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紙の本
2001年に出た単行本の時よりも、今のほうがハラハラしながら読んでしまいました。娘たちが高校生になった、という我が家の事情もありますが、世の中の流れもあるのかもしれません
2006/08/28 21:15
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《両親を交通事故で亡くし、後見人である伯父の保護の下で大学に通う兄と高校生の妹。兄が吉原麗奈と知り合ったことで、密接だった兄妹の仲に微妙なズレが》恋愛小説。
2001年に単行本が出て、あまり騒がれないうちに本自体が入手難になっていたものです。私も何度か評を書こうと思っていたのですが、手にすることが出来ない本を褒めてもなあ、と遠慮していましたが、文庫化されていたんですねえ。心置きなく推薦できるのは嬉しい限りです。
自分が20歳になったお礼にと勧めた温泉旅行で、両親は交通事故に巻き込まれ即死してしまいます。生命保険のおかげで、僕と四歳年下の妹 理名は伯父の後見の下、という条件付ではあるのですが、学生生活を続けることが出来ます。勿論、家事は二人で分担します。小さいときから二人で遊び、自分が高校一年になるまで一緒に入浴することに何の疑問も抱かなかった兄妹ですから、それも当たり前のこと。
そして僕は大学、妹は高校に進みます。両親が居ない二人の生活はそれなりに軌道に乗ってくるのです。そんなある日、大学生仲間五人が企画した渋谷での合コンで知り合ったのが、十九歳の吉原麗奈です。気が合った二人はそのまま一緒に帰る事になり、途中でホテルに直行してしまいます。
僕に恋人が出来たことを知った理名への罪滅ぼしにと、兄妹は久しぶり千葉に出かけます。「デート」とはしゃぐ妹と過ごす一日。家に帰った二人は途中で買ったビールを飲み始めて・・・。
以上が物語の半分です。この先は読んでもらうしかないでしょう。ともかく、この本は面白いです。主題が私好みで、つい先日も二人の娘に、最も甘美な恋愛の姿は、禁忌に触れるものですと説明したばかり。
著者は1979年生まれで、この作品は第1回幻冬舎NET学生文学賞受賞作です。作者がそういったことを考える年頃なのかなとも思うのですが、重い内容をさらりと書いていく、そこが心地よいです。無論、今までに読んだことの無いというほどオリジナリティがある話ではありません。ただ、二人のひそかな決意で終わるラストは悪くありません。
確かに、誰もが一度くらいは想像するだろうし、少女漫画には良くある話ではあります。塚本邦雄のような美文で、もっと濃密に、より退廃的に、さらに官能的に描いたらとも思います。でも、そういった装いの小説は既に書かれているわけですから、筆者の年齢を考えればこれで十分といえるでほう。
忍び寄る危機感とそれを乗り越えようとする決意、その裏にある暗い官能、若い二人にはあまりにも重い誘惑でしょう。