電子書籍
売れない父と万引きの母
2022/04/11 01:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういう親だと子供がかわいそうと思うのは、自分だけではないと思いました。いきなり、次々、事件が起こって……。はっきりいって、銀花が気の毒で、……。
投稿元:
レビューを見る
優しい画家の父と、料理上手で愛らしい母の間で育った銀花は小学四年生。
しかし、母には盗癖があり、何度も万引を繰り返していた。
また、そんな母をただ「かわいそうだから」と受け入れる父は、画家として芽が出ずにいた。
ある日銀花は、父の実家に一家で引越すことになったと告げられる。
父の実家は、座敷童がいるという言い伝えもある百五十年続く醤油蔵を営む旧家だった。
夾竹桃に例えられる毒母の存在を筆頭に、次々に起こる悲劇や秘されてきた事実の悲惨さは、いつもながらの容赦のなさ。
けれど、だからこそ、苦しみながら前に進む銀花の、苦しい日々の中の幸せが、あまりにささやかでもろく、かけがえのないものとして刻みつけられる。
父の描いたスケッチ、剛の煙草の火、母の遺したノート…銀花の心が感じた美しさは、誰にも奪われることのない輝きで、銀花を支えてきたのだろう。
デビュー作からずっと読んできた遠田潤子さん、このところ悲惨なだけではなく、幸福や希望もより強く感じられるようになって、本作は直木賞候補に。
嬉しいような、ちょっとさびしいようなファン心理です。
投稿元:
レビューを見る
主人公・銀花は奈良で醤油蔵を営んでいる。蔵の工事、そこから子どもの遺体が出てきたところから物語が始まる。
絵描きの父、美人で料理上手な母と三人、大阪で暮らしていた銀花は当然、亡くなった祖父に代わり醤油蔵を継ぐことになった父の実家の奈良に引っ越すことになる。厳しい祖母、一歳違いの叔母と五人で暮らすことになるのだが、いろんな問題が起きる。母で苦労しているのでまだ10歳の銀花なのに気遣いは大人以上、とても10歳とは思えない。蔵を継いだものの絵描きへの夢が捨てられない父、窃盗を繰り返し銀花を苦しめる母、わがままな叔母、家族に振り回される銀花。当主にしか見えないという座敷わらしを見たことで出生の秘密を知ることになったり、次々いろんな事が起きる銀花の人生、読んでいて辛くなった。家族とは何か、辛い人生も笑顔で前に進もうとする前向きな姿に心を打たれた。
投稿元:
レビューを見る
銀花の強く生き抜く姿に圧倒された。
母、父への想いを抱え、辛い境遇や困難に立たされながらも、自分を見失わず、最後には幸せを手に入れた。よく頑張ったなぁ・・・と拍手を送りたい気持ちです。
だけどもう少し、銀花の支えとなる、信頼できる人がいなかったんだろうか?なんて考えながら読み進めていました。大原杜氏の冷たさに嫌悪感を抱いたぐらい、冷たい大人だなぁって思った。ただ、多鶴子さんは厳しい中にも優しさがあって、地の繋がりのない銀花をずっと山尾家におき、蔵を継がせた。そして彼女も色々な想いを抱えていたんだと、ちょっと胸にくるものがあった。山尾家をはじめとする様々な秘密が明かされていく終盤は、読み進めるのに必死で、ペースも速くなる。色々、本当に色々あったんだと、何かが繋がったようで、逆にスッキリした。
高度成長期の昭和から平成に渡り、時代の流れとともに、銀花という1人の女性の、翻弄されつつも懸命に生き幸せを手に入れた人生が描かれた、心にしみじみ沁みこむ一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
待ちに待っていた新作。
百年続く醤油蔵を舞台にした家族の話。
今回の作品はいつもとは少し印象が違った。
罪を背負った人たちが出てくるのは同じなのだが、
いつもよりマイルドで、胸がえぐられる様な辛さはなかった。
血の繋がりがあるからといって必ずしも家族関係がうまくいくわけではなく、
やはり心の繋がりが大事だよな。
父親が違う私の大好きな姉たちの事を思い浮かべながら
読了。
マイルドな遠田作品もいいな。
投稿元:
レビューを見る
これまでの遠田さんの作品とは違い少し柔らかいというか主人公に負荷があまりかかっていない。それでも血縁、慣習、過去、現在とたくさんのものに翻弄され抗おうとする小学生の銀花の姿がある。徐々に負荷がかかりだし、理不尽なことがあり、苦しみや悲しみ、怒りが溢れてくる。でもそれだけじゃないものがあって辛い日々を送ってきたはずなのにどこか幸せな空気があってそのあたりの具合がとても良くて銀花という女性の人生の大きさ、強さ弱さ、そして喜び、幸福を感じられる。今回もいい作品でした。
投稿元:
レビューを見る
1968年、画家になりたかったが仕方なく実家の醤油蔵を継ぐ父について行った娘銀花は10歳。怖い祖母多鶴子、父とは大きく歳が離れた父の美しい妹は桜子。そして母には万引き癖。蔵には伝説があって、正式な後継者には座敷童が見えると言う。見えたのは父ではなく、銀花で・・・
面白かった。過去の遠田作品には全然似てない。(あまり読んだことはなく知ってるのは映像化されたものばかりだけど)宮尾登美子っぼい気がする。
一人の女性の半生を描いた年代記のような小説で、うまくいかない商売やいじめ、結婚など様々な困難や喜びがそこにはあった。
投稿元:
レビューを見る
銀花と剛が幸せになってくれてホッとしました。
優しいけれど、家族を守っていく、何より子供を守る強さ(まあ、そこにも隠された事実があるとは言え)が持てなかった尚孝も、
美しくて料理が得意で、何より一生消せない苦しい過去を経験してきたのだろうに、捻くれていたり人を攻撃したりしない穏やかな美乃里も、
銀花のために、もっとしっかりしてくれよ、と思ったが、
銀花がそれでも苦難に押しつぶされるのではなく、自分の力で幸せを手に入れてくれて、本当に良かった。
これからは、もし蔵がピンチを迎えても、銀花や剛が病気をしても、かわいい双子が支えになってくれるでしょう。
しかし、桜子だけは、、、何かあると贈り物をしてきたりするあたり、血も涙もない人ではないのだろうけど、最後まで好きになれなかったな(笑)
投稿元:
レビューを見る
この作家の本は3冊目だが、過去に読んだ2作にあまりいい印象はない。直木賞候補にならなければスルーしていたかもしれない。奈良にある老舗の醤油蔵を舞台に、“家族”という一番身近な他人との関係を何世代にも渡り描いた本作は、本当の意味での悪人は1人も出てこないにも関わらずひどく重く暗い空気が全編を覆っていて、読み進めるのがつらかった。誰もが小さな幸せを願っているのにうまくいかず、特にそれは主人公である銀花に顕著だ。だが、すべてが明らかになり、お互いを寛容することで関係は変わる。読み応えのある作品だった。
投稿元:
レビューを見る
歴史ある醤油蔵の床下から出てきた子どもの骨、座敷童か…「やっと会えたね」から始まる話は、50年前に遡る。
父が実家の醤油蔵を継ぐために戻った家で、座敷童の姿を見た銀花の人生を、昭和の出来事を交えながら描く。
一族にまつわる哀しく辛い過去、次々と起こる惨事。小学生の銀花は母の罪を背負い、どれほど辛く生きにくかっただろう。けれど銀花は醤油蔵を守りここで生きていく事を選択する。強い人だと思う。強く生きられて良かったと思う。
「かわいくてかわいそう」と父から言われていた母親の弱さを銀花は嫌った。「かわいそう」の中に嘲りや憐れみを感じるから。
しかし年齢を重ねた銀花が「かわいそうと言える父の強さが母と私を救った」という。母の過去を知ることで母を理解しようとする。
肯定する、救いはそこから生まれるのか。
人物描写が細やかで、親子、兄弟、嫁姑、各々の関係においての心情が伝わってくる。
家族、その親密で複雑、他人以上に強くなる愛と憎悪を、哀しみと共に感じた。
家を守るってどういうこと。家を守る神さまの座敷わらしって何なのだろうと考えてしまう。
投稿元:
レビューを見る
奈良にある座敷童の言い伝えがある由緒ある醤油蔵に幼い時に移り住んだ銀花。
登場人物は一癖も二癖もあり(だからといって、誰かに感情移入できることもなく)、時代は流れていく。
後半で全ての伏線が回収されて、巻頭への流れは良かった。
投稿元:
レビューを見る
読み始めてすぐにこれは面白そうだとワクワクしました。
銀花が切ないのですが、其々皆んなが優しくて切ない物語です。
作家さんの他の本も読んでみたいと思います。
投稿元:
レビューを見る
第163回直木三十五賞候補作で遠田潤子さんの新刊。絵描きの父親・料理上手の母親と暮らす娘の銀花は、父の実家(醤油蔵)に引っ越すことになり、父の妹・母親と暮らすことになる。しかしその家では、銀花以外の全員が秘密や嘘を心に抱えながら暮らしており、銀花が成長するにるれさまざまな苦難・困難が待ち受ける。およそ5世代に渡るスケールの大きな物語で、ミステリー要素もあり、ふとしたセリフに伏線が混ざっていたりしながら、ゆっくりと回収されていくのは読んでいて気持ちいい。数年後に文庫本が出たらぜひ再読したい。
投稿元:
レビューを見る
「オブリヴィオン」以来の遠田さんの新作は、登場人物がひたすら”強く”て、圧倒されるお話でした。銀花が子供のころからおばあちゃんになるまでの50年以上がギュッと凝縮されて描かれていますが、不思議とスーッと入ってくるところが直木賞候補作の面目躍如といったところでしょうか?
大阪万博など”昭和”の痕跡もあって、世代的には読みやすかったっです。
投稿元:
レビューを見る
初ノミネートの遠田さん。始めて手に取る作家さんですが、大変楽しく読ませていただきました。
売れない絵ばかり描き醤油蔵を継ぐ気があまり無い父親、盗み癖があり家族を困らせるが料理に関しては一流シェフ顔負けの腕を持つ母親、厳格な祖母、奔放すぎる祖母の娘(あえて叔母とは書かない)、ある事件を起こしてしまう醤油蔵の親方の息子etc...
といった、一癖も二癖もある家族や周囲の人間に振り回され続ける女性を主人公に据えた成長小説・大河小説・家族小説をミックスしたような作品です。
登場人物のキャラクターがなかなか個性的で、個人的には主人公の母親の造詣がとても面白かったです。
徐々に明らかになる家族の秘密、帯にも書かれているので明かしちゃいますけど、血の繋がりなんかなくたってこんなにも「家族」だっていうテーマ設定が素晴らしいと思いました。
ストーリー展開もなかなか巧みで、醤油蔵の改築現場で子供の頭蓋骨が見つかるシーンで幕を開けるのですが、それを座敷童の言い伝えに絡めて引っ張っていく展開も面白いです。
主人公の少女時代に座敷童を目にするシーンでホラー小説なのかと思わせておいて、実はそうではなかったというあたりも、ミステリー小説のような上手さを感じました。
そして何より、何度も起きる理不尽な出来事にもめげず、けなげに前を向いて生きていこうとする主人公の姿がすごくいいんですよ。
途中何度も胸が熱くなり、前半を読んだ段階では傑作だと思いました。
なのですが後半、色々と盛り込みすぎちゃったせいか、肝心なシーンがさらっと流されていたり、やや書き急いだ感があったのがちょっと残念でした。
タイトルもかなり安易なんじゃないかと。
総じて荒削りな印象ですが、著者ご本人も本作の出来にはまだまだ満足はされていないようですので、今後の成長と活躍がとっても楽しみです。