紙の本
ほんのりと
2023/01/20 08:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:杉野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
直接的な表現が多くない小説だと思います。じっくりと読めば読むほどほんわりとした幸せが心に広がっていくようでした。
紙の本
大切な人を亡くした事実を受け入れるとき、
2021/10/01 06:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
亡くなった人に一目会うことで気持ちに折り合いをつけられるのかな。震災ではそれが叶わない場合も多いんだ。人の思考のスピードはそれぞれで、立ち直るにも時間のかかり方が違う。かけ算とまでは言わない、引き算になることもあるけど、1人よりは2人でいたり、誰かを巻き込んで事実を受け入れられたら。そういうふうに立ち直ってもいいんだ。彩瀬さんの気持ちの表現の仕方は、地球や自然の一部の人間っていう感じで、とても好き。
投稿元:
レビューを見る
中盤が一番泣いた。中断する気になれなくて、読み続けたけど、新幹線の中だったからちょっと大変だった。
泣き止んで、荒れた呼吸が落ち着き始めた頃にそっと終わる感じが好きだなぁ……。
投稿元:
レビューを見る
幻想パートの私の話を、どう感じればいいのか難しい。
描写は具体的だけど明らかに現実の出来事ではなく、なにかの暗喩というにはやはり具体的すぎる。現実パートの真奈の友人であり、震災の日から帰ってこなくなったすみれの側を描いた、夢か現かの世界・・・なのだろう。出口を見つけられず、たったひとりでさ迷い歩き続ける私。
思い出せない、分からないことばかりでただ歩くしかない荒涼としたイメージは、現実パートの真奈が想う「今のすみれ」と通じるものがある。彼女はくらくて寂しいところにいるから、生きている私が覚えていて、思い出し続けなくちゃ・・・と自分に課しているような真奈だが、遠野とのやり取りや職場での変化によって少しずつその考えが溶けてゆく。響きあうように、歩き続ける私にも変化が現れた気がする。何とは言いがたいけど・・・。
「置いてきたものを思うたび、舌の上がうっすらと甘くなって体の内側に小さな花が咲く。それは・・・奪うことのできない、私だけのものだ。」
ゆらゆらと漂うようで意味も形も掴みきれていなかった私の輪郭が、はっきりしてくるこのあたりの展開がとてもいい。
投稿元:
レビューを見る
文体が透き通っていて読みやすい。テーマが死んだ人間の忘却とやや重めだが、文体が軽く重くなりすぎない。死んだ人間を自分の中でどのように扱うかを考えることで、どのように生きていくのかを考える小説である。
投稿元:
レビューを見る
彩瀬先生の文章は独特の雰囲気があって好きなんだけど,この作品にはそれが特に色濃くでている.
卯木すみれ(と思うのだけど,違うのかもしれない)のパートは,ややもすると被災して亡くなられた方を冒涜しているとの非難を受けかねず,このパートを書いた勇気を讃えたい.
旅行中に実際に被災して,たぶん生き残ってしまったことにいろいろ感じている彩瀬先生自身の心を整理する作品でもあったのかな.
ノンフィクションはあまり読まないのだけど,「暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 」も読んでみようと思う.
--------------
暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 」を読んで修正
「生き残ってしまったことにいろいろ感じている」はたぶん大きな勘違い.
彩瀬先生の後ろめたさみたいなものを感じてそう思っていたのだけれど,あの後ろめたさみたいな感じは,「部外者にしかなれない自分」に対する憤りが表れていたのかなと今は思っている.(彩瀬先生自身の心を整理する作品でもあったのかなという感想は変わらず.)
投稿元:
レビューを見る
震災で友人を亡くした女性の話。死人はなにも語らない、だから残された人たちは考える。勝手に、思い思いに都合よく、願望や祈りを込めてまっすぐに、よこしまに。死人に囚われるのは間違ったことではないとわたしは思います。主人公の葛藤がつらくて苦しくてかなしくて読んでてぼろぼろ泣きました。震災の描写が迫真的で胸が苦しい。自分はなにも体験してないけれど災害というものは、死というものは、一方的で圧倒的で、横暴で、文章を通じて改めて感じることができてよかったです。苦しいけれど、繰り返し読みたい。
投稿元:
レビューを見る
真奈の親友すみれは、3年前に震災で行方不明になった。すみれの恋人だった遠野敦が真奈が働くダイニングバーに現れたところから物語が始まる。遠野はすみれの遺品を整理したいと思うが、真奈はまだすみれの死を受け入れられない。
偶数章に、震災に遭遇して歩いて迷ってまた元へ戻って、余震に震えて津波に怯えてそれでも歩く私が幻想的に描かれる。それは私なのかすみれなのかもう分からない。やがて死に辿りつくこの歩みを止めるわけにはいかない。
投稿元:
レビューを見る
あの大震災の後、大切な人が帰ってこなくなり、3年。
残された親友、恋人の葛藤と揺れ動く感情を描いた作品。
行方がわからない人をずっと想うのか、忘れるのは非情なのか、何が正解なのか?
そんな答えのない難しい問題と向き合う主人公の真奈がたどり着いた答えとは?
読了後、もし予兆もなく大切な人を突然失ったとき、自分は感情を整理できるだろうかと考えてしまう。
投稿元:
レビューを見る
著者自身が被災してることを知って、この朝靄に包まれたような作品の底にある説得力がさらに増す。最後のハグのシーンは良かった。今敏監督でアニメ化したら名作になってただろうな。
投稿元:
レビューを見る
帰れないと知った時、すみれは遠野くんに会いたくなったと思うのだ。
彩瀬さんの小説は平易な言葉でも心を揺さぶられてしまう。
普段は無いことにして暮らしている、心の柔らかい部分を思い出させてくれる。
投稿元:
レビューを見る
詩的な文章で、物語に入り込むまでに少し時間がかかった。
全体的に重たい空気のまま進んでいくけど、ラストに向かって、少しずつ光を感じる作品だった。
誰もが、生きた証を何らかの形で残していくということがとても温かく感じた。
また何年か経ったら再読したいと思えた作品だった。
投稿元:
レビューを見る
震災で親友が行方不明のまま時間が過ぎて、いなくなったことを受け入れること、忘れていくことにさまざまな葛藤や悲しみ、自分への怒りが見える。その考える時間とたくさんの感情。生と死、そしてこの先のこと。忘れることは悪いことではなくて忘れても確かに過ごした時間は事実でそれは消えないものなんだと思う。その人の存在がなくなってもなくならないものはある。
投稿元:
レビューを見る
少し前に直木賞候補になった短編集「くちなし」を読んで気に入っていた彩瀬まるさん。彼女の長編小説が文庫化されるということで、期待を膨らませながら手にとった。今回も期待通り。今後時間があるときに他の作品も読んでいきたい。
題材は著者自身も被災した東日本大震災。身近な人が亡くなるという喪失感にどのように向き合って生きていけばよいか。自分もいつか突然死んでしまうかもしれないという恐怖を抱えながら、どうすれば希望を持って生きていけるのか。生きていく上で避けられない切実な問に向き合うときに、背中を支えてくれる言葉に出会える哀しいけど優しいお話。
投稿元:
レビューを見る
ぜひ、あらすじ以上の内容は知らないまま読んでほしい。物語に組み込まれたすべての感情と共に、一歩一歩進んでいってほしいから。なんでもない文章で鼻の奥がツーンとして、何度も涙が出た。こちらを泣かせに来ているわけでもない、それでいて柔らかな文章は、その優しさがすでに反則である。言いがかり以外の何物でもないことはわかっているのだけれど、胸が詰まってつらかった。あの日を経験したすべてのひとが、何らかのかたちで傷付いただろう。傷付くことに引け目を感じたまま生きているひとのもとへ。どんな形でもいい、届けばいいと願った。