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- カテゴリ:一般
- 発売日:2013/03/29
- 出版社: 新潮社
- レーベル: CREST BOOKS
- サイズ:20cm/271p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-590101-1
紙の本
アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること (CREST BOOKS)
著者 ネイサン・イングランダー (著),小竹 由美子 (訳)
もしもまたホロコーストが起こったら、誰があなたを匿ってくれるでしょう?―無邪気なゲームがあらわにする、取り返しのつかない夫婦の亀裂(「アンネ・フランクについて語るときに僕...
アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること (CREST BOOKS)
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商品説明
もしもまたホロコーストが起こったら、誰があなたを匿ってくれるでしょう?―無邪気なゲームがあらわにする、取り返しのつかない夫婦の亀裂(「アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること」)。ユダヤ人のヨルダン川西岸への入植の歴史を、子を奪いあう二人の母を軸にして、寓意あふれる短篇に仕立てあげた「姉妹の丘」。物語にはつねに背景がある、人生にはつねに背景がある―年若い息子に父が語る、悲劇を生きのびた男の非情な選択(「若い寡婦たちには果物をただで」)。コミカルな語り口にしのばせた倫理をめぐる深い問いかけ。ユダヤ人を描くことで人の普遍を描きだす、啓示のような八つの短篇小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
【フランク・オコナー国際短篇賞(2012年)】もしもまたホロコーストが起こったら、誰があなたを匿ってくれる? 無邪気なゲームがあらわにする、取り返しのつかない夫婦の亀裂…。表題作ほか、ユダヤ人を通して人の普遍を描く、ユダヤ系アメリカ人作家による短篇集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること | 5−50 | |
---|---|---|
姉妹の丘 | 51−102 | |
僕たちはいかにしてブルム一家の復讐を果たしたか | 103−130 |
著者紹介
ネイサン・イングランダー
- 略歴
- 〈ネイサン・イングランダー〉1970年ニューヨーク州生まれ。ユダヤ教正統派コミュニティに生まれるが、後に棄教。小説を書き始める。PEN/マラマッド賞、スー・カウフマン新人賞受賞。
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書店員レビュー
ジャケ買いで大丈夫です。
ジュンク堂書店三宮店さん
タイトルを見て、表紙のポップなイラストをみて、すぐ購入した。「ジャケ買い」である。都会的な、ちょっとシュールで時にグロテスクでもある、といった(カーヴァーと村上春樹の影響だ)イメージは裏切られたが、期待は裏切られなかった。
ユダヤ系アメリカ人作家による、ホロコーストを題材にとった短編集。これまで多くの作品が書かれてきた。しかし現代においては、日常では意識されない心の奥に取り憑いた強迫観念や、くすぶり続けて消えない記憶、といったテーマが扱われることが多い。著者はあえてソール・ベローやマラマッド、I・B・シンガーなど一世代前の作家たちのようにストレートな問いかけに立ち返っている。
『ワット・ウィ・トーク・アバウト、フェン・ウィ・トーク・アバウト・<何々>』。タイトルになっている、このフレーズがユダヤのおまじないのように耳の奥で繰り返される。この<何々>に対して私たちは何を語るのか、ということが書かれているのであり、この本の感想を書くということはそれについて語ることであり、さらに今この文章を読んでいる方はーーー。
著者はこの終わることのない反復を目指しているのではないか。各々の物語に刻まれた、真摯で、残酷で、いささか滑稽でもある問いかけに私たちが答えることを。
紙の本
クレストブックスらしいユダヤ人文学
2017/09/11 23:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代を生きるユダヤ人達を題材にした短編集。
文化的背景に負けずに逞しく生きていく姿がクレストブックスらしさを感じさせられます。最初はやや重いかなと思いましたが、コミカルな部分を残しつつ物語をきちんと成立させていて、読み終えた後には何かしらの問いが心に残ります。中でも最後の「若い寡婦たちには果物をただで」は秀逸。身体は生きていても心が死んでしまうということはどういうことなのかが実直に描かれています。それでいて重すぎない。バランスが絶妙。きっと日本人作家には書けないと思います。
紙の本
「普遍的であること」を思うときに私が感じたこと
2016/09/21 14:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あられ - この投稿者のレビュー一覧を見る
オシャレな表紙と、裏表紙に大きく書かれた「すみずみまでユダヤ人を描きながら、どこまでも普遍的であることの不思議」という文言に惹かれて読んでみました。
全部で8編の短編集ですが、通読して、「ユダヤ人」を「すみずみまで」描いているものは「普遍的」に感じる度合いが低く、逆に「普遍的」な響きを持っていたものは「ユダヤ人」性が薄く感じられました。個人的には、ですが。ユダヤ人の文化やイスラエルの成り立ちについて、相応の予備知識がないと、難しく感じられるのではないかと思います。(用語にはカッコ書きで訳注は添えられていますが、それを読んでも私には、「普遍性」を感じるにはやや難しすぎ、という印象です。)
ホロコースト(ショアー)は、決して消し去れない集合的記憶であるとはいえ、それをわかりやすく大きなモチーフにしているのは表題作と「キャンプ・サンダウン」(これがよかった)で、他の作品は、「ホロコーストの記憶の所有のあり方」(訳者あとがきより)は深い部分で描かれてはいるにせよ、表面的にはほとんど見えないと思います。
一方で、「僕たちはいかにしてブルム一家の復讐を果たしたか」でニューヨークの「反ユダヤ主義者」(たった一人!)とユダヤ人のコミュニティの緊張関係が描かれるなど、ホロコーストのみに留まらない視野も提示されます。語りのトーンは「悲喜劇」的で、あんまりシリアスになりすぎないのが魅力です。
「姉妹の丘」や「若い寡婦たちには果物をただで」は、相次いだ中東戦争とインティファーダを背景とする作品で、これらの歴史的経緯を、イスラエルに入植した人々やその子・孫の視点から語ろうとする作品です。これを読んだら、アラブ人の立場からの小説なども読まれるとよいと思います。
「母方の親族について僕が知っているすべてのこと」は、「ユダヤ人を描きながら、どこまでも普遍的である」という評が最もしっくりくる1編でした。(「おじいちゃんの昔話は、実は、話を盛っていた」ということは、世界のどこででもあることですよね。)
今は読了したばかりですが、またしばらくしたら今心の中にあるものが沈殿して、また再読したくなる本だと思います。
紙の本
普遍的なものとも
2024/01/24 15:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの正統派ユダヤ教徒のコミュニティで育った著者はイスラエルで非宗教的な知識人に出会い衝撃を受け、自らの人生を相対化していくかのような小説を書くことになった。同時にこれは狭くユダヤ人を描くだけでなく、普遍的なものともなっている。
紙の本
現代ユダヤ人の彫像の奥底にひそむ“原人類の裸像”
2013/05/06 17:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
2組のユダヤ人夫婦が登場するレイモンド・カーヴァー風の表題作も面白いが、私に強いインパクトを与えたのはその次の「姉妹の丘」という短編だった。
1967年の第3次中東戦争でイスラエルによって占領されたヨルダン川西岸地区の実質的な主権者は依然としてイスラエル軍である。パレスチナ自治政府はもとより国際世論は彼らの占領地撤退と入植地の放棄を訴えているが、強国イスラエルはその声に耳を貸そうとはせずにますます軍備を増強しながら自国の権益を守ろうとしている。
というのが、この国際的な係争地に関する私の理解であるが、この「姉妹の丘」では、パレスチナ人だらけのこの地に1973年に単身入植した2組の家族を描いている。そこを拠点に「強大な都市」を作り上げることを夢見た彼らは、対アラブ戦争で夫や子供を喪うという大きな犠牲を払いながらも、わずか14年後にその夢を実現したのである。
それだけの話なら、私は「これは大いなる片手落ちだ。君たちが命懸けで手に入れたと自負している土地の本来の所有権は(1948年の国連決議によって)パレスチナ人に帰属しているのだから、勝利者の正義だけではなく、敗残者の正義についても等分に語らねば小説としても不公平だ」と文句を言っただろう。
ところが「英雄的かつ伝説的な偉業」を成し遂げたこの小説のヒロインが、自分の行動の淵源は「この姉妹の丘は、神によってアブラハムに与えられた約束の土地であるという旧約聖書の記述である」とラビたちに確言した瞬間に、この矮小な小説世界からリアルな政治紛争のあれやこれやが姿を消して、一挙に神話的な表徴が立ち現われるので驚く。
そこに現れたのは、狂信的なシオニストではなく、遠い昔に生きていた畏怖すべき純朴な古代人、人類の原像とも称すべき原初的な存在そのものなのであった。若きネイサン・イングライダーは、現代ユダヤ人の彫像の奥底にひそむ“原人類の裸像”を浮かび上がらせることに成功したのである。
いまもなおさまよえる民に生きているユダヤの神との聖なる契約 蝶人