紙の本
世界は未来と宇宙で反転する
2007/06/14 18:57
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて読んだのは、中学生の時だった。改めてこの文庫を手にとって、何があんなに中学生たちを惹きつけたのだろう、と考えてしまう。ウェールズやの古典的SFを知っていても、中学校の教室で得意そうに回し読みされていたSFマガジンは知らなかった頃。
フレデリック・ブラウンの『宇宙を僕の手の上に』、ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』、そしてこのシェクリイの『人間の手がまだ触れない』。題名だけでも、詩の一行のように心をとらえて放さなかった。
この中にあるのは、未来や宇宙船だけではなく、とても奇妙な世界だ。
正しくフェミニズム以前の作品でありながら、何故か初期のコニー・ウィリスの作品を連想してしまう、UFOが到着したある村の物語、『怪物』。
これを読むとしばらくの間、暗い町中のカフェの人影を覗き込んでしまう、未来の殺し屋たちの物語『七番目の犠牲』。
そして、思わずにっこりしてしまう時間パラドックスの逸品『時間に挟まれた男』。
悪魔も次々と現れて、『王様のご用命』や、文字通りの『悪魔たち』で、活躍してくれる。
そして、何よりも、宇宙を飛ぶことへの憧れの原点を描いた『体形』に、SF読みの心が躍る…。
アポロは月に到着したけれど、その向こう側に見える未来は、もしかするとそんなに真っ直ぐではないかもしれない。そんな不安を持ち出した中学生に、地球外からの視点を教えてくれたのがSFの世界だったようだ。だから、未来人になってしまった私も、もう一度、ページをめくろうと思う。まだ、人間の手が触れない世界がこの世にある限り、新しい世界観を手に入れられることを信じて。
紙の本
SFという名の度量の広さをみる
2008/02/17 23:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書も、元々早川から出ていたものの復刊です。
私全く知らなかったのですが、(SF読むようになったのが、サイバーパンク以降なので)
(サイバーパンクという言葉すらもう、懐かしい)
この著者のロバート・シェクリイは、一時は日本で一世を風靡したSF作家だったそうです。
その短編集が今ここに蘇りました。
作風は、なんといいますか、往年のSF作品というよりは、
(そんな感じを予想していた)
突拍子もないというか、奇想天外というか、なにやら、物凄い幅の広さを感じます。
突拍子もないと書くと、荒唐無稽なのかと思われると思いますが、
これが、ちょっと違う。
全体としては、河出から出ている、奇想シリーズに近い感じで
「どんがらがん」のアヴラム・デヴィッドスンに近い気もしますが、
どこか違う。
もっと、SFとしては、きちっと創られているのですが、
読むと、突拍子もないというか、想像力豊かというより、
発想が豊かだなぁ、、と言う感じ。
表題作や、著者の代表作、「時間に挟まれた男」なんかもよかったのですが、
個人的には、「専門家」ですね。
これ、今風に充分解釈できる作品なのですが、
(ちょっと違うか、、、)
つまり、昔からこういう発想はあったのですね。
で、この作品でも、突拍子もなさは、充分ありまして
なぜ、人間が絡むと物凄く加速出来るかは、まったくの不明。
(私が読み落しているのなら、誰か、教えてください)
でも、ラスト何行かで、加速できてしまい、それが、
違う世界へ突き進むドライブ感や、短編が読後にぐーっと世界観を
広げる一因にもなっています。
いいなぁ、と。
全部あわせて全体として、SFというジャンルの持つ度量の広さ
器量の広さ、深さみたいなものを感じました。
ファンタジックに出なく、発想豊かに、想像を膨らませていき
描かれたものは、すべてSFだと。そんな感じでした。
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歴史、社会が植えつけた(?)価値観のようなもの、任務、生真面目に守ろうとすれば生じるイライラから瞬間的に解放される「体形」が好み。チョッととばし読みしすぎたか「暖かい」と表題作は良く分からなかった頭悪いオジサン。
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SFの短編集。それぞれちょっぴりクセのある小説が13個入っています。さらっとした語り口で、命に関わるようなことがテーマの物語でも込められたアイデアによって読み進んでしまう、そんな一冊。自分の印象としては、星新一のショートショートが少し長くなったような印象。
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このままでは、ふたりとも餓死してしまう!手違いのため食料を積み忘れた宇宙艇乗組員は、前方に現われた人跡未踏の惑星に着陸し、食料を調達しようとするが!?ブラックなユーモアあふれる表題作、時空にできた割れ目に挟まってしまった男の奇妙な冒険を描く「時間に挟まれた男」、殺人が特定のルール下で合法化された社会を舞台にしたサスペンス「七番目の犠牲」ほか、奇想天外でウィットに富んだ13篇を収録する傑作集。
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しまった、今日は女房を殺す日だった。
なんてユーモアの溢れる短編が13篇ほど収録されています。
個人的に あたたかい がとても好きでした。どこか疑いたくなるような物語の進行と、現実味を帯びた幻想的な日常が垣間見れる作品の数々。
「だれにでも、こんな経験がある。生涯の或る瞬間に、見慣れた物を見て、それがまったく無意味に感じられるという経験だ。瞬間的に形態(ゲシュタルト)が崩れるんだ。しかし、その真実の視野はたちまち消えてしまう。精神は、被せられた類型に戻る。常態が続く。」
声は黙っていた。アンダースは、形態(ゲシュタルト)の街を歩き続けた。
2010.09.05
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「奇妙な味」。
登場人物が「しまった、今日は女房を殺す日だった」なんて言い出す小説はそうそうないだろう…。
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筒井康隆が朝日新聞のエッセイで取り上げていたので読んでみた。
彼の言う通り、本当に多種多様な作品群だった。
私が一番好きだったのは「専門家」。うーんと唸らされた感じ。
それから「体形」もぐっと来る感動系で胸が透明になった気がした。
表題作の「人間の手がまだ触れない」の肝腎な所を
たぶん私は例によって理解できていない。謎だ。誰か教えてくれ。
「王様のご用命」「悪魔たち」なんかはニヤリとしちゃう。
いわゆるウィットってやつに富んでいて嬉しい。
最後の「静かなる水のほとり」は本当にしっとりとしていて切ない。
短篇集を編むときに最後に持ってきたくなるのが分かる感じ。
「七番目の犠牲」はおもろいプロットやなぁと思ったら、
やはり映画化されていた!見るぞ!
そんなこなで、楽しめます。
でもけっこうあたしはだらけちゃいましたので★★★。
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その昔、筒井康隆御大が「和製シェクリイ」と呼ばれていたそうで、それぐらい往時の日本SF界に影響を与えてきた短編の名手です。が、50〜60年代にありがちな熱気溢れるバリバリのSFではありません。鴨が一読してのイメージは、限りなく星新一に近いですヽ( ´ー`)ノものに寄っては「SFじゃないだろ、これ」って作品も結構あります。そもそも一つ一つの作品がかなり短いですし、筆致も軽いですし、続けて読むと正直ダレる箇所も無きにしもあらず。良くも悪くも「古い」感じです。
が、そこかしこに間違いなく「SF」の感性がきらりと光るので、気を抜けないんですよねー。
鴨が一番好きなのは、「体形」という即物感極まりないタイトルの作品。何じゃそりゃなタイトルなんですが、侵略目的で地球を訪れた不定形異星人が体験する価値観の変容を描いた、実にSFらしいアイディア・ストーリーです。ラストシーンの瑞々しさ、清々しさが素晴らしい。SF者なら誰もがグッとくるラストじゃないですかね。
この作品に限らず、またSFか否かに関わらず、彼の作品に通底するテーマの一つに「価値観の変容」が挙げられるのではないかと思います。「体形」のように生き様さえ変えてしまうインパクト大の変容から、表題作「人間の手がまだ触れない」のように「これ食えるのか!?」レベルのモノまで(笑)実に多種多様。気軽に読める作品ばかりなので、SF疲れした時に読むと良いかもしれないヽ( ´ー`)ノ
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おもしろい。ちょっと癖のあるおもしろさ。absurdというべきか。
気に入った作品:体形、王様のご用命、悪魔たち、七番目の犠牲
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短めで通勤電車で読むのにちょうど良い感じ。個人的には一番面白くなかった表題がなぜタイトルになっているのかよくわからなかった。
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物語が分かりやすい話とそうでないのがはっきりしてる
後半の話(専門家、神、7人目)はお話として純粋に面白い。ひねりも理解できて楽しめる
表題作はよくわからなかった
なんていうか、宇宙のこれくらい軽い話っていいね。
当たり前の世界だけど、こうも見れるという話が多い。
毒も多い
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ロバート・シェクリイ(稲葉明雄・訳)『人間の手がまだ触れない』、
中学生の頃読んで以来の再読。
シェクリィは筒井康隆の師のような存在。飛行機の中で読んだ。
これはSFというよりも、SFを小道具にした風刺小説だなと強く感じる。
表題作などは、ディスコミュニケーションの本質を突いている。
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ユーモア小説の名手ロバート・シェクリイ。
その飾り言葉が指し示すとおり、この人はユーモアのかたまりだ…!
そんな名手の第一短篇集である本書は、ブラックやシニカルを交えながらも、基本的にはコミカルな13篇が収録。
13篇のなかでも、印象に深い作品は以下のとおり。
・『時間に挟まれた男』
銀河系製作会社の不手際に巻き込まれた一人の男が繰り広げるドタバタ劇。階段を下れば過去に行き、丘を登れば未来へ行く─そんな破天荒な事態のわりに深刻さが感じられない主人公と、その裏で繰り広げられる製作会社と発注元である官庁とのやり取りが、コミカルさ全開で面白い。
・表題作
同じくコミカルなうえにちょっぴりの皮肉を加えた本作。手違いで食料を積み忘れた宇宙艇乗組員のヘルマンとキャスカー。食料を求めて降り立った惑星で、彼らを待ち受けるものは…
ヘルマンとキャスカーのキャラが対比されていて面白い。そしてラストの皮肉はかなりセンスがきいてますよ。
・『専門家』
宇宙を漂う一艇の宇宙船。この宇宙船、実は各パーツが自我をもった生物の共同体なのだ。しかし、彼らは光子嵐に巻き込まれ、「プッシャー(推進係)」を失ってしまう。彼がいなければ光速を超えた飛行を持続できない。なんとかプッシャー族が住まう惑星を見つけ、一匹のプッシャーを捕捉することに成功した彼らだが…
本書別作品の『体形』を転じたような作品だが、この作品が一番おもしろかった。本書でも、著者のユーモアさの真髄が窺える指折りの一作ではないでしょうか。
・『静かなる水のほとり』
そんな作品群のなかで、とりわけ異彩をはなつ本作。宇宙に浮かぶ厚さ半マイルほどの岩板に住みついたマークは、購入した雑用ロボットを改造しながらも孤独な毎日を過ごしていた。順調に性能を増していくロボットに反比例するように、彼の孤独感は薄れていく。漆黒の宇宙に流れる星々を眺めつつも、マークの時間は終わりを迎えていき…
静謐さに包まれた物語で、読み終えた後はとても穏やかな気持ちになれました。こーゆう作品をもっと読みたいなぁ。
星新一や筒井康隆が好きな人には是非薦めたい一作。いまでは絶版なのが玉に瑕か…
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「無限がいっぱい」並の面白さを期待して読むと肩透かしを食らう。東京創元社の「残酷な方程式」よりもさらに面白くない。と言えば酷さがわかってもらえると思う。
初期短篇集。
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ブラックユーモアというよりは「ドタバタ」(解説より)のほうが似合う。
結構笑えた。お気に入りは「王様のご用命」かな。