紙の本
空回りしてきた生涯学習、リカレント教育、リスキリングがそうならないために
2023/05/05 18:48
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
国会でリスキリングが取り上げられ、育休中はさもヒマといわんばかりで議論されたのでイメージが良くない話しになっている。総理大臣の発言でもよくわからない。生涯学習や社会人教育、リカレント教育とどう違うのであろうか。衰退産業から成長産業に労働力を移行させるために、流動化させよ、雇用規制を緩和しろという議論があるが、それでリスキリングが進むのであろうか。雇用が流動的な非正規分野や長期雇用ではない中小企業で、生涯教育やリカレント教育が成功しているということは聞いたことがない。社員教育にお金をかけないという話はいやほど聞いてきた。なぜ、学校を出ると多くの人が勉強しなくなるのであろうか。高度成長期の労働者(事務系も現場も)は社会勉強と言って、仕事が終わってから飲み屋に行くことが多かった。昔から学校を卒業してから勉強する人は少なかった。そこにリスキリングと言われる。本書は、これらの疑問に次々と答えてくれる。目次を見ると、
まえがき
第1章 「リスキリング」の流行とその課題
(補論)「スキル明確化」という幻想 氾濫する「うまくやる力」はどこにいくのか
第2章 「学ばなさ」の根本を探る 「中動態的」キャリア論
第3章 「変わらなさ」の根本を探る 変化を抑制するメカニズム
第4章 リスキリングを支える「三つの学び」
第5章 「工場」から「創発」へ 日本はリスキリングをどう進めるべきか
第6章 「学びの共同体」の仕組み 企業を「キャリアの学校」にする
第7章 「学ぶ意思の発芽」の仕組み
終 章 これからの企業における「学び」の方向性
あとがき となる。
統計データを多くの場面で活用しているので、日本の従業員が世界的に学びの習慣がない、他人を信頼しない等々が出てくる。個人の問題でなく、日本の企業社会のあり方、ひいては社会のあり方を問う。世界的に企業の財務状況等を公開することが当たり前になっているが、人的資本についても開示していく方向にある。働き方改革というが、これらは世界的潮流を考えているわけではない。この本から、ジョブ型やメンバーシップ型にも考えを広げていくことができる。著者なりの解決策も出てくる。読んでほしい本である。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルを最初「リスキング」と読んでしまい、リスク関係かあるいはリスケ(リスケジューリング)かと思ったのですが、これはRe-Skilling。私は「学び直し」と理解しました。日本は「治安が最も良く、しかし最も他人を信用しない国」という分析は辛辣。
しかし、全般にどうも書き方や文章が理解しにくい印象が残りました。
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リスキリングそのものではなく、日本人ビジネスマンの中動態的なビヘイビアが本質的な問題であると気付かされた。
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「リスキリング」は流行り言葉のように言われているが、各企業で行われている実態ではうまくいかないと説く。リスキリングのみならず、評価制度などにまで言及し、これからのあるべき姿をふんだんなデータを元に説明してくれる。確かに、昨今、オンライン研修だけで終わらせてしまうことが多く、行動に移すことが多いように思う。企業の教育担当者のみならず、学ぶ人にも参考になる。
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リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考
著:小林 祐児
リスキリングとは、業務上の技術や専門スキルを新しく獲得すること、そしてそれを企業が従業員に促進することである。DXと合わせて普及しつつあるこの言葉は、「生涯学習:「リカレント教育」などと同じく、広く大人の「学び直し」と捉えられる。
本書では、リスキリングに必要な「仕組み」を「行動変化」「学びのコミュニティ化」「意思の創発」の三つの提示及び以下の8章により説明している。
①リスキリングの流行とその課題
②学ばなさの根本を探る
③変わらなさの根本を探る
④リスキリングを支える「三つの学び」
⑤工場から創発へ
⑥学びの共同体の仕組み
⑦学ぶ意思の発芽の仕組み
⑧これからの企業における学びの方向性
「リスキリング」しかり、確実にこの「学び」の大きなうねりをどう捉えていくかが、組織・個人にとって大きな正念場となる。一時的なブームとしてやり過ごすのではなく、各個人が危機感と期待を持ちながら自身の現状とわくわくする未来を想像しながら、学びを捉えなおす、そして学びを継続すること。その環境や風土と仕組みをどのように企業が整えていくかが重要となる。
学びは個人の責任下にあるという前提はあるものの、企業としての枠組みによりそのプロセスを含め結果に対しても大きな差となって表れてくる。
本書の納得性の高さの根源はなんといってもデータからの事象の提供である。リスキリングの黎明期と言われる今でもしっかりとデータを提示することで、提供する企業側として大きなミスリードは防ぐことができる。
学び直しは置かれた環境や個人によって、異なるものではあるが、根本的な考えや大きな仕組みの構築の考えは本書から学べることは多い。危機感が先行する中にも、楽しさを見いだしながら仕組みの構築を踏まえた考え方を学びから形として運用していきたい。
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中途半端な働き方でも一定の評価をされる日本において、学ぶことなんて積極的にするわけない。何もしなくても評価されちゃうのだから。
普通のキャリアが学ばない人々を生み出すという指摘に腹落ちした。
結局人と人のつながりからしかやる気は起きないし、学びもない。にも関わらず、日本だけではないけれどSNSや映像のサブスク等、今ではいくらでも社会との関わりがなくても生きていけてしまう。孤独は学びを遠ざける。
根深くて、本当に解決するためには時間のかかる問題だった。
自分は危機感を持って学び続けなければ。。
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学ぶことが一部の意識高い人だけといった雰囲気である日本の特殊性についての考察はそれなりに納得できた。就社し、完全に受動的でもなくそれなりには主体的に満足しつつローテーションされることで、日本人のキャリア感は「中動態」であるという。中動態自体が悪いのではなく、現在の環境にあっていない。中途半端に成果が出せてなんおなく満足できてしまうところに問題があるのだと。公募制などの仕組化で、環境そのものを変える必要はあるという点は理解できる。
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本書は、「なぜ学ばないのか」「なぜ学んだことが発揮されないのか」について、前半では、日本人のもつ意識、企業慣行、および社会学の知見から分析しする。さらに、後半では、企業が学びを如何に促進するかについて、提案されている。
学び・発揮を個人に依存するのではなく、企業が構造化する方法に議論の焦点を当てていることが本書の特徴であると思う。
個人的に印象に残ったのは、「中動態的キャリア」や「学びのコミュニティ化」に関する論考である。これらは、リスキリングの射程に留まるものではなく、他の分野(例えば、政治やエンタメ)にも共通していると考える。
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世界一学ばない日本人 他人を信用しない
工場型のリスキリングではなく最終的には実務につながることが重要
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終身雇用が産んだ副作用の一つが継続的な学びをしないポンコツたち。
高校受験や大学進学時がピークでそこから全く能力が上がらない方々。本当に迷惑ですね。
この本はそんな人たちの手に渡って欲しいですが、そもそもそういう人には渡らないのが残念です。
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リスキリングのブームは(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流(2)人的資本開示の潮流から起きた。しかし、そのリスキリングの対応は表層的と言わざろう得ない。それはリスキリングを工場モデルで考えているからだ。(個人へスキルを注入する。)欠点としては、1)「個」への過度のフォーカス、2)学びの偏在性(学ぶ人しか学ばない)、3)スキルの明確化がスタートに置かれている(例えば、次はどのプログラミング言語が市場で求められるか?は誰も予想できない)、4)スキルを「獲得した」らすぐに「発揮出来る」と短絡的に考えている。
企業が従業員に対して行う研修が、果たして企業の業績にプラスに寄与するのか?
=>根本的な問い
人的資本への投資は「行動成果を通じて」企業業績を上げている。
リスキリングのブームは、「自律的なキャリア形成」の流れと結びついている。
「人的資本」の議論とも結びついている。
「人的資本」以外に、「文化資本」、「感情資本」が考えられている。
日本のリスキリングの成否のカギを握るのは、「心的資本」と「社会関係資本」という2つの資本概念。
「個人のやる気」頼みのリスキリングを止め、リスキリングのための動機づけを「仕組み化」すること。
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スキルの明確化とは、鋳型の正確性を求めようとすること。
x軸「スキルの広さ」 y軸「特定領域の専門性の高さ」 z軸「うまくやるスキル」(一般的な仕事のスキル)
z軸は測る物差しを作れない
日本企業はz軸を重視してきた。
政府・行政が支援すべきリスキリング領域は、非正規雇用者・有期雇用者のリスキリング。
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「世界で最も学ばない日本人」
学ばない理由は「なんとなく」。理由なぞない。
「学ばせたくない企業」と「学びたくない」国民の共犯関係。
先進国では企業横断で、「賃金相場」「労働組合」「職業資格」「教育制度」「キャリア観」が成立している。
中高年の不活性感の他人事感
実際に日本の現場で目にするのは、キャリアの主導権を企業に握られつつも「なんだかんだ、そこそこ楽しく」働いている多くの会社員の姿。
日本のキャリアは中動態的。
日本の昇進構造。「オプトアウト」方式の平等主義的・競争主義的な昇進構造。
女性が段々脱落していく。
変化抑制意識とは、組織の中で業務上の変化を起こすことを「負荷=コスト」として捉えてしまい、自発的な変化を起こすことを避けようとする意識のこと。
変化抑制意識とは「変化コスト予期」と同義。
職場の秩序を崩してしまうという意味で、イノベーションははた迷惑なもの。
社会心理学者F・H・オルポートが提唱した「多元的無知」という概念。
集団の多くの成員が、自分自身は集団規範を受け入れていないにも関わらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状態。
社会学のメディア研究 「沈黙の螺旋」
日本企業の横のつながり-メンバー間の職務横断的な協働関係を支えてきた「助け合い文化」や「業務の相互依存性」-が「個の新しいアイデア」や「変化を生む意思」を削いでしまう<変化抑制意識>を高めている。
心理的資本 フレッド・ルーサンス「こころの資本」
「変化適応力」を促進する「目標達成志向」「新しいことへの挑戦や学びへの意欲」「興味の柔軟性」の3つ。
就業者のリスキリングを支える3つの学び
1)捨てる学び アンラーニング(学習忘却)
2)巻き込む学び ソーシャル・ラーニング
3)橋渡す学び ラーニング・ブリッジング
アンラーニングを妨げる中途半端な成功体験
役職について3か月から半年でアンラーニングがピークに達し、以降なだらかに低下していく
人事評価5段階中4ぐらいの評価を受けている従業員がもっともアンラーニングが低い。
アンラーニングを促進する「限界認知」
限界認知とは、「これまでの仕事のやり方を続けても、成果や影響力発揮に繋がらない」という自分の仕事の限界を感じること
限界認知を突きつけられる
修羅場の経験
越境的業務(越境学習)
新規企画・新規提案の業務
男女の経験格差も問題
他者との学びの4つの機能
「真似し合い」:模倣、真似、観察学習
「教え合い」:指導・教育、フィードバック、支援活動
「創り合い」:知識の創発、知識の共有、共同実践
「高め合い」:目標伝染、動機づけ、威光模倣
個人のやる気の付け方
ろうそく型:個々の心の内面に火をつける
炭火型:他者を通じた、他者を経由した動機づけ
アメリカの社会学者ロナルド・バーとの「構造的空隙」
世界一他人を信頼しない国 日本
社会関係資本の薄さ 社会開拓力のなさ
「工場」から「創発」へ
変化報酬と挑戦共有
報酬としての「ポスト(役職)」「金銭」「経験」
形骸化する「目標管理制度」
改善重視
明確さ重視
役立ち感
従業員の「評価観」を変えるために「なんのために目標管理を行っているのか?「人事評価の狙いは何か?」をメンバーに伝える機会をもつこと
フォワード・ガイダンス
コーポレート・ユニバーシティ
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統計データからも、日本は社会人が世界一学ばない(意欲が低い)国らしいがマインドセットの問題というより、日本企業の働き方や中動態的(※)キャリア感といった「仕組み」面に問題があるため、とのこと。分析が面白い。ではその仕組みを変えるために何をすべきかというと…アンラーニング、ソーシャルラーニング、ラーニングブリッジングこのラーニングを支援するための仕組みが変化創出モデル。変化報酬、変化共有、→コーポレートユニバーシティ。対話型ジョブマッチングにより内発的動機付け。最終的にはもっと人を信用しよう。人と社会と関わり合いながら学ぼう、という着地と理解。
※完全に受動的でもないが、異動命令やジョブローテーションもなんだかんだ受け入れてしまい、置かれた場所で咲くのが合理的となってしまう能動/受動の中間状態
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日本は世界一社会人が学ばない国
企業内大学など施策は色々あるけど
リーダーがまず学ぶ姿を見せるのが大事
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「リスキリング」がなぜ必要と言われているか、それは日本企業の長期的な展望を持った内発的な危機感などの動機ではなく、「DX」とか「人的資本開示」とか、外部要請に対応するために体裁を整える必要性に駆られてのことであったということ。
その上で、データなどから見える日本人の特性に合わせて、企業主導の学びを理由とした社会関係資本作りのハコを用意し、組織と個人をより豊かにするための機会提供を提言している。
学びの必要性について、もっと切羽詰まった理由があるのかと思っていたので、少し拍子抜けした。
このままではリスキリングがこれまでの女性活躍推進と同じような、形骸化した号令になってしまうのではと感じる。
自分の中でも反芻して考えたいと思った。