紙の本
忘れられない6日間
2016/01/11 10:36
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の中に「ジャネーの法則」という言葉が出てくる。年を重ねるにつれて時間の流れを速く感じる感覚のことらしい。日常に流されていく中にも、かけがえのない時があるはずだ。ある女性の人生を場所も時間もばらばらな1日をつなぎ合わせることで教えてくれる。
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ずいぶんと落ち着いた物語を書いたなー、が一番の感想です。
物語として面白いし良質。リンデという女の一生のうちの6日間をピックアップした物語。16際から始まって、恋人ができて、結婚してて、離婚してて、3歳に戻って最後は63歳。たった6日間、けれどその6日間でリンデがどのようにして人生を歩んだか、憶測でしかない人物像がありありと浮き上がってくる。素直すぎて生きにくいひとだったのでは。それとも既出通りデリカシーがないがために嫌われ者だったのではとか。偏屈、とにかく偏屈なリンデ。
さて、問題はこのような物語を本谷有希子に求めていないということなのです。初めて本谷さんの小説を手に取るひとなら文学として普通の物語として楽しめるかもしれません。けれどわたしのように本谷さんの過去の作品を読み、彼女の世界観が好きなひとには、なんて退屈な物語をーーと思ってしまううのでは。退屈というか普通。とても静かであっさりとしていて上品。下品で巧妙な言い回しが売りである本谷作品とは思えない出来。この作品好きだけど求めてない。だから少し残念です
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16歳のランチタイム、28歳のプロポーズ前夜、34歳の結婚記念日、47歳のクリスマス、3歳のお昼寝時間、63歳の何も起こらない一日…ささやかな孤独と願いを抱いて生きる女性の一生を「6日間」で描く、新境地長篇小説!
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タイトルを見ると自己啓発本のようでもあるが、ひとりの女性の生き様を描いたれっきとした小説である。主人公のリンデは、決定的に悪い人ではないのだが、どこか人をイラッとさせるところがあり、そのことにまったく無自覚というわけでもないのだが、自分をなんとか正当化して気持ちの落としどころを見つける、といった、ちょっぴり面倒くさい女性でもある。そんなリンデの16歳・28歳・34歳・47歳の一日を描き、いきなり3歳に戻ったところで、三つ子の魂百までということわざの真実を改めて思い、63歳の一日で、再確認させられる。それでも人は自分を好きでいたいのだ。腑に落ちたとともに寂しさも感じられる一冊である。
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今までの作風とかなり違う印象を受けた。異常なまでの自意識過剰がこの作品には全く感じられない。でも、読み始めたら止まれず、最後まで一気読み。
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なんでもなさそうだけど、なんでもなくもない。
ひとりひとりの人生には、ひとりひとりのドラマがあるのです。。。
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一人の女性リンデの一生を「6日間」で描くという、挑戦的な試みに作者らしさを感じた。
その「6日間」とは、3歳・16歳・28歳・34歳・47歳・63歳のそれぞれ一日。
物語は16歳から始まる。
「16歳のリンデとスコアボード」
高校に入学してすぐ。微妙な距離感の残る「友人」たちとのボウリング場での一日。
“ほんとうにわかりあえる誰か”を諦めずに探すべき――最後にリンデが書く短い手紙がとても印象的。
「28歳のリンデとワンピース」
「34歳のリンデと結婚記念日」
プロポーズ間近と思われる彼との旅行最終日。28歳の一日。
思い出の地を再び訪れた結婚記念日。34歳の一日。
人と人の関係は、同じだからうまくいくことと、違うからうまくいくことがある。
反面、同じだからダメになったり、違うからダメになることもある。
それがどこなのか、傍から見ればわりとわかるものだけれど、自分の身になるとなかなかわからない。
「47歳のリンデと百年の感覚」
仲間とのクリスマスパーティの一日。
まだあきらめていない部分、あきらめつつある部分、あきらめた部分。そういうものが一番混在している歳に思えた。
一人でもいいやと思う気持ちと、まだ誰かと時間を共有したい気持ち。でも新しい出会いや関係を展開するのは面倒くさい。それは恋愛であろうと、友人関係であろうと、家族であってさえも。
「3歳のリンデとシューベルト」
保育園でのいつもの一日。お昼寝の時間。
3歳の一日がここに挟まれていることで浮遊感のようなものが生まれ、3歳のリンデの行動が遠い小さい頃のなにかの記憶を思い出させるような……なんだか不思議な章。
「63歳のリンデとドレッシング」
現役も引退し、だらりと過ごす毎日にメリハリをつけてみようとする一日。
わざと忙しくした一日の中で、会えない宅配便の配達員に思いを馳せる。
連作集のようで、これは紛うかたなき長篇だった。
描かれていない「6日間」以外の年月が確かに存在するのを感じ、そしてその年月ずっと、リンデは“ほんとうにわかりあえる誰か”を探し続けている。
6日間からのぞくリンデの人生から、自分や誰かの人生が透けて見えるような気がした。
いつか来た道であり、通ることのなかった道でもあり、そして、いつか行く道かもしれず、まったく通らない道かもしれない。過去に安心し、未来にうっすら不安を覚え、どこかしらが痛む、そんな道の数々。
せめてひそやかに、自分や誰かやリンデの穏やかな未来を祈りたい。
“ほんとうにわかりあえる誰か”の隣にいますように。
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初読了:7月10日(刊行前プルーフ版)
再読了:8月10日(完成書籍)
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16歳、28歳、34歳、47歳、3歳、63歳
一人の女性のそれぞれの年齢の、ある1日を紡いだ短編集。
相変わらず主人公が好きになれない。
【図書館・初読・8/15読了】
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なんだかステキな題名です。破滅的な?女子を描くイメージの強い本谷氏から、ちょっと意外な新作のお届け。舞台がどこの国かも限定できない、不思議な、童話のような。
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概要は、Amazonの内容紹介にあるとおり、「一人の女性の一生を、3歳、16歳、28歳、34歳、47歳、63歳のそれぞれ一日を描いた6編を連ねて構成する長編小説。」である。
物語はこの女性の目線で淡々と進み、淡々と終わっていく。
読後感は古谷実の「シガテラ」の読後感に近い。
つまり「何も起こらなかったなぁ。」という感想。
私はこの女性に対しては、一般の女性より多少情熱的、悪く言えば多少ヒステリックだという印象を受けた。
そのため感情移入出来そうで出来ない絶妙な感じが出ていたと私は思った。
女性が読むとまた違った感想を持つのかもしれないと思っているので、
是非女性の感想を聞いてみたい。
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身につまされる思いだ。
自分もこういった孤独感を持つことが多いから。
原因はやはり自分にあるのだと思うし。
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ありふれた孤独とコンプレックスを抱えて生きる、ありふれた一人の女性の、ありふれた一生の中のありふれた6つの日。
たった6つの風景の中から、始まりも終わりもない一つの人生が、はっきりと手触りと温度を持って浮かび上がってくるようだった。ずっと奥深くまで見通せそうな、透明感のある言葉が、小説に奥行を持たせて、立体感を生み出しているのだろうか。
リンデという女性の日々を、作者の目を通して見つめながら、自分自身がリンデとして生きたような読書経験だった。
「新境地」と帯にもあったけれど、今までの本谷有希子さんの作風とはずいぶん変わったように確かに感じる。
けれど「コンプレックス」というテーマがその中心に据えられているということはこれまでと変わらない。
それから、コンプレックスを抱えて生きる女性が主人公であるということも。
コンプレックスをさらけ出して、直視して、リングの上でガチで殴り合うみたいにしてそれを征服しようとしていたのがこれまでの本谷作品の女性だとするならば、
今作の「リンデ」はそれを手名付けようとするのではなく、何とかなだめて、ごまかして、うまく一緒にやっていこうとしているのだろう。
「生きていれば何とかなる」みたいな言葉は、僕やリンデのような自分が嫌いで嫌いで仕方ない人にとっては、ただの慰めにもならない。
だって「生きていく」にしても、大嫌いな自分がいつもそこに居て、自分は自分からは離れることができないのだから。
それでも大嫌いな自分と一緒に生きていくことしかできなくて、そうして日々を重ねていくことが、きっと唯一の「自分を好きになる方法」なのだろう。
「あんたは私から離れることができるけど、私は私から離れることができないんだよ」というようなフレーズが、同著者の過去の作品にあったのを思い出した。
この小説は、ずっと「コンプレックス」を描いてきた著者による、一つの「答え」なのだろう。
自分のことが好きになれなくて、世界を呪ってしまうくらいの負の感情を抱えていても、それでも生きていけるのだ、と教えてもらえた気がした。
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天才。
あたしには耐えられない人物を書ける天才。
意地で読んだ。
国籍不明な感じは面白いけれど、
円とかメートルとかの単位で現実に引き戻されるのが残念。
情景がぐいぐい色濃いのは素晴らしい。
大江健三郎賞受賞の「嵐のピクニック」も忍耐が要ったし、才能溢れるお人の作品を楽しく読めないあたしはダメ人間なんだろうな。
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リンデという女性の1歳、28歳、34歳、47歳、3歳、63歳の時のある一日を切り取った連作短編集。読んでいてあーやだなこの人って思うヒロインが自分自身に折り合いをつけつつ一生を終わる様子が書かれていていつもの本谷さんの作風と違うけれど、目の付け所がさすが!と思えました。
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こぉんなタイトルですが。
For six days of Linde
と、表紙にもあって。
リンデという女性の人生の中のある六日間。
それぞれの一日のお話し。
16歳 別の女子グループとお昼を食べることに・・・なった日。
28歳 彼と海外旅行に出かけて、すれ違い・・・予約のダイナーに行かなかった日。
34歳 思い出の海外旅行の地に結婚して訪れる・・・手を絡まなくなった日。
47歳 持ち寄りクリスマスパーティー・・・の日。
3歳 みんなでお昼寝の時・・・眠れなかった日。
63歳 不在票・・・。かな・・・。
そぉ。
いい子ではない?リンデのお話しになるのかな?
うそをつくような、心を偽るような一日。
と、いうか。逆かぁ。
ありのまますぎて・・・自己嫌悪の一日。
でも、ココ!
「あるある」
「わかる!」
なぁんだぁ。
そして。
なにか、みつかった?みつけて?
と、いうお話し。に、なるかしら。
タイトルから!
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For six days of Linde という副題のとおり、リンデという一人の女性の一生を、16歳、28歳、34歳、47歳、3歳、63歳のそれぞれ一日、6日間でを描いた小説。
16歳のリンデとスコアボード
28歳のリンデとワンピース
34歳のリンデと結婚記念日
47歳のリンデと百年の感覚
3歳のリンデとシューベルト
63歳のリンデとドレッシング
16歳:仲良しという欺瞞、28歳:恋人との喧嘩、34歳:離婚、47歳:バツイチ同士のクリスマスパーティー、3歳:嘘つきリンデ、63歳:ガサツなおひとり様の腹立ちと夢想、の6日間を通して、リンデというある意味でイタイ女の生涯が炙り出される。
本谷有希子のこれまでの作風からいえば、異質の作品。静かな文章の流れのなかでも、結局はイタイ女性が語られるので、底辺はそのままといえるのかも。