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- カテゴリ:一般
- 取扱開始日:2013/11/21
- 出版社: 早川書房
- サイズ:16cm/422p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-120075-5
紙の本
国境の向こう側 (ハヤカワepi文庫 グレアム・グリーン・セレクション)
人と交わらず孤独に暮らしていた老人が、ある日最高権力者である将軍に呼び出されて戸惑う様子を淡々と描いた「最後の言葉」。メキシコの田舎町を休暇で訪れた男が、偶然手に入れた大...
国境の向こう側 (ハヤカワepi文庫 グレアム・グリーン・セレクション)
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商品説明
人と交わらず孤独に暮らしていた老人が、ある日最高権力者である将軍に呼び出されて戸惑う様子を淡々と描いた「最後の言葉」。メキシコの田舎町を休暇で訪れた男が、偶然手に入れた大金を社会のために使おうと考えたことによって思いがけない事態を招く「宝くじ」―本邦初紹介となる未完の表題作をはじめとする、十六短篇を収録。移りゆく世界と人々の心情に向けられたイギリスの巨匠の冷静な視線を味わえる傑作短篇集。【「BOOK」データベースの商品解説】
人と交わらず孤独に暮らしていた老人が、ある日最高権力者である将軍に呼び出されて戸惑う様子を描いた「最後の言葉」をはじめ、移りゆく世界と人々の心情に向けられた著者の冷静な視線を味わえる全16編を収録した短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
最後の言葉 | 高橋和久 訳 | 7−32 |
---|---|---|
英語放送 | 若島正 訳 | 33−54 |
真実の瞬間 | 高橋和久 訳 | 55−70 |
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紙の本
読者の世界を広げるグリーンの短編集
2014/04/27 22:22
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
グリーンの短編集で、グレアム・グリーン・セレクションと名付けられているうちの一冊である。本書には16の短編が収められている。いつものように、訳者は短編毎に異なっている。
16の短編で420頁とかなり分厚い文庫本になっている。これで本体1,000円は高いと思っていた。しかし、内容はそれ以上の価値がある。集められた短編には共通のテーマがある訳ではない。裏表紙には「移りゆく世界と人々の心情に向けられたイギリスの巨匠の冷静な視線を味わえる」とあるが、これは意味がよくわからない。むしろ、短編一編毎に意味があるといっても良い。複雑で難解なものからきわめて単純なものまで、ヴァリエーションが楽しめるようだ。
タイトルになっている『国境の向こう側』は最後に置かれており、本書の中では最も長い短編である。その他は20頁前後である。私は以前読んだ際に、グリーンの短編集はじっくりと腰を落ち着けて味あわないと真価は理解できないと書いていた。
しかし、いずれの短編もテンポが良く、じっくりと腰を落ち着ける作風ではなく、軽快に読み進めて行った方が良いようだ。ただし、それでは重要な言葉を読み飛ばしてしまう恐れはある。最初の「最後の言葉」は、ローマ法王を経験した老人が不可解な境遇に置かれたストーリーで、グリーンは全てを語らずに読者にイメージを広げさせている。
「英語放送」はドイツが連合国側に行った宣伝放送を意味する。この英語放送を利用して、暗号で情報を伝えるというアイデアである。実際にこれに類することは行われたようである。「中尉が最後に死んだ」は、これもドイツとの戦時中の話で、英国の片田舎にドイツ軍の落下傘部隊が進駐した。その駐留軍と村民との間の闘いの話で、密度の高い緊迫感のある物語である。
これらの現実に題を取った作品とは異なるのが、「不当な理由による殺人」である。訳者の解説を読むと、グリーンの最初期の作品だそうである。訳者はそこで絶賛しているが、私には何のことだか分からず、どうやら作者と訳者の自己満足で終わってしまったようである。読み手についての斟酌がかなり不足していると見た。
「はかどらぬ作品 ゲートルを履いたわが恋人」は、パントマイム劇の戯曲を模して書かれたものかも知れないと訳者の解説は言う。内容も含めてこれも理解できない内容であった。
最終編で本書のタイトルにもなっている「国境の向こう側」には期待していたが、どうやら未完で終わっているらしい。道理でストーリーについての一貫性に欠け、意味が理解できない。タイトルはたしかに興味をそそるのだが、これなら外して欲しかったと思う。
理解できないものや、未完の作品などが含まれてはいるものの、読者の世界を広げる効果は十分あると思う。