死神の棋譜

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モーダルな事象を思い起こさせる、幻想的なミステリ小説。最近はは珍しい濃密な文章と、書き手を翻弄するヒロイン？が魅力的。

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“だけれども”と書く作家が嫌いです。
”けど”、もしくは”だけど”ではなく”だけれども”という言葉にの響きに、何か太宰治的な弱さや狡さと女々しさを感じてしまって生理的に受け付けない。”だけれども”が許されるのは僕の中では世界でたった一人、ボディビルダーの山岸秀匡だけだ…と、今までずっとそうだったはずなのに”だけれども”であるところのこの作品は読了することが出来た、つまり個人の嗜好や思い込みや性向を超える小説であったと断言できる本でした。

ところで、この小説のモチーフになっている将棋に限らず、仕事や趣味を実践し継続し成長していくに当たって1番大事なものとは何でしょうか？才能、時間、お金、コミュニティなどなど…しかし何よりも大事なものはこれも断言できます、それはモチベーションです。詰将棋、次の一手、棋譜並べ、そして対局…これらをいくら繰り返しても将棋が頑張っても上達しないそんな時、自分は棋士のインタビューや棋書以外の著作、将棋がテーマのマンガなどを読んでモチベーションを高めています。そしてそんなモチベーション維持のために手に取った一冊でした。ミステリーは子供の頃にシャーロック・ホームズとアガサ・クリスティを読んだきり、最近、桃ノ雑派さんの老虎残夢という小説を読んでとても面白かったのがキッカケで、生まれて初めてミステリーに興味を持ったところ、この本に出会いました。

この作品は単なるミステリーではなく、将棋と棋士に対するオマージュとレクイエムではないでしょうか。実在の棋士や出来事も多数登場するほかに、文章表現にも将棋の用語や言い回しがふんだんに使われており、普段、将棋や棋書に親しんでいる方なら、この本は間違いなくとても楽しめます。ストーリーやテーマはややハードであるのに対して文体は平易で分かりやすいです。トリックはおおよそ想像通りで特筆するまでもなかったですし、手紙やメールでモノローグというのもちょっと目新しさがないかなと思いました。しかしミステリーとカテゴライズせず１つの文芸作品として評価したい気持ちになる作品です。プロットとその読後感、困惑させられる読書体験は他では得難いものだなと強く思いました。

あと印象的だったのは、将棋に負けた棋士は少しづつ死んでいる、という繰り返される文章…実際、男という生き物は勝負事に負けるとコルチゾールが作られて男性ホルモンが作られるのを阻害され、結果男として生きるためのモチベーションが下がる、つまり少しずつ死んでいる…という研究結果をまとめた論文を思い出しました。観念として死ぬという事と身体的に死ぬという２つの死を賭けて棋士は戦っているのだなと、様々に思うところがありました。どちらか一方の死も受け入れ難いものなのに。

ちなみに主人公は観戦記者の大川慎太郎さんをイメージして読んでいました。するとラスト辺りで大川さんのようなことを言い出したので、びっくりしました。もしかしたら主人公のモデルなのでしょうか。玖村女流の方は香川愛生四段をイメージしていました、もしドラマ化の際には是非香川さんご本人に演じていただきたいです。

あと掲載の棋譜がいかにも監修された藤森哲也プロらしい棋譜だったのも良かったです。

テイストを極めた先に真理が顕在することもあるのだなと思った。

だけれども。
投了。負けました。

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名人戦の夜、矢文に描かれた不詰めの図式を拾った棋士が姿を消した。元奨励会会員で今は将棋ライターをしている北沢は、奨励会同期である失踪した男の行方を追ううちに、22年前にも同様の失踪事件があったことを知る。
図式の裏に書かれた「棋道会」を調べるうちに辿り着く北海道の元炭鉱町・姥谷。廃坑で見た地下神殿、魔の図式の謎、怪しい新興宗教、旧陸軍が隠したアヘン、将棋指しの呪い･･･。話はどんどん広がって、息を吐かせぬ展開に。

22年前の事件と、今回の事件が繋がっていき、様々なことが明らかになっていくにつれ一層深まる謎。わかったぞ！と思う端から崩れていく論理。
元棋士だけに北沢の、事件の先を「読む」場面の論理が冴える。ミステリの要素としても棋士の探偵はありだなと思いながら読み進め、ラストに向けては北沢が将棋の深みにはまり壊れていく過程がもう怖くて怖くて･･･

ファンタジー要素もありながら、ミステリとしてもゾクゾクし、将棋の世界も垣間見れ、将来の藤井2冠らしき小学生が登場したり色々と楽しめた物語でしたが、最後がちょっと急ぎ足な気も･･･。複雑な展開の全てを理解しきれた気がしないのは私の読解力不足ですが、そんなことも気にならないほど読後の充実感は半端でない。

「将棋に負けるのは少しだけ死ぬことだ。」という言葉に感じる対局の過酷さ、棋士の過酷なまでの厳しさと孤独、そして美しさに心底心を打たれました。

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読み終わった後、正直わかったようなわからないような感じがしました。
消えた棋士の謎や矢文に示す図式の謎など様々な謎を提示してきます。途中、現実の世界なのか、それとも仮想の世界にいるのか戸惑うところもありましたが、独特の世界観があって引き込まれました。
将棋についての知識があまりない為、なかなか将棋としての味わい方が掴めませんでしたが、雰囲気はなんとなく察しました。そう考えると、将棋としての魅力が自分にとって、半減してしまったかなと思いました。
約７割くらいは、1人語りであり、1ページにぎっしりと文字が書かれている為、約300ページありますが、1.5倍くらいの量を読んでいるかのようでした。
なので、なかなか前に進みたいけど、進めない葛藤が個人的にはありました。

そして、段々と見えてくる真相。全てがはっきりではなく、ぼんやりとわかってくるので、果たして自分の答えはあっているの？とモヤモヤした気持ちになりました。
最後になるにつれて、衝撃的な流れになり、ゾワっとした終わり方でした。

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新聞広告で目に留まった一冊。
「将棋本は面白い」という先入観があるので読み出したが、そこに死神だとか本将棋でない中将棋などというのが出てくると、駒の動きに制約がなくなるので面白さも半減してしまう。
それに加えて、これは著者の癖なのか何なのか知らないが、
「……のへ」というのがよく出てくるが、実に読み辛い。
「……のに対して」と書いてくれた方がよっぽど読み易い。
それともう一つ。カタカナ語で済むところを変に漢字を使用するのも読み辛い。寝台にわざわざルビをふってベッドと読ませたり、枚挙に暇がない。
奥泉光作品は、多分、二度と読まない。

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後半事件の核心に迫って行く部分は
なかなか面白かったが最後迄読み終えて
なんかスッキリしない
ずっと幻想の中にいるようで
何が現実で何が真実なのか
さっぱり読み解けず
これは再読しないと面白味がわからない
作品かもです…

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久方ぶりの正統派？なメタミステリーという雰囲気で大いに愉しみました。将棋の小ネタも多くて、勉強になります。

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将棋風味なミステリになっていて、局面とか寄せてくとかの表現だったり、読み＝推理みたいなのが将棋好きには絶対面白い笑
ただ、純粋なミステリとしての納得感はあまりないように感じ、でも細かいことは気にしない自分は楽しめた。ホラーな雰囲気も、結局妄想でしかなかったというのが少し残念だった。

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幻想的な雰囲気の漂う将棋ミステリ。謎の詰将棋の図式、行方を絶った棋士、そして謎の宗教団体にまつわる謎の将棋。将棋についての知識がないと幾分かは難儀する部分もありますが。ミステリとしても充分に楽しめます。
将棋についての含蓄は深くないものの、他の作品でも将棋にまつわることを読んで思うのは。やはりひどく苦しい茨の道なんですね、将棋って。好きなだけではできないし、だけれど好きでないとやってられない。だからこそここまでに魂を削るようなことになってしまうのだろうか、と思えば恐怖の念も覚えます。「死神」が傍に立っているというあの光景は実に凄まじくって。
諸々の事件の真相はある意味まっとうな方向性のものだったんだけれど。その事件を「解決」するだけならば、もっと簡単だったのでは。将棋の魔力にこだわるあまりにあんなことになってしまったのでしょうかあの人は……と思えばこれまた実に恐ろしい物語です。

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傑作将棋ミステリー。将棋はよく知らなくても楽しめますが、少しは知っていると細かなネタでより楽しめます。将棋界の歴史の知識なんかは勉強になる。とは言え、本書はあくまでもよくできた謎解きミステリーであり、将棋と言うスパイスが効いて独特な世界観が出来上がっている。
年齢制限で奨励会を去り物書きとなっている主人公、不可解な矢文で届いた解けない詰将棋、行方不明になった棋士、その背後に見え隠れする北海道のあったという過去の謎の宗教団体、行方不明になった棋士を追う主人公と行動をともにする美人女流棋士。将棋に魅せられた人々の狂気が本編全般に漂ってます。考えてもいなかった結末が待っています。読者によっては少し納得いかない結末かもしれないけど。映画化必至な気がする。

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矢文でもたらされた不詰の棋譜。それを契機に棋道会、龍神棋、坑道の神殿、麻薬と広がる謎。織り込まれるシーンや文面が現実か幻想かを混ぜて目眩を起こす様に翻弄する。将棋の基礎教養が求められるのが辛いが、棋士の正気と狂気の一線の凄みだった。

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かなり好きな作家だが、本書はよくわからなかった。

龍神棋という、架空の将棋を使って、棋士達の世界の奥深さを描こうとしたのか。

龍神棋に取りつかれて失踪した新旧2人の棋士にまつわる謎解きミステリーなのか。

仄めかしに終わった女性棋士の不正疑惑と隠ぺい工作が結末とすれば、尻すぼみ感が否めない。

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悲しい。すぐに、読み終わってしまった・・。奥泉光先生の新刊だったのに。奥泉先生の文章は読んでいて本当に楽しいなー。もっともっとたくさん読みたいよー。

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すごく面白かった。推理小説としても面白かったし（最後までグイグイ来る。最終版の語られ方も巧い），棋士さんの心理ってそんなんなんかなーというところも興味深かった。
「女性は怒るのでは」という感想にはなるほどーと思ったけど，呼んでる最中わたしはそんな気持ちは持たなかった。映像化されそうだな。尾野真千子のイメージ。

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将棋界を舞台にしたミステリー。

『ミステリー』らしい『ミステリー』だった。

将棋を舞台にした小説といえば柚木裕子先生の傑作『盤上の向日葵』がまず挙げられるだろうか。
はっきりいって正直、本書はあそこまでのレベルには到達していない。
しかし、芥川賞作家が書いた純文学的ミステリーという観点から見たら非常に興味深い作品である。

将棋ということで将棋の知識がないと面白くないかもしれないが「にわか将棋ファン」であっても十分に楽しめる。
僕も将棋は打たないが、『３月のライオン』を全巻揃えている程度の知識はある（笑）。

羽生善治先生や現役棋士の名前が本書にはバンバン出てくるのでそういった部分だけでも楽しい。

一風変わったミステリーであるが、将棋の裏の世界に取り込まれてしまった男女の悲哀が十分に堪能できる良作であると思う。