投稿元:
レビューを見る
CL 2023.8.20-2023.8.22
昭和初期、華族の一家のお話。
家内と類稀な庭のこと。
華族という今から思えば無駄としか言いようのない特権階級の家の中の話。だからなのか、語り手がどんなに奥様や御前様を褒めても残念ながらあまり共感できるところはなかった。
投稿元:
レビューを見る
「行く春や鳥啼き魚の目は泪」芭蕉
「奥の細道」へと旅立つときに詠んだ句。
昭和八年から九年にかけて華族の吉田家で起こった事件です。
女中のトミが血で汚れたコテを弟分の惣六に「それを誰にも見つからないところに隠すんだよ」と渡す切迫した場面から始まります。
血で汚れたコテは何かの事件の凶器かと思われますが…。
そのコテの持ち主は庭師の溝延兵衛。
お屋敷の主人は吉田房興。
妻はアキ子(アキの字が変換できません)。一人息子の房通がいます。
房興には妹の準子(のりこ)がいましたが結婚前に誰の子か分からない子を死産して、亡くなっています。
ある時庭の池から白骨死体が浮かび、準子の子どもの父親かといわれた運転手や書生ではないかと噂がたちます。
房興は池を潰して新しい庭の設計を溝延に頼み、それに夢中になります。
アキ子と兵衛の間には恋愛以上の絆が生まれます。
でも賢夫人のアキ子は決して夫を裏切る事は一度もなく夫の為に生涯を捧げます。
そして事件は静かに起こり、最後は房興、アキ子、兵衛の関係性にジンと涙が出る、傑作ミステリーでした。
投稿元:
レビューを見る
普通に読んだら標準作だが、宇佐美作品となると全くもって物足りない。導入部の冗長さはいつものことだが(読者をグイっと小説世界に引き寄せるツカミが弱いといつも感じる。文章もプロットも上手いのに。。)、公・侯・伯・子・男から始まる華族世界の説明は、おおよそ知っている身からすると余計な説明。全体プロットは悪くないが、庭園に魅せられる没落貴族の感慨が、何か小説全体の主題とマッチしていないように感じた。半分の文量でギュッと凝縮した作品の方がしっくりくる感じ。
投稿元:
レビューを見る
行く春や鳥啼き魚の眼は泪
みんみん女史とお気に作家さんが被りまくっている中、いち早く新刊を読んで、いざみんみんが読んだときに、「また、真似して〜」と思うというゲスの極みな闘いに身を投じるひまわりめろんです
こんにちは
元々みんみんにオススメしてもらった作家さんたちばっかりやん!というのはなかったことになっています
歴史とはそうやって勝者の意向に沿って作られるのです(なにが歴史で誰が勝者やねん)
ま、戯れ言はこのくらいにして本編です(戯れ言ばっかりやないか!)
うーん、遂に来たかーという感じです
宇佐美まことさん、まだそんなに数を読んだわけではないんですが、かなーり多彩な作品を書く作家さんで、文体なんかも違っていたりして、とても楽しませてくれる才能豊かな作家さんだと思っています
ただその多彩さゆえに、いつかがっつり合わないやつが来るだろうなと思ってたんです
で、来ました
話の中身としては面白かったんですがね
「一人称視点の癖のある口語体」だめなんですよ
もう、ぜんぜん感情移入できなくて息苦しいのよ
ぜぇぜぇ言っちゃうの
今作は華族の奥さま付きの女中トミが語り手となっているんですが、分かる、分かりますよ、ちょっと珍しい職業の人や珍しい思考の人を語り手に据えたときに文体に変化を付けて印象強くしたいってのは分かります
でも、自分のように一人称視点に自分を重ねるタイプの読み手からすると自分との解離がひどすぎて話入ってこないんよね〜
ただただ読みづらかったという感想しか残らない
うーん残念
でも、まぁ今回がイレギュラーだということははっきりしてるので、続けて宇佐美まことさん読むぜ!(隠しきれない爽やかさ)
投稿元:
レビューを見る
昭和初期、華族である吉田家の庭にある池から白骨死体が見つかった。過去の令嬢の醜聞に関わる噂が飛び交う中、池は埋められ壮大な枯山水の庭が作られることになる。作庭師の溝延兵衛が手がけるその庭の工程が進む中、庭づくりに魅入られた吉田家の当主夫妻は徐々に変化を見せていく。ミステリ的な部分もあるけれど、それだけではない魅力に満ちた作品です。
池から見つかった白骨死体に関わる謎がメインのミステリかと思っていましたが。主役は庭と作庭師ですね。もちろんミステリとしての部分にもきっちりと驚かされ、納得させられましたが。庭に魅せられ魅入られる人たちの物語を読むうちに、こちらも引き込まれていきました。そしてこの時代の、華族の儚い栄華が虚しく切なく感じられます。さらにそれを理解していた房興の姿が悲しくもありました。華族の先行きを見据えながらも、華族としての体面を保ち生きることしかできないんですよねこの時代では。
一方で確とした自分を持つようになった夫人の姿も印象的です。こちらもまたこの時代に、置かれた立場で生きるしかないという悲しさがありながらも、凛とした佇まいが眩しい。作庭師との絆が単なる恋愛などというものでないのもまた清々しいです。
投稿元:
レビューを見る
あ〜ダメだ(꒪⌓︎꒪)
これは苦手というか…華族とかイマイチそそらない
まず名前がわからなくなってくる笑
トミの一人称が満腹になるし…
カリスマめろリンが最後まで読んだのに…
頑張っても40ページで断念してしまった…
悔しい(๑•́ ₃ •̀๑)笑
興味がある人には面白いと思います…
たぶん…
読んでないけど(〃ω〃)
宇佐美さん好みじゃないのもあるの分かってるからヘコタレませんよ♪
投稿元:
レビューを見る
女中の一人語りで淡々と綴られる昭和初期の家族の日常。ツカミでミステリーなんだと意識したが、長々と続く平安絵巻に飽きてきた頃、ようやく動き出すも…「決められた道を行くことは簡単。既にある道を外れることも容易い。難しいのは、新しい道を作ること」タイトル、芭蕉の別れの句だったんだ⁈
投稿元:
レビューを見る
好きな著者だったので。
華族と庭、殺人のお話。
「ボニン浄土」に続いて、おとぎ話のようなお話。
京都のお寺の庭をぼーっと見たりするのは好きだが、
その意味や設計者の意図は考えたことがなかった。
あまり大きな庭は好きじゃないなーとぼんやり思ったりしたことはあったが、
市井の人々と違って、
大名や華族は町や野山をを自由に出歩くことができなかったことを考えると、
大きな庭は自然を楽しめる小さな世界だったのだろう。
あだ花、と言ってはひどいかもしれないが、
「華族」を華やかながらも儚い姿に描いているところが、
おとぎ話に思えるのだろう。
庭の池から死体が発見されたのをきっかけに、
作庭師に庭づくりを依頼した侯爵。
庭づくりを通して変わっていく侯爵と侯爵夫人と作庭師。
その死体だけで殺人が終わった訳ではなかった。
庭でも、作品でも、重要な役割を果たしているシラカシが、
どんな樹木なのかが実感できないのが残念。
投稿元:
レビューを見る
『清閒庭(せいけんてい)』は昭和初期に天才庭師・溝延兵衛(みぞのべ ひょうえ)が、時の公爵・吉田房興(よしだ ふさおき)の依頼を受け、池を埋め立てて作り上げた広大な枯山水である。
浜辺に打ち寄せる波の音が聞こえてくる心地がする。
この庭に魅せられたのは現代の建築設計士・高桑透(たかくわ とおる)。
彼も知らない、清閒庭と吉田家にまつわる秘められた物語を、公爵夫人・韶子(あきこ)付きの女中トミが語る。
滅びの予感が漂う。
「華族」といえば「斜陽」・・・と条件反射のように連想してしまう。
これも一つの、沈みゆく陽の物語だと思う。
庭づくりに熱中し、やがては取り憑かれたかのようにのめり込んでいく・当主の房興。
莫大な財と高貴な家柄を誇る吉田家は、次々と不幸な事件に見舞われる。
しかし、不幸は偶然ではなく、大木を中から食い荒らして死に至らしめんとする害虫のような輩が存在したのだ。
庭師と当主夫人の清らかな魂のふれ合いが、広大な枯山水の前庭ではなく、茶室の露地で描かれるのは対照的で奥ゆかしい。
人が死んでも庭は残る。
高桑の存在は、過去と現在を繋ぐために必要だったのだろう。
しかし、ドローンの使用の是非です。
自分の作った庭を鳥になって上から見てみたいと兵衛は言っていた。
それは不可能だと思ったからこそ、秘めた思いを作庭に込めたのだろう。
まさか未来の技術で上から覗かれるとは!!
時代の流れには抗えないのであった。
しかし、高桑にとっては、庭を守り続けるために必要なことだったのだろう。
庭がそこにある限り、房興の、韶子の、そして兵衛の思いもひっそりと生き続けていくのである。
投稿元:
レビューを見る
滅びゆく者をテーマにした本は何故かそそられる。背景に流れている雰囲気が好きで冒頭から引き込まれた。昭和初期、限られた時代を生きたある華族の哀しみと、異能の作庭師の熱情が静かに呼応する「美しい庭」の物語だった。
当主である房興は家というものに取り込まれ、個を埋没させている。経済的には恵まれてはいたが、自分らしい豊かな人生を生きてきたわけではなかった。才能ある純朴な新進気鋭の庭師・溝延兵衛に庭園を造ってもらうことになり、彼の生き様や、彼の作品である庭に寄せる思いを聞き、房興と彼の妻・韶子は自分自身を見つめ直す。
作庭師が雇い主の吉田房興に話す
「決められた道を行くことは簡単でございます。既にある道を外れることも容易(たやすい)ことでございましよう。難しいのは新しい道を作ることでございます」
一介の庭師の言葉が侯爵家の房興と彼の妻・韶子の心を揺さぶった!
タイトルは「行く春や鳥啼き魚の目は泪」という松尾芭蕉の句から採ってあるが、ミステリー要素も散りばめられていて十二分に楽しめた。
初読みの宇佐美まことさんだったが、他の作品も更に読みたくなった。
投稿元:
レビューを見る
昭和初期に吉田房興侯爵が、作庭師・溝延兵衛に池を埋めて枯山水を造る依頼をする。
大きな池から白骨が見つかり…
華族のさまざまな事情を知ることとなる。
異能の作庭師の溝延兵衛、彼の造り上げた彼の知る企みと言うべき、空から庭を俯瞰したら土地全体が魚に象られてる…魚は泣いてる。という気づきになんともいえない思いがした。
まさに庭に取り憑かれた男が成したことだと改めて驚かされる。
華族が生きた昭和初期から庭に携わるものは、何年経っても心に残る美しい庭をという思いを持っているんだなと感慨深い気持ちになった。
投稿元:
レビューを見る
芭蕉の句のタイトルが目に留まり読んでみました。
戦前の特権階級だった華族の優雅な暮らしぶりとか、淡々とした品のある女中の一人語りが続く。遠い世界の事のようで、あちらこちらと話も的を得ずとめどもない噂話に、寝落ちしてしまい夢見心地でした。100人も女中を抱えていたとか、ただ車のドアを開け閉めするためだけの係もいたとか。それ以外する事なければ時間持て余してさぞかし退屈そうだからいろんな噂話に花が咲いたんだろうなって思いました。
色々と秘められた情事とか殺人もあったりで、こうゆう事が起こらないと欠伸がでそうな話でしたが、そこら辺の箇所になると釘付けになったりで、そんな自分が下世話で残酷に思えたりでした。やがて華族制度が廃止になり衰退し、庭だけが残りその栄枯盛衰を現在に伝える。
事件も風化され忘れ去られていくなか、枯山水を設計した庭師の意匠だけが誰にも気づかれずに残ってるって、この遊び心いいですね。ナスカの地上絵みたいに謎めいて問いかけているようでした。
投稿元:
レビューを見る
血で染まった柳刃ゴテをトミから隠すよう命じられた惣六。冒頭から闇深い。昭和8年~令和5年と時代を区切り、華族家に築かれた淸閒庭の謎、没落していく描写が切ない。芭蕉の句『魚の目は泪』の引用に得心。
投稿元:
レビューを見る
昭和初期、まだ日本には華族制度があった。公爵や侯爵など歴史の一端を垣間見られたのは楽しかった。美しい庭に魅せられた人々と侯爵家の悲哀。枯山水などの専門的な説明が長くて、そこは流し読みだった。
投稿元:
レビューを見る
昭和初期の華族のお屋敷での物語。
華族の暮らしぶりが細やかに描かれており、イメージが膨らんだ。100年やそこらで、時代は完全に様変わりしたのだとつくづく思う。
名家での庭造り、池に絡んだ事件などを軸に展開していくのだけど、ゆるゆるとしたテンポ感がイマイチ合わないのか、途中中だるみしてしまった。
後半、真相に迫ってきたあたりからは面白かった。