紙の本
甘い美少年の誘惑…
2002/09/08 15:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は言わずと知れた、森鴎外の愛娘である森茉莉の小説集である。
表題の「薔薇くい姫」は、作者の分身(?)魔利(まりあ)の不機嫌な日常生活の綴られている私小説。幼少時の周囲の大人とのエピソードや、持病について、また作家生活など、取りとめの無い話題に美意識を絡めてエッセイ風に書かれている。「食」に関する他の随筆も良いが、森茉莉の人物像を探るのに、うってつけの作品である。
「枯葉の寝床」は、作者の真骨頂とも言える耽美的な同性愛をテーマにした作品である。不良学生山川京次、通称レオ(ちなみに日本人…)と、日仏ハーフで大学教授兼小説家ギラン・ド・ロシュフコォの二人の世界(!)が描かれている。この設定だけでお腹一杯という人もいるかもしれないし、まずもって興味のない人もいるだろう。だが少し待って欲しい。これは、美意識を守って生きることに生涯を捧げた森氏の作だけあって、昨今巷に氾濫する『ボーイズラブ』などとは明かに一線を画している。“美に耽る”コトとは如何なる事かを登場人物たちが体現しているのだ。
口にするのは容易いが、現代、いやこの作品が書かれた時代でさえ、耽美に生きることは至難の業らしい…。時には、薔薇の香で満たされた猫足の湯船につかりながら、レオになった気分で(笑)読まれてみては如何?
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男性の読後感がぜひ知りたいところ。甘美である意味妄想の極地で描かれた男性愛の果ては、秋の夜に最適だ。
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▼元祖・801姫の801作二つを含みます。▼攻めの凄惨なヤンデレぶりにキャーキャー言った。腐女子狂喜乱舞。講談社文芸文庫、こんなスゴいの入れておいていいんですか。(08/1/3読了)
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茉莉ちゃんなー、もうほんとこんなかわいい腐女子がいていいのかと
こういう少女のような大人になってみたいものですね
枯葉の寝床のクライマックスへの盛り上がりがやばい
森での追いかけっこがすき
耽美ー
茉莉ちゃんの言葉の区切り方がすき
「ギランはただ、こみ上げてくるものを必死にのみ下し布で口を押さえられた人のようなむせび声をだした。頭のしんが冷たくなり、手足の感覚が失われ、ただ抑えても抑えても吠えるような、声が、出て、手に吸い付いてはなれない銃をふり落し、顔を蔽って、獣の吠えるような声をおし殺しおし殺し、その場にがっくりと、膝をついた。」
華美。絢爛。豪華。贅沢!
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金持ちで美形の大学講師と授業で出会った美青年の同棲、プラトニックではなくその美しさが肉体を介して愛を交わす。講師は美青年に嫉妬し、最期は射殺する。当今のヤオイだのラノベだの、といった言葉の垂れ流しに比較すると、いささか古めかしいかもしれないが、埃を纏った古い鏡台の香水瓶のように、ひとたび埃を払えば切子の美しいガラス瓶からいささかも古びない香気が発せられる。これは、読むべき小説ではない、酔うべき小説である。
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会社の同僚が好きだということで
貸してもらって読んだ
人に教えてもらわなければ
自分とはリンクしなかった作家だと思います
森茉莉という作家の存在も
その人が森鴎外の娘だということも
きっと知らないままだった
・薔薇くい姫
・枯れ葉の寝床
・日曜日には僕は行かない
の3編収録
『枯れ葉の寝床』がおもしろかった
美青年ギランと美少年レオの恋愛の話で
文章、世界観、どれを取っても耽美
今で言うJUNEみたいなものでしょうか?
愛しすぎて憎い感情とか、嫉妬に狂うとか、
ギランが葛藤する姿に胸が痛くなる
うつくしくて悲しいおはなしでした
あとの2編は、全然頭に入ってこなくて
途中でつかれちゃって読んでません・・・
好きな人はすごく好きで、
合わない人は1行でも無理かも
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「薔薇くい姫」・森茉莉本人の話を客観的に書いている。出てくる人が実際の名前ではなくもじりになっている。主人公は魔利(マリヤ)
実際の人物を知ってるとにやにやしてよめるw
「枯葉の寝床」・「日曜日には僕は行かない」・男同士の恋愛を描いた作品。本人は男色小説として扱われることがいやだったそうだ。が、のちのやおい小説とかBL漫画に与えた影響は大きいでしょう。
とことん美しい文章でうっとりする。
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J書店へ『父の帽子』を探しに行ったのだけれど、冒頭を読んでやめた
タイトルにもひかれたので、同じ講談社文芸文庫のこちらを購入
「枯葉の寝床」
品と趣味の良いBLという人もいるかもしれないけれど、それで済ませてはいけないと思う
めくるめく官能と、来るべき結末
中だるみしそうな冗長な部分もあったけれど、破滅していく様を表現するのに不可欠な描写だったのだろうと感じた
講談社文芸文庫はカバーの質感も装丁もいいのだけれど、高い
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背徳的で甘美な言葉がたっぷり詰まった話。まさしく「美」に、「耽」ける感じ。
こういうの読んでると、文字だけだからここまで「美」を高められるんだよなと思う。映像だと視覚的な美しさしか感じられなくなっちゃうし。
破滅に向かいつつも愛に溺れて壊れていく美少年が好きです。これで50年くらい前に書かれた小説だなんて信じられん。
これを大学の講義で扱うとは・・・!
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ゆめは真昼に一瞬脳裏を過るもの。
己の世界、美意識を表出させるための、執拗なまでの描写、圧倒!
奇妙なリズムで打たれる句読点も、心地、よく。
美とはなんと身勝手なものだろう!
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おっもりまつりさん!
と思って手に取った
どうして「おっ」と思ったんだろう・・
たぶん以前読んだことあった
そしてそれはわたしの中のBLブームまっさかりのときだったような気がする
何よんだんだろう・・
ひとつめは自伝的?というか
じぶんの身近な生活を描いた小説
ふたつめは耽美小説なかんじで
みっつめもそんなかんじ
うーーーんどうなのかな・・
あとがきさらっと読んだら「BL」っていわれるのがすきじゃないみたいで、
あとなんかいろいろこだわりがあるみたいなまつりさん
わかりやすいけどね・・ボーイズラブってボーイズのラブなわけだから
まちがってないきがする・・
男色小説がいやっていってたんだっけか
男色ってのもなんかすごいな
ホモとかゲイとかね
薔薇とかね
なんでばら・・?
いや、やっぱりBLがいいよ
わかりやすいし
あと、美少年とかっこいい大人の恋愛はいいんだけど、
わたしの好みでは
女ことばはいやだな~
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森茉莉2冊借りてて、こないだ新潮文庫のを読み終わってじゃあこっちはどんなんが入っとんかなと思ったら3編あるうちの2編が新潮文庫のと被ってたよ。なので未読の冒頭のひとつだけ読んで登録しました。
薔薇くい姫すごく面白かったです。これ私小説みたいなやつでしょ?めっちゃおもろいオバサンやんけ森茉莉。
自分を理解してくれる人の間でだけで過ごして気分よくしてるのすごいよく分かるわ。分かってくれる人の中でだけ自分はまともな大人でいられて、その外出ると急にただの変な人になるんよね。わたしもそーゆーのを強く実感した経験がある。
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「薔薇くい姫」で、なんて長ったらしくいちいち注釈をいれて前に進まない自分に酔った文章なんだろう、と思ってしまったけど、「枯葉の寝床」「日曜日に僕はいかない」は引きこまれた。格調高く匂い立つような文体。
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セレクトの良い短編3作品集。
『薔薇くい姫』……自伝と言うかエッセイ風の日常小説。なんというか、70歳になって小説家としてもそこそこでも人に舐められる事にイライラしてる茉莉さんに「わかるわかる」と頷いてしまうw 主観と客観とのズレを冷静に分析してる所が良かったです。なんとなーく、自分もこいいうおばあちゃんになりそうだから、つい共感してしまいました。
『枯葉の寝床』……元祖BL小説? とか言われてるみたいですが、耽美世界ですね。ただ、延々とそういう世界が続いてるので、少々飽きます。室生犀星に、もうちょっと飾りたてすぎる表現の肉を落とした方がいい、って指摘された意味がよく分かるような。頭にあんまり入ってこないスカスカのものになってしまう感がありました。ナルダンやロンジン、ムゲのパルファン、といった美的センスは今でも秀逸だと思いますが。後半にかけての犬のエピソードからクライマックスは良かったです。
『日曜日に僕は行かない』……これも少年愛ものの変奏曲でした。
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短編三作品を収録しています。
「薔薇くい姫」は、いつも子どものようにあつかわれることに腹を立てている著者自身をえがいたエッセイに近いスタイルの作品です。
「枯葉の寝床」と「日曜日には僕は行かない」は、中島梓(栗本薫)以来によって評論の対象となった、現在「BL」、かつては「やおい」と呼ばれていた作品の源流と目されることのある男性同性愛小説です。
「枯葉の寝床」は、レオという美少年と38歳のギランの物語です。レオがオリヴィオという男によってマゾヒズムを呼び起こされ、そのことに嫉妬するギランは、レオとともに死ぬことをえらびます。「日曜日には僕は行かない」は、作家の杉村達吉とその弟子である青年の伊藤半朱(ハンス)の物語です。半朱は、婚約者を捨てて達吉をえらびますが、そのことが悲劇を呼び起こします。
ほんの一節を読んだだけで著者のものとわかる文体によって構築された耽美的な作品世界をつくりあげ、そのなかでキャラクター的な潤色がほどこされた登場人物の心理的な駆け引きが展開されています。同性愛という題材以上に、ケレン味の強い作品世界そのものが、読者によっては受けつけがたいと感じられるかもしれません。