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紙の本
ハマのドン 横浜カジノ阻止をめぐる闘いの記録 (集英社新書)
著者 松原 文枝 (著)
政権中枢が推し進める横浜市へのカジノ誘致に対し、これを阻止すべく人生最後の闘いに打って出た91歳“ハマのドン”こと藤木幸夫。そこには横浜のみならず全国の港湾を束ねる者とし...
ハマのドン 横浜カジノ阻止をめぐる闘いの記録 (集英社新書)
ハマのドン 横浜カジノ阻止をめぐる闘いの記録
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商品説明
政権中枢が推し進める横浜市へのカジノ誘致に対し、これを阻止すべく人生最後の闘いに打って出た91歳“ハマのドン”こと藤木幸夫。
そこには横浜のみならず全国の港湾を束ねる者として、「博打は許さない」という信念があった。
カジノの是非について住民投票を求める市民の署名は二〇万筆近くに上ったものの、市議会では否決。
決戦の舞台は2021年夏、横浜市長選となった。菅首相はじめ政権総がかりで来る中、藤木と市民との共闘のゆくえは――。
国内外で高い評価を得たドキュメンタリー制作の舞台裏を明かす。
◆目次◆
第一章 保守の大親分が反旗を翻す
第二章 無党派市民の怒りとドンの宣戦布告
第三章 藤木幸夫とは何者か?
第四章 そして、決戦へ
第五章 闘い終えて、映画化へ【本の内容】
著者紹介
松原 文枝
- 略歴
- 〈松原文枝〉テレビ朝日ビジネスプロデュース局イベント戦略担当部長。専修大学文学部ジャーナリズム学科特任教授。ギャラクシー賞テレビ部門大賞などを受賞。
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紙の本
ハマのドンこと藤木幸夫の原点は弁当
2023/07/17 20:15
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投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
令和5年(2023)6月22日、KBCシネマ(福岡市中央区天神)で本書と同名のドキュメンタリー映画を鑑賞した。複数の編集者や友人から「観ておくべき」として推奨され、放映最終日になんとか間に合った。しかし、客の入りは、一割にも満たない。およそ2時間弱、そろそろ集中力が切れかかってきた頃に終了。パンフレットを購入し、その足で新刊書店に出向いた。
映像は感動的だが、それは徐々に記憶から消え去っていく。せっかくのドキュメンタリー映画も、場面、言葉などが思い出せなくなる。その補完の意味でも本書はありがたい。更には、全5章のうち、4章は映画で鑑賞した内容と重複する。小見出しを追えば、映像が蘇る。しかしながら、本書の肝は第5章の「闘い終えて映画化へ」だ。
崔洋一監督の遺言という箇所での「港湾労働者の姿が描ききれていない」という指摘は、まさしくと思った。事前に火野葦平の私小説『花と龍』の映像を見れば、沖仲士こと港湾労働者の生きざま、歴史がドキュメンタリーに色を添えたかもしれない。
本書を通読して面白いと思ったのは、「おわりに」の中で、ハマのドンこと藤木幸夫氏のところに元首相の菅義偉氏が挨拶に出向いたという箇所だった。これぞ、政治の世界そのままではないか。この政治世界の問題はIR(インテグレイティッド・リゾート)基本法が平成28年(2016)に成立したことが発端だ。意味不明の横文字に国会議員が大騒ぎしたが、いわゆるカジノ構想だ。その大々的な構想ターゲットになったのが、横浜港だった。カジノを誘致すれば税収増額、雇用が安定するとの謳い文句だった。しかし、これにはとんでもない落とし穴がある。それを具体的に示してくれたのが、新型コロナウイルスだった。
このカジノだが、本場アメリカのラスベガスでは衰退している。アジアでは香港、マカオ、シンガポールが有名だが、現地での実態を知れば知るほど、税収や雇用が「絵に描いた餅」であることがわかる。すでに、大阪市がカジノ誘致を本格化させているが、事業者として参画しているオリックスも不良債権を抱えることになるだろう。本来、カジノ事業者が負担すべき「夢洲(ゆめしま)」の造成費用を大阪市が負担するというから、先行きは暗い。
為政者を含めての事業者の見通しの甘さはどこからくるのか。それは、本書の75頁に示された弁当の写真が物語る。「食べることができるありがたさ、食べてもらいたい思い、弁当を持たせるということにこだりがあるのだ。」との記述だが、戦後の貧しい時、職を求めて集まる港湾労働者には弁当がふるまわれた。貧相な弁当ではあるが、労働者たちはその弁当のタイ米を家に持ち帰り、雑炊にして子供たちに食べさせた。額に汗し、日々の糧を得た港湾労働者が築き上げた横浜港を、道楽者のために明け渡すわけにはいかない。最高権力者に立ち向かう藤木幸夫の原点は、弁当にあった。ふと、この弁当の話から「港湾労働者の姿が描ききれていない」という崔洋一監督の言葉を思い返したのだった。