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つよく健気なわれらが同胞の手記
2012/12/28 05:58
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投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
1978年北朝鮮に拉致され、2002年帰国をした蓮池薫さんが北朝鮮での24年間の日々と帰国後の葛藤をつづった書。
罪もない日本人を強制連行し、奴隷的に働かせる北朝鮮という国の非道さには、今さらながらはげしい憎悪を禁じえなかった。ただ、一読して最も印象に残ったのは、不自由と悲惨の中で蓮池さんが家族の幸せを第一に考え、つよく生きようとする健気な姿であった。子供の幸せのために、それまで何度も頭に浮かんだ望郷の念、逃亡の誘惑を振り払い、北朝鮮の社会に順応して生きてゆこうと決意したことは悲壮ではあるが、そこには人間としてのつよさを感じた。
実際彼は、単なる北朝鮮の奴隷ではなかった。監視役の指導員が日本人を侮辱したとき、憤然として抗議の意志を示し、ついには相手に謝罪をさせたことや、地方に旅行に行ったときにも、無礼な地元民と言い争いをしたことなどからは、彼が逆境にあっても人間としての尊厳を失わなかったことがよくわかる。
と同時に、家庭菜園、釣り、ゴルフ、果てには麻雀とさまざまな趣味の世界に喜びを見出す様子も描かれている。どれも北朝鮮国内では普及していないため、道具から自分で作らねばならなかったが、それほどまでに娯楽に対する欲求は強かったのだろう。逆にそういう創作活動こそが、さまざまな労苦から彼を救ってくれたのかもしれない。
彼はまた仕事柄、日本を含めた外国の新聞を読んでおり、国際情勢にも通じていたので、半島をめぐる不安定な政治情勢には常に不安を感じていたようである。朝鮮戦争が再び起こり家族が離散したときのために、子供とどこで落ち合うかをひそかに打ち合わせするなど、日本国内に住む暢気なわれわれとは比べものにならない緊迫感を彼らが共有していたことがうかがわれる。
本書には北朝鮮で出会ったさまざまな人々の思い出も書かれているが、それらを読むといい人悪い人、結局人民は世界中どこへ行っても同じなのだという気持ちにさせてくれる。貧困層の生活の悲惨さも印象的だった。旅行の際、自分が捨てた腐った弁当を拾った少年を追いかけてゆくと、病気らしい母親の口元へそれをもってゆく姿を見たなど、おもわず涙を誘われる記述もある。
ここにあるのは、北朝鮮で恐怖と怒りを抑えながら、かつ人間らしさを失わず生きたつよく健気なわれらが同胞の物語である。蓮池さんはこの苦しい日々を耐え抜き、ついに家族ともに日本に帰国を果たした。しかし、拉致されたほとんどの人々がいまだ帰国できず、その消息さえ不明である。被害者の中では最も幸運ともいえる蓮池さんらでさえ、このような苦しい24年間を送ってきたのである。残りの人々の今も続く苦しみを思えば、拉致問題の解決は一刻の猶予もならないことは明白だ。蓮池さんらの帰国から10年がたった。2年後に子供たちも帰国をした以外、拉致問題はまったく進展を見せていない。「一刻の猶予もならない」という言葉さえも空しく感じられる今日、拉致被害者を取り戻すことに最も尽力をした安倍晋三氏が再び総理の座についた。今度こそ拉致問題の真の解決を期待したいものである。
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書く決断
2015/12/09 22:07
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新潟の浜で拉致され、心ならずも北朝鮮で過ごした24年間。事実を書くことは、さすがに迫力が違う。現地での制約だらけの生活、娘たちさえ騙さざるを得なかった苦悩。拉致された当時のことまで加えられて、秀逸なノンフィクションになった。書くことにも決断が要ったと想像するに難くないが、まだ書けないこともあるに違いない。何しろ、現地には”人質”がいるのだ。
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壮絶な闘いの日々
2013/07/15 16:45
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投稿者:taka - この投稿者のレビュー一覧を見る
北朝鮮工作員によって拉致され、その後24年もの長期に渡る北朝鮮での監視生活の全貌が赤裸々に綴られています。奪われた自由を語るより与えられた自由を語る方が明らかに早いというように、想像を絶するような苦しい生活を知ることができ、一日も早い拉致問題解決を願う。
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日本への帰国から10年改めて拉致とは何かを考えるの巻
「将来戦争が起こることを見越して地方都市・農村へ投資せず、ピョンヤンへの一極集中という国家戦略をとっている。」
合理的というかなんというか
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発売前に、帰国から10年とあって取材に応じていた。拉致が人や故郷との「絆」を断ち切るもので、その「絆」を戻すことが問題の一応の解決というのを話していたと記憶する。
このタイミングで出版したのは拉致問題を風化させず、拉致被害者奪還のための現実的なアプローチを政府などに促すねらいがあったと思うが、読んでみて思うのは、著者がいた時代の北朝鮮の状況をしめす、詳細に富んだ資料ともいえること。脱北者の本などで窺えた部分もあるが、より具体的で、説得力がある。著者のやや突き放したような視線が後ろ盾しているようだ。
勝手ながら、著者の文章に以前よりも彩りを感じる。硬いと言えば硬いのだが、幅が出てきたようである。
日本に残ることへの決断、北朝鮮生活での戸惑い、などに著者の逡巡が見えて、読み手からは現実感がないことなのだが、なんか身近に思えた。
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著者・蓮池薫氏は北朝鮮拉致被害者である。
大学生のとき、交際相手とともに拉致され、24年間を北朝鮮で過ごし、2002年に帰国。北朝鮮での日々を思い起こして綴られ、2012年に出版されたものが本書となる。
新潮社の雑誌「波」に連載されたものをまとめたとのことで、北朝鮮での生活に関する、またその中で著者が感じたこと・考えたことに関する、数ページの短めのエッセイが30弱、収められている。
2009年出版の『半島へ、ふたたび』では、拉致事件についてさほど突っ込んだ話が出てこなかったのに比べると、当時の生活についてなどもかなり詳しく書かれている。
3年の間に、前最高指導者の死亡により、代が変わっている。そのことが前著より本書が詳しい記述になっていることの一因なのかもしれないし、ただ著者がつらかった日々を振り返って文章にするには、時間が必要だったということなのかもしれない。そのへんはよくわからない。
北朝鮮の食糧事情、経済状況、拉致された者への監視などが冷静な筆致で描き出され、「空気感」が伝わってくる。
一方で、拉致事件の背景や、子ども達の学校生活がどのようなものであったかは詳細がわからない。
周囲10メートル四方は詳らかに見えるけれども、その先は霧の中、といった印象だ。
拉致被害者という立場上、著者が本当に知り得なかったことも多いのだろうし、また、諸事情により現在でも「書けない」こともまだまだあるのだろう、と推測させる。
冷静な観察眼は天賦のものなのだろう。
厳しい北の気候の中で、土地から取れるだけのものを得ようとする人々。
社会主義社会の中の本音と建前。スポーツ選手の光と闇。
おそらく日本語を思う存分使うこともままならなかった24年を過ごした後で、なお瑞々しく綴られる文章には感嘆させられる。
稀な犯罪に巻き込まれてしまった人の稀有な記録である。
著者は囚われた状況の中、乏しい情報の中で、家族のため、子どものため、生き残り、生き延びさせようと懸命に考え、生き抜いてきた。その真摯さが胸を打つ。
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招待所に住んでも(監獄のようなところ)、翻訳の仕事に従事している蓮池さんは、北朝鮮の新聞を読み、日本の新聞も読んでいて、自分たちが探されていることもそこで知っていた記述や、1990年代以降の食糧危機が北朝鮮内人の生活を変えたこと。洗脳教育、金日成の死去時の経験に踏まえて、金正日の死去時に市民がとった振る舞いなど書中で評価をくだされていた。
洗脳されているふりをしながら、心のなかではそうと悟られないように振舞っていた事実なども赤裸々に語っていある
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北朝鮮での生活や社会の状況がどちらかというと淡々と
語られていて、もう少し、拉致された時の状況や
北朝鮮での立場ならではの秘密事項とかがもう少し
かいてあるのかと思いましたが。
でも、私も含めて常人には考えられない経験をされた
筆者なのだろうからそこらあたりのギャップは
仕方ないかと。
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北朝鮮の歴史と今、そして著者の蓮池薫氏をはじめとした拉致被害者の方の痛烈な思いが綴られた良書。
拉致問題や北朝鮮という国家の体制、北朝鮮に生きる人々、今後の日朝関係等について理解するための入門書となっている。
拉致問題解決と日朝国交正常化に向け、すべての日本人が読むべき本。
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壮絶である。
単なるノンフィクションとして読むことはできない。著者は当事者であるからだ。
安全な場所で家族や友人に囲まれて大人になった自分には到底理解できないことかもしれない。
しかし、自分だけが大丈夫という根拠はどこにもない。いつ自分が、家族が、恐ろしい目に遭わないとも限らないのだ。
北朝鮮という国の姿が少し理解できた。そこで暮らす人々の中には人格の優れた方もあるようだ。
拉致被害者である著者は24年という長い期間、絶望と闘い続けた。日本に残り家族を待つという最大の賭けにも勝った。
失った時間は取り戻せない。ようやく取り戻せた夢と希望が一日でも長く続いてほしい。
本人も家族も抱える大変な思いは常人の想像を絶する。本当に心から拉致問題が進展することを願う。
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彼の地に連れ去られて24年という歳月の中で、家族を築き、守っていくうえでの蓮池氏の心の動きと覚悟。また、飛行機で日本に降り立ったときからの揺れ動く心の葛藤と新たな覚悟などが、率直に語られていて、読みながら心が揺り動かされた。
まだまだ語ることの出来ないことが多いと拝察される中でも、彼の地の実態、招待所での暮らし、彼の地の人びとの生活実態、思想と検閲等々も綴られおり、衝撃を受けつつ、一気に読破した。
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想像通り、いえ、想像すら及ばない、蓮池さんたちの精神的苦痛
日本に帰ってから、この本を書くまでに10年の歳月は
同じように苦しんでいる、そして同じ拉致被害者ながらも
日本に帰った人たちもいるということを知っている人たちの
立場や思いを考え、どうしてもかかってしまった年月だった
読み終わって、蓮池さんの「忘れて欲しくない! まだ被害者がいる!」
という悲痛な叫びが心にささるような気がし、
この本のような生活、いやもっと悲惨かもしれない生活を送っている
拉致されて、親兄弟とも会えず、北朝鮮という特殊な国で行きている人たちが
どうか、1日も早く日本に帰って来れるよう願うばかりの気持ちです
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蓮池薫さんの「夢と絆」と題された講演会を聴いて購入。
単行本で2012年10月に出ていて「拉致、その日」と「さらに三年」が加筆されている。講演会では最初別々に離された妻、祐木子さんとの再会の様子など本より詳しく語りました。蓮池氏は1学年下でロック好きとありとても親近感があります。
生きていく上でカギとなるのは人生への夢と、人的な絆だと述べています。被害者にとっての拉致行為とはそのどれもを奪うものであり運命を狂わされたことにその本質があると述べています。被害者にとっての拉致問題の解決は、救出だけにとどまらず、彼らの絆をつなぎ、夢を取り戻すこと、幸せを追い求める自由を完全に回復させることにあると述べています。
結婚し子供が生まれたことで夢と絆が生まれ厳しい現実を生き抜けたとあります。普通に暮らしていてもこの「夢と絆」は壮年期において人生を生きていく上の支えになるものだと思いますが、拉致された現状であっては唯一のものとして機能している厳しい生活が伝わってきます。
いまだ未帰還者もいるので、あちらでの生活にはかなり気を使って書いています。記憶をたどりながら書いた本書は、生活実態の記録であると同時に、心情・感情変化の記録と言えると言っています。あきらめから割り切り、そして子供への夢と絆の必死の戦い。
かなりな数の講演をこなされている様子、自分の使命は、拉致被害者すべてが救出されるまで、日本の国民に拉致問題への関心を持ち続けてもらうことだといいます。本当に解決に向けて事が動けばいいなと感じます。
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一番最初に拉致事件を報道で知った時、非常に強い衝撃を受けたの記憶している。もし自分の身に同じ事が起きたらなど想像もできない。その被害者の一人である著者が、北朝鮮での生活の様子を克明に描いている。おそらく日本人の大多数があまり良いイメージを持っていない北朝鮮だが、憎悪すべきは北朝鮮の人民ではなく党や軍の中枢だという事を忘れてはならない。被害者全員の一刻も早い帰郷を願うばかりである。
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2012/11/20-11/26 北での様子が今ひとつ伝わってこない。24年間があまりにも長すぎた期間だったためか、それとも未だ北の呪縛から逃れることができないのか。