字も古そうだし、多分旧かな使いよね、それなら私、読まず嫌いにしておこ」って、スルーされると思うんです。部分的にはいいんです。カバーの紙質や色、ザクッとした手触り、それとカバー下半分を占める汚しを入れた緑青、小さく書かれたアルファベット。濁点代わりの花模様。さりげなく背中の中央に使われた辛子色の線。ある意味、古典的ではあります。文学者や研究者の書棚にぴったり。でもねえ、あまりにマニアック、そんな装丁は國枝達也(角川書店装丁室)・・・
で、です、読みました。『文學少女の友』では正直、期待外れ、面白くなーい、という印象を抱きましたが、今回は全く異なって肯いてばかりです。なぜ名作を読まないか、小学校時代全く読書をしていなかった人間が読書にはまるとどうなるかということ、名作というものは古典であっても時代によって変わっていくこと。50歳からの中二病、なんて上手いなって感心します。
ジャンルというものが後からきたものであること、ジャンルに収まることで面白みを失う小説というのも理解できます。文学全集の効用もよくわかります。千野が取り上げる本が面白そうで私も読みたくなったことも事実です。不倫でいえば『ボヴァリー夫人』(読んでません)『ノーサンガー・アベイ』。学園ものの『トム・ブラウンの学校生活』『悪童物語』『青春の変転』『寄宿生テルレスの混乱』『少女嫌い』。
恋愛なら、『マンスフィールド・パーク』『分別と多感』『晩夏』『誘惑』。ミステリなら『コルネリユス卿』『イールのヴィーナス』。ほかにも『オルラ』『競売ナンバー49の叫び』『魔王』『青白い炎』『金魂巻』(読んでない)などなど。
それにしても本が現在のゲームソフト並みに行列して買われていたというのは信じられません。でも、千野は単純に本に帰れとはいいません。メディアの多様化がそれを許さないことをよく理解しています。その上で、でも本は面白いよ、という。その距離の取り方がいいんです。千野の本の取り上げ方と解説を読んでいると、北村薫の『自分だけの一冊 北村薫のアンソロジー教室』を思い出します。そして奥泉光『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』の解説で千野の文章に出会った時の衝撃を。その時私はこう書きました。
*
「で、そんな疑問を見事に解き明かすのが千野帽子「不透明な語りの自由 文学少女のための奥泉光再入門」と、続く「奥泉光スペシャル・インタビュー」です。これが立派。このシリーズ史上、最もレベルが高く説得力に富み、全ての謎は解けたよ、といいたくなるものですね。千野さんについては情報が少ないです。
ネット検索すると『無敵の俳句生活』の著者の一人としてひっかかります。HPもあります。でも、経歴不明。でもね、デモネ、すごいです。こういう解説つけてもらったら脱帽します。対談もさぞかし楽しかったんじゃないかって思ったりします。これを読む限り、帽子さん、無敵の解説者、最強って感じで斎藤美奈子も勝てないだろうな、不及足許かな、って思います。本文も含めてお買い得の一冊。金字塔ってやつですね、はい。」
*
あの時は本当に感動しました。おお、こんな凄い人がいるんだって。でも、今回はそうは問屋が卸しません。一か所、気になったところがあるんです。それは文学全集との関連で、ショップチャンネルなどで売っているコンビレイションのCDボックスを
*
このタイプの商品の対象顧客は、ふだんから音楽ソフトを自分で選んでいる音楽ファンではなく、もっと「ふつう」のおじさんおばさんたちだ。
*
と言いきる点です。千野は、自分が文学全集を今になって読むのは、自分だけの固定化した視点で読む本を選ぶと、けっきょく無難なものばかりになってしまい、読書の喜びや発見がなくなってしまう、そこで他人が推薦するものを読むことでその状況を打破することにある、という至極ごもっともな意見を述べています。ではなぜ、コンビレイションのCDボックスを買う人に、千野が全集を今になって読むその思いと同じものがあることを無視するのでしょう。
卓見が多く、肯くところが多い本ですが、逆にいえばこの本が私のような名作読まず嫌いできた人間にとってあくまで常識的なことが書いてあるからだ、とも言えるのです。驚きでいえば桜庭一樹の多読のほうが遥かに大きい。仲間の推薦はともかく、教師が押し付けてくる名作に反発する、自分だけの読書道を歩む、というのは本読みであればあたり前のこと。それらの人になくて千野にあるのは自分の思いを正しく伝える文章力と、本を正確に読む能力、そしてユーモア感覚です。それは目次からも窺えるので、それを写しておきましょう。
はじめに 余は如何にして読まず嫌いとなりし乎。
1.名作 読んだことはないけど、気になる。
2.物語 度の強い「嘘つきメガネ」。
3.学校 麗しく理不尽な学園小説。
4.恋愛 ロマンスは読むものか、するものか。
5.犯罪 『モルグ街の殺人』はほんとうに元祖ミステリなのか?
6.恐怖 ホラーを論じて「心」の問題に及ぶ。
7.歴史 世界がお前をこづき回すなら。
8.ふたたび物語 読まれることで、世界は変わる。
9.文学全集 意味の接着剤。
10.文庫本 身の丈一〇五ミリの、青春のお供。
11.好き嫌い 「わかる」と「おもしろい」
12.読書 あるいは独房を出て外の暗闇を歩くこと。
おわりに
最後は初出データ。
本書は「野生時代」2008年5月号―12月号、2009年2月号―5月号に
連載された「読まず嫌い。名作入門五秒前」に加筆修正したものです。