紙の本
スピンオフ的作品としても
2024/01/24 15:27
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』の語り手ユニールがフラれ続ける、スピンオフ的作品としても読める。危うさも含めたジュノ・ディアスの手腕を感じ取れる短編集。
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自分の文化圏にない、本ですら馴染みない文化、中米.ドミニカ。歴史の背景は知らずとも、人が織りなす「物語」にはふれることができる。小説の醍醐味。
オスカー.ワオを再読したくなった。読後、しっとりしたオリが残る作家。
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オスカーワオに続き、こちらも読了後、どっぷり疲れた。本のパワーがすごすぎて、受け止めきれない。なのに、こちらのパワーも吸い取られてく。愚かさ、哀しさ、弱さ、いろんな人間の負のてんこもり。「親密さを避けるための浮気」。わかんないけどわからされてしまいそうになる、赤裸々な浮気男の一生が迫ってくる。どうしようもなさ、運命がひっぱってく、運命にひっぱられてく力に抗うことの、難しいこと難しいこと。
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短編集9編。
浮気男ユニオールの恋愛の顛末、フラレっぷりを描きながら、ユニオールの生い立ち家族の有り様をユーモアたっぷりに描いている。ユニオールの兄ラファへの思い(ほとんど絶対的な愛)は、ラファが死んでからもずっとユニオールを支配しているようだ。
とにかく訳もいいのだろうが、素晴らしい小説だ。
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9 つの短編からなる作品集。
男女の物語というよりも、人と人との物語、兄弟の物語、家族の物語。
文章表現が的確で人物の心情は奥深く身に沁みるし、
ドミニカから移民してたどり着いたアパートの窓から雪を見る情景は、
胸がしめつけられるようである。
将来大きな作品の一部として取り込まれるらしいが、
これらの物語の前途を知りたいと強く思う。
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オスカー・ワオの親友ユニオールのふっくざつな話。
オスカーも相当複雑だったと思ったが、そうではなかったんだな、
オスカーは好きなもの・大事なものに対してまっすぐだったのだった。
ただ背景がめちゃくちゃだっただけで。
ユニオールの方がよっぽど迷走して、混乱して、救いがなかったのだ。
途中誰の話だかわからないものがあったんだけど、
解説によるとそれはユニオールたちの父ちゃんの若い頃だという。
ユニオール(と彼の父・兄)の物語はまだ続くらしい。
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「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」に登場したユニオールが主役で、9つの短編が収録されている。
彼女がいるのに浮気ばかりを繰り返すユニオール。オスカーとは真逆なタイプだが、根本的に二人とも恋愛に不器用なタイプではないかと思った。
個人的には幼年期アメリカへ渡ったばかりの「インビエルノ」と兄の半生を描いた「プラの信条」が気に入った。
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浮気によって広がっていく恋人との距離。失った彼女への未練。病気の兄に対する憧れと葛藤。父の浮気や故郷を離れた母の孤独など。
ユニオールと彼を取り巻く9つの物語を、文章のトーンもさまざまに、年代もバラバラに構成している。
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オスカーワオの評判に惹かれて読む。
さすがにピューリツァー賞受賞作家だけあって、文章はうまい。が、いまいち自分にはあわんかった。
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ドミニカの生まれ、男性、ちゃんとした彼女(婚約者)がいながら六年間に五十人もの相手と浮気する、当然ふられて何年ものたうち回る…。主人公ユニオールと自分には何の共通点もないのに、ひどく身につまされるのはどういうわけか?
ドミニカ男は(上品な言い方をすれば)「恋多き」ものであるらしい。まるでそれが宿命のように、ユニオールは女性に言い寄り、言い寄られ、手ひどく裏切り、裏切られ、ぬかるんだ人間関係から逃れられない。彼の父や母、早くに亡くなった兄、友人、誰もが似たり寄ったりだ。それをいしいしんじさんが裏表紙の評で「血と汗の匂いたつ人間関係の泥」と言っていて、なるほどと思う。皆望んだわけでもないのに「ここにこうしてある自分」と格闘してもがいている。
いしいさんは「(フラれるのは)私たちがどうしようもなく『人間』であるからだ」とも書いていて、そこにこの小説の魅力があるのだなあと思った。ダメ自慢みたいな底の浅いものではなく(その視点でも十分面白いが)、人との関わりの中で苦しんだことのある人なら身にしみる痛みが、ここにはあるのだ。
「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」もそうだったが、出てくる女性がとてもいい。誰もがそれぞれの望みや苦しみや愚かさを生きている。男性である作者の勝手な願望が投影されていない女性像は結構珍しいと思う。
「ぬかるみ」「泥」などと書いたけれど、語り口はシャープで知的、時にユーモラスだ。おかしく切なく、たっぷり読ませる。
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タイトル完璧、当たり前よね。『オスカー・ワオの短く凄まじい生涯』でラテンアメリカの歴史とオタク野郎の恋愛の激突を描き大絶賛、な著者の新作は前作で語り手を務めた浮気野郎、ユニオールの生涯の断片だ。懲りる間もなく女性との関係を繰り返すユニオールは共感度ゼロのクズ男だが、本作で印象的なのは彼以上にマッチョな兄ラファの存在。父の不在、そして兄の早逝によって「父的なもの」に縛り取られ、ユニオールは虚言を重ねてでもそれに近づこうとしては隠そうと親密な関係を自壊させる。そんな、どうしようもない男の悲哀を描いた短編集。
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フラれる、ふられる、Furarelu。やや、Sっ気のあるタイトルが、気になってた。浮気は、親密さを避けるためのもの...らしい。そこに輪をかけて、ユニオールの場合、親密な関係に対するもっと根源的な恐れ、親密な関係はやがてすべて壊れてしまうだろう、という思いがある。だったらそもそも親密になどならないほうがいいし、うっかりそういう関係に入ってしまえば、失われる前にむしろ自ら壊してしまった方がまし...みたいだ。
自分の心を他人に開くのが恐くてたまらない。だから主人公ユニオールはマッチョな仮面を被る。そして、浮気を繰り返して、バレる。を繰り返す。
背景に、アイデンティティや生まれ育った環境があるにはあるのだけれど、ただこの自分内“ひきこもり体質"的な印象は、日本も他の諸外国も同じだなと感じる。そして、そこには性差すら無いような...。草食系や草といわれる男子が増える一方で、女性は強くなったと言われるけれど、はたしてそうだろうか。面白本でもあるけれど、切なくスパイシーでもあり、個人的にわりとぐぐっとくるものがあった。
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昔、何年か前に通っていた英会話教室で、アメリカ人の女教師が遊びに来ていた女友達を連れてきていた。ドミニカ系のアメリカ人だった。ドミニカについての知識は皆無で、話はまったく弾まなかった。ただ、とても可愛い子だったことを覚えている。
ジュノ・ディアスの本はこれで3冊目。
読むたびに、あの浅黒い肌の目の大きな女の子を思い出す。そして、次に会った時はもっとドミニカについて話せるんだけどなとしょうもないことを考える。
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このタイトルは上手いなぁ、タイトルにひかれて読んでみた。
でフラれる理由は「そらそうやろ」ってことだった、もっと違う感じ、どないしてもモテない男の苦労話なのかと思いきや…、主人公モテとるやん!
文化の違い、家庭の重圧、DV、マイノリティ差別…、俺が思ってた恋愛関連本とは違ったが、この作品の根底に流れるものは大きく重い。その重さを登場人物たちの女性遍歴をはじめとするなんとも軽妙な南米的ノリが覆っているあたりがキモなんかな。
アメリカでかなりエエ賞とってるみたいだけど、そこまでとは思えなかったのは文化の違いなんだろうなぁ
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二人称なんてやり方がこんなに面白いことを知らなかった。
お前はーだ、と自己が分裂したところから始まる話。ということはだ、二人称は非難する形式がよく当てはまるのかもしれない。過去の自分を責めるために分裂するのか、それとも耐えきれない現実のために分裂するのか。いずれも同じことか。
ちょっとずつユニオールの過去と断片的に。時系列を無視して辿りながら、おまえ、ことユニオールという人生を知る旅。軽快で吸引力のある文体なのに、どこまでも悲しい。
お前、と分裂する理由は、第三に、自分がわからないからなのかもしれない。他者として非難するしかできないほどに、浮気へ掻き立てる要因がわからないのだろう。毎回、浮気がバレるところからスタートするし。ギャグか。
この世界はどう生きようと幸せになれないのかもしれない。