紙の本
見えない幸せを追い求めて
2020/03/13 11:36
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネットショッピングやSNSを始めとする、今の時代の満たさない欲求を鋭くついています。何かを追い求める余りに、身近な幸せを手放してしまうようでゾッとしてしまいました。
電子書籍
追い込まれた人達
2019/10/01 20:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ルカ - この投稿者のレビュー一覧を見る
3つの短編集。
共通しているのは、どの話も追い込まれた人達の話。
嫌な方向に進んで行っていることを、本人も薄々分かっているのに、理由をつけて見ない振りをしている。
究極的に崖っぷちなのに、まだ大丈夫とヘラヘラ笑っている様が異常で怖い。本当に怖い。
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後味が悪い厭な感じの作品3つ。ミステリーではないからあれだけどそれに似た読後感。ぞわぞわする。
本当の旅
SNSに翻弄される3人の若者たちが見つける本当の旅。マレーシアクアラルンプールで、タクシーに乗りわけのわからないところへ連れてかれてるにもかかわらずすごく前向きなのはいいんだけど、なんだろ、それがあまりにもリアルでより怖かった。
奥さん、犬は大丈夫だよね?
ギスギスした夫婦。夫に非があるのかと思いきやじつは奥さんが買い物依存症っていうまたぞわぞわする感じ。子供ができたことが嬉しかったわけではなく、子供のためにまた買い物ができるって喜んだってところ。怖かった…。そして子供できてなくて良かったってところも。
でぶのハッピーバースデー
もうタイトルからしてあれだよね。でぶとでぶの失業した夫婦がいろいろ模索しながら生きてるんだけどなんかもうこれもさ、どこにでもありそうなんですよ。だから怖い。口元だけでもなおせばマシになるかもって歯を8本抜くことにするでぶ妻だけど、毎週2本ずつなとこらを序盤で挫折。だけど片頬だけすっきりして逆に化け物になるとか、もうホラーだわ。
本谷有希子って言えば頭おかしい主人公の話ってイメージだったけど、なんかこういうのもかけるんだなーって、こういう路線に来たんだなーって。個人的には前の作風恋しいですけどね。
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三作とも素晴らしかった。
読みながらずっとうすら寒い話と、ゾッとする話と、何だか泣けてくる話だった。
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「本当の旅」「奥さん、犬は大丈夫だよね?」「でぶのハッピーバースデー」の3編。ざわざわするからこの題名にしたのかしら。装幀もかっこいい。
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SNSに毒された人々の末の道。
本谷さん作品初読。
7ルールと言う番組からでしか、本谷さんの人柄を知らない。
けれど、文体が淡々と進む感じは彼女らしいのかなと。
まだ1冊目で判断はできないが、淡白すぎて好みではなかった…。異類婚姻譚も読んでみてみたい。
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海外旅行でインスタにアップする写真で“本当”を実感する僕たち、ネットショッピング依存症から抜け出せず夫に携帯を取り上げられた妻、自分たちだけの印を世界に見せるために動画撮影をする夫婦―。SNSに頼り、翻弄され、救われる私たちの空騒ぎ。
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読みながら、どういう気持ちになればいいのか戸惑うような物語たちである。登場人物たちは、SNSによって、世界とつながっているような気になっているが、その実、ものすごく閉じた世界にいるように思われる。生身の自分では生きている実感を持てず、外に向けて発信したものを見ることでしか、その実感を得られないとしたら、生きている、とはどういうことなのだろう。何かに違和感を覚えながらも、そのことを深く掘り下げようとはせずに、表層を滑るように日々を過ごしているように見える。なんだかものすごくもどかしい心地にさせられる一冊である。
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初めて読んだ本谷さん作品です。
三作とも、ものすごい違和感と不気味さで、ページをめくるのが怖かった。
その違和感が、言葉では言い表せない、なんとも言えない感じ。
日常の中に潜む、小さなズレや歪み。それを拾って、集めるのがすごくうまい。
特に、本当の旅という話は、あぁこういう人いそう。というのが率直な感想。
痛々しい人たちの、痛々しい考え方、行動。
こわいもの見たさでのぞいてしまった感じでした。
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三編通して読んだら面白かった。『本当の旅』の風刺というか、度を超えた戯画化は読んでいて不快に感じた。皮肉たっぷりで描写されたキャラクター、年齢こそ違和感があるがそれを除けばこんな若者が現実に存在しているような、それを小馬鹿にする筆致と現実感が、展開される恐怖と滑稽に重なってゆく。
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怖い。幽霊や殺人鬼が出てくるわけではない。でもこれは間違いなくホラー小説だ。社会という共同体に馴染めない人の描写が妙に生々しくリアル。しかも読者に牙が向く構造の転換があるわけではなくシンプルに登場人物をそのまま刺す。特に1本目の『本当の旅』が読んでる最中ずっと居心地悪くてもう…
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===qte===
あとがきのあと「静かに、ねぇ、静かに」本谷有希子氏 変わりゆく日常への違和感
2018/9/29付日本経済新聞 朝刊
「なんか変だな、なんか嫌だな、なんか面白いな。生活の中で、一言では説明できない僅かな違和感を抱くことがある。その肌触りや空気感を短編小説にそのまま表現した」。芥川賞受賞後最初の小説集は、自身が何気なく感じたズレをヒントに、「人物ではなく行為を主体に書いた」という3作を収める。
マレーシアを旅する男女3人が、トラブルに巻き込まれてもなお交流サイト(SNS)でポジティブな発言をし続ける「本当の旅」。ネット通販依存症の妻を連れて同僚夫婦とキャンプに出かける「奥さん、犬は大丈夫だよね?」。そして「でぶのハッピーバースデー」は失業した夫婦がゆがんだこだわりから奇妙な動画撮影を始める物語だ。
「当初はまったく違った話を書こうと机に向かったが、1年以上かかってもうまく進まなかった」。気分転換に行ったマレーシア旅行で同行者につられて携帯で写真を撮り続けるうち、「自分が感受した旅の実感よりも、画面の中の自分たちが楽しそうで、食べ物がおいしそうなことに充足感を得るようになった」。
「なるほど。こうやってはまっていくんだろうな、と思った一方で、切実な現実を排除したSNSの世界の不気味さや不自然さが、恐ろしくも滑稽に思えてきた」。これを小説にしてみようと再び机に向かうと「ひとつ書き終えることができた」という。
「SNSにのめり込むことが良くない、と警鐘を鳴らすつもりはまったくない。不自然だったものが自然になっていく過渡期に自分たちがいる。そこには多かれ少なかれ誰もが感じる何とも言えない違和感があるはず。それを誇張して表現したかった」
通販、動画撮影といった行為を主役にすることで「かえって人間の描写に集中できるのが書いていて楽しかった」という。最近になって「短い小説を書くことが自分には向いていると分かってきた。今回の作品でコツをつかんだ気がする」。(講談社・1400円)
(もとや・ゆきこ)1979年石川県生まれ。劇作家として「幸せ最高ありがとうマジで!」で2009年に岸田戯曲賞。小説「異類婚姻譚」で16年に芥川賞を受賞した。
===unqte===
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最近の「心温まる」系の本谷有希子ではなく、初期の頃を彷彿させる「胸糞悪い」系の本谷有希子だった。
「自意識」ということをずっと書き続けてきた著者の真骨頂にして新境地というか、
とにかくこっち系の方が本谷有希子感あるし、文章も活き活きしているように思えるのは私だけだろうか。
3編からなる短編集だけど、標題作としてこのタイトルの短編があるのではなくて、全体をまとめてこのタイトルがつけられているというのが意外だった。
「静かに、ねえ、静かに。」
これは物語の主人公たちの言葉なのだろうか?
それとも、著者の? あるいは、読者の?
胸糞悪い物語ばかりだったけれど、
我々読者はいつも黙って、静かに、それらが終わるのを見届けるしかない。
きっと復讐の時が訪れるだろうと信じて。
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痛いな~、登場人物も話もみんな痛い。関わり合いたくないタイプの人間がどの短編にも出てくるけれど、普通の日常の中にいそうな気がして遠くに感じられない。特に「本当の旅」はこの痛い人たちの行動にこっちまで恥ずかしい気持ちになってしまった。でもラストは怖かったけれど。
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表紙タイトルは、スマホで自撮りすることで撮った写真が反転し、読めるようになるのだそう。
SNSやオンラインショッピングなどのふだん私たちもよく使うインターネットサービスに蝕まれた女性たちの3編。
とくに「本当の旅」には何度もどきっとさせられた。
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最近の社会でありそうな少し痛い人を描いた短編が3つ
1
インスタとかのSNSでしか表現、繋がれない中年3人組のマレーシア旅行
つまることろ、現実を直視できないから、SNSの仮面を被った仮想世界に逃げ込んで、そこで傷を舐めあってる。しかし、舐めあっていることは認めず「自分の価値観」の元にこの世界であるべき自分として存在していると言い張ってやまない
づっちんは途中でインスタとかのSNSは承認欲求の塊だと肯定しながらも、自分は違うと思い込んでる/思い込ませているところがイタイ
2
仲の悪い夫婦がよく知らない同僚とキャンプに行く話
自分らしさを大切にすると言っている同僚夫婦が気持ち悪くて、どうも馴染めない妻。
酔った勢いで、気持ち悪さを吐露するも自身の障害に話がおよび事件は起こる
この自分らしさを大切にしているという夫婦が気持ち悪くてならん。これってすなわち他者と交わらない/他者評価を受け入れないてっことだよな。これも外と交われない、認められないから逃げてるだけに、思えて仕方がない
やはり気持ち悪い
3
でぶで乱杭歯の妻が歯を抜くかどうか思案する話
右半分を抜歯して光が差してくるも、左をどうするか、得るものと失うもののバランスに悩む。夫は失ったものの大切さに気づき、昔のあるがままを懐かしみ求めるようになるも、妻は得たものの素晴らしさに気づき左も進めるようになる。
最初から壊れてるものを与えられた人間は、ありのままで良いのか?
どの話も気持ち悪くて仕方ないのだが、気になって仕方がない。
並行して朝井リョウの何者を読んでたけど、通ずる世界ですね。