紙の本
自分たちの手で幸せを掴もうとして 何が悪いのか
2021/12/30 21:30
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み進むにつれて陰鬱さは増していくのに、
読む手はますます止まらず。
三者三様の虐待を受けた子どもたちが、
自分たちの手で幸せを掴もうとして
何が悪いのか、そうさせたのは
周りの大人じゃないか、
と思わずにはいられませんでした。
三人でいる未来の幸せを願うばかりですが
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理都君が不憫…。理都君の周りには自分の欲望にしか目を向けられない大人ばかりで、本当につらい時期を過ごしたんだろうなぁ。
ただ、そう思うのは志史や怜奈の発言しか読者は知りえないから、ちょっと理都君は神聖化されちゃってるところはあるかもしれない。語られるだけの男なのにすごい存在感だ。
あとこの作家さんはBANANA FISH好きそう。イメージだけど。
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伯母から、夫の殺害事件を調査してほしいと頼まれた悠紀。悠紀は探偵業のアルバイトや伯母の息子の家庭教師をしていたことがある。伯母が思うに息子(養子)の志史が怪しいと言うので、悠紀は調査を開始する。徐々にわかってくる志史の過去や闇、新たな不可解な事故など迷宮に迷うかのように長きにわたる真相が明らかになっていく。
第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作です。
大きな盛り上がりというのはないのですが、沸沸と深い所から湧き上がっていくかのようにじわじわときました。
犯人を探すというよりは、なぜ犯人がそのような犯行に及んだのかを重視しています。なので、読み進んでいくと、何となく犯人は明らかになります。
次々と出てくる少年少女たちの深い闇。まぁ家族関係がドロドロしていて、欲に塗れた家族ばかりで、そりゃ襲われてもおかしくないなとも思ってしまいました。程よい感じのジメッとした表現で、昼ドラを見ているようでした。
しかし、それよりも際立っていたのは、青年が醸すミステリアスなオーラでした。一見秀才に見えるが、何を考えているかわからない雰囲気が文章から感じ、不思議でした。
途中途中、色んな過去が浮かび上がってくるのですが、ちょうど良いタイミングで今までの出来事のまとめが提示されるので、あまり振り返ることなく読めました。
次々と出てくる衝撃的な出来事。事実を多く述べているので、あまり丁寧に心理描写は描かれていない印象でしたが、青年たちの心理といったら・・・しんどすぎるなと思いました。似たような家庭環境だからこそ分かり合える友情や怒りが、残酷さを際立たせていましたが、それが何となく美しい印象でもあったので、結果として不思議な感覚でした。
後半では、「復讐が復讐を呼ぶ」というワードが似合うかのような展開になっていきます。切なかったです。復讐が招く悲劇に果たして、あの人はどうなっていくのか。結局最後までわからずじまいでしたので、ちょっと消化不良感はありました。
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第30回鮎川哲也賞の優秀賞作。たぶん題名に引っ張られてるんだろうけど、この作品の最大のポイントはアンニュイ?文学的?な文章。あっさり言えばちょっと気どってるような雰囲気。誰も寄せ付けないミステリアスな青年、志史。志史が犯人かと疑われる殺人事件が発生。過去のいくつもの事件が絡む中、探偵役の悠紀は志史の謎をじっくり紐解いていく。結構複雑な話だ。登場人物も事件も多いのでちょっと苦戦。読み終えてみると、想定内のようで想定外のようなこれまた複雑な結末。そこまで好みではないけど、危うさが美しく切ない話だった。
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登場人物が、ズラーリ紹介されて??、いつものように100ページは、作家さんに敬意を払って読み進めます。
しっかり100ページに到達する前に「先が読みたい」「面白い」に導いてくれました。
このジャンル、最近の流行りなんでしょうか?
物語を奥深いネ!と思わせる簡易ツールになっていなければ良いのですが。私は、幸いにも平凡ながら親の愛を受けて育ち、今の家族とも普通に暮らせているので、ホントの意味で本書を理解する事は難しいです。
知らない世界を覗きに込むスリル、専門家も認めた筆力を感じましたので欲しい4つ。
ただ、読後の爽快感、満足度、ビックリ!な感覚は残念ながら得られませんでした。
個人的な嗜好の差異でしょうが。
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人間関係が紐解かれていく過程で順当に想像がつく事態が暴かれる。「恐るべき子供」(というには薹が立ってはいるが、計画時と犯人たちの精神?年齢とでもいうべき点で)の系譜に連なるものか。昨今のメインテーマが詰め込まれ、ミックスされている。豪腕、というべきか。最後の加害者の狂気でとどめを刺される。これも天網恢々というのか。
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まず、これが新人賞の作品ということに驚いた。高い完成度の文章と言葉選び。比喩を使い過ぎると鼻につく文章になるが、その点も絶妙な塩梅で。ミステリ以前に、文章作品として素晴らしかった。
肝心のミステリとしてですが、すっごかった。これもイヤミスになるのかな、そのジャンル分けはともかく、ひたすらに目を逸らしたくなるような醜い欲望の描写と、貫かれる信頼、愛と。
全体的に美しい雰囲気なのに、絶望や哀しさが拭えない作品でした(真相を知ればそれも納得)。
今後、より熟成されるであろう著者の作品世界が本当に楽しみです。
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『劇場版火曜サスペンス劇場?映像が浮かぶ』
鮎川哲也賞優秀賞受賞作。複雑で陰湿な人間関係を、丁寧に描き、丁寧に解き明かしていく。まるで、ドラマを観ているかのように、引き込まれていく。初読み作家さんだが、他の作品も読みたくなるほど面白かった。
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面白かった。
ちょっと詰め込み過ぎというか、
狭いところにいろんな事件がかたまりすぎな感はあるが。
自分のためだけでは動けないけど、
大事な人のためなら無茶するところが
みんな切ない。
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*
風よ僕らの前髪を
弥生小夜子
帯の推薦文、装填、装画を書店で一眼見て
是非読んでみたいとおもってました。
彼処に書かれている、登場人物の姿や
内面を表現する言葉がとても綺麗で印象的。
美しいだけでなく鮮やかで、なのに脆くて危うく、
壊れそうな一瞬を薄紙一枚に覆われたような
描写が胸に残りました。
単にミステリーなだけでなく、深い苦悩、
奥には愛情とも友情とも見える純粋な思慕があって
最後まで読んだ後、もう一度読みたくなりました。
やっと手にとれて、読み終えれてよかったです。
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第30回鮎川哲也賞受賞作。
若林悠紀は探偵事務所で働いていた経験があることから伯母の立原高子に高子の夫である立原恭吾が早朝の公園で絞殺された事件の真相を調べて欲しいと頼まれます。
高子は養子である大学四年生の志史が怪しいといいます。
悠紀は志史のアリバイを調べますが、代理殺人を疑い、志史の身辺を調べ始め志史と交流のあった小暮理都という中学の同級生をみつけます。
しかし、志史と理都は7年前から絶交状態で1度も会っていないことがわかります。
警察の調べにより、立原恭吾殺しの真犯人は志史の実の父である元劇団員の斉木明ということになります。
しかし悠紀は調べていくうちに、志史と理都の周りで4人の人間が不審死を遂げていることがわかります。
立原恭吾の他に理都の実の母の万里子、養父の静人、そして斉木明も転落死しています。
悠紀は志史と理都を怪しみますが、二人は7年間一度も会っていないのです。
志史は養父の恭吾が厳しく小遣いは一銭ももらえず、スマホも使えない環境。そして好きだったピアノは止めさせられています。
理都の家庭はそれ以上に複雑でした。
悠紀はそれでも、志史と理都の交換殺人を疑います。
そして志史と理都と交流のあった盲目の少女怜奈。
悠紀の推理を聞いた志史は事実を語り始めますが…。
以下ネタバレしていますのでお気をつけください。
志史と理都の繋がりは親友以上でしたが、恋人ではありませんでした。
七年間の歳月、二人は何を想い別々に過ごしていたのか。
そして行われた七年目の完全犯罪。
「風よ僕らの前髪を吹きぬけてメタセコイアの梢を鳴らせ」
理都の詠んだこの歌の真の意味がわかったとき、犯罪者ながらも、志史と理都の未来を願わずにはいられないラストシーンでした。
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精緻な文章で人物描写が練り上げられ、彼ら彼女らの人間模様が陰鬱に絡みあって描かれるミステリでした。
ただ、語り口、話の展開そのものはあくまで推理物の王道に沿っていて、しごく順調にヒントが集まり、真相へとたどり着いていきます。そのプロットそのものはシンプルだから、欧米の古典ミステリのようなややこしい縁戚関係があっても、戸惑いすぎずに開かれていく真相を理解し、そうせざるを得なかった登場人物たちに複雑な想いを抱かせます。
救いがあるようで救いのないような展開なので、いっそ彼らが感情を持てないモンスターになれたのならまだ良かったのにとすら感じさせる、細やかな描写はほんとうに素晴らしかったです。
ただ「悪い大人」と「純粋な、善なる子ども」の対極で描かれたキャラクタが多く、「普通の人」の視点が(主人公の彼ですら、どこか超然とした心構えがあり…)あまり与えられていないので、どこか幻想的な靄の中で起こっている物語のように感じたところもありました。
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文章もいいんですが、短歌で泣いてしまいました。
詰め込み過ぎな感はありますが…
めちゃくちゃ好みでした(ジルベールかと)
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読み始めはなかなか面白いミステリーが読めるかと思ったのだが…。少年の時から過酷な運命を受け入れるしかなかった2人の青年による復讐劇。最後のほうまで主要な2人が登場しないので、あまり入り込めなかった。アッサリと先が読める展開で、ミステリー要素も弱く、これでもかって位、泣かせるエピソードが並べられて食傷気味。ほんのりBL要素を絡めてみたり、語り手の過去エピソードやラストの急展開も盛りすぎの感。辛口に書いてしまったが、私には合わなかった。
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2021.11.18 読了
現実離れしたような存在の二人の少年、志史と理都、そして盲目の少女怜奈。
殺人事件の真相を探るというミステリーだけど、この小説はどんなトリックなのかでなく、その胸に宿した殺意をどんな想いで計画したのか、二人の存在そのものを探る作品だ。