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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2007.9
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/249p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-309-20479-6
紙の本
アメリカにいる、きみ (Modern & Classic Collected Stories:Chimamanda Ngozi Adichie)
アフリカの若き俊才、最年少オレンジ賞受賞作家のO・ヘンリー賞受賞作を含む初の短編集。アメリカにわたったナイジェリアの少女のふかい悲しみをみずみずしく綴った表題作ほか、いず...
アメリカにいる、きみ (Modern & Classic Collected Stories:Chimamanda Ngozi Adichie)
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商品説明
アフリカの若き俊才、最年少オレンジ賞受賞作家のO・ヘンリー賞受賞作を含む初の短編集。アメリカにわたったナイジェリアの少女のふかい悲しみをみずみずしく綴った表題作ほか、いずれも繊細で心にしみる珠玉の短編全10編。【「BOOK」データベースの商品解説】
アメリカに渡ったナイジェリアの少女の深い悲しみをみずみずしく綴った表題作のほか、O・ヘンリー賞受賞作「アメリカ大使館」など、いずれも繊細で心にしみる珠玉の短編全10編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
アメリカにいる、きみ | 5−21 | |
---|---|---|
アメリカ大使館 | 23−40 | |
見知らぬ人の深い悲しみ | 41−67 |
著者紹介
C.N.アディーチェ
- 略歴
- 〈C.N.アディーチェ〉1977年ナイジェリア生まれ。19歳で渡米。O・ヘンリー賞、PEN/デイヴィッド・T・K・ウォン短編賞、コモンウエルス賞、オレンジ賞等を受賞。
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紙の本
ナイジェリア出身作家の描く、等身大のアフリカ。
2008/03/25 20:37
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
しぼりたてのヤシ油が何色をしているか、ご存知だろうか。
正解は本書に書かれているが、おそらくほとんどの日本人が答えられないだろう。そして、ヤシ油の色を知らないのと同じように、アフリカやそこで暮らす人々のことを私たちは、いや私は、何も分かっていないのだ。
『アメリカにいる、きみ』は、ナイジェリア出身の作家・チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの短篇集である。30歳という若さにして、既に2冊の長篇小説と 20を越える短篇を発表しており、アメリカでは高い評価を受けている。本書は、数ある作品の中から10篇を選んで翻訳された日本語版オリジナル短篇集となる。
こんな粒ぞろいの短篇小説を読むと、ぞくぞくしてしまう。どれも素晴らしいが、なかでも表題作・「アメリカにいる、きみ」、O・ヘンリー賞受賞作・「アメリカ大使館」、「スカーフ―ひそかな経験」は傑作である。重層的なストーリー展開や、繊細な心理描写が絶妙なのだ。
例えば「アメリカ大使館」では、ひとりの女性が難民ヴィザを取得するためアメリカ大使館に並ぶところから、面接官と対面するまでのひとコマを描いている。照りつける太陽のもとで大勢の人間が列をつくって待っている中、彼女はここに至るまでの苦い出来事を思い起こし始めるのだ。
この作品に、ナイジェリアの現状をみることができるかもしれない。けれど作者は、あくまでひとりの女性の個人的な体験として、彼女の心の襞に分け入るようにしてその悲しみを描いていくのである。
この手法は、作品全体にみられる。
「スカーフ―ひそかな経験」やナイジェリアの内戦・ビアフラ戦争を描いた「半分のぼった黄色い太陽」でも、宗教・民族対立といった抽象的な問題としてではなく、一人一人の身に起こった出来事として捉えているのだ。作者は、暗殺や紛争、同性愛といった、ともすれば読み手が身構えてしまいがちな題材を、するりと物語の中に入り込ませ、個人の心象風景を取り出してみせるのが本当にうまい。
私たちはよく、アフリカの人々を「アフリカ人」と呼ぶが、厳密に言えば、正しい表現ではないだろう。「アフリカ人」の中には、ナイジェリア人やケニア人がいる。そして、ナイジェリア人の中には、キリスト教徒のイボ族やイスラム教徒のハウサ族がおり、同じ民族同士でも、高等教育を受けられる裕福な者がいれば、貧しくて学校に通えない者もいる。
本書で描かれるのは、多様で複雑なアフリカの姿である。ここに収められた作品を読むと、これまでいかに自分が平面的な認識しかしてこなかったか、思い知らされるのだ。アフリカ系移民が、アメリカ人たちが呼びやすいような名前に変えるなんて、初めて知った。
本書は、けっして重苦しくはないが、ずしりとした読後感を残す一冊である。次はこの作者の長篇小説を翻訳出版してほしいと、切に願う。